パラコンパクトネス等々
この文書ではパラコンパクトの概念を導入し、コンパクトハウスドルフ空間を用いた簡潔なパラコンパクトネスの特徴付けを紹介する。これを用いてCW複体のパラコンパクト性を証明できるが、それはまた別のお話。
この文章では正則、正規という言葉をを仮定しない意味で用いてをを仮定する意味で用いる。また空間とはでかつ完全正則な空間のことである。
1 パラコンパクト性
定義 1 (局所有限性).
位相空間に於いての部分集合の族が局所有限であるとはの各点についての近傍が存在して
を充たすことである。
命題 2.
を位相空間の局所有限な族とする。このとき
が成立する。111CLは閉包作用素である。
命題 3.
明らかに
が成り立つ。逆向きの包含関係を示そう。 とする。は局所有限なのでの近傍が存在して
を充たす。と交わるの元をとするとから
が成立する。しかし有限個の和集合については
が成り立つので結局
つまり
系 4.
位相空間の局所有限な閉集合の族について
は閉集合である。
系 5.
位相空間の局所有限な族についても局所有限である。
定義 6 (細分).
集合の部分集合の族とする。このときがの細分であるとは
となることである。
定義 7 (パラコンパクト).
位相空間がパラコンパクトであるとは空間の任意の開被覆に対して局所有限でかつ開被覆であるような細分が存在することである。
明らかにパラコンパクト空間の族の位相的直和はパラコンパクトになる。
次の命題はコンパクトハウスドルフ空間が正規であることの証明のアナロジーと命題2からの帰結である。
命題 8.
222より強くパラコンパクトハウスドルフ空間は族正規空間であることが示せるが、それはまた別の話である。パラコンパクトハウスドルフ空間は
証明.
考える空間をとする。まず最初にが正則であることを示そう。の点とを含まない閉集合の任意の組を考える。このとき任意のについてとなる。の開近傍が存在する。なぜならのハウスドルフ性からを分離する開集合が存在するが
CLでは閉集合なのでとなるのでこのをとすれば良い。そして
を考えるとこれはの開被覆になっているのでパラコンパクト性からこの被覆の開細分で局所有限なが存在する。このときを考えるとこの族の元は細分性からあるについて
となる。よってならば
さてを考えるとであり、そして局所有限性から
なのでよって
がを分離する開集合となる。
次に正規性を証明しようをの交わらない2つの閉集合の任意の組とする。上よりは正則なので各についてとなるの開近傍が存在する。さて
を考えるとこれはの開被覆となっているのでパラコンパクト性からこの開被覆の開細分である局所有限被覆が存在する。さらに
を考えると上と同様の議論でならば
よってと局所有限性から
なのでよって
がを分離する開集合となる。 ∎
明らかにコンパクト空間はパラコンパクトである。さらに パラコンパクトである空間の重要な例として距離空間がパラコンパクトであることを示そう。 以下の定理の証明の中ではとし、で擬距離空間のを中心とする開球を表すとする。
定理 9 (Stone の定理).
擬距離空間の任意の開被覆に対し局所有限でかつ疎であるような開細分が存在する。特に擬距離空間はパラコンパクトである。333擬距離とは非退化性を仮定しない距離のことである。
証明.
M.E.Rudinによる簡潔な証明[7]を引用しよう。
を考えている擬距離空間として をの開被覆とする。ただし添字は整列されているものとする。整列可能定理を用いればこのように仮定しても一般性を失わない。そして自然数に対して開集合の族をについて帰納的に構成する。今、より小さい自然数については構成が終わっているとしてを次の3つの条件を充たすの点全体の集合として定義する。
| (1) | |||
| (2) | |||
| (3) |
そして
と定義する。こうして
が定義される。のときでもが空な条件となるだけで、が構成されがきちんと定義される。以上により帰納的に開集合の族の列
が構成される。そして
と置く。明らかになのでがの細分になってる事はすぐにわかる。
がの被覆となることを見よう。についてとなる最小のが存在する。そしてを十分大きく取ればとなる。このについてもし
ならばもちろんである。一方
ならばとなるのでつまり となる。いづれにせよなので
となり、がの開被覆であることがわかる。
が局所有限である事を見よう。を任意に与えるとが被覆なので となるが存在し、を十分大きく取れば
となる。このとき次が成り立つ
このからの局所有限性はすぐに従う。またこのからが疎であることもわかる。 これらの証明をしよう。
の証明:ならば特になのでの定義のからならばそしてからなので
が成立する。いまここでが成立しない、つまりがと交わると仮定すると
よりあるについてが存在するが、及びからととなるので
がわかりとなるから矛盾。よってが成立する。[の証明終わり]
の証明:まずならばが成立することを示そう。と仮定しても一般性を失わない。の定義から
となるが存在する。さてよりの定義のからが成り立ち、から
となる。 よっての定義のからなので、上と合わせてであるから
を得る。 これと三角不等式から
なので結局
そしてからなのでとなり
が成り立つ。
さてもしが成り立たない、つまりがの二つと交わるなら
となるが存在するが
となるがなので矛盾する。よってが成立する。[の証明終わり]
以上で証明は完結した。 ∎
次のtube lemma と呼ばれる定理は簡単だが、幅広い応用を持つ。
定理 10 (tube lemma).
を位相空間、をコンパクト位相空間とする。更にとの開集合が
を充たしているとする。このときにおけるの開近傍が存在して
を充たす。
証明.
と置く
と置くと、は開集合族で直積の開集合の定め方から
が成り立つのではの開被覆である。はと同相であるからコンパクトなので
となるの有限部分族が存在する。そして明らかに
であり
と置けばで
が成り立つので証明が終わる。 ∎
一般にパラコンパクト性は直積で全くもって保たれないが、次の事が知られている。
系 11.
パラコンパクト空間とコンパクト空間の直積はパラコンパクト
証明.
をの開被覆とする。そして
と定義するとのコンパクト性とtube lemmaから
となる。のパラコンパクト性から局所有限なの開細分 が存在する。細分なので各についてとなるが存在する。よって
となる。の定義からはの有限個の元の和集合で被覆される。この毎に存在するを被覆するの有限個の元を
と書くことにすると
が成立する。さての開集合の族
がの細分であることは明白である。またがの開被覆を成しているのでの定め方からが開被覆であることがわかる。が局所有限であることを示そう。
とする。の局所有限性からの近傍が存在してはの有限個の元としか交わらない。と交わるの元を
と置く。このときはの近傍であり、はの有限個の元
としか交わらない。そして各については有限集合なのではの有限個の元としか交わらない。よっては局所有限である。 ∎
tube lemmaのもう一つの応用として次の変数の片側がコンパクト空間になっている2変数の実関数に関する性質を証明しよう。これはある意味で関数の最大値が連続的に動く事を示している。
系 12 (連続関数のsupの連続依存性).
位相空間とコンパクト空間及び上の実連続関数について
で定義されるは上の実連続関数である。
証明.
の任意の点での連続性を示す。を任意に与える。そしてとし、と置く。はコンパクトなのではコンパクト集合である。そしてをの距離とすると
は連続関数なのでは連続である。さての連続性から
はの開集合で明らかにである。よってtube lemmaからの開近傍が存在して
となる。このときの定義との定義からについて
| (1) |
が成り立つ。のコンパクト性から各について
となるが存在するので、ならばから
となるので点での連続性は示された。は任意なので結局は上連続である。 ∎
以上で得られた結果を用いて次のパラコンパクト性とコンパクトハウスドルフ空間の関係を語る定理を証明しよう。
定理 13.
をコンパクトハウスドルフ空間とし、について
が正規であるとする。このときはパラコンパクトである。
証明.
をの開被覆とする。そしての開集合からなる族を
となるからなるものとする。そしてとしと置く。更に
と置く。この集合は包含写像のグラフとなっているのでのハウスドルフ性からの閉集合となり、明らかに
となる。そしての正規性から上で恒等的にの値をとりの補集合で恒等的にの値を取る実連続関数が存在する。さてを
とすると明らかに連続関数であり、のコンパクト性から先の系により
はの連続関数であり、上の擬距離である。この事からの開球の開集合であり、擬距離から誘導される位相は元々のの位相より粗い。つまり
が成り立つ。
と置くと族はの開被覆となり、擬距離空間はパラコンパクトであることからにおけるの局所有限開細分が存在する。この族はからの局所有限開被覆でもある。またを任意に固定してについてから
よっての中444であることを思い出そうで
となる。を固定するごとにはの閉集合であるから
が成立する。はの中で閉包をとっているということである。更にでがの補集合では恒等的にの値を取ることから
が従う。結局
が任意のについて成り立つ。 そしてがの細分であることから同様に
が成り立つ。 さてはコンパクト空間の閉集合であることからコンパクトである。よってとから毎にの有限部分集合が存在してはの被覆となる。そして
と置くとこの族はの開被覆となりからとなるのでの細分となる。はの局所有限細分でもあり、は有限集合であることから結局はの局所有限細分となる。よってはパラコンパクト。 ∎
この定理の以下の系の証明は明らかであろう。
系 14.
局所コンパクトハウスドルフ空間とその1点コンパクト化について
が正規ならはパラコンパクト
系 15 (玉野の定理).
空間とそのストーン・チェックコンパクト化について
が正規ならはパラコンパクト
これらの結果を用いて次のパラコンパクト空間の便利な特徴付けを証明する。
定理 16.
空間について以下は同値
| (1) | |||
| (2) |
証明.
系11よりコンパクトハウスドルフ空間についてはパラコンパクトハウスドルフ空間である。よってである。
定理13を踏まえると、を部分空間として含むコンパクトハウスドルフ空間の存在を言えば良いが、今はだと仮定しているので、例えばのストーンチェックコンパクト化や十分に冪の大きいチコノフキューブなどがを部分空間として含むので証明は完結する。555空間は、コンパクトハウスドルフ空間の部分空間として実現できるが、逆にコンパクトハウスドルフ空間の部分空間は空間になる。 ∎
定理16を用いてパラコンパクト性の色々な性質を証明しよう。
系 17.
パラコンパクトハウスドルフ空間の集合はパラコンパクト
証明.
をパラコンパクトハウスドルフ空間の集合とすると任意のコンパクトハウスドルフ空間についてはの集合となり正規空間の集合は正規だからはとなり先の定理からがパラコンパクトであることがわかる。 ∎
次の定理は補題11の拡張である。
系 18.
666この定理のコンパクトをリンデレフに変更するともはや定理は成り立たない。例えばゾルゲンフライ直線同士の積などが反例になる。パラコンパクトハウスドルフ空間とコンパクト空間との直積はパラコンパクト
証明.
をパラコンパクトハウスドルフ空間、をコンパクト空間とする。コンパクト空間はリンデレフなので特にはリンデレフ空間なので空間であり、特に空間である。よってはあるコンパクトハウスドルフ空間の部分集合として実現できる。(例えばや十分に冪の大きいチコノフキューブの部分空間となる。)そして、補題11よりはパラコンパクトハウスドルフ空間であり、のコンパクト性からはの集合となるのではパラコンパクトハウスドルフ空間の集合となるので、先の補題からはパラコンパクトになる。 ∎
系 19.
777より一般に正規リンデレフ空間は強パラコンパクト、特にパラコンパクトであるが、これはまた別の話。コンパクトな空間はパラコンパクト
証明.
直前の補題にのときを適用すればわかる。 ∎
局所コンパクトハウスドルフ空間のパラコンパクト性について次の事実がある。
事実 20.
局所コンパクトハウスドルフ空間がパラコンパクトであるための必要十分条件は空間がコンパクトな局所コンパクトハウスドルフ空間の位相的直和となること。
系 21.
パラコンパクトハウスドルフ空間とパラコンパクト局所コンパクトハウスドルフ空間の直積はパラコンパクト。
2 おまけ
証明はかなり省く
事実 22.
正規空間の可算包含列
においてはの閉集合となっているとする。このときこの列の帰納極限空間は正規
証明は例えば[6]参照
定理 23.
コンパクトハウスドルフ空間の包含列の帰納極限はパラコンパクト
証明.
コンパクトハウスドルフ空間が空間であることと 上の事実からはであり、さらにコンパクトである。ゆえに系19よりパラコンパクトである。 ∎
系 24.
無限次元射影空間はパラコンパクト
References
- [1] 児玉之行,永見啓応,位相空間論,岩波書店,1974
- [2] ニコラ・ブルバキ,数学原論 位相1
- [3] 森田紀一,位相空間論,岩波全書331,岩波書店1981
- [4] E.Michael,A Note on Paracompact Spaces ,Proc.Amer.Math.Soc.vol4(1953)
- [5] K.Morita,paracompactness and product spaces,Fund.Math.vol50(1962),pp.223-236
- [6] K.Morita,On spaces having the weak topology with respect to closed coverings,Proc.Japan Acad.Vol29 No.10(1953)
- [7] M.E.Rudin,A New Proof that Metric Spaces are Paracompact,Proc.Amer.Math.Soc.vol20(1969),p603