位相次元論入門: 次元から始める次元論
この文章では可分距離化可能空間に関する 位相次元論を次元空間を元にして 構築する.
その応用として 参考文献に紹介されている多様体の埋め込み定理のための次元論的な補題、この文章で定理27とされている命題を証明する. 第二可算な位相多様体は可分な距離付け可能空間であるという事実を知っておけば定理27が第二可算多様体に適用することができ、参考文献の多様体の埋め込み定理の大きな行間を埋めることができることであろう。
多様体は局所コンパクトハウスドルフ空間であり、特に正則空間なので、第二可算な多様体はウリゾーンの距離付け可能定理から距離付け可能である。ことが分かる。また第二加算な空間は可分なので第二可算な多様体が可分であることもよくわかる。 局所コンパクトハウスドルフな空間が第二可算ならば距離化可能であることは,はてなブログ「電波通信」の 記事[5]に書いてある.
後半の応用の話は既に私が記事化している[4]をそのまま引き写した.
1 次元論
この文章ではスタンダードな次元論とは異なり, 次元空間の和集合によって次元を定義している. これは多様体の埋め込み定理 で本質的に次元部分空間の和集合に分解する定理を用いているから最初からそれを定義にしたものである. 埋め込み定理の証明を 理解するためには この節の 定理13 と 補題 24 が分かれば十分である. 一応先人に敬意を払って小さい帰納的次元ind と同じものであることも証明してはいる.
1.1 本文
定義 1.
であるとは と定義する.
定義 2.
位相空間の部分集合が clopenであるとは, が開かつ閉集合であるときにいう.
定義 3.
を可分距離化可能空間とする. このときが次元であるとは が空集合ではなく のclopen集合からなる開基 が存在する時にいう. このときと表す.
定義 4.
とし, を可分距離化可能空間とする. このとき整数を 以下を満たす最小の整数で定義する. の個の部分空間 が存在して と を満たす. この定義のもと,とは の個の部分空間 で と を満たすものが存在することを意味する. また,は位相不変量であることがわかる.
の定義から直ちに次の二つのことがわかる.
補題 5.
を可分距離化可能空間とし, とする.この時 が成り立つ.
補題 6.
を可分距離化可能空間とし, とする.この時 かつならば が成り立つ.
補題 7.
を可分距離化可能空間とする. をの開基とする. このとき の部分集合 で開基になりさらにを満たすものが存在する.
証明.
は可分距離化可能空間なのでその部分集合も 可分距離化可能である. よっての任意の部分集合はリンデレフである. の可算な開基を取る. 任意のに対して が開基であることと,がリンデレフである ことから可算集合 でとなるものが存在する. そして
とおけばが求めるものになっている. ∎
系 8.
を可分距離化可能空間とする. このときであることと, 可算開基であってclopenな集合からなるものが存在することは同値である.
補題 9.
を可分距離化可能空間とするこのとき であることと 任意の内の交わらない二つの閉集合に対して clopen集合が存在して と を満たすことは同値である.
証明.
後半の条件から が導かれるのは明らかなので逆を示す.
今 なので 各点に可算な近傍形でclopenなものからなるものが存在する. そのようなものをについて と表すことにする.さらにが閉集合であることから任意の について と仮定してもよい(必要ならと置き換えれば良い). そしても次元が以下なので clopenな集合からなる開基が存在する. このとき集合族
はの開基になるので補題 7 からこの集合族の部分族で 可算な開基 が存在する.ここでならば に注意しよう. そしてで と定義する.すると各 は開集合でとなる. そして
とすると
なのではclopenであり,を満たす. さらにについて ならばなので となるからは求める集合になっている. ∎
命題 10.
を空でない可分距離化可能空間とする. もしも可算個の閉集合 で と を満たすならば である.
証明.
が 補題 9 の条件を満たすことを証明しよう. の交わらない二つの閉集合 , を与える. 帰納的にと, , を構成する. まず と は のなかの交わらない閉集合である. は次元空間なので 補題 9より の中のあるclopen集合 とが存在して
-
(1)
-
(2)
-
(3)
-
(4)
を満たす.
さては閉集合だからと はの閉集合でもあるし, と はの交わらない閉集合である. ここで の正規性111距離化可能空間は常に正規である.を用いて 以下を満たす二つの開集合と を得る.
-
(1)
-
(2)
-
(3)
一般に, , を帰納的に 以下を満たすように定義する.
-
(1)
と はのclopen集合
-
(2)
-
(3)
-
(4)
-
(5)
-
(6)
, はの開集合
-
(7)
-
(8)
-
(9)
このように構成できることは 各がclopenであることとの正規性からわかる. このとき以下が満たされる
-
(1)
-
(2)
-
(3)
そして, とするととは開集合である. そして なのでである. また矛盾を導き出すためにとなるがもしも存在したとすると ととなる が存在するが とすると となり矛盾する. つまりである. とは交わらない開集合で定義から と を満たす.そして なのでとは閉集合でもある. このことは補題 9からを意味する. ∎
定義 11.
を位相空間とする. の部分集合 が であるとは が内の可算個の閉集合の和集合として表される時に いう.
系 12.
可分距離空間が次元であるような可算個の 集合の和集合で表されるのならば全体空間も次元である.
定理 13.
とする. を可分距離空間とする. このとき の可算個の集合 が存在しと を満たすならば である.
証明.
さて今から と を証明する. ここで, とは次元球面である.
補題 14.
とする. このとき は次元である.
証明.
一点集合は閉集合でなおかつ次元なので 命題 10からわかる. ∎
補題 15.
とする. このとき は次元である.
証明.
点 をとる.任意にをとり, 各について を
-
(1)
各について かつ
-
(2)
-
(3)
を満たすようにとる. の条件を満たす が存在するのはがの中で が稠密だからである. かつ とおく.これらの集合について なので はのclopen集合であり, の近傍でもある. は任意なので各点について内の clopenな近傍系が存在することがわかった. よって である. ∎
補題 16.
とする. このとき と が成り立つ.
証明.
について をの部分集合で 高々個の座標が有理数になっている点全体とする. 今から を証明する. 今かつ なので補題 14, 15 から がわかる. よってについて を証明する. をの濃度がちょうど個の 部分集合全体とする. そして と についてを 任意のについて 第座標がになるような の点全体とし, を 任意のについて 第座標がになり,それ以外の座標が無理数に属するようなの点全体の集合とする. このとき の定義から任意の と について となる.ゆえには の閉集合である.さらに はと同相なので 次元である. さての定義から
が成り立ち,各はの閉集合かつ次元でと は高々可算集合なので命題 10から が従う. さらに明らかに なのでがわかる. 次にについて考えよう. はの一点コンパクト化であり, である. そして命題 10から なので, がわかる. ∎
注意.
一般に が示せるが,証明は面倒である. この文章で行う理論展開のためには がわかっていれば良い.
1.2 蛇足:小さい帰納的次元とか
定義 17.
を位相空間とする. とする. このときの境界集合を で表す. であるとは 任意のの近傍について かつ を意味する. 一般に である.ここで, はにおける閉包と 開核を表す.
補題 18.
を位相空間とし, とする.このとき が成り立つ.
証明.
一般に位相空間とについて となる開集合と閉集合 について であり, に注意しよう.
さて,でとおく. するととはそれぞれ の開集合と閉集合でを満たす. よって を満たす. ここで となる. これは を意味する. ∎
補題 19.
を位相空間とし,とする. すると がの開集合であるとき が成り立つ.
証明.
まず である. ここではの開集合なので である. そして なので222この等式は一般に成り立つ すると が成り立つ. ∎
補題 20.
を可分距離化可能空間とし, を で とする. このとき任意のと 内のの開近傍 に対して内の 開集合が存在して を満たす.
証明.
まずより 内ののclopenな 近傍 で となるものが存在する. ここで に注意しよう. いまとについて考える. 明らかに であり, さらに
なので である.以上のことからと は互いにもう一方の閉包と交わらない. よっての完全正規性からの開集合が存在して とを満たす. 後半の条件から がわかる. 必要ならをに置き換えてとしてもよい. さて以上と補題 19を踏まえると
を得る. ゆえにがわかる. ∎
定理 21.
を可分距離化可能空間とする. この時 であることとの開基 が存在して であることは同値である.
証明.
定義 22 (小さい帰納次元).
空間の小さい帰納次元を帰納的に次のように定義する。
とし、まで定義されたとして
の任意の点との任意の近傍に対しての近傍が存在してかつを充たす。
と定義する。ちなみにとはかつである。
定理21から次のことが従う.
系 23.
可分距離化可能空間について
注意.
本来はindを定義したのちに ならば個の 次元空間の和集合としてかけることを証明するのだが, この文章では逆にそちらを位相次元の定理にしている.
補題 24.
とする. このとき と が成り立つ.
indを使った別証明.
とする. と はともに境界が となる開集合からなる開基を持つ. よって と が成り立つ. は境界が2点になるような開集合からなる開基を持つから である.もしくはが有理数と無理数という二つの 次元集合の和であることと がの一点コンパクト化であることを用いても であることがわかる. よって帰納的に と が成り立つことがわかる. ∎
2 応用
この節では多様体をユークリッド空間に埋め込む話をする.
まず部分空間の開集合をもとの空間の開集合に持ち上げるための次の補題から始まる。
補題 25.
空間の部分空間の開集合について
と置くと、はの開集合であり、を充たす。ここでとはの距離の一つである。
さらにの二つの開集合についてならばである。
証明.
やるとわかる。 ∎
命題 26.
第二可算な次元位相多様体について
定理 27.
空間はを充たすとする。そしてを空間の開被覆とする。このときの細分であるの局所有限な開被覆と開集合からなる(被覆とは限らない)個の族が存在して
及び
を充たす。
証明.
空間は距離化可能空間であるから と同じ位相を生成する距離を一つ固定してとする. さらにはパラコンパクト333一般に距離空間はパラコンパクトであるが、可分距離空間のパラコンパクト性は一般的なそれよりも容易に証明できる。であるのでの細分である局所有限な開被覆であるが存在する。ところでは可分距離空間なので特にリンデレフであるからは可算であるとしても一般性を失わない。としよう。
さてから個の高々次元部分空間が存在してを充たす。
ここで各について上での被覆を考えよう。は次元なので開かつ閉な開基を持つ。また可分でもあるのでの細分で高々可算な開かつ閉な集合からなるの被覆が存在する。これを用いて
と定義するとはの開集合からなる444の閉集合でもあるが、そのことは使わない。の被覆での細分になる。また定義から明らかにならばであるのでの元は互いに素である。そしてを
とし、までが定義されてるとして
と帰納的に定義しよう。そしてこれを用いて
と定義しよう。するとこれはの開集合であり、はの被覆となり、定義から明らかには互いに素な族である。
これを用いてと定義しよう。(補題25参照)このとき補題25からは互いに素な族となり、を被覆する。(ただしは空である場合もある。)また、からの細分になっている。さて、任意の点についての局所有限性を担保するの近傍をとすると、一般に
が成り立つことからは局所有限な族であることが分かる。(ただしの被覆であるとは限らない)
各ごとに存在するをとすればは互いに素な族であり、かつ局所有限であり、かつの細分となっている。そしてと置けば各が局所有限での細分であることからは局所有限であり、の細分となる。またでなのではの被覆となる。がの細分であることからはの細分であることが分かる。
以上で証明は終わった。 ∎
3 埋めこみ定理
定義 28 (開収縮).
位相空間の開被覆に対してが開収縮であるとはがの開被覆であって、任意のについて
を充たすこと。
以下の補題の証明は[2]を参照のこと.
補題 29.
位相空間についてが正規であることと 点有限開被覆に開収縮が存在することは同値である.
定義 30.
連続写像に対し
と定義する。これをの極限集合と呼ぶ。
次の命題の証明は[3]を参照のこと.
命題 31.
を単射と仮定する。このとき
さていよいよ多様体のユークリッド空間への埋め込みの存在の証明をする.
定理 32.
を次元級多様体とする。このとき
証明.
の相対コンパクトな局所座標系をに対して 定理27を用いて、の細分と開集合からなる(被覆とは限らない)個の族が存在して
及び
を充たす。必要ならば、各について ならばと仮定しても良い。 適当に番号付して、
とする。 また正規性に関する補題29を用いて 集合族の有限列を と番号付されていて
を満たしかつ、 がの被覆になっているようなものとする。 また、同様に集合族の有限列を と番号付されていて
を満たしかつ、 がの被覆になっているようなものとする。
さて、をとなるの元とする。 このとき上の局所座標で
-
(1)
ならば
-
(2)
でならば
となるものが存在する。これは平行移動とかを鑑みれば存在がわかる.
そしてを上での値をとり、の外ではの値をとる上の級関数とする。 これを用いて
と定義する。 に注意しよう。
なので
である、 滑らかな関数を上で、のそとでの値をとる関数とする。 そして
として定義する。は級である。
としてを
として定義する。
今からは可微分な埋めこみであることを今から証明しよう.
まずの微分のランクが退化していないことは の定義からわかる.
次に単射性を調べよう。 とするとあるが存在してである。 よってよりがわかる。
次にが位相的埋め込みであることを示そう。 を の極限集合として, 命題31から を示せば が埋め込みであることがわかる. をとなる列とする。このとき適当に部分列をとればあるに対して
となっていると仮定しても一般性を失わない。 このとき局所座標の定め方からとなる。 よって特になのでがわかる。 ∎
注意.
この証明からは閉写像であることがわかる。
注意.
いろいろ頑張れば, であることがわかるし, ならば が可微分写像の空間の中で稠密であることがわかる.
References
-
[1]
yamyamtopさんの次元論PDF,
https://yamyamtopo.wordpress.com/2015/01/10/pdf/
2016年6月閲覧 -
[2]
はてなブログ「電波通信」の記事
「正規性の特徴付け」
https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/12/21/170610
-
[3]
はてなブログ「電波通信」の記事
「極限集合の基本的性質の証明」
https://concious4410.hatenablog.com/entry/2017/11/16/170409
-
[4]
はてなブログ「電波通信」の記事
「いわゆる志賀多様体における多様体の埋め込み定理のための次元論的な補題の証明」
https://concious4410.hatenablog.com/entry/2016/06/11/202249
-
[5]
はてなブログ「電波通信」の記事
「ウリゾーンの距離化可能定理」
https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/09/13/190522
- [6] 志賀浩二,多様体論,岩波書店,1976
- [7] W.Hurewicz and H.Wallman,Dimension Theory,Princeton Univ. Press,1948