クラークソンの不等式(未完成)
この文書は, 空間の一様凸性の証明に用いられるクラークソンの不等式を, 三線定理を用いて証明することを目的とする.
1 三線定理とか
この章の話 [6]を大いに参考にした. この章で領域といったら の連結な開集合のことを指すことにする. まずは基本的な複素関数論をする. 正則関数といったら複素関数論の正則関数とする.
命題 1.
領域 上で定義された 正則関数 について, が 上で最大値をとるならば, は定数関数である.
証明.
は点で最大値を達成するとする. この時十分小さい を取り, とする. この時 上で のテイラー展開は収束するので, 上で以下のような等式が成り立つ.
これを用いると,を (を中心とする) 極座標で書いたときに
が成り立つ. よって
である. ここで
なので
である. よって ならば である. 故には局所定数であることがわかり, 正則関数の剛性から が定数であることがわかる. ∎
上記の最大値原理から以下の系を得る.
系 2.
を 内の領域とし, は 上の定数でない連続関数で, 上で正則であるとする. このとき が 上で最大値をとるならば, 上で最大値をとる.
次の定理がこの章の目的である三線定理と呼ばれるものである.
定理 3 (三線定理).
, を実数とする. そして とする. さらに を 上の有界な連続関数で, 上で正則な関数とする. また, となる について
とする. このとき
が成り立つ.
証明.
適当にアフィン変換することにより, , としても良い.
まず最初にとが共に正の時に定理を示す. このとき
を考えることによって、としても良い (正の実数に対してなので).
ここで
とする. このとき なので
である. よって は を満たすについてを満たす. さらに
が成り立つ. よって, は 上で最大値を持つ. 最大値原理より,それは境界上で最大値をとるので, 任意の について である. ここで, 点を固定するごとに が成り立つので, 任意のについてである. これが求める不等式である.
次に の時を考察しよう. 数 を十分小さくとると (具体的には,,がともにはゼロでない時には と取れば良い.両方ともゼロなら特に制限はない.), について と が正になる. そしてとすれば求める不等式が出てくる. ∎
測度空間 について, で 上の可測関数を表す.
定理 4 (Riesz–Thorinの定理).
と を測度空間とする。 そして で とする。 この時
と
が成り立つ とする. このとき線形写像
と の単関数 と の単関数 について,
が成り立つ. ここではの共役指数である.
証明.
まず としても一般性を失わない. そして
とおく. ここで, 各について で 族 は互いに交わらない可測集合とする. 同様に
とおく. ここで, 各 について で, 族は互いに交わらない可測集合とする. この状況において
と
に注意せよ. ここで関数を
と定義する。 さらに , を, の共役指数として 関数を
と定義する. そしてと を以下のように定義する.
すると,
及び
と表すことができる. そして
と定義する. すると
が成り立つ. もちろんこれは 上で有界かつ連続で,その内部で正則関数である. に対して
と定義すれば,三線定理から
である. との評価をしていこう. 任意のに対して
を得る. ここで
であるから,
を得る. 同様にして.
を得る. よって
を得る. などの場合は、と定義すれば良い. ∎
これの系として以下の定理がある。
定理 5 (Riesz–Thorin).
とを測度空間とする。 そしてで とする。 この時
とする。 このとき線形写像
について
が成り立つ。
2 クラークソンの不等式と一様凸性
定理 6 (Clarkson’s inequality).
で とする。このとき 任意のに対して
が成り立つ.
次正方行列 を
証明.
と定義する. すると
なので
であり,また
であり,
なので
である. ここで,より,
となるが存在する. よって
である. よって,
となる. これは求める不等式と同値である. ∎
3 以下未完成
命題 7.
を非負の実数とする.このとき
が成り立つ.
証明.
ヘルダーの不等式から従う。 ∎
命題 8 (逆ミンコフスキーの不等式).
とする。このとき に対して
が成り立つ.
定理 9 (Clarkson’s inequality).
で とする。このときに対して
が成り立つ.
証明.
に注意しよう。
よって
である。 ここで、
なので
よって最初に挙げた不等式は成り立つ。 ∎
定理 10.
で とする。このときに対して
が成り立つ.
証明.
に注意しよう。
ここで
なので
ミンコフスキーに不等式から
よって
を得る。これは先に挙げた不等式に等しい。 ∎
系 11.
は一様凸である。
4 追記
1936年に クラークソン [2] はクラークソンの不等式を用いて 空間や の一様凸性を証明した.
1940年にBoas [1] は“線形写像のリースの凸性定理” を用いてクラークソンの定理を証明しているが, 多分これは今ふうにいうとリースソリンのことだと思う.
1956年に Henner [3] はクラークソンの不等式の拡張を, なんか頑張って不等式評価して証明している.
1959年に Morawetz [4] は 空間の一様凸性の証明に使うことのできる 新しい不等式を証明している.
1976年に Ramaswamy [5] は実数に関するクラークソンの不等式を用いるのではなく, ラーデマッヒャー関数を用いて積分のクラークソンの不等式を 直接証明している.
References
- [1] (1940) Some uniformly convex spaces. Bull. Amer. Math. Soc. 46, pp. 304–311. External Links: ISSN 0002-9904, Document, Link, MathReview (N. Levinson) Cited by: §4, クラークソンの不等式(未完成).
- [2] (1936) Uniformly convex spaces. Trans. Amer. Math. Soc. 40 (3), pp. 396–414. External Links: ISSN 0002-9947,1088-6850, Document, Link, MathReview Entry Cited by: §4, クラークソンの不等式(未完成).
- [3] (1956) On the uniform convexity of and . Ark. Mat. 3, pp. 239–244. External Links: ISSN 0004-2080,1871-2487, Document, Link, MathReview (M. M. Day) Cited by: §4, クラークソンの不等式(未完成).
- [4] (1969) Two inequalities. Bull. Amer. Math. Soc. 75, pp. 1299–1302. External Links: ISSN 0002-9904, Document, Link, MathReview (Raymond H. Cox) Cited by: §4, クラークソンの不等式(未完成).
- [5] (1978) A simple proof of Clarkson’s inequality. Proc. Amer. Math. Soc. 68 (2), pp. 249–250. External Links: ISSN 0002-9939,1088-6826, Document, Link, MathReview (O. P. Kapoor) Cited by: §4, クラークソンの不等式(未完成).
- [6] (2005) 関数解析. 横浜図書. Cited by: §1, クラークソンの不等式(未完成).