有理数の順序型の特徴づけ
この文章では有理数の順序論的特徴づけを紹介する。すなわち次の定理を証明する。
定理 1.
最大値及び最小値を持たない可算で自己稠密な線形順序集合は互いに順序同型である。特に有理数と順序同型である。
まずは定義から始める。
定義 2 (線形順序).
集合上の二項関係が線形順序であるとは
-
(1)
-
(2)
-
(3)
-
(4)
を充たすことを言う。
と定義する。
定義 3 (自己稠密性).
線形順序集合が自己稠密であるとはとなる任意のについて
となるが存在することである。
集合の上の順序をと書いたりするが、文脈上明らかな場合は省略してと書いてしまうことにする。 定理1の証明のために以下の補題を用意する。
補題 4.
を最大値及び最小値を持たない可算で自己稠密な二つの線形順序集合とする。さらに はその有限部分集合とし、順序同型写像によりとは順序同型であるとする。このとき任意のについて、あるが存在しては順序同型写像
へと拡張できる。
証明.
の元の番号付けは以下の条件を充たすとしても一般性を失わない。
| (1) | |||
| (2) |
そして三つに場合分けする。
- 場合分け(1)(のとき。)
-
このときにはの自己稠密性からとなるyが存在するので、これを用いてとを定義すれば、は求めるものになっている。 - 場合分け(2)(のとき。)
-
このときやはりの自己稠密性からとなるが存在するのでと定義すればよい。111ここで最大値を持たないという仮定を用いている。 - 場合分け(3)(のとき。)
-
上と同様222最小値を持たないという仮定を用いる。
以上で補題は証明された。 ∎
さて定理1の証明に入る。
定理1の証明.
所謂back-and-forth argument により帰納法によって証明する。
を最大値及び最小値を持たない可算で自己稠密な二つの順序集合とする。そして と番号付けされていると仮定する。 この番号付けを用いて関数の拡張列を以下の条件を満たすように帰納的に定義する。
-
(1)
は順序を保つ全単射
-
(2)
は有限集合でを含む.
-
(3)
は有限集合でを含む.
Step0:(を定義する) はでという写像として定義する。
Step1:(が構成されたとしてを構成する)補助的にという順序同型写像を以下のように定義する。
もしならば、とし、 ならばと、およびに 補題4を用いてをまで拡張した順序同型写像をとする。
また更に補助的にという順序同型写像を以下のようにを拡張して定義する。
もしならばとする。 もしの時には、, に補題4を用いてをまで拡張した写像をとする。
最後にと定義すれば帰納法の仮定をすべて充たす。
Step3: 以上で得られた順序同型写像の列を用いて、写像をと定義する。が写像の拡張列になっているので、この定義はwell-definedである。
Step4: 写像が順序同型写像になっていることを示す。 まず最初にについて
が成り立つことを示す。これが分かれば、単射性と順序保存性がわかる。十分大きいを取ればとなるものが見つかる。の定義とが写像の拡張列であることからがわかる。さては順序同型であるから直ちにを得る。
最後にが全射であることを示す。任意のに対して十分大きいを取ればとなる。写像は順序同型なので、あるが存在してとなる。つまりなのでは全射である。 ∎
注意.
上の証明でを構成する操作はとを往復(前後)している。これを指してback-and-forthと呼んでいると思われる。
例 5.
の部分集合はと順序同型である。
例 6.
集合はと順序同型である。
例 7.
二進表示で有限小数で表すことのできる数全体、つまり
はと順序同型である。