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Brown-Morse-Sardの定理について

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

1 準備

定義 1 (測度零).

nの部分集合Sが測度零であるとは、任意のεに対してn次元区間の列{Ii}が存在して、SiIi

i|Ii|<ε

を充たすときに言う。これはSのルベーグ測度が0であることと同値である。

定義 2 (臨界点とか).

Umの開集合とする。そして 写像f:UnC1級とする。 このとき各点pUに対してfのヤコビ行列Jf(p)m×n型行列として定義される。 関数fの臨界点とはJf(p)の階数がnより真に小さくなる点pのことを言う。Cffの臨界点全体の集合とする。また、f(Cf)に属する点を臨界値と言う。

Bδn(p)で中心をpとする半径δnにおける開球を表すことにし、p=0のときは単にBδnと書くことにする。

2 Morseの補題

補題 3.

Umの開集合とする。 そして 実数値関数f:UC1級とし、 C1級写像ϕ:Bδn(p)mϕ(Bδn(p))U を充たすもので、 b:(0,R)[0,)は単調増加関数とする。 さて固定されたyBδn(p)が任意のxBδn(p)について xy<R充たすとき常に

|fxi(ϕ(x))|b(xy)xyk1

を充たすならば、 fには依存しないK>0が存在して任意のxBδn(p)に対して

|f(ϕ(x))f(ϕ(y))|Kb(xy)xyk

が成り立つ。

証明.

F(t)=f(ϕ(y+t(xy)))とするとF(1)=f(ϕ(x))かつF(0)=f(ϕ(y))が成り立つ。さてt(0,1)が存在して

F(1)F(0)=F(1)(t)

を充たす。また

F(1)(t)=i=1mfxi(ϕ(y+t(xy)))ϕixj(y+t(xy))(xjyj)

であるので

|F(1)(t)|Lxy(i=1m|fxi(ϕ(y+t(xy)))|)

となる。 さて仮定から

|fxi(ϕ(y+t(xy)))|b(y+t(xy)y)y+t(xy)yk1

が成り立ち、t(0,1)なので

|fxi(ϕ(y+t(xy)))|b(xy)xyk1

となる。 よってK=mLと置けば

|f(ϕ(x))f(ϕ(y))|Kb(xy)xyk

となることがわかる。 ∎

定義 4 (Ck級球形分解).

Amの部分集合、Pmの開集合とし、APを充すとする。 Amk0に対して集合Xmmの部分集合族𝒴2mと 写像の族Φ={ϕY:BYm}Y𝒴の三つ組(X,𝒴,Φ)(A,P)Ck級球形分解であるとは以下を充たすこととする。

  1. (1)

    Xは可算集合

  2. (2)

    𝒴は可算族で、任意のY𝒴YPを充たす。

  3. (3)

    ϕYの定義域BYnY次元ユークリッド空間の0を中心とした半径δYの開球である。

  4. (4)

    AXY𝒴Y

  5. (5)

    ϕYBYからmの中へのC1級の同相写像でYϕY(BY)を充たす。

  6. (6)

    x,yBYxyϕY(x)ϕY(y)

  7. (7)

    P上で定義され、 A上で0となるCk級の任意の実数値関数fに対して、 実数RY,f>0と、 (0,RY,f)を定義域とする単調増加関数bY,fが存在して limε0bY,f(ε)=0を充たし、 かつ、 すべてのxBYϕY(y)Yを充たすyBYに対して、 xy<RY,fならば

    |f(ϕY(x))|bY,f(xy)xyk

    が成り立つ。

また、組(A,P)Ck級球形分解が存在するときに、(A,P)Ck級球形分解可能であるという。

注意.

bY,fは連続でなくともよい。

いまから任意のmと任意のk及び APを充たす任意のAmと 任意のmの開集合P について、 任意の(A,P)Ck級モース球形分解可能であることを示す。

補題 5.

{Ai}imの部分集合族とし、{Pi}mの開集合族とする。 このとき各(Ai,Pi)Ck級球形分解可能ならば、 (iAi,iPi)もそうである。

証明.

AiCk級球形分解を(Xi,𝒴i,Φi)とする。このとき

(iXi,i𝒴i,iΦ)

(iAi,iPi)Ck級球形分解になっている。このことは簡単に確かめられる。 ∎

補題 6.

F:Dmはユークリッド空間の開集合D上で定義されたCk級写像で

xyF(x)F(y)

を充たすとする。このとき、Amについて (F1(A),F1(P))Ck級球形分解(X,𝒴,Φ)を持つならば、 (F(X),F(𝒴),FΦ)(A,P)Ck級球形分解になっている。ここで、

F(𝒴)={F(Y)Y𝒴}
FΦ={FϕYY𝒴}

である。

証明.

一番最後の条件以外は容易に確かめられる。 その最後の条件を調べよう。 いまfP上のCk級関数でA上で0になっているとする。 このとき、fFF1(A)上で0になっている。 よって limε0bY,fF(ε)=0となる単調関数bY,fFが存在してすべてのxBYϕY(y)Yを充たすyBYに対して

|fF(ϕY(x))|bY,fF(xy)xyk

が成り立つ。これを書き直すと、すべてのxBYFϕY(y)F(Y)を充たすyBYに対して

|f(FϕY(x))|bY,fF(xy)xyk

が成り立つことがわかるので、bF(Y),f=bY,fFとすれば、(F(X),F(𝒴),FΦ)は最後の条件を充たし、これが(A,P)Ck級球形分解であることがわかる。 ∎

補題 7.

任意のmについて任意の(A,P)C0級モース球形分解が存在する。

証明.

ユークリッド空間の局所コンパクト性から直ちに補題は従う。 ∎

補題 8.

任意のkについて任意のACk級モース球形分解が存在する。

証明.

集合XAの孤立点全体とするとXはその相対位相において可分距離空間であり、また、離散空間でもあるので、Xは可算集合である。そして𝒴2を、相対コンパクトな開区間の可算族で、AXを被覆し、その閉包がPの部分集合になっているものとする。AXはリンデレフで、Pは開集合なのでこのような集合族は存在する。次に各Y𝒴についてϕYを平行移動

ϕY:(diam(Y)/2,diam(Y)/2)Y

として定義する。このような平行移動ϕYYについて一意的に決まることと、平行移動なので、

|ϕY(x)ϕY(y)|=|xy|

となることに注意せよ。diam(Y)Yの直径である。 このように定義された(X,𝒴,Φ)は分解の条件を充たすことがわかる。一番最後の条件を示そう。 fA上で0となる関数とする。このとき AXの点はすべてAの集積点なので、 任意のxAXについて

f(1)(x)=f(2)(x)==f(k)(x)=0

となることが帰納的に分かる。 さてx,yAfにテイラーの定理を使うと

f(y)=f(k)(ξ)(yx)k+f(x)

となるξxyの間に存在することがわかる。そしてY𝒴に対して、RY,f

RY,f=sup{r>0B(AY,r)P}

と定義し、bY,f:(0,RY,f)

(1) bY,f(ε)=sup{|f(k)(x)|xB(AY,ε)}

と定義する。CL(Y)Pに注意して、 f(k)がコンパクト集合上で一様連続であることを用いると

bY,f(ε)0(ε0)

がわかる。 そして(1)からx,yYについて

|f(x)f(y)|bY,f(|xy|)|xy|k

となることがわかる。このことと、|ϕY(x)ϕY(y)|=|xy|から、(X,𝒴,Φ)(A,P)Ck級球形分解であることがわかる。 ∎

補題 9.

任意にmを与え、Amで、Pmの開集合で、APする。 このときkについて任意の組(A,P)Ck級モース球形分解が存在する。

証明.

いまからm+kに関する帰納法で証明を行う。 m+k=1の時は上の補題である。また、m>1k>0として証明しても一般性を失わない。 いまl+q<m+kとなる組(l,q)に対しては任意の部分集合BlBQとなる組(B,Q)Cq級モース球形分解が存在するしよう。

Amを任意に与える。そして

Θ={uCku|A=0}
S={xAuΘi{1,2,,m}iu(x)=0}
T=AS

と定義しておく。 帰納法の仮定から(S,P)Ck1級モース球形分解(X,𝒴,Φ)が存在する。 これがCk級球形分解にもなっていることを示そう。 このbの条件をを各jfに適応すると、各iごとにlimε0bij(ε)=0となる単調関数bijが存在して各j{1,2,,m}に対してすべてのxBεiniϕi(y)Eiを充たすyBεiniに対して

|jf(ϕi(x))|bij(xy)xyk1

となる。ここで

bi(ε)=maxj{1,2,,m}bij(ε)

とすれば すべてのxBεiniϕi(y)Eiを充たすyBεini および任意のj{1,2,,m}に対して

|jf(ϕi(x))|bi(xy)xyk1

が成り立つ。 そして補題3からϕiについてϕi(y)Av1ならば

|f(ϕi(x))|bi(xy)xyk

が成り立つ。つまり、(X,𝒴,Φ)SCk級モース球形分解になっている。

次にTについて考察しよう。 任意のpTについてある関数gg|A=0ig(p)0であるようなものが存在する。 適当に番号を入れ替えてmg(p)0としてよい。 このとき陰関数定理からpの近傍NpCk級写像hp:Bδpm1が存在してNpの点(x1,x2,xn)

g(x1,x2,,xn)=0

を充たすものはxn=hp(x1,x2,xn1)と書ける。 さらに

NpP

と仮定しても良い。 ここで

Hp:Bδm1m;(x1,x2,xn)(x1,x2,,hp(x1,x2,,xn1))

を考えると、これはCk級で各x,yBδm1について

xyHp(x)Hp(y)

であり、

NpAHp(Bδm1)

を充たす。 さて、もちろんpNpなので

TpTNp

であり、Tはリンデレフなので可算個の点{pv}vが存在して

TvNpv

となる。表記を簡潔にするためにNv=Npvhv=hpvHv=Hpvδv=δpvと書くことにする。 このとき各vについて

NvAHv(Bδm1)

が成り立つことに注意しよう。

ここで帰納法の仮定からm1kに対す る定理から(Hv1(NvA),Hv1(P))Ck級球形分解(Zv,𝒲v,Ψv)が存在する。補題6から、(Hv(Zv),(Zv)(𝒲v),HvΨv)(NvA,P)Ck級球形分解になっている。 さらに補題5から(v(NvA),P)Ck級球形分解可能であり、さらにTv(NvA)なのでTCk級球形分解可能である。

以上のことからSTCk級球形分解が存在し、A=STなので補題5から (A,P)にもCk級球形分解が存在する。 ∎

補題 10 (Morseの補題).

kとしAmの部分集合でPmは開集合とし、APとする。このとき{Ai}iが存在して次を充たす。

  1. (1)

    AiAiP

  2. (2)

    A0は高々可算集合。

  3. (3)

    ACfとなる任意のfCk(P)に対して非増加関数の列{bi:(0,Ri,f)}iが存在してbi0及び 任意のx,yAi(i1)について

    |f(x)f(y)|bi(xy)xyk

    が成り立つ。

この補題で述べられる{Ai}i(A,P)Ck級モース分解と呼ぶことにする。

証明.

(X,𝒴,Φ)を先の補題から得られる(A,P)Ck級球形分割であるとする。 A0=Xとして、𝒴を適当に番号付して、𝒴={Ai}iとし、またこの番号付に応じて、ϕAi=ϕiBAi=Biと書くことにする。 条件の(1)(2)はすぐにわかる。(3)を確かめよう。

r{1,2,,m}に対してrf|A=0なので、球形分解の定義の(7)から、各iに対してbi,r:(0,Ri,r)が存在し、 limε0bi,r(ε)=0を充し、かつ、全てのxBiϕi(y)Aiを充すyBiに対してxy<Ri,rならば

|rf(ϕi(x))|bi,r(xy)xyk

を充たす。 さて、Ri=minrRi,rと定め、

bi:=maxrbr,i

と定めれば、bi:(0,Ri)limε0bi(ε)=0を充し、かつ、全てのxBiϕi(y)Aiを充すyBiに対してxy<Riならば 任意のr{1,2,,m}について

|rf(ϕi(x))|bi(xy)xyk

を充たす。

さて、x,yAiに対してϕr(s)=x,ϕr(t)=yとなるs,tBiを取る。これはAiϕr(Bi)から可能である。 さて、biの性質と補題3から

|f(ϕi(s))f(ϕi(t))|bi(st)stk

を得る。ところで

stϕi(s)ϕi(t)=xy

なので

|f(x)f(y)|bi(xy)xyk

がわかる。 ∎

次の定理がいわゆるSadの定理である。

3 Brown-Morse-Sardの定理

定理 11 (Brown-Morse-Sard).

Um f:Un, fCr級とする。もし

r1+max(mn,0)

ならばf(Cf)は測度零である。

証明は場合分けで行う。

命題 12.

m<nの場合に定理11は成り立つ。 つまり、m<nであり、 Umの開集合で f:UnC1級関数 ならばf(Cf)は測度零である。

証明.

O=U×nmとし、F:On

F(x1,x2,,xm,xm+1,,xn)=f(x1,x2,,xm)

と定義すると、fC1級関数であるからFもそうである。 このことからFは局所リプシッツ関数であることがわかる。よってFは零集合を零集合に写す。Cf×{0}OOの零集合であり、F(Cf×{0})=f(Cf)であるから定理は示された。 ∎

命題 13.

m=nの場合に定理11は成り立つ。つまり、 m=nであり、 Umの開集合で f:UnC1級ならば f(Cf)は測度零である。

証明.

Uの中の有界閉立方体Aに対してf(ACf)が零集合であることを示せばよい。 まず、fA上リプシッツであることに注意しよう。 各aAに対して Ta=(Ta1,Ta2,,Tan):An

Tai(x)=fi(a)+j=1njfi(a)(xjaj)

と定義する。すると

fi(x)Tai(x)=j=1n(jf(zi)jfi(a))(xjaj)

if(x)A上一様連続なのでε0のときb(ε)0となるbが存在して

f(x)Ta(x)b(xa)xa

となる。 aCfと仮定すると、この点では写像のランクが落ちてるのでTaによってAn1次元部分空間Paに写像される。 そしてxa<εとするとf(x)f(a)LεPaからf(x)までの距離はb(ε)εより小さい。 体積は高々2nLn1εnb(ε)となる。

さてAを幅が1/kとなるk個の立方体に分割する。 臨界点aを含む立方体はaを中心とする半径n/kの球体の中に含まれる。 この球体の像の体積は高々2nLn1(n/k)nb(n/k)である。 立方体の個数は高々kn個なのでf(ACf)の体積は高々

kn2nLn1(n/k)nb(n/k)=2nLn1nn/2b(n/k)

kとするとf(ACf)の体積が0であることがわかる。 ∎

n<mの場合を証明するために補題をいくつか用意する。

補題 14.

Umは開集合とし、m>nとする。 g:UnCq級としSfのランクが0になる点全体とする。このときqm/nならばf(S)の測度はゼロである。

証明.

{Si}iSCq級モース分解とする。 各g(Si)が零集合であることを示せば良い。 g=(g1,g2,,gn)と成分表示する。 このとき、Sは階数が0の点全体であることから、xSについて xは各giの臨界点になっている。モース分解の性質からあるbiが存在して x,ySiとするとxy<εならば任意のj{1,2,,n}に対して

|gj(x)gj(y)|bi(ε)εq

となる。 このことから、x,ySixy<εならば

g(x)g(y)nbi(ε)εq

となる。 CUに含まれる閉立方体として、g(SiC)が零集合であることを示せば良い。 Cの一辺の長さをLとし、Cを一辺がL/k(k)の閉立法体{Cl}に分割すると、Clが半径Lmkの球に含まれるので、 f(SiCl)は半径が

mnbi(Lmk)(Lmk)q

の球に含まれる。{Cl}の個数はkm個なので、 f(SiC)の測度は、球体の体積に関連した定数Kを用いて、上から

Kbi(mk)kmqn

と評価できる。この評価は任意のkで成り立つので、kとするとf(SiC)の測度が零になることがわかる。 ∎

補題 15.

Afの階数がrの点全体とする。このときもしqmrnrならばf(A)は測度零である。

証明.

r=0の時は先の補題である。pAとするとpの近傍Nとその局所座標系、f(p)周りの局所座標系が存在して、

fi(u1,u2,,um)=ui(i=1,,r)

となるものが存在する。u1,,urを固定して写像

η:mrnr;x=(ur+1,,um)η(u)=(fr+1(u,x),,fn(u,x))

を考えると階数は零である。 P(u1,,ur)を最初の座標がu1,,urであるようなnの中のnr部分空間とするときr=0の場合、つまり先の補題からf(NA)P(u1,,ur)P(u1,,ur)の中で測度零である。よってf(NA)は任意のP(u1,,ur)との交わりが零集合なのでフビニの定理からf(NA)も測度零である。 ∎

命題 16.

n<mとする。 Um f:Un, fCr級とする。もし

rmn+1

ならばf(Cf)は測度零である。

証明.

まず、各i(0in1)について

Ai={xUrankJf(x)=i}

と定義する。 もちろん

Cf=i=0n1Ai

が成り立つ。 そしてrmn+1のとき任意の0in1に対してrminiなので 先の補題からf(Ai)が零集合であることがわかり、結局f(Cf)は零集合であることがわかる。 ∎

命題 121316から定理11が成り立つ事がわかる。

4 Sardの補題にまつわる反例

Sardの定理に置いて、rの微分可能性が1+max(mn,0)より小さい場合何が怒るのか調べることは有意義である。今から以下の命題の異なる三つの証明を紹介して行く。

命題 17.

C1級関数f:2で、f(Cf)が正測度を持つものが存在する。

4.1 Whitneyによる構成

次の形のWhitneyの拡張定理を用いる。

命題 18.

Anの閉集合とし、n1<s<nとする。このとき任意のs-Hoelder写像fについてその拡張F:nが存在してσkn1を充たすkZnが存在してxAについて

kF(x)=0

となる。

命題 19.

C1級写像f:2が存在してf(Cf)が正測度を持つものが存在する。

証明.

写像f0,f1,f2,f3:2

f0(x)=31x
f1(x)=31x+(21,1/6)
f2(x)=31x+(21,21)
f3(x)=31x+(1/6,21)

と定義する。fi(Q)Qを充すことに注意しよう。 Q(n1)=fn1(Q)(n1{0,1,2,3})と定め、 一般に、Q(n1,n2,,nk)が定義されたとき、 Q(n1,n2,,nk,nk+1)=fnk+1(Q(n1,n2,,nk)) と定義する。 そして

Ak=i{1,2,,k},ni{0,1,2,3}Q(n1,n2,,nk)

と定義し、

P=kAk

とする。Pはカントール集合と同相である。 各xPに対して、xQ(a1,a2,,ak)かつ xQ(b1,b2,,bl)klならば、 任意のi{1,2,,k}に対してai=biであるから、xに対して 無限列{ni(x)}i

{x}=kQ(n1(x),n2(x),,nk(x))

となるものがただ一つ定まる。これを用いて、 写像f:P

f(x)=k=1nk(x)4k

と定義する。 さて、x,yPについて、k番目で初めてnk(x)nk(y)となったとすると、

3kxy

となる。 そして

|f(x)f(y)|i=k34i14k1

となるので、s=log4/log3として

|f(x)f(y)|41xys

が成り立つ。 また、任意の無限列{ni}i(ni{0,1,2,3})に対して ni(x)=niとなるxPが存在するので、 f(P)=[0,1]である。s>1なので、 このfに先の命題を適用し、 任意のkZ2(1)xPに対して

kF(x)=0

F|P=fとなる Fを得ると、PCFなので、

[0,1]F(CF)

となり、FC1級でF(CF)は正測度を持つ。 ∎

注意.

実際のWhitneyの構成はカントール集合集合上ではなく2内の弧に対して拡張定理を用いている。つまりWhitneyは弧γ上でその勾配が0だが定数でない関数を構成した。この構成はカントールの悪魔の階段の二次元版とも思える。

注意.

任意のm,n(m>n)についてCmn級関数f:mnで、f(Cf)が正測度であるものの存在も示せる。

4.2 Grinbergによる構成

次のよく知られた事実がある。証明は省略する。

命題 20.

C+C=[0,2]

Grinbergはこの命題20を用いてSardの定理にまつわる反例を構成した。 その第一段階は次に述べるような関数を構成することである。

命題 21.

C1級の関数f:Cf(Cf)となるものが存在する。

証明.

カントール集合Cは単位区間を三等分し、その真ん中の開区間を取り除き、そしてまた残った区間をそれぞれ三等分し、そのそれぞれの真ん中の開区間を取り除き・・・とこの操作を繰り返して得られる集合である。Cの一次元ルベーグ測度は0であることに注意しよう。Cを構成するときに取り除かれる開区間全体の集合とする。 は開集合[0,1]Cの連結成分全体と一致する。 C が零集合であることから任意のaCについて

a=I,I[0,a]|I|

が成り立つ。ここで|I|Iの一次元ルベーグ測度を表す。 σ=6/π2とすると

n=1σn2=1

となる。 ここで、この級数を元に通常のものとは異なるカントール集合を構成する。 まず、単位区間の真ん中の点(つまり1/2)を中心とする長さがσ/12の開区間(つまり1/2を中心とする半径σ/2の開球と同じである)を取り除く。 そして、次に残った二つの区間のそれぞれ真ん中の点を中心とする長さ12σ22の開区間を取り除く。 この操作を繰り返してゆく。一般にこの操作をn回行うと、2n1個の長さが同じ閉区間が残る。n+1回めの操作はこの残った2n1個の閉区間の真ん中の点を中心とする長さ12n1σn2の開区間を取り除く操作になる。この操作を繰り返して得られる集合をDとする。(正確にはn回目に残る集合をDnとしたとき、このDn全ての共通部分がDである。) さて、n回目の操作で取り除かれる開区間の長さの総和は2n112n1σn2なので、全体として、取り除かれる開区間の長さの総和は

n=12n112n1σn2=n=1σn2=1

となるから、Dは零集合である。𝒥[0,1]Dの連結成分全体、つまりDを定義するときに取り除かれた集合全体とする。𝒥は可算集合であるが、適当に番号をつけて[0,1]D=k(pk,qk)とする。

連続関数T: で 任意のt(0,1)についてT(t)>0任意のt(0,1)に対してT(t)=0 そして T𝑑t=1 を充すものを一つ取る。そして、各kについてn(k)は、「n(k)回目に(pk,qk)が取り除かれる。」を充すような自然数とする。(つまりn(k)(pk,qk)の世代数とする。)そして

hk(x)=1σn(k)22n(k)13n(k)T(xpk12n(k)1σn(k)2)=1σn(k)22n(k)13n(k)T(n(k)22n(k)1σ(xpk))

hk:を定義する。このhk

hk(t)𝑑t=13n(k)

および

supp(hk)=[pk,qk]

を充す。 さてここで、h=khkと定義する。 hの連続性を調べよう。 {(pk,qk)}は互いに交わらないので、連続性はDの点のみで調べれば良い。 TT(0)=T(1)=0を充しているので、tDについてh(t)=0である。 そして、 n22n13n0なのでhが連続であることがわかる。 関数f:

f(x)=0xh(t)𝑑t=k0xhk(t)𝑑t

と定義する。 hは連続なのでfC1級関数になる。

𝒜nCを構成するときに現れる第n世代の閉区間全体とし、 nDを定義するときに現れる第n世代の閉区間全体とする。 また、𝒜=n𝒜n=nnとする。 各nについて𝒜nは互いに交わらない2n1個の閉区間の族である。 I,J𝒜nについて、任意のxIと任意のyJについてx<yとなっているときにIJと定義する。nにも同様に順序を導入する。さて𝒜n上でもn上でもは全順序になっており、𝒜nnは濃度が同じ有限集合なので一意的に順序を保つ全単射sn:𝒜nnが存在する。 そしてs:𝒜I𝒜A𝒜nならばs(I)=sn(I)として定義する。

xCに対して、列{Ik}𝒜で、Ik𝒜k

kIk={x}

を充すものが存在する。このような列は複数あることに注意せよ。そして

ks(Ik)={y}

となるyが存在する。このyは列{Ik}の選び方に依らず一意的に存在するので、 写像α:CDをこのxyを対応させる写像として定義する。

nCを構成するときに取り除かれる第n世代の開区間全体とし、 𝒥nDを定義するときに取り除かれる第n世代の開区間全体となる。 もちろんこのとき=nn𝒥=n𝒥nとする。 上と同様にしてn𝒥nには全順序が定義され、順序を保つ全単射rn:n𝒥nが存在する。 そして写像r:𝒥Anならばr(A)=rn(A)として定義する。 このとき

r({II[0,x]})={J𝒥J[0,α(x)]}

が成り立つ。

任意のaCをとりb=α(a)Dとする。このときf(b)=h(b)=0であり、

f(b)=k0bhk(t)𝑑t=k,(pk,qk)[0,b]13n(k)=I,I[0,a]|I|=a

であるので、Cf(Cf)を得る。 (ちなみにこの構成だとC=f(Cf)までわかる。) ∎

先に述べた命題を用いればSardの定理にまつわる反例が次のように構成できる。

命題 22.

C1級関数g:2g(Cg)が正のルベーグ測度を持つものが存在する。

証明.

関数f:を命題21で述べられた関数とする。そして 関数g:2

g(x,y)=f(x)+f(y)

と定義する。すると gC1級写像であり、また

J(g)(x,y)=0(xf)(x)=0,(yf)(y)=0

が成り立つことがわかる。 よって

[0,2]=C+Cg(Cg)

であるからgが求める関数である。 ∎

4.3 Kaufmanによる構成

次のWhitneyの補題を用いる。

命題 23.

Jの開区間とする。 連続写像w:Jと閉集合AJvaJは以下を充たすとする。 任意のεに対してδ>0が存在して

  1. (1)

    xAかつ|xa|<δならば

    |w(x)w(a)xav|<ε

    である。

  2. (2)

    xJAかつ|xa|<δならば導関数w(x)が存在し、

    |w(x)v|<ε

    である。

    このときwは点aAにおいて微分可能でw(a)=vである。

証明.

任意のaAと任意のεに対してδ>0が存在して任意の|xa|<δならば

|w(x)w(a)xav|<2ε

を示せばよい。 話を簡単にするためにaxとする。 xJAのときに目的の式を示せばよい。 ここでpxpxAで、A(px,x)=Øとなるものとする。 Aが閉集合なのでこのようなpxは存在する。 また、apxである。 (2)からwは開区間(px,x)で微分可能なので中間値の定理から

w(x)=w(px)+w(c)(xpx)

となるc(px,x)が存在する。 さてこのとき、

w(x)w(a)xa =w(x)w(px)xpxxpxxa+w(px)w(a)pxapxaxa
=w(c)xpxxa+w(px)w(a)pxapxaxa

となり、また、

v=vxpxxa+vpxaxa

なので

|w(x)w(a)xav||w(c)v||xpxxa|+|w(px)w(a)pxav||pxaxa|

である。さてpx及びcの定義から|ca|<δ|pxa|<δなので|w(c)v|<εかつ|w(px)w(a)pxav|<εである。また、pxの定義から|xpx||xa|かつ|pxa||xa|なので 結局|xa|<δならば

|w(x)w(a)xav|<2ε

を得る。 ∎

上の補題から次がわかる。

補題 24.

Um は開集合とし、 孤立点を持たないコンパクト集合AUは内点を持たないとする。 連続関数F:Unについて、FUAにおいてC1級で任意のaAに対して

limxUA,xaJF(x)=0

とし、さらにaAとについて

limxA,xaF(x)F(a)xa=0

が成り立っているとする。このときFU上すべての点でC1級であり、JF(a)=0である。

命題 25.

C1級全射関数f:32で、各点x3rank(f)(x)1となるものが存在する。

証明.

β<1/2とする。 I={x3|xici|L/2}という立法体を考える。 {x3|xi(ci+εi)L/4|βL/2}(εi{1,1})という形で書ける立法体を考える。(εiの値の選び方でこの形に書ける立方体は8個ある。)=(I) この形で書ける立法体の間の距離はL/2βL以上である。 また、Iの境界と先の形で書ける立方体との距離はL/4βL/2以上である。

今からI={x3|x|1}で定義される立方体を8の小さい立方体に分割していってカントール集合を作る。 (I)を適当に番号付けて、 (I)={I(n1)ni{1,2,,8}}とする。 一般にI(n1,n2,,nk)が定義されたとき、(I(n1,n2,,nk))を適当に番号付けて、

(I(n1,n2,,nk))={I(n1,n2,,nk,nk+1)nk+1{1,2,,8}}

としてI(n1,n2,,nk,nk+1)を帰納的に定義する。 世代が同じI(a1,a2,,ak)I(b1,b2,,bk)との距離は βk12βk以上である。 世代が異なるI(a1,a2,,ak)I(b1,b2,,bj)k<j)との関係は以下のようになる。 もしこの二つが交わってなければ、この二つの立方体の間の距離はβk1(12β)以上になり、 もし大きい方の立方体が小さい方を含んでいれば、大きい方の境界と、小さい立方体との距離はβk(1/2β)となる。

Iの境界をBI(n1,n2,,nk)の境界をB(n1,n2,,nk) で表すことにする。そして、

C(β)=k(i{1,2,,k},ni{1,2,,8}I(n1,n2,,nk))

とする。C(β)はカントール集合と同相である。 以下β2>81を仮定する。 R2の任意の閉正方形とする。k(n1,n2,,nk){1,2,,8}に対して閉長方形 R(n1,n2,,nk)を帰納的に以下のように定義する。 R(n1)R7つの垂直な線分によって8個の相似な長方形に分割し、それを番号付けたものとして定義する。 一般にR(n1,n2,,nk)が定義された時、 もし、kが偶数ならばR(n1,n2,,nk)7つの垂直な線分で8個の相似な長方形に分割し、それを番号付けたものとしてR(n1,n2,,nk,nk+1)を定義し、 もしkが奇数ならばR(n1,n2,,nk)7つの水平な線分で8個の相似な長方形に分割し、それを番号付けたものとしてR(n1,n2,,nk,nk+1)を定義する。ここで、あるA>0が存在して任意のkについて

diam(R(n1,n2,,nk))A23k/2

となる。(kが奇数であるときと偶数であるときに場合分けすれば証明出来る。) 全射写像Φ:C(β)RC(β)I(n1,n2,,nk)R(n1,n2,,nk)に全射に写すとする。このような写像は存在する。 以上の考察から、M>0が存在してx,yC(β)について

|Φ(x)Φ(y)|M|xy|λ

となることがわかる。ここでλ=3log2/2logβ>1である。

f:[0,1]Rf(m/8)=amおよび、C1級で

|f|9max|amam+1|

を充すものとする。 g:3Jmの近傍上でg=m/8となるC1級写像とする。この時g(3)[0,1]であり、|Dg|Nβkを満たす。 そして

F=fg

と定義する。 FIC(β)上でC1級である。 境界上ではDF=0であり、また、I(n1,n2,,nk)C(β)上で

|DF||Dg||f|Hβk23k/2Hβkβλk

なので、先の補題からFI上全体でC1級であり、C(β)上でDF=0 である。 Fの定義の仕方からFの階数は全ての点で1以下である。 ∎

注意.

この命題における各点x3rank(f)(x)1という条件はf(Cf)が正測度であるという条件よりも強いことに注意しよう。

5 多様体の間の写像のBrown-Morse-Sardの定理

定義 26.

m次元多様体Mの部分集合Sが測度零であるとは

定理 27 (多様体のBrown-Morse-Sardの定理).

M,Nをそれぞれm,n次元Cr級可微分多様体とし、f:MNCr級とする。また、Mはリンデレフであるとする。このときもし

r1+max(mn,0)

ならばf(Cf)は測度零である。

証明.

ここまで読んだらわかる。 ∎

References

  • [1] スタンバーグ著,高橋恒郎訳「微分幾何学」吉岡書店, 数学業書(24), 1985.
  • [2] E. L. Grinberg, On the smooth hypothesis in Sard’s theorem, Amer. Math. Monthly, vol. 47(1985), 299-304.
  • [3] R. Kaufman, A singular map of a cube onto a square, J. Differential Geom. vol 14, No. 4(1979), 593-594.
  • [4] A. Sard, The measure of the critical values of differential maps, Bull. Amer. Math. Soc. Vol. 48 (1942), 883-890
  • [5] H. Whitney, A function not constant on a connected set of critical points, Duke Math. J. Vol. 1, No. 4(1935), 514-517.