AUTOMATIC HTML VERSION

次元論ショートコース:0次元から始める位相次元のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

位相次元論入門: 0次元から始める次元論

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では可分距離化可能空間に関する 位相次元論を0次元空間を元にして 構築する.

その応用として 参考文献に紹介されている多様体の埋め込み定理のための次元論的な補題、この文章で定理27とされている命題を証明する. 第二可算な位相多様体は可分な距離付け可能空間であるという事実を知っておけば定理27が第二可算多様体に適用することができ、参考文献の多様体の埋め込み定理の大きな行間を埋めることができることであろう。

多様体は局所コンパクトハウスドルフ空間であり、特に正則空間なので、第二可算な多様体はウリゾーンの距離付け可能定理から距離付け可能である。ことが分かる。また第二加算な空間は可分なので第二可算な多様体が可分であることもよくわかる。 局所コンパクトハウスドルフな空間が第二可算ならば距離化可能であることは,はてなブログ「電波通信」の 記事[5]に書いてある.

後半の応用の話は既に私が記事化している[4]をそのまま引き写した.

1 次元論

この文章ではスタンダードな次元論とは異なり, 0次元空間の和集合によって次元を定義している. これは多様体の埋め込み定理 で本質的に0次元部分空間の和集合に分解する定理を用いているから最初からそれを定義にしたものである. 埋め込み定理の証明を 理解するためには この節の 定理13 と 補題 24 が分かれば十分である. 一応先人に敬意を払って小さい帰納的次元ind と同じものであることも証明してはいる.

1.1 本文

定義 1.

dimTX=−1 であるとはX=∅ と定義する.

定義 2.

位相空間Xの部分集合Sが clopenであるとは,S が開かつ閉集合であるときにいう.

定義 3.

Xを可分距離化可能空間とする. このときXが0次元であるとは Xが空集合ではなく Xのclopen集合からなる開基 が存在する時にいう. このときdimTX=0と表す.

定義 4.

n∈ℤ≥0とし, Xを可分距離化可能空間とする. このとき整数dimTXを 以下を満たす最小の整数mで定義する. Xのm+1個の部分空間X0⁢…,Xm が存在してdimTXi≤0 と X=⋃i=0mXi を満たす. この定義のもと,dimTX≤nとは Xのn+1個の部分空間X0⁢…,Xn でdimTXi≤0 と X=⋃i=0nXi を満たすものが存在することを意味する. また,dimTは位相不変量であることがわかる.

dimTの定義から直ちに次の二つのことがわかる.

補題 5.

Xを可分距離化可能空間とし, S⊂Xとする.この時 dimTS≤dimTX が成り立つ.

補題 6.

Xを可分距離化可能空間とし, A,B⊂Xとする.この時 dimTA≤nかつdimTB≤0ならば dimTA∪B≤n+1 が成り立つ.

補題 7.

Xを可分距離化可能空間とする. ℬをXの開基とする. このときℬ の部分集合 𝒜で開基になりさらにcard⁡(𝒜)≤ℵ0を満たすものが存在する.

証明.

Xは可分距離化可能空間なのでその部分集合も 可分距離化可能である. よってXの任意の部分集合はリンデレフである. Xの可算な開基𝒞を取る. 任意のU∈𝒞に対して ℬが開基であることと,Uがリンデレフである ことから可算集合𝒜U⊂ℬ で⋃V∈𝒜UV=Uとなるものが存在する. そして

𝒜=⋃U∈𝒞𝒜U

とおけば𝒜が求めるものになっている. ∎

系 8.

Xを可分距離化可能空間とする. このときdimT≤0であることと, 可算開基であってclopenな集合からなるものが存在することは同値である.

補題 9.

Xを可分距離化可能空間とするこのとき dimTX≤0であることと 任意のX内の交わらない二つの閉集合G,Hに対して clopen集合Oが存在して G⊂OとH∩O=∅ を満たすことは同値である.

証明.

後半の条件からdimTX≤0 が導かれるのは明らかなので逆を示す.

今 dimTX≤0 なので 各点に可算な近傍形でclopenなものからなるものが存在する. そのようなものをp∈Gについて𝒩p と表すことにする.さらにHが閉集合であることから任意の V∈𝒩pについてV∩H=∅ と仮定してもよい(必要なら{S∩(X∖H)}S∈𝒩pと置き換えれば良い). そしてX∖Gも次元が0以下なので clopenな集合からなる開基ℬが存在する. このとき集合族

⋃p∈G𝒩p∪ℬ

はXの開基になるので補題 7 からこの集合族の部分族で 可算な開基{Ui}i∈ℤ≥0 が存在する.ここでUi∩G≠∅ならば Ui∩H=∅に注意しよう. そしてV0=U0で Vi=Ui∖⋃j=1i−1Ui と定義する.すると各Vi は開集合でX=⋃iViとなる. そして

O=⋃Vi∩G≠∅Vi

とすると

X∖O=⋃Vi∩G=∅Vi

なのでOはclopenであり,G⊂Oを満たす. さらにViについてVi∩G≠∅ ならばVi∩H=∅なので H⊂X∖O となるからOは求める集合になっている. ∎

命題 10.

Xを空でない可分距離化可能空間とする. もしも可算個の閉集合{Ai}i∈ℤ≥0 でdimTAi≤0 とX=⋃i∈ℤ≥0Ai を満たすならば dimTX=0である.

証明.

Xが 補題 9 の条件を満たすことを証明しよう. Xの交わらない二つの閉集合 G, Hを与える. 帰納的にPiとQi, Ri, Li を構成する. まず G∩A0 とH∩A0 はA0 のなかの交わらない閉集合である. A0は0次元空間なので 補題 9より A0の中のあるclopen集合 P0 とQ0が存在して

  1. (1)

    G∩A0⊂P0

  2. (2)

    H∩A0⊂Q0

  3. (3)

    P0∩Q0=∅

  4. (4)

    P0∪Q0=A0

を満たす.

さてA0は閉集合だからP0とQ0 はXの閉集合でもあるし, G∪P0とH∪Q0 はXの交わらない閉集合である. ここで Xの正規性111距離化可能空間は常に正規である.を用いて 以下を満たすX二つの開集合R0とL0 を得る.

  1. (1)

    G∪P0⊂R0

  2. (2)

    H∪Q0⊂L0

  3. (3)

    CL⁡(R0)∩CL⁡(L0)=∅

一般にPi, Qi Ri, Liを帰納的に 以下を満たすように定義する.

  1. (1)

    PiとQi はAiのclopen集合

  2. (2)

    CL⁡(Ri−1)∩Ai⊂Pi

  3. (3)

    CL⁡(Li−1)∩Ai⊂Qi

  4. (4)

    Pi∩Qi=∅

  5. (5)

    Pi∪Qi=Ai

  6. (6)

    Ri, Li はXの開集合

  7. (7)

    CL⁡(Ri−1)∪Pi⊂Ri

  8. (8)

    CL⁡(Li−1)∪Qi⊂Li

  9. (9)

    CL⁡(Ri)∩CL⁡(Li)=∅

このように構成できることは 各AiがclopenであることとXの正規性からわかる. このとき以下が満たされる

  1. (1)

    Ai⊂Ri∪Li

  2. (2)

    CL⁡(Ri−1)⊂Ri

  3. (3)

    CL⁡(Li−1)⊂Li

そしてR=⋃iRi, L=⋃iLi とするとRとLは開集合である. そして X=⋃iAi⊂R∪L なのでX=R∪Lである. また矛盾を導き出すためにx∈R∩Lとなるxがもしも存在したとすると x∈Riとx∈Ljとなるi,j が存在するがk=max⁡{i,j} とすると x∈Rk∩Lk=∅ となり矛盾する. つまりR∩L=∅である. RとLは交わらない開集合で定義から G⊂RとH⊂L を満たす.そしてR∪L=X なのでRとLは閉集合でもある. このことは補題 9からdimTX=0を意味する. ∎

定義 11.

Xを位相空間とする. Xの部分集合S がFσ であるとは SがX内の可算個の閉集合の和集合として表される時に いう.

系 12.

可分距離空間が0次元であるような可算個のFσ 集合の和集合で表されるのならば全体空間も0次元である.

定理 13.

n∈ℤ≥0 とする. Xを可分距離空間とする. このとき Xの可算個のFσ集合{Ai}i∈ℤ≥0 が存在しdimTAi≤nと X=⋃iAiを満たすならば dimTX≤nである.

証明.

nに関する帰納法で証明する. n=0の時は既に 命題10で 証明されている. n+1より小さい数では定理が成り立つとする. このとき 可算個の閉集合{Ai}i∈ℤ≥0 が存在しdimTAi≤n+1と X=⋃iAiを満たすと仮定してもよい. このときB0=A0, Bi=Ai∖⋃j=0i−1Aj と定義する. すると各Bi はFσ集合でありdimTBi≤n+1 を満たしさらにBiたちは交わらずX=⋃iBi が成り立つ. さてdimT≤n+1の定義から 各iについてBiの部分集合MiとNi でdimTMi≤nとdimTNi=0 となる.M=⋃iMi とN=⋃iNiと定義する. 各Miは互いに交わらないので Mi=M∩Biとなる. よって MiはMのなかでFσ集合である. よって帰納法の仮定よりdimTM≤n となる.同様にdimTN=0である. XはMとNの和集合なので,補題 6から dimTX≤n+1 が成り立つ. ∎

さて今から dimTℝn≤nと dimT𝕊n≤n を証明する. ここで, 𝕊nとはn次元球面である.

補題 14.

n∈ℤ≥0 とする. このとき ℚn は0次元である.

証明.

一点集合は閉集合でなおかつ0次元なので 命題 10からわかる. ∎

補題 15.

n∈ℤ≥0 とする. このとき (ℝ∖ℚ)n は0次元である.

証明.

点x=(x1,…,xn)∈(ℝ∖ℚ)n をとる.任意にϵ>0をとり, 各i∈{1,…,n}について ηi,κi>0 を

  1. (1)

    各iについて ηi<ϵかつκi<ϵ

  2. (2)

    (x1−η1,…,xn−ηn)∈ℚn

  3. (3)

    (x1+κ1,…,xn+κn)∈ℚn

を満たすようにとる. (2),(3)の条件を満たすηi,κi が存在するのはℚがℝの中で が稠密だからである. U=∏i=1n(xi−ηi,xi+κi) かつ C=∏i=1n[xi−ηi,xi+κi] とおく.これらの集合について U∩(ℝ∖ℚ)n=C∩(ℝ∖ℚ)n なのでU∩(ℝ∖ℚ)n は(ℝ∖ℚ)nのclopen集合であり, xの近傍でもある. ϵは任意なので各点xについて(ℝ∖ℚ)n内の clopenな近傍系が存在することがわかった. よってdimT(ℝ∖ℚ)n=0 である. ∎

補題 16.

n∈ℤ≥0とする. このとき dimTℝn≤nと dimT𝕊n≤n が成り立つ.

証明.

k∈{0,…,n} について Ek⊂ℝn をℝnの部分集合で 高々k個の座標が有理数になっている点全体とする. 今からdimTEk=0 を証明する. 今En=ℚnかつE0=(ℝ∖ℚ)n なので補題 14, 15 からdimTEn=dimTE0=0 がわかる. よってk∈{1,…,n−1}について dimTEk=0 を証明する. Z⁢(k)を{1,…,k}の濃度がちょうどk個の 部分集合全体とする. そしてσ={i1,…,ik}∈Z⁢(n,k) とv=(v1⁢…,vk)∈ℚn についてA⁢(σ,v)を 任意のj∈{1,…,k}について 第ij座標がvjになるような ℝnの点全体とし, B⁢(σ,v)を 任意のj∈{1,…,k}について 第ij座標がvjになり,それ以外の座標が無理数に属するようなℝnの点全体の集合とする. このとき Ekの定義から任意のσ={i1,…,ik}∈Z⁢(n,k) とv=(v1⁢…,vk)∈ℚk についてEk∩A⁢(σ,v)=B⁢(σ,v) となる.ゆえにB⁢(σ,v)はEk の閉集合である.さらにB⁢(σ,v) は(ℝ∖ℚ)n−kと同相なので 0次元である. さてEkの定義から

Ek=⋃σ∈Z⁢(n,k)⋃v∈ℚkB⁢(σ,v)

が成り立ち,各B⁢(σ,v)はEkの閉集合かつ0次元でZ⁢(n,k)とℚn−k は高々可算集合なので命題 10から dimTEk=0 が従う. さらに明らかにℝn=⋃k=0nEk なのでdimTℝn≤nがわかる. 次に𝕊nについて考えよう. はℝnの一点コンパクト化であり, 𝕊n=(E0∪{∞})∪⋃k=1nEk である. そして命題 10から dimT(E0∪{∞})=0 なので, dimT𝕊n≤n がわかる. ∎

注意.

一般にdimTℝn=dimT𝕊n=n が示せるが,証明は面倒である. この文章で行う理論展開のためには dimTℝn≤n がわかっていれば良い.

1.2 蛇足:小さい帰納的次元とか

定義 17.

Xを位相空間とする. S⊂Xとする. このときSの境界集合を∂XS で表す. x∈∂XSであるとは 任意のxの近傍Hについて H∩S≠∅かつ H∖S≠∅ を意味する. 一般に∂XS=CLX⁡S∖IntX⁡S である.ここでCLX, IntXはXにおける閉包と 開核を表す.

補題 18.

Xを位相空間とし, A⊂S⊂Xとする.このとき ∂SA⊂S∩∂XA が成り立つ.

証明.

一般に位相空間TとM⊂Tについて P⊂M⊂Hとなる開集合Oと閉集合C について∂TM⊂H∖P であり,∂TM=CLT⁡(A)∖IntT⁡(A) に注意しよう.

さて,O=IntX⁡AでC=CLX⁡Aとおく. するとO∩SとC∩Sはそれぞれ Sの開集合と閉集合でO∩S⊂A⊂C∩Sを満たす. よって ∂SA⊂(C∩S)∖(O∩S) を満たす. ここで (C∩S)∖(O∩S)=(C∖O)∩S=(CLX⁡A∖IntX⁡A)∩S=∂XS となる. これは ∂SA⊂∂XSを意味する. ∎

補題 19.

Xを位相空間とし,N⊂A⊂Xとする. すると NがAの開集合であるとき ∂AN=A∩(CLX⁡(N)∖N) が成り立つ.

証明.

まず ∂A(N)=CLA⁡(N)∖IntA⁡(N) である. ここでNはAの開集合なので IntA⁡N=Nである. そして CLA⁡(N)=A∩CLX⁡N なので222この等式は一般に成り立つ すると ∂A(N)=CLA⁡(N)∖IntA⁡(N)=A∩CLX⁡N∖N=A∩(CLX⁡N∖N) が成り立つ. ∎

補題 20.

Xを可分距離化可能空間とし, Aを A⊂Xで dimTA=0とする. このとき任意のp∈Aと X内のpの開近傍U に対してX内の 開集合Wが存在して A∩∂XW=∅ を満たす.

証明.

まずdimTA=0より A内のpのclopenな 近傍 N⊂Aで N⊂U∩A となるものが存在する. ここで ∂AN=∅に注意しよう. いまNとA∖CLX⁡(N)について考える. 明らかに CLX⁡(N)∩(X∖CLX⁡(N))=∅ であり, さらに

CLX⁡(A∖CLX⁡(N)) =A∩CLA⁡(A∖CLX⁡(N))
=A∩CLA⁡(A∖(A∩CLX⁡(N)))=A∩CLA⁡(A∖CLA⁡(N))
=CLA⁡(A∖CLA⁡(N))=(A∖CLA⁡N)∪∂AN
=(A∖CLA⁡N)

なので N∩CL⁡(A∖CLX⁡(N))=∅ である.以上のことからNとA∖CLX⁡A は互いにもう一方の閉包と交わらない. よってXの完全正規性からXの開集合Wが存在して N⊂WとCLX⁡(W)∩(A∖CLX⁡(N))=∅を満たす. 後半の条件から A∩CLX⁡W⊂A∩CLX⁡Nがわかる. 必要ならWをU∩Wに置き換えてW⊂Uとしてもよい. さて以上と補題 19を踏まえると

A∩∂XW =A∩(CLX⁡(W)∩(X∖W))⊂A∩CLX⁡(N)∩(X∖N)
=A∩(CLX⁡(N)∖N)=∂AN=∅

を得る. ゆえにA∩∂XW=∅がわかる. ∎

定理 21.

Xを可分距離化可能空間とする. この時dimTX≤n であることとXの開基{Vi}i∈ℤ≥0 が存在してdimT∂XVi≤n−1 であることは同値である.

証明.

最初にまずdimTX≤n と仮定する.すると Xの部分集合A0,…,An が存在して dimTAi≤0 と⋃i=0nAi=X を満たす. 補題 20より, 各iと各p∈Aについてpの X内の開近傍系𝒩p,i が存在して,任意のV∈𝒩p,i について Aj∩∂XV=∅ を満たす. このとき∂XVは はAk∩∂V (k≠i) の和集合なのでdimT∂XV≤n−1である. そして集合族

⋃i=0n⋃p∈Ai𝒩p,i

はXの開基になるので 補題7 より可算な開基{Vi}i∈ℤ≥0 が存在しdimT∂XVi≤n−1 を満たす.

逆を示そう.今Xの開基{Vi}i∈ℤ≥0 が存在してdimT∂XVi≤n−1 を満たすとする. このとき定理 13 よりS=⋃i∈ℤ≥0∂XVi はdimTS≤n−1を満たす. さらにA=X∖Sとおくと, {A∩Vi}i∈ℤ≥0 はAの開基になる. そして補題 18より ∂AVi⊂A∩∂XVi=∅ なのでdimTA≤0がわかる. そしてX=S∪Aなので補題 6 よりdimTX≤nがわかる. ∎

定義 22 (小さい帰納次元).

空間Xの小さい帰納次元を帰納的ind⁢Xに次のように定義する。

ind⁢X=−1⇔X=Øとし、n−1まで定義されたとして

ind⁢X≤n⇔Xの任意の点xとxの任意の近傍Uに対してxの近傍Nが存在してind⁢(Bdry⁡N)≤n−1かつN⊂Uを充たす。

と定義する。ちなみにind⁢X=nとはind⁢X≤nかつn−1<ind⁢Xである。

定理21から次のことが従う.

系 23.

可分距離化可能空間Xについて ind⁢X=dimTX

注意.

本来はindを定義したのちに ind≤nならばn+1個の0 次元空間の和集合としてかけることを証明するのだが, この文章では逆にそちらを位相次元の定理にしている.

補題 24.

n∈ℤ≥0とする. このとき dimTℝn≤nと dimT𝕊n≤n が成り立つ.

indを使った別証明.

m∈ℤ≥1とする. ℝm+1と𝕊m+1 はともに境界が𝕊m となる開集合からなる開基を持つ. よってdimTℝm+1≤dimT𝕊m と dimT𝕊m+1≤dimT𝕊m が成り立つ. 𝕊1 は境界が2点になるような開集合からなる開基を持つから dimT𝕊1≤1 である.もしくはℝが有理数と無理数という二つの0 次元集合の和であることと𝕊1 がℝの一点コンパクト化であることを用いても dimT𝕊1≤1 であることがわかる. よって帰納的に dimTℝn≤nと dimT𝕊n≤n が成り立つことがわかる. ∎

2 応用

この節では多様体をユークリッド空間に埋め込む話をする.

まず部分空間の開集合をもとの空間の開集合に持ち上げるための次の補題から始まる。

補題 25.

空間Xの部分空間Aの開集合Uについて

B⁢(U)={x∈X|d⁢(x,U)<d⁢(x,A∖U)}

と置くと、B⁢(U)はXの開集合であり、B⁢(U)∩A=Uを充たす。ここでdとはXの距離の一つである。

さらにAの二つの開集合U,VについてU∩V=ØならばB⁢(U)∩B⁢(V)=Øである。

証明.

やるとわかる。 ∎

命題 26.

第二可算なn次元位相多様体Mについて

dimTM≤n
証明.

局所ユークリッド性と 第二可算性とdimTℝn≤nと 定理 13から命題が成り立つことがわかる. もしくは 境界が𝕊n−1と同相な開集合からなる開基が存在することと系23からもわかる. ∎

定理 27.

空間XはdimTX≤nを充たすとする。そして𝒰を空間Xの開被覆とする。このとき𝒰の細分であるXの局所有限な開被覆𝒱と開集合からなる(被覆とは限らない)n+1個の族𝒲0,𝒲1,…,𝒲nが存在して

𝒱=𝒲0∪𝒲1∪⋯∪𝒲n

及び

各⁢i⁢について⁢𝒲i⁢は互いに素な族である。

を充たす。

証明.

空間Xは距離化可能空間であるから Xと同じ位相を生成する距離を一つ固定してdとする. さらにXはパラコンパクト333一般に距離空間はパラコンパクトであるが、可分距離空間のパラコンパクト性は一般的なそれよりも容易に証明できる。であるので𝒰の細分である局所有限な開被覆である𝒞が存在する。ところでXは可分距離空間なので特にリンデレフであるから𝒞は可算であるとしても一般性を失わない。𝒞={Uk}k∈ℕとしよう。

さてdimTX≤nからn+1個の高々0次元部分空間{Ai}i=0nが存在してX=⋃i=0nAiを充たす。

ここで各iについてAi上でAiの被覆{Ai∩Uk}k∈ℕを考えよう。Aiは0次元なので開かつ閉な開基を持つ。また可分でもあるので{Ai∩Uk}k∈ℕの細分で高々可算な開かつ閉な集合からなるAiの被覆{Ol(i)}l∈ℕが存在する。これを用いて

G1(i)=O1(i),Gj(i)=Oj(i)∖⋃l<jOl(i)⁢(j≥2)

と定義すると{Gj(i)}j∈ℕはAiの開集合からなる444Aiの閉集合でもあるが、そのことは使わない。Aiの被覆で{Ai∩Uk}k∈ℕの細分になる。また定義から明らかにa≠bならばGa(i)∩Gb(i)=Øであるので{Gj(i)}j∈ℕの元は互いに素である。そして{Ia(i)}a∈ℕを

I1(i)={j∈ℕ|Gj⊂U1}

とし、m−1までIa(i)が定義されてるとして

Im(i)={j∈ℕ|Gj⊂Um}∖⋃a=1m−1Ia(i)

と帰納的に定義しよう。そしてこれを用いて

Pa(i)=⋃s∈IaGs(i)

と定義しよう。するとこれはAiの開集合であり、{Pa(i)}a∈ℕはAiの被覆となり、定義から明らかに{Pa(i)}a∈ℕは互いに素な族である。

これを用いてQm(i)=B⁢(Pm(i))∩Umと定義しよう。(補題25参照)このとき補題25から{Qm(i)}m∈ℕは互いに素な族となり、Aiを被覆する。(ただしQm(i)は空である場合もある。)また、Qm(i)⊂Umから{Ui}i∈ℕの細分になっている。さて、任意の点x∈Xについて𝒞の局所有限性を担保するxの近傍をNとすると、一般に

N∩Qm(i)≠Ø⟹N∩Um≠Ø

が成り立つことから{Qm(i)}m∈ℕは局所有限な族であることが分かる。(ただしXの被覆であるとは限らない)

各i=0,1,…,nごとに存在する{Qm(i)}m∈ℕを𝒲iとすれば𝒲iは互いに素な族であり、かつ局所有限であり、かつ𝒞={Uk}k∈ℕの細分となっている。そして𝒱=𝒲0∪𝒲1∪⋯∪𝒲nと置けば各𝒲iが局所有限で𝒞={Uk}k∈ℕの細分であることから𝒱は局所有限であり、𝒞={Uk}k∈ℕの細分となる。またAi⊂⋃𝒲iでX=⋃i=0nAiなので𝒱はXの被覆となる。𝒞={Uk}k∈ℕが𝒰の細分であることから𝒱は𝒰の細分であることが分かる。

以上で証明は終わった。 ∎

3 埋めこみ定理

定義 28 (開収縮).

位相空間Xの開被覆𝒰に対して{VU|U∈𝒰}が開収縮であるとは{VU|U∈𝒰}がXの開被覆であって、任意のU∈𝒰について

C⁢L⁢(VU)⊂U

を充たすこと。

以下の補題の証明は[2]を参照のこと.

補題 29.

位相空間XについてXが正規であることと X⁢の点有限開被覆に開収縮が存在することは同値である.

定義 30.

連続写像f:X→Yに対し

L⁢(f)={y∈Y∣xi→∞⁢となる⁢{xi}⁢が存在して⁢f⁢(xi)→y⁢となる}

と定義する。これをfの極限集合と呼ぶ。

次の命題の証明は[3]を参照のこと.

命題 31.

f:X→Yを単射と仮定する。このとき

f⁢が⁢埋⁢め⁢込⁢み⇔L⁢(f)∩f⁢(X)=Ø

さていよいよ多様体のユークリッド空間への埋め込みの存在の証明をする.

定理 32.

Nをn次元Cr級多様体とする。このとき Embr⁡(N,ℝ(n+1)2)≠∅

証明.

Nの相対コンパクトな局所座標系を𝒜に対して 定理27を用いて、𝒜の細分ℬと開集合からなる(被覆とは限らない)n+1個の族𝒰0,𝒰1,…,𝒰nが存在して

ℬ=𝒰0∪𝒰1∪⋯∪𝒰n

及び

各⁢i⁢について⁢𝒰i⁢は互いに素な族である。

を充たす。必要ならば、各iについて V,W∈𝒰iならばCL⁡(V)∩CL⁡(W)=Øと仮定しても良い。 適当に番号付して、

𝒰k={Ui(k)}i∈ℕ

とする。 また正規性に関する補題29を用いて 集合族の有限列{𝒱k}k=0nを 𝒱k={Vi(k)}i∈ℕと番号付されていて

CL⁡(Vi(k))⊂Ui(k)

を満たしかつ、 𝒱0∪𝒱1∪,…,∪𝒱nがNの被覆になっているようなものとする。 また、同様に集合族の有限列{𝒲k}k=0nを 𝒲k={Wi(k)}i∈ℕと番号付されていて

CL⁡(Wi(k))⊂Vi(k)

を満たしかつ、 𝒲0∪𝒲1∪,…,∪𝒲nがNの被覆になっているようなものとする。

さて、Ai(k)をCL⁡(Vi(k))となる𝒜の元とする。 このときAi(k)上の局所座標で

  1. (1)

    i≠jならばϕi⁢(CL⁡(Vi))∩ϕj⁢(CL⁡(Vj))=Ø

  2. (2)

    xs∈Visでxs→∞ならばϕjs⁢(xs)→∞

となるものが存在する。これは平行移動とかを鑑みれば存在がわかる.

そしてfi(k)をVi(k)上で1の値をとり、Ui(s)の外では0の値をとるN上のCr級関数とする。 これを用いて

ψ(k)⁢(x)={fj(k)⁢ϕj(k)x∈Ui(k)0x∉⋃iUi(k)

と定義する。 ϕ(k)|Vi(k)=ϕi(k)に注意しよう。

CL⁡(Wi(k))⊂Vi(k)なので

ϕi(k)⁢(CL⁡(Wi(k)))⊂ϕi(k)⁢(Vi(k))

である、 滑らかな関数gi(k):ℝn→ℝをϕi(k)⁢(Wi(k))上で1、ϕi(k)⁢(Vi(k))のそとで0の値をとる関数とする。 そして

ψi(s)⁢(x)={gj(k)∘ϕ(k)x∈Vj(k)0x∉⋃iVi(k)

として定義する。ψj(k)はCr級である。

l=(n+1)2としてΦ:N→ℝlを

Φ⁢(x)=(ψ(0)⁢(x),…,ψ(n)⁢(x),ϕ(0)⁢(x),…,ϕ(n)⁢(x))

として定義する。

今からΦは可微分な埋めこみであることを今から証明しよう.

まずΦの微分のランクが退化していないことは ψ(k)の定義からわかる.

次に単射性を調べよう。 Φ⁢(x)=Φ⁢(y) とするとあるkが存在してx,y∈⋃iVi(k)である。 よってϕ(k)⁢(x)=ϕ(k)⁢(y)よりx=yがわかる。

次にΦが位相的埋め込みであることを示そう。 L⁢(Φ)を Φの極限集合として, 命題31から L⁢(Φ)=∅を示せば Φが埋め込みであることがわかる. {xs}s∈ℕ⊂Nをxs→∞となる列とする。このとき適当に部分列をとればあるkに対して

xs∈⋃iVi(k)

となっていると仮定しても一般性を失わない。 このとき局所座標ϕi(k)の定め方からϕ(k)⁢(xs)→∞となる。 よって特にΦ⁢(x)→∞なのでL⁢(Φ)=∅がわかる。 ∎

注意.

この証明からΦは閉写像であることがわかる。

注意.

いろいろ頑張れば, Embr⁡(N,ℝ2⁢n+1)≠∅ であることがわかるし, 2⁢n+1≤N ならばEmbr⁡(N,ℝN) が可微分写像の空間の中で稠密であることがわかる.

References

  • [1] yamyamtopさんの次元論PDF,
    https://yamyamtopo.wordpress.com/2015/01/10/pdf/
    
     2016年6月閲覧
  • [2] はてなブログ「電波通信」の記事 「正規性の特徴付け」
    https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/12/21/170610
    
  • [3] はてなブログ「電波通信」の記事 「極限集合の基本的性質の証明」
    https://concious4410.hatenablog.com/entry/2017/11/16/170409
    
  • [4] はてなブログ「電波通信」の記事 「いわゆる志賀多様体における多様体の埋め込み定理のための次元論的な補題の証明」
    https://concious4410.hatenablog.com/entry/2016/06/11/202249
    
  • [5] はてなブログ「電波通信」の記事 「ウリゾーンの距離化可能定理」
    https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/09/13/190522
    
  • [6] 志賀浩二,多様体論,岩波書店,1976
  • [7] W.Hurewicz and H.Wallman,Dimension Theory,Princeton Univ. Press,1948