拡張定理
この文章ではArens[1]によるDugundjiの拡張定理を証明し、H. Toruńczyk[2]によるDugundjiの拡張定理を用いたHasudorffの拡張定理の証明を紹介する。Dugundjiの拡張定理は距離空間の閉集合から局所凸空間への連続写像は空間全体に拡張できるという定理である。Arensは「きれいな」単位の分割を用いてこの定理を証明しているが、これはWhitneyの拡張定理の証明にに非常に酷似しているのでここでは「きれいな」単位の分割をWhitneyとDugundjiの寄与によるものとして扱う。Dugundji自身は単位の分割ではなく被覆から誘導される脈複体を用いて拡張定理を証明しているがやっていることは結局同じことである。Hausudorffの拡張定理は閉集合上の距離を空間全体に拡張できることを述べたとても強力な定理である。
この文章では「埋め込み」という言葉が出てくるが、連続写像が埋め込みであるとはコドメインを変更した写像が同相写像になることである。「閉埋め込み」は閉写像でかつ埋め込みになっている写像のことである。例えば同相写像について、をの閉集合に制限した写像は閉埋め込みになっている。
補題 1 (Whitney-Dugundji’s Partition of unity ).
距離空間とその閉集合に対しての局所有限被覆とによって添え字付けられた上の非負実数値連続関数の族とによって添え字付けられたの部分集合族が存在して
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
を充たす。
証明.
各についてとする。 はの開被覆である。さらにはパラコンパクトなのでの局所有限な開細分が存在する。各についてを
を充たすものとする。さて各についてをと定義する。さらば、 の局所有限性から
は上の連続関数となる。そして
と定義すれば、は上の非負実連続関数となり、
及び、
を充たす。次にをを充たすの元として定義する。
今としよう。するとであり、更になので、
となる。そしてについて
となり、さらに
より、
を得るので
が分かる。 ∎
定理 2 (Dugundjiの拡張定理).
距離空間の閉集合と局所凸型線形位相空間の凸集合及び連続写像について、連続写像が存在し、
を充たす。
証明.
とに対して先の補題から、の局所有限細分及び、が存在する。さて、今を
と定義する。が凸集合であることから、はに値を取る。が局所有限でなのではちゃんと定義されている。また、が凸集合であることから、はに値を取る。そして局所有限性から上でが連続であることは明らかである。上の任意の点でが連続であることを示せば証明は終わる。
は局所凸線形位相空間なので、そのセミノルムの族から定まる位相である(ミンコフスキーゲージなどの議論を思い出せ)。セミノルムの正のスカラー倍などを考えれば結局、上連続な任意のセミノルムについて、あるが存在し、
が成り立つことを示せばよい。今、上連続なについて、は上連続であったのであるが存在して
が成り立つ。とせよ、するととなるについてとなるを とすると
となり、先の補題からとなり、なので
となる。よって
これでが上で連続であることが分かった。 ∎
注意.
Dugundjiの拡張方法はより強く、次のような写像が存在するということも含意している。
で
及びを充たすとき
これは拡張がに依存しない単位の分割によって行われているからである。
定理 3.
距離空間はノルム空間に閉集合として等長に埋め込める。さらにが完備であるときは、バナッハ空間に閉集合として等長に埋め込める。
証明.
とする。すなわちはの有限部分集合全体である。 そしてとし、ノルムを与えると、これはノルム空間になっている。 さての一点を固定し各について をつまりの有限集合について
という値を対応させる写像と定義する。 そして、をとする。これが等長埋め込みになっていることを示そう。
まず
がわかり
となるのでとなりが等長的であることがわかる。そしていま、
とする。つまりはの元で代数的に生成されたの部分線形空間である。 なので、のノルムをに制限することによっては自然にノルム空間とみなすことができる。 もちろんこのときは等長的である。
いまから がの中で閉であることを示そう。即ち内の点列がに収束するならば、であることを示す。を内の点列とすると、内の点列を用いてと書くことができる。 としよう。このときの定義から
となるようなとが存在する。と置くと、なので、 であるつまり、
なのでの部分列でのいずれかの元に収束するものがとれる。それをとし、としよう。 するとはもちろん連続なのでとなるが、そもそもであったのででなければならない。 これはつまり、ということなので、はの中で閉集合である。
定理の後半について述べよう。先までの議論から距離空間をノルム空間に等長に埋めるが、これはつまりの完備化にも等長に埋め込めるということである。(包含写像が等長的だからである。)距離空間の完備な部分空間は閉集合なのではバナッハ空間の閉集合となることがわかる。 よってはバナッハ空間に等長に閉集合として埋め込める。 ∎
注意.
一般に距離空間はバナッハ空間に閉集合として埋め込むことは出来ない。完備距離付け不可能な距離空間が存在するからである。(完備距離付け不可能な距離空間の例を一つ上げてみよ。)
以下の定理は図を描けば自明に思える類の定理のである。
補題 4.
二つのノルム空間とその閉部分空間及び同相写像が与えられているとする。このときとして、から自然に同相写像が誘導される。このときの拡張となっているような同相写像が存在する。
証明.
についてであり、についてであることに注意しよう。
定理2を用いてを拡張して写像を得る。そしてを と定義すると、で定義される写像はの逆写像になっているので、は同相写像である。
一方、に定理2を用いて拡張を得て、をで定義する。このときで定義されるはの逆写像になっているのでは同相である。
いまここでと定義するとこれは同相写像で、についてなので
となり、確かにはの拡張になっている。 ∎
注意.
次の定理に入る前に一つ注意をしておく。二つのノルム空間に対する直積空間のノルムのことである。この文章では一応のノルムを
で定義するが、以下の証明を見ればわかるようにの位相と両立していて を充たしさえすればなんでもよい。例えば上の定義の代わりにをや、と定義しても以下の証明には全く影響はない。
定理 5 (Hausdorff’s Metric Extension theorem0).
を距離付け可能空間でをその閉部分集合とし、にはの位相と両立する距離が与えられているとする。このときの位相と両立する上の距離で、上でと一致するものが存在する。
証明.
の距離を何か適当にと置く。定理3から等長埋め込みでがの閉集合であるものが存在する。同様にについても等長埋め込みが存在し、はの閉集合となる。
さてが閉埋め込みであることと、がの閉集合であることからもの閉集合であり、とは埋め込みであるからとは自然に同相である。つまりが同相写像を与える。この同相写像をとして補題4を用いて の拡張となる同相写像を得る。
さてをで与えられる自然な閉埋め込みだとして
を考えるとこれは埋め込みになっているので(実際には閉埋め込みであるが、閉であることは次の定理の証明でしか用いない)上の距離関数を
で定義すると、このはの位相と両立する。またについてでが等長であることからで定義される写像も等長なので、は上でと一致する。 ∎
定理 6 (Hausdorff’s Metric Extension theorem1).
を完備距離付け可能空間でをその閉部分集合とし、にはの位相と両立する距離が与えられているとし、更には完備であるとする。このときの位相と両立する上の完備な距離で、上でと一致するものが存在する。
証明.
か完備距離付け可能ならば先の定理の証明ではバナッハ空間として選べる。も同様にバナッハ空間を指定できる。このときは完備距離空間では閉埋め込みであることからはの閉集合であるからから誘導される距離で完備になる。 ∎
系 7.
距離付け可能空間が、その位相と両立する任意の距離で完備になるならば、はコンパクト空間である。
証明.
対偶を証明する。がノンコンパクトな距離空間であるときに集積点を持たない可算集合が存在する。このはの閉集合である。さて上の距離を
とする。するとこのはの位相と両立する。この事はとがともに可算離散位相であり同相であるということに他ならない。さて定理5からの拡張となるの位相と両立する上の距離が存在するが、この距離においてはコーシー列を成すが、が集積点を持たないことからは収束点を持たない。よっては完備ではない。 ∎
References
- [1] R.Arens, Extension of functions on fully normal spaces, Paciffic J. Math.2(1952),p11-22
- [2] H. Toruńczyk, A simple Proof of Hausdorff’s Theorem on extending metrics, Fund.Math.77(1972-1973),p191-193