クラインミルマンの定理
この文章では,主に[2]に沿って Krein–Milmanの定理を紹介する. 応用としてextreme pointを使った議論によってBernsteinの定理を証明する. この文章で局所凸空間といったら局所凸線形位相空間のことであり,さらにハウスドルフな物だけ考える. また,局所凸空間の線形形式といったら連続な物だけ考えることにする.係数は基本的にで考えているが, 以下の議論は全てでも成り立つので,応用編では断りなく係数の話をしている.
1 本文
定理 1 (Hahn–Banachの定理の一つの形,使う分だけ).
を局所凸線型空間とし, をその空でない凸コンパクト空間, は点で とする. このとき連続な線型写像が存在して となる.
証明.
定理の名前で調べると証明が出てくる.省略. ∎
定義 2 (extreme point).
局所凸空間の凸集合 の点 がextreme point であるとは, 任意の についてもしもが存在して ならば となるときにいう. 凸集合 のextreme point 全体の集合を と書くことにする.
補題 3.
局所凸空間の凸集合とその点について以下の二つは 同値である.
-
(1)
点はのextreme point である.
-
(2)
任意のについてもしもが成り立つならばとなる.
証明.
はわかる. を示そう.任意のについて が存在してがとなるとしよう. ここでについてとおく. このときとなるについて で としたとき,である.よって である. よってであるから式変形して がわかる.よっても従う. ∎
定義 4 (閉凸包).
局所凸空間 の部分集合について の凸包とは を含む全ての凸集合の共通部分のことである. これを と書く事にする. また の閉凸包とは を含む全ての閉凸集合の共通部分のことである. を含む閉凸集合のうち最小のものと言っても良い. の閉凸包のことを と書くことにする.
補題 5.
局所凸空間 の部分集合について はの閉包に等しい.
証明.
局所凸空間において 凸集合の閉包が凸集合であることから まず がわかる. また は凸集合なので がわかるから が従う. ∎
定義 6 (Face).
局所凸空間 の空でない集合の 部分集合が の face であるとは もしもについて が存在して となっているならば となるときにいう. ここでが凸集合の状況で一点集合がfaceになっていることと がextreme point であることは 同値であることに注意しよう.
補題 7.
局所凸空間 の凸集合の 部分集合 とについて がのfaceで がのfaceならば はのfaceである.
証明.
任意のについて あるが存在して となっているとしよう. このとき であるから である. よって がのfaceであることから である. よって が のfaceであることから である. ∎
補題 8.
局所凸空間 の凸集合の faceの族 について はのfaceである.
証明.
明らか. ∎
補題 9.
局所凸空間 と線形形式を与える. このときの部分集合 とのface について 集合 が空でないならば はのfaceである.
証明.
補題 7 より がのfaceであることを示せば良い. が空でないので特にも空でない. そこで とおく. 任意の について あるが存在して となっているとする. このとき となる.よってである. 対称性からとしても良い.すると から も成り立つ. よってとなるから はのfaceである. ∎
Krein–Milmannの定理を証明しよう. 以下の(2)が通常,Krein–Milmanの定理と呼ばれる.
定理 10 (Krein–Milmanの定理: 幾何形).
を局所凸線型空間とする. そしてを 空でない 凸コンパクト空間とする. このとき 以下が成り立つ.
-
(1)
の閉集合であるような任意の空でないface についてに属するextreme point が存在する.特に が成り立つ.
-
(2)
が成り立つ.
定理 11.
上の連続な線形形式全体を適当に添字付けして とおきさらに はとしておこう. 例えばは線形形式全体の濃度にすれば良い. ここで添字付けは全射になっていることに注意しよう(単射性は特に必要ない). ここで超限再帰によって の部分集合 を以下のように定義する. となるについては が定義されているとして, かつ と定義して
と定義する. このようにしての閉部分集合の列 を得る. 今から任意のについて を証明しよう. まず であり のコンパクト性から となる は存在するから である. そして一般にとなるについてだとすると のコンパクト性から となる.よって自体もコンパクトとなるから となる. 以上から任意のについて となる. 次にが一点のみからなることを証明しよう. 任意の2点をとる. このとき任意のについて であることから である. つまり任意の線形形式について とは同じ値をとる. よってHahn–Banachの定理 (定理1)から となる. つまり である. 補題8から 任意のはのfaceであり また定義と 補題9から任意のは のfaceであることがわかる.特に はのfaceなのでがのextreme point であることが従う.
注意.
手で操作してる感じが欲しかったので超限帰納法による証明にしてみた.
注意.
局所凸空間 の空でないコンパクト部分集合 とその点, 上のラドン確率測度 について, がを表現する, あるいは, の重心が であるとは 上の任意の線形形式 について となるときにいう. ここでという意味である.
命題 12.
局所凸空間の空でないコンパクト部分集合 とについて が成り立つことと 上のラドン確率測度が存在して がの重心になることは同値である.
証明.
後半から前半を示そう. を表現する上の確率測度 があったとき任意の線形形式について
なので,Hahn–Banachの定理 (定理1)から である. 今度は前半から後半を示そう. であることから のフィルター基底 であって上でとなるものが存在する. このときの元は上のディラック測度の有限凸結合であるから特に上のラドン確率測度と見做せる. 写像 をそのようにみなす写像とする. ここでバナッハ・アラオグルの定理から は位相についてコンパクトである. つまりこの上の全ての極大イデアルは収束する. よってを含む極大イデアル はある確率測度に収束する. の位相とはをの元とみなしてを連続とする上の最弱の位相のことであったから任意のについて である. 特の任意の近傍についてあるとが存在して となる. ここでが線形形式のへの制限になっている時を考えよう. を任意にとる.このとき 上記のをの近傍とする. さての近傍をとし, のでの連続性を担保する近傍をとする. ここで上記のを十分小さく取り追加での近傍 についてとなるようにできる. 特にである.
ここでとなることから となるをとる. さて となっているとする.ついでに注意せよ. すると なので である. よってとは共通部分を持つのでと の距離は以下である. は任意であったから である. よってはを表現する測度である. ∎
注意.
ネットは使いづらいのでフィルターを用いた証明にした.
定理 13 (Krein–Milmanの定理: 積分形).
を局所凸空間とし, をその空ではないコンパクト凸集合とする. すると の任意の点は に台を持つラドン確率測度の重心である.
証明.
であるから 特に でもある.よって 命題 12 からの任意の点は に台を持つ確率測度 によって 表現される. ∎
注意.
逆に積分形から幾何形を導くことができる. なぜならば一般に集合について が成り立つからである. なんとなればまずは自明であり, であることから が従う.
2 応用:Bernstein functions
以下では線型空間は係数である.
定義 14.
関数が completely monotonicであるとは が級であり 任意のと 任意のについて が成り立つときにいう.
Krein–Milmanの定理を用いてBernsteinの定理を証明していく. つまり次の定理を証明する: を有界なcompletely monotonic 関数とする. このとき上のラドン測度 が一意的に存在して かつ
を満たす. また,がこの結論のように表されることと, が有界かつcompletely monotonicであることは同値である.
この定理は上の有限測度のラプラス変換の値になるような関数の特徴づけを与えている.
このセクションでは を上の有界関数全体であって, 位相はその導関数の広義一様収束とする. 上のセミノルムを
とすれば はの位相を生成するセミノルムの族となる. 可算個のセミノルムによって位相が生成されているので は距離づけ可能であることに注意しよう. そして をとなる全体とする.
補題 15.
とする. このとき 任意の と任意のについて 上で の各元は上から で抑えることができる.
証明.
に関する帰納法で証明する. まずのときはは上からで抑えられているので大丈夫である. において上の命題が成り立つと仮定する. のときを考えよう. に対して上で 平均値の定理を用いて であって が成り立つものが存在する. の導関数を考えると なので は広義の単調増加である. つまり は広義の単調減少である. よって任意の について
よって帰納法が回って補題が正しいことがわかる. ∎
命題 16.
はの空でないコンパクト凸集合である.
証明.
なので空ではない. 凸性もわかる. コンパクト性は 補題 15 とアスコリアルツェラの定理, そしてが距離化可能であることからコンパクト性と点列コンパクト性が同値になることからわかる. ∎
以下ではのとき は定数関数 と思うことにする.
命題 17.
のextreme pont全体は に一致する.
証明.
をとり を任意にとる. そして とおく. 今からを証明する. であることに注意せよ. このとき であり, である. さらに任意のについてが単調減少であることを用いると以下を得る.
かつ
が成り立つ. よって である. このことと , そしてが extreme pointであることから がわかる. これはつまりということである. よって がわかる.これはコーシーの関数方程式の乗法版であり, が連続であることから かもしくは と表される. ところでなので である. これでextreme pointになっている関数は求める形になっていることがわかった. 逆にはextreme point になっているだろうか? ここで に対して をで定義すると これは連続な全単射線形作用素で となる. 線形性から もわかる. ところでは空でないコンパクト凸集合であることから, Krein–Milmanの定理から である. はもちろん定数でない関数も含んであるので, も定数でない関数を含んでいなければならない.よって定数でないextreme point が存在する. 上の議論から もextreme point である. の任意性から がextreme point になることが従う. 定数関数とがextreme point になることは, がとなることから従う. ∎
定理 18 (Bernstein).
は有界なcompletely monotonic 関数とする. このとき上のラドン測度 が一意的に存在して かつ
を満たす.
また,がこの結論のように表されることと, が有界かつcompletely monotonicであることは同値である.
証明.
写像 をと定義する. このときは連続になり,さらに はコンパクトなのでは同相写像になる. さてをcompletely monotonic な関数とする. このときを考えれば,問題は のときに帰着されるから最初からそのように仮定しても良い. Krein–Milmanの定理より, に対してが存在して 任意の線形形式について
となる. 特に
である. 同相写像 により 右辺を変数変換する. とするとなので
となる.ここでである. これで測度の存在性がわかる. 一意性を考えよう. 上の確率測度 が
を満たしているとする. このとき族 を考える. ここでの関数と見て,はパラメーターと見ている事に注意せよ. するとこの族 は乗法について閉じている.故にをこの族で生成された の部分代数とすると, の任意の元はに属する有限個の元の多変数多項式で表されるが, が情報で閉じていることからはただ単にに属する有限個の元の線型結合で表される. 上でとが等しいことを示したいが,上記のことからにおける値が等しいことを確かめれば良い.仮定からなので とは上で等しい. ところでの元はの任意の2点を分離することからストーン・ワイエルストラスの定理より はの中で稠密である. 故にであるから一意性が示された.
後半の話は優収束定理などから従う. ∎
References
- [1] 宮島静雄, 関数解析, 横浜図書, 2005.
- [2] R. R. Phelps, Lectures on Choquet’s Theorem, 2nd ed., 2001, Lecture Note in Mathematics 1757, Springer-Verlag.
- [3] K. R. Davidson, Functional Analysis and Operator Algebras, 2025, Springer-Verlag.