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多項式に関する一致の定理

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では多項式に関する一致の定理を証明する. つまり実係数多項式pの零点全体の集合が内点を持つならば 恒等的に0に等しいことを証明する.

まず最初に初等的な行列式の計算を行う.

定理 1 (ファンデルモンドの行列式).

n∈ℤ≥1とする. このとき任意のx1⁢…,xn∈ℝ に対して

|1x1x12…x1n−11x2x22…x2n−1⋮⋮⋮…⋮1xnxn2…xnn−1|=∏i<j(xj−xi)

が成り立つ.

証明.

nに関する帰納法で証明する. n+1より小さい数では成り立つと仮定する. このとき第1行を各行から引くと

|1x1x12…x1n−1x1n1x2x22…x2n−1x2n⋮⋮⋮…⋮⋮1xnxn2…xnn−1xnn1xn+1xn+12…xn+1n−1xn+1n|
=|1x1x12…x1n−1x1n0x2−x1x22−x12…x2n−1−x1n−1x2n−x1n⋮⋮⋮…⋮⋮0xn−x1xn2−x12…xnn−1−x1n−1xnn−x1n0xn+1−x1xn+12−x12…xn+1n−1−x1n−1xn+1n−x1n|

となる.計算は次のページに続く

さらに行列式の展開の性質から

=|x2−x1x22−x12…x2n−1−x1n−1x2n−x1n⋮⋮⋮…⋮⋮xn−x1xn2−x12…xnn−1−x1n−1xnn−x1nxn+1−x1xn+12−x12…xn+1n−1−x1n−1xn+1n−x1n|

となる. ここで第k列の−x1倍ををk+1列に足すと最後の両列式は

=|x2−x1x22−x12…x2n−1−x1n−1x2n−x1n⋮⋮⋮…⋮xn−x1xn2−x12…xnn−1−x1n−1xnn−x1nxn+1−x1xn+12−x12…xn+1n−1−x1n−1xn+1n−x1n|
=|x2−x1x22−x1⁢x2…x2n−1−x1⁢x2n−2x2n−x1⁢xnn−1⋮⋮⋮…⋮xn−x1xn2−x1⁢xn…xnn−1−x1⁢xnn−2xnn−x1⁢xnn−1xn+1−x1xn+12−x1⁢xn…xn+1n−1−x1⁢xnn−2xn+1n−x1⁢xnn−1|
=|x2−x1x2⁢(x2−x1)…x2n−2⁢(x2−x1)x2n−1⁢(x2−x1)⋮⋮⋮…⋮xn−x1xn⁢(xn−x1)…xnn−2⁢(xn−x1)xnn−1⁢(xn−x1)xn+1−x1xn+1⁢(xn+1−x1)…xn+1n−2⁢(xn+1−x1)xn+1⁢(xn+1−x1)|
=∏1<j(xj−x1)⋅|1x2x22…x2n−11x3x32…x3n−1⋮⋮⋮…⋮1xn+1xn+12…xn+1n−1|=∏i<j(xj−xi)

となるので証明が終わる. ∎

別証明.

与えられた行列式をpn⁢(x1,…⁢xn) とするとこれはx1⁢…,xnに関する多項式で しかも各xiに関する最高次数はn−1である. さて,行列式の性質からxi=xjとすると pn=0となる. ゆえにpnはxj−xiを因数にもつ. よって多項式qn=∏i<j(xj−xi) によってpnを割り切ることができる.ここで 多項式qnについて各xiの最高次数はn−1であるから pnはqnの定数倍であることがわかる. つまりpn=an⁢qnとなるan∈ℝが存在する. 簡単にa1=1がわかり,また n+1の場合にx1=0とすると

pn+1 =|100…001x2x22…x2n−1x2n⋮⋮⋮…⋮⋮1xnxn2…xnn−1xnn1xn+1xn+12…xn+1n−1xn+1n|=∏j>1xj⋅|1x2x22…x2n−1⋮⋮⋮…⋮1xnxn2…xnn−11xn+1xn+12…xn+1n−1|
=(∏j>1xj)⋅pn⁢(x2,…⁢xn+1)

となり,また

qn+1⁢(0,x2,…⁢xn)=(∏j>1xj)⋅qn⁢(x2,…⁢xn)

なのでan+1=anがわかり,結局an=1 がわかるので,定理は成り立つ. ∎

定理 2 (多項式に関する一致の定理).

pをn変数の実係数多項式とする. もしもpの零点全体の集合Zが内点を持つならば pは恒等的に0となる. つまりpが定数0に等しくないならば p⁢(x)≠0となるx∈ℝn全体の集合はℝn のなかで稠密になる.

証明その1.

nに関する帰納法で証明する.n+1より小さい数では 命題が成り立つと仮定する. p⁢(x1,…,xn,xn+1) についてこれは多項式なので, xn+1に関する最高次数をmとして x=(x1,…,xn)として以下のように表すことができる.

p⁢(x1,…,xn,xn+1)=∑i=0mqi⁢(x)⁢xn+1i

ここで各qiはxの多項式である. 今pの零点全体をZと書くと, Zは内点を持つので開集合V⊂ℝn と開集合U⊂ℝが存在して V×U⊂Zとなる. Uから相異なる点t1,…,tm+1∈Uを取ると k∈{1,…,m+1}とx∈Vについて

∑i=0mqi⁢(x)⁢tki=p⁢(x,t)=0

となる.これは次のように書くことができる.

(1t1t12…t1m1t2t22…t2m⋮⋮⋮…⋮1tntm2…tm+1m)⁢(q0q1⋮qm)=(00⋮0)

先の定理から左辺に出てくる行列は可逆であることがわかるので,結局任意のx∈Uとi∈{1,…,m}について qi=0がわかる. よって各qiの零点全体は内点を持つことがわかったので 帰納法の仮定より, 各qiは恒等的に0に等しい. よってpも恒等的に0に等しい. ∎

証明その2.

上の証明と同じく帰納法で証明する. 同じ記号を用いる. Zの元をℝn+1∖Zの元で近似できれば良い. (x,t)∈Z⊂ℝn×ℝとする. この時

∑i=0mqi⁢(x)⁢ti=0

となる.

Case1 : あるk∈{0,…,m}についてqk⁢(x)≠0 の場合. このときは p⁢(x,t)をtの多項式として見れば一変数なので 一変数の場合からtに十分近いt′∈ℝであって p⁢(x,t′)≠0となるものが存在する. よって(x,t′)が求めるℝn+1∖Zの元である.

Case2: 全てのi∈{1,…,m}について xがqiの零点だった場合. このときには帰納法の仮定よりxに十分近い各qiの 非零点になっているようなx′∈ℝnが存在する. p⁢(x′,t)≠0の場合は(x′,t)∈ℝn+1∖Z が求めるものになっている. p⁢(x′,t)=0の場合にはCase1に還元される. ∎

証明その3.

n=1の時にはn次多項式は高々n個の零点を持たないことから定理が成り立つことがわかる. 次に一般のnについて考える. Zの内点をaとする. このとき十分小さいr∈ℝが存在して 開円盤B={x∈ℝn∣‖x−a‖2<r} はZの部分集合となる. ここで u∈B を任意にとり q:ℝ→ℝをq⁢(t)=p⁢(a+u⋅t) と定義する. するとqはtに関する多項式であり, pがB上で0になることからqは t∈(−1,1)の時q⁢(t)=0となる. よって1変数の場合からqは恒等的に0 になる.u∈Bは任意だったので pは全空間で恒等的に0になる. ∎

証明その4.

まず最初にx∈ℝn, y∈ℝとして 多項式P⁢(x,y)はyの一次式で割り算できることに注意しよう. さて,p⁢(x,y)の零点が内点を持つとする. 内点(a,b)についてp⁢(x,b) はn変数として見たときに内点をもつよって帰納法の,仮定よりp⁢(x,b)は恒等的に0になる. つまりy=bはp⁢(x,y)の零点になるので p⁢(x,y)は(y−b)を因数に持つ. p⁢(x,y)の次数をmとして 相異なる点b1,…,bm+1を 任意のxについてp⁢(x,bi)=0 となるようにとる と n変数多項式Qが存在して p⁢(x,y)=(y−b1)⁢…⁢(y−bm)⁢Q⁢(x) となる.ここでy=bm+1とすると 0=(bm+1−b1)⁢…⁢(bm+1−bm)⁢Q⁢(x) なのでQは恒等的に0になる. つまりpも恒等的に0 になる. ∎

証明その5.

多項式は解析関数だから解析関数の一致の定理から従う. 解析関数に関する一致の定理は [3]や[4] を参照のこと. ∎

References

  • [1] StackExchangeの質問 “The complement of a zero-set of a polynomial is dense” とその回答
    https://math.stackexchange.com/questions/2025978/
    the-complement-of-a-zero-set-of-a-polynomial-is-dense
    
  • [2] StackExchangeの質問 “Why if p⁢(x1,…,xn) is polynomial on ℝn, then p⁢(x)≠0 is satisfied open dens set? ” とその回答
    https://math.stackexchange.com/questions/1731267/
    why-if-p-x-1-dots-x-n-is-polynomial-on-mathbbrn-then-p-x-neq-0/1731288
    
  • [3] はてなブログ「電波通信」の記事「実解析関数に関する逆関数定理」 https://concious4410.hatenablog.com/entry/2021/02/28/130208
  • [4] 箱さんのwebページの「解析関数のノート」 https://o-ccah.github.io/docs/analytic-function.html