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クラークソンの不等式(未完成)

電波通信 ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文書は, Lp空間の一様凸性の証明に用いられるクラークソンの不等式を, 三線定理を用いて証明することを目的とする.

1 三線定理とか

この章の話 [6]を大いに参考にした. この章で領域といったら ℂ の連結な開集合のことを指すことにする. まずは基本的な複素関数論をする. 正則関数といったら複素関数論の正則関数とする.

命題 1.

領域 D 上で定義された 正則関数 f について, |f| が D 上で最大値をとるならば, f は定数関数である.

証明.

|f| は点a∈Dで最大値を達成するとする. この時十分小さいr>0 を取り, B⁢(a,r)⊂Dとする. この時 B⁢(a,r) 上で f のテイラー展開は収束するので, B⁢(a,r) 上で以下のような等式が成り立つ.

f⁢(z)=∑i=0ci⁢(z−a)i.

これを用いると,zを (aを中心とする) 極座標で書いたときに

|f⁢(a+r⁢ei⁢θ)|2=∑n,mcn⁢c¯m⁢ei⁢(n−m)⁢θ⁢rn+m

が成り立つ. よって

12⁢π⁢∫02⁢π|f⁢(a+r⁢ei⁢θ)|2⁢𝑑θ=∑i|ci|2⁢r2⁢i

である. ここで

12⁢π⁢∫02⁢π|f⁢(a+r⁢ei⁢θ)|2⁢𝑑θ≤|f⁢(a)|=|c0|2

なので

∑i|ci|2⁢r2⁢i≤|c0|2

である. よって i≥1 ならば c1=0 である. 故にfは局所定数であることがわかり, 正則関数の剛性から f が定数であることがわかる. ∎

上記の最大値原理から以下の系を得る.

系 2.

D を ℂ 内の領域とし, f は CL⁡(D) 上の定数でない連続関数で, D 上で正則であるとする. このとき f が CL⁡(D) 上で最大値をとるならば, ∂D上で最大値をとる.

次の定理がこの章の目的である三線定理と呼ばれるものである.

定理 3 (三線定理).

a, bを実数とする. そして S={z∈ℂ∣a≤Re⁡z≤b}とする. さらに f を S 上の有界な連続関数で, Int⁡(S)上で正則な関数とする. また, a≤c≤b となる c について

M⁢(c)=supy|f⁢(c+i⁢y)|<∞

とする. このとき

M⁢((1−t)⁢a+t⁢b)≤M⁢(a)1−t⁢M⁢(b)t

が成り立つ.

証明.

適当にアフィン変換することにより, a=0, b=1としても良い.

まず最初にM⁢(0)とM⁢(1)が共に正の時に定理を示す. このとき

f⁢(z)⁢M⁢(0)−(1−z)⁢M⁢(1)−z

を考えることによって、M⁢(0)=M⁢(1)=1としても良い (正の実数Rに対して|Rz|=RRe⁡(z)なので).

ここで

fn⁢(z)=f⁢(z)⁢exp⁡(z⁢(z−1)/n)

とする. このときz⁢(z−1)=x⁢(x−1)−y2+i⁢(2⁢x⁢y−1) なので

|exp⁡(z⁢(z−1)/n)|≤exp⁡(x⁢(x−1))⁢exp⁡(−y2)≤exp⁡(−y2)

である. よって fnは Re⁡z=0,1を満たすzについて|fn⁢(z)|≤1を満たす. さらに

limR→∞sup|Im⁡z|=R|fn⁢(z)|=0

が成り立つ. よって, |fn⁢(z)| は S 上で最大値を持つ. 最大値原理より,それは境界上で最大値をとるので, 任意の z∈S について |fn⁢(z)|≤1 である. ここで, 点zを固定するごとに fn⁢(z)→f⁢(z)⁢(n→∞)が成り立つので, 任意のz∈Sについて|f⁢(z)|≤1である. これが求める不等式である.

次に M⁢(0)×M⁢(1)=0 の時を考察しよう. 数 ε>0 を十分小さくとると (具体的には,M⁢(1),M⁢(0)がともにはゼロでない時にはε<max⁡{M⁢(0),M⁢(1)} と取れば良い.両方ともゼロなら特に制限はない.), f+εについて M⁢(0) と M⁢(1) が正になる. そしてε→0とすれば求める不等式が出てくる. ∎

測度空間 (X,μ) について, L0⁢(X,μ) で (X,μ) 上の可測関数を表す.

定理 4 (Riesz–Thorinの定理).

(X,𝒜,μ)と(Y,ℬ,ν) を測度空間とする。 そして p0,q0,p1,q1∈[1,∞]で θ∈[0,1]とする。 この時

1p=1−θp0+θp1

と

1q=1−θq0+θq1

が成り立つ とする. このとき線形写像

T:L0⁢(X,μ)→L0⁢(Y,ν)

と (X,𝒜,μ) の単関数 f と (Y,ℬ,ν) の単関数 g について,

|∫Yg⁢T⁢f⁢𝑑ν|≤‖T‖p0,q01−θ⁢‖T‖p1.q1θ⁢‖f‖p⁢‖g‖r

が成り立つ. ここでrはqの共役指数である.

証明.

まず ‖f‖p=‖g‖r=1 としても一般性を失わない. そして

f⁢(x)=∑j=1naj⁢χAi⁢(x)

とおく. ここで, 各jについて aj∈ℂ で 族{Aj} は互いに交わらない可測集合とする. 同様に

g⁢(y)=∑l=1mbl⁢χBl⁢(y)

とおく. ここで, 各 lについて bl∈ℂで, 族{Bl}は互いに交わらない可測集合とする. この状況において

‖f‖pp=∑j=1n|aj|p⁢μ⁢(Aj)=1

と

‖g‖rr=∑l=1m|bl|r⁢ν⁢(Bl)=1

に注意せよ. ここで関数pを

1p⁢(z)=1−zp0+zp1

と定義する。 さらに r0, r1をq0, q1の共役指数として 関数rを

1r⁢(z)=1−zr0+zr1

と定義する. そしてfzと gzを以下のように定義する.

fz⁢(x)=|f⁢(x)|pp⁢(z)⁢f⁢(x)|f⁢(x)|
gz⁢(y)=|g⁢(x)|rr⁢(z)⁢g⁢(x)|g⁢(x)|.

すると,

fz⁢(x)=∑j=1n|aj|pp⁢(z)⁢aj|aj|⁢χAj⁢(x)

及び

gz⁢(y)=∑j=l⁢1m|bl|rr⁢(z)⁢bl|bl|⁢χBl⁢(y)

と表すことができる. そして

I⁢(z)=∫Ygz⁢T⁢fz⁢𝑑ν

と定義する. すると

I⁢(z)=∑j=1n∑l=1m|aj|pp⁢(z)⁢aj|aj|⁢|bl|rr⁢(z)⁢bl|bl|

が成り立つ. もちろんこれは {z∈ℤ∣0≤Re⁡z≤1} 上で有界かつ連続で,その内部で正則関数である. c∈[0,1]に対して

M⁢(c)=supy∈ℝ|I⁢(c+i⁢y)|

と定義すれば,三線定理から

M⁢(c)≤M⁢(0)1−c⁢M⁢(1)c

である. M⁢(0)とM⁢(1)の評価をしていこう. 任意のy∈ℝに対して

|I⁢(i⁢y)|=|∫Ygi⁢y⁢T⁢fi⁢y⁢𝑑ν|≤‖T⁢fi⁢y‖q0⁢‖g‖r0≤‖T‖p0,q0⁢‖fi⁢y‖p0⁢‖gi⁢y‖r0

を得る. ここで

‖fi⁢y‖p0p0=∑j=1n||aj|pp⁢(i⁢y)|p0⁢μ⁢(Aj)=∑j=1n|aj|pp⁢(i⁢y)⁢p0⁢μ⁢(Aj)=1
‖gi⁢y‖r0r0=∑l=1m||bl|rr⁢(i⁢y)|r0⁢ν⁢(Bl)=∑l=1n|bl|rr⁢(i⁢y)⁢r0⁢ν⁢(Bl)=1

であるから,

M⁢(0)≤‖T‖p0,q0

を得る. 同様にして.

M⁢(1)≤‖T‖p1,q1

を得る. よって

|∫Yg⁢T⁢f⁢𝑑ν|≤‖T‖p0,q01−θ⁢‖T‖p1.q1θ

を得る. p0=q0=∞などの場合は、fz=fと定義すれば良い. ∎

これの系として以下の定理がある。

定理 5 (Riesz–Thorin).

(X,𝒜,μ)と(Y,ℬ,ν)を測度空間とする。 そしてp0,q0,p1,q1∈[1,∞]で θ∈[0,1]とする。 この時

1p=1−θp0+θp1
1q=1−θq0+θq1

とする。 このとき線形写像

T:L0⁢(X,μ)→L0⁢(Y,ν)

について

‖T‖p,q≤‖T‖p0,q01−θ⁢‖T‖p1.q1θ

が成り立つ。

2 クラークソンの不等式と一様凸性

定理 6 (Clarkson’s inequality).

p∈(1,2]で 1/p+1/q=1とする。このとき 任意のx,y∈ℂに対して

(|x+y|q+|x−y|q)1q≤21q⁢(|x|p+|y|p)1p

が成り立つ.

2次正方行列 Aを

証明.
A=(111−1)

と定義する. すると

‖A⁢(x,y)‖22=|x+y|2+|x−y|2=2⁢(|x|2+|y|2)=2⁢‖(x,y)‖22

なので

‖A‖2,2=21/2

であり,また

‖A⁢(x,y)‖∞≤|x|+|y|=‖(x,y)‖1

であり,

‖A⁢(1,0)‖∞=‖(1,0)‖

なので

‖A‖∞,1=1

である. ここで,p∈(1,2]より,

1p=1−θ2+θ1

となるθが存在する. よって

1q=1−θ2+θ∞

である. よって,

‖A‖q,p≤(21/2)1−θ⁢1θ=2(1−θ)/2=21/q

となる. これは求める不等式と同値である. ∎

3 以下未完成

命題 7.

a,bを非負の実数とする.このとき (ap+bp)1p≤22−pp⁢(aq+bq)1q

が成り立つ.

証明.

ヘルダーの不等式から従う。 ∎

命題 8 (逆ミンコフスキーの不等式).

k∈(0,1)とする。このとき f,g∈Lk⁢(X)に対して

(∫X|f+g|k⁢𝑑μ)1k>(∫X|f|k⁢𝑑μ)1k+(∫X|g|k⁢𝑑μ)1k

が成り立つ.

定理 9 (Clarkson’s inequality).

p∈(1,2]で 1/p+1/q=1とする。このときf,g∈Lpに対して

(‖f+g‖pq+‖f−g‖pq)1q≤21q⁢(‖f‖pp+‖g‖pp)1p

が成り立つ.

証明.

pq<1に注意しよう。

‖f+g‖pq+‖f−g‖pq=(∫X(|f+g|q)pq⁢𝑑μ)qp+(∫X(|f−g|q)pq⁢𝑑μ)pq

よって

(∫X(|f+g|q)pq⁢𝑑μ)qp+(∫X(|f−g|q)pq⁢𝑑μ)pq≤(∫X(|f+g|q+|f−g|q)pq⁢𝑑μ)qp

である。 ここで、

(|f+g|q+|f−g|q)pq≤2pq⁢(|f|p+|g|p)

なので

(∫X(|f+g|q+|f−g|q)pq⁢𝑑μ)qp≤2pq⁢∫X|f|p⁢𝑑μ+∫X|g|p⁢𝑑μ=2pq⁢(‖f‖pp+‖g‖pp)

よって最初に挙げた不等式は成り立つ。 ∎

定理 10.

2≤pで 1/p+1/q=1とする。このときf,g∈Lpに対して

(‖f+g‖pp+‖f−g‖pp)1p≤21p⁢(‖f‖pq+‖g‖pq)1q

が成り立つ.

証明.

qp<1に注意しよう。

‖f+g‖pp+‖f−g‖pp=∫X|f+g|p⁢𝑑μ+∫X|f−g|p⁢𝑑μ=∫X(|f+g|p+|f−g|p)⁢𝑑μ

ここで

|f+g|p+|f−g|p≤2⁢(|f|q+|g|q)pq

なので

∫X(|f+g|p+|f−g|p)⁢𝑑μ≤2⁢∫X(|f|q+|g|q)pq⁢𝑑μ

ミンコフスキーに不等式から

(∫X(|f|q+|g|q)pq⁢𝑑μ)qp≤(∫X|f|p⁢𝑑μ)qp+(∫X|g|p⁢𝑑μ)qp=‖f‖pq+‖g‖pq

よって

‖f+g‖pp+‖f−g‖pp≤2⁢(‖f‖pq+‖g‖pq)pq

を得る。これは先に挙げた不等式に等しい。 ∎

系 11.

Lpは一様凸である。

4 追記

1936年に クラークソン [2] はクラークソンの不等式を用いて Lp空間や ℓpの一様凸性を証明した.

1940年にBoas [1] は“線形写像のリースの凸性定理” を用いてクラークソンの定理を証明しているが, 多分これは今ふうにいうとリースソリンのことだと思う.

1956年に Henner [3] はクラークソンの不等式の拡張を, なんか頑張って不等式評価して証明している.

1959年に Morawetz [4] は Lp空間の一様凸性の証明に使うことのできる 新しい不等式を証明している.

1976年に Ramaswamy [5] は実数に関するクラークソンの不等式を用いるのではなく, ラーデマッヒャー関数を用いて積分のクラークソンの不等式を 直接証明している.

References