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可分距離化可能空間における次元論

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日
Abstract

本稿では 可分距離化可能空間 における次元論の 基本的な定理を 紹介することを目的としている. 主に 可分距離化可能空間において 三つの次元, 小さい帰納的次元, 大きい帰納的次元, そして 被覆次元の三つ の次元の基本的な事項, 例えばこれら三つが一致することや, ユークリッド空間への埋め込みの存在, そしてユークリッド空間の次元の 決定などを 紹介する. また,本稿では 0次元空間への分解に着目して 分解次元というものを独自に導入することで 上記三つの次元が一致するということを 平易に説明しようと試みた. もちろんこの次元も可分距離化可能空間においては 上記三つの次元と一致する.

1 イントロ

1.1 背景など

本稿では可分距離化可能空間に関する 位相次元論を 0 次元空間を元にして 構築する. 次元とは何かという問いに 答えるのは難しい. 次元とは大まかには 空間の自由度を表す整数 であるが,今や数学においては 多種多様な空間に対して 様々な種類の次元が考えられており, これらを包括して説明するのは 少々難しい. しかし こと位相空間 において 次元論とは, 位相空間の 連結性の さらに精密な 分類のことであると述べることができるだろう. 次元論においては 空間の分かち難さを 近傍系の境界(大小の帰納的次元)や 被覆の細分の度数(被覆次元)などで 測る. これらは一般的な状況においては 異なる場合があるが 可分距離化可能空間においては 全て一致するというのが次元論の押さえておくべき 基本的な定理の一つである. 本稿の特徴は, 上記の目的のために 本稿では 0次元空間への分解に着目して 分解次元というものを独自に導入することで 理解を容易にすることを試みた点である. もちろんこの次元も可分距離化可能空間においては 上記三つの次元と一致する.

本稿では 次元論の古典的文献 [3] の 大まかな 内容をカバーし, 古い書物の内容を 伝えることを目的にしている. 具体的に述べると 三つの次元の一致性 (定理 2.29)と, ユークリッド空間の次元の決定(定理 3.6), 有限次元空間のユークリッド空間への埋め込み(定理 6.8), そして領域不変性定理(定理 4.2) である. 多様体のユークリッド空間への埋め込み (定理 7.7)は 現代人にとってニーズがあろうと思い 記述した.

次元論のより発展的な話題に関しては より 時代の下ったものとして [2] や, 可分距離化可能性よりも一般的な状況を 扱っている書物 [6] がある. またごく最近の 次元論に関する書物として [1] があり,引用する際には 入手性の高さから これ を参照するとよい.

本稿の構成は以下のようになっている. セクション1 の残りでは, 次元論で使う ジェネトポの基本事項を 紹介し, その後球面などの特別な空間 の本稿におけるノーテーションを 提示する.

セクション 2 では 可分距離化可能空間に対する次元論を展開する. まず分解次元と小さい帰納的次元,大きい帰納的次元, そして被覆次元を導入し その後小さい分解次元の基本事項を証明する. 特に可算和定理が重要である. そもそも 小さい帰納的次元に関する 可算和定理の証明に 触発されて, 分解次元を導入した. 分解次元は,空間を何個の 0 次元空間の和で表せるかという量である. この量自体は可分距離化可能空間において 小さい帰納的次元に等しいことが古くから知られている. 分解次元の定義における 0 次元部分空間 は開集合や閉集合,あるいはボレル集合であることや ベール集合であることすら仮定されていない. このようなワイルドな可能性のある部分集合の和集合への分解 の個数で次元が定義できることはとても興味深い. 本稿においては, 異なる次元関数が等しいことを証明するのに, 考えている次元関数に関して,開基であってその境界が 全体空間の次元より一つ小さい次元を持つということを 基本戦略としている. 被覆次元を上から抑えるとき以外はこの方法によって 次元関数同士の評価を行なっている. また被覆次元 を帰納的次元で上から抑える 定理 2.21 の直接的な証明は分解次元を導入した一つの利点である.

セクション 3 ではブラウワーの不動点定理の証明を行う. 不動点定理はユークリッド空間の次元の決定に必要である. というのも 大まかにはブラウワーの不動点定理と n1<dimn が同値だからである.

セクション 4 以降は次元論の応用であり,好きな順番で読むことができるだろう. セクション 4 ではユークリッド空間の 開集合を同じ次元のユークリッド空間に 単射連続写像で写すとその像も開集合であるという 領域不変性定理を次元論の応用として証明する.

セクション 5 では n次元ユークリッド空間の n次元部分空間は内点を持つことを証明する. これは次元論の応用というよりもユークリッド空間の 可算稠密推移性の応用と見る方が適切である.

セクション 6 では n次元空間を 2n+1次元の ユークリッド空間に埋め込めることを証明している. また, n次元空間の普遍空間についても言及している.

セクション 7 では多様体の分解次元が有限であるということのみを 用いて多様体を可微分写像によって ユークリッド空間に埋め込んでいる.

1.2 ジェネトポの基本事項

本稿では,正規性などの分離公理を仮定するときは 常に T1 を仮定する.

Theorem 1.1 (Urysohnの距離化可能定理).

X を第二可算な正規空間とする. このとき X[0,1]0 に位相的に埋め込み可能である. 結果的に Xは距離化可能である.

Proof.

証明は省略する. ∎

Theorem 1.2 (Tietze-Urysohnの拡張定理).

X を正規空間とし, A をその閉部分集合, f:A[0,1] を連続写像とする. このとき連続写像 F:X[0,1] が存在して F|A=f を満たす.

Lemma 1.3 (The tube lemma).

X を位相空間とし, K をコンパクト空間とする. そして xX とし UX×K の開集合とする. もしも {x}×KU が成り立つならば x の近傍 N が存在して N×KU を満たす.

Proof.

K はコンパクトで U は開集合なので x の開近傍 O1,,OnK の 開集合の族 V1,,Vn が存在して 以下が成り立つ.

(1.1) {x}×Ki=1nOi×ViU.

ここで N=i=1nOi とすれば証明が終わる. ∎

Definition 1.1 (開収縮).

位相空間 Xの開被覆 𝒰 に対して {VUU𝒰}開収縮であるとは,本稿では {VUU𝒰}X の開被覆であって, 任意の U𝒰 について

(1.2) CL(VU)U

を満たすこととする.

Lemma 1.4 (被覆の収縮補題).

正規空間X の有限開被覆 {U1,,Um} について,開被覆 {V1,,Vm} が存在して CLViUi が満たされる. つまり 正規空間の 有限開被覆には 開収縮が存在するということである.

Proof.

帰納法によって証明する. 各l{1,,m} について 以下の条件を満たす列 V1,,Vl を構成する.

  1. (1)

    任意の i{1,,l}について CLViUiが成り立つ;

  2. (2)

    {V1,,Vl,Uk+1,,Um}X の被覆である.

l=k まで上記の列が構成できたとして 集合Vk+1 を構成しよう. さて A を以下のように定義する.

(1.3) A=(i=1kXVi)(i=k+1mXUi).

このとき Aは閉集合である. 条件 (2) から AUk+1 が従う. そして X の正規性から X の開集合 Vk+1 であって AVk+1 かつ CLVk+1Uk+1 を満たすものが存在する. これは条件 (1)(2)l=k+1 の場合を満たす. よって l=mの時を考えれば 証明が終わる. ∎

集合族の相似という概念を導入する.

Definition 1.2.

I を添字集合とする. 集合 X の部分集合族 𝒜={Ai}iI={Bi}iI相似であるとは Iの任意の部分集合S について sSAs=sSBs= が同値になることである. 同じことだが sSAssSBs が同値になるということでもある.

位相空間論では特に 特に BiAi などの包含関係が存在して AiBi が開集合だったり 閉集合だったりするような状況において 相似な集合族を構成できるかどうかに興味がある. 本稿では一般的な話は行わず, 差し当たり必要な 有限集合族の場合に限って話を進めるということにする.

Lemma 1.5.

Xを 正規空間とする. そして {F1,,Fm}{U1,,Um} を それぞれ 閉集合族と開集合族で FiUi を満たしているとする (Xを被覆しているなどの条件はつけない). このとき 開集合族集合族 {W1,,Wm} が存在して FiWiCLWiUi を満たしさらに {F1,,Fm}{CLW1,,CLWm} は相似である.

Proof.

帰納法によって証明する. 自然数 l{1,,m} について以下の条件を満たす W1,,Wl を構成する.

  1. (1)

    {W1,,Wk}{Fk+1,,Fm}{F1,,Fm} と相似である;

  2. (2)

    任意の j{1,,l}について FjWj かつ CLWjUj を満たす.

FjWj かつ CLWjUj 今から l=kまで上記の列が構成できたとして Wk+1を構成する. 今 {CLW1,,CLWk}{Fk+1,,Fm} の有限個の共通部分で表される集合のうち Fk+1と交わらないものを 𝒦とかく. そして H=X𝒦 と定義すると, 𝒦 は有限集合であるから HX の開集合であり Fk+1H を満たす. ここで X の正規性を用いて Wk+1Fk+1Wk+1 かつ CLWk+1HUk+1 となる開集合とする. このとき 𝒦 の定義から {CLW1,,CLWk}{Fk+1,,Fm}{CLW1,,CLWk+1}{Fk+2,,Fm} は相似である. よって帰納法の仮定から {F1,,Fm}{CLW1,,CLWk+1}{Fk+2,,Fm} は相似である. これで Wk+1 が構成できた. そこでl=m とすれば 証明が終わる. ∎

Lemma 1.6.

X を可分距離化可能空間とする. X の開基とする. このとき の部分集合 𝒜 で開基になりさらに card(𝒜)0 を満たすものが存在する.

Proof.

X は可分距離化可能空間なので その任意の部分集合も 可分かつ距離化可能である. よって X の任意の部分集合はリンデレフである. 今 X の可算な開基 𝒞を取る. 任意の U𝒞 に対して が開基であることと, Uがリンデレフである ことから可算集合 𝒜UV𝒜UV=U となるものが存在する. そして以下のように 𝒜 を定義する.

𝒜=U𝒞𝒜U.

これ が求めるものになっている. ∎

Definition 1.3.

X を位相空間とし SX とする. このとき S の境界集合を BdryXS で表す. xBdryXSであるとは 任意の x の 近傍 H について HS かつ HS を意味する. 一般に BdryXS=CLXSIntXS である.ここで CLX, IntXX における閉包と 開核を表す. 全体空間が明らかな場合には ただ単に BdryS, CLS, IntS などと表す.

Lemma 1.7.

X を位相空間とし, ASX とする. このとき BdrySASBdryXA が成り立つ.

Proof.

一般に位相空間 TMT について PMH となる開集合 O と閉集合 C について BdryTMHP であり, BdryTM=CLT(A)IntT(A) に注意しよう.

さて, O=IntXAC=CLXAとおく. すると OSCS はそれぞれ S の開集合と閉集合で OSACS を満たす. よって BdrySA(CS)(OS) を満たす. ここで (CS)(OS)=(CO)S=(CLXAIntXA)S=SBdryXA となる. これは BdrySASBdryXA を意味する. ∎

Lemma 1.8.

Xを位相空間とし, NAX とする. すると NAの開集合であるとき BdryAN=A(CLX(N)N) が成り立つ.

Proof.

まず BdryA(N)=CLA(N)IntA(N) である. ここでNAの開集合なので IntAN=Nである. そして CLA(N)=ACLXN である (この等式は一般に成り立つ). すると BdryA(N)=CLA(N)IntA(N)=(ACLXN)N=A(CLXNN) が成り立つ. ∎

1.3 特定の空間のための記法

Definition 1.4.

n1とする. このとき 𝔻n={xnx1} とし 𝕊n1={xnx=1} と定義する. ここでノルム は通常の内積から誘導されるノルムとする.つまり 𝔻nn 次元閉球体で 𝕊n1はその境界である n1 次元球面である.

Definition 1.5.

n1 とし, i{1,,n} とする. このとき 𝕀n=[1,1]n と定義し 𝕀+n,i={x𝕀nxi=1}𝕀n,i={x𝕀nxi=1} と定義する. さらに Bdry𝕀n𝕀n の境界集合 とする. このとき Bdry𝕀n=i=1n𝕀+n,i𝕀n,i であることに注意しよう. また 𝕀n𝔻n に同相であり, Bdry𝕀n𝕊n1 に同相であることにも注意しよう.

Definition 1.6.

n1 とする. このとき k{0,,n} について (n,k)n の部分集合であって ちょうど k個の成分が有理数になっているものを表す. また (n,k)n の点で その 座標のうち有理数であるものの個数が高々 k個であるもの全体を表す. そして (n,k)n の点であって その 座標のうち有理数であるものの個数が少なくとも k 個であるもの全体を表す.

Definition 1.7.

距離空間 (X,d)xX, r(0,) について 𝐔(x,r;d) で 中心x で半径 rr による 開球を表すとする. つまり 𝐔(x,r;d)={aXd(x,a)<r} である. 同様に閉球を 𝐁(x,r;d)={aXd(x,a)r} と定義する.

2 次元

本稿の本題である次元論 を展開するのがこの章の目的である.

2.1 次元の導入と分解次元

まず最初に 本稿 で扱う 次元を導入する. そのうち 分解次元は 本稿で 三つの基本的な次元の一致性の証明を 円滑にするために導入するものであり,一般的な概念ではない. ただし,可分距離化可能空間においては,結局その値は三つの次元と一致する.

Definition 2.1.

位相空間 X の 部分集合 Sclopenであるとは, S が開かつ閉集合であるときにいう. 次に 位相空間 X0次元である とは X が空集合ではなく X のclopen集合からなる開基 が存在するときにいう. この 0 次元というのは, この意味で用いる用語であり, 特定の次元関数を指しているものではない. ただし,後にわかることだが,結局は 本稿で紹介する次元関数のどれでも, それが 0 以下であることと,この 0 次元空間の概念は一致する.

Definition 2.2.

X を可分距離化可能空間とする. このとき X の分解次元が 1,つまり DDimX=1 であるとは X= と定義する. このとき DDimX0 と表す. さらに 整数 DDimX を 以下を満たす最小の整数 m で定義する. Xm+1 個の部分空間 X0,,Xm が存在して DDimXi0X=i=0mXi を満たす. この定義のもと, DDimXn とは Xn+1 個の部分空間 X0,,XnDDimXi0X=i=0nXi を満たすものが存在することを意味する. また, DDimは位相不変量であることがわかる. この次元 DDimXX分解次元 と呼ぶことにする.

Definition 2.3 (小さい帰納次元).

空間 X の小さい帰納次元 indX を帰納的 に次のように定義する. indX=1であるとは X= であるとき,またその時に限りこのように定義する. そして indXn1が定義されたとして, indXn というのを X の任意の点 xx の任意の近傍 U に対して x の 近傍 N が存在して ind(BdryN)n1 かつ NU を満たす 以上のように定義する. ちなみに indX=n とは indXn が成り立ち かつ indXn1 の否定が成り立つという意味である.

Definition 2.4 (大きい帰納次元).

空間 X の大きい帰納次元を帰納的 IndX を次のように帰納的に定義する. IndX=1 とは X= と同値であると定義する. そして IndXn1まで定義されたとして IndXn とは X の 閉集合 K と開集合 UKU を満たすものについて 開集合 V が存在して KVCLVU そして IndBdryVn1 を満たす. 上記のように定義する. ちなみに IndX=n とは IndXn が成り立ち かつ IndXn1 の否定が成り立つということ を意味する.

最後に被覆次元を紹介する. 集合 Xの 集合族 𝒰xXについて deg(𝒰;x)xを含む 𝒰 の個数とする. そして deg(𝒰)supdeg(𝒰;x) と定義する.

Definition 2.5.

位相空間 Xn0 について dimXnであるとは Xの任意の有限開被覆 𝒰 について, その細分となる開被覆 𝒱 が存在して deg(𝒱)n+1 となることである. また n<dimX とは dimXn の否定が成り立つときにそう書き, dimX=n とは dimXn かつ n1<dimX を意味するとする.

ここからはまず,分解次元の基本的性質を紹介する. 分解次元 DDimの定義から直ちに次の二つのことがわかる.

Lemma 2.1.

X を可分距離化可能空間とし, SX とする. この時 DDimSDDimX が成り立つ.

Proof.

X=i=0nAi となる 0 次元空間を取り Bi=SAi とすれば良い. 0次元性は 部分空間に遺伝するのである. ∎

Lemma 2.2.

X を可分距離化可能空間とし, A,BX とする.この時 DDimAn かつ DDimB0 ならば DDim(AB)n+1 が成り立つ.

Proof.

定義から直ちに従う. ∎

Proposition 2.3.

X を可分距離化可能空間とする. このとき DDim0 であることと, 可算開基であってclopenな集合からなるものが存在することは同値である.

Proof.

補題 1.6 から従う. ∎

Lemma 2.4.

可分距離化可能空間 X について DDimX0indX0 は同値である.

Lemma 2.5.

X を可分距離化可能空間とするこのとき DDimX0 であることと 任意の X 内の交わらない二つの閉集合 G,H に対して clopen集合 O が存在して GOHO= を満たすことは同値である. つまり, DDimX0IndX0 は同値である.

Proof.

後半の条件から DDimX0 が導かれるのは明らかなので逆を示す.

DDimX0 なので 各点に可算近傍系で clopenなものからなるものが存在する. そのようなものを 各 pG について 𝒩p と表すことにする. さらに H が閉集合であることから任意の V𝒩p について VH= と仮定してもよい (必要なら {S(XH)}S𝒩p と置き換えれば良い). そして DDim(XG)0 が成り立つので, XG には XG の clopen な集合からなる開基 が存在する. 今 XGX の開集合なので の元は X のclopen集合でもある. さて以下の集合族を考える.

(2.1) pG𝒩p.

これは は X の開基になるので, 補題 1.6 からこの集合族の部分族で 可算な開基 {Ui}i0 が存在する. ここで UiG ならば UiH= に注意しよう. そして V0=U0 と定義し, i>0のときは Vi=Uij=0i1Uj と定義する. すると 任意のi,j0 について ij ならば ViVj= となる. また 各 Vi は開集合で X=i0Vi となる. そして以下のように Oを定義する.

(2.2) O=ViGVi

すると, {Vi}i0 が互いに素な族であることから次の等式が成り立つ.

XO=ViG=Vi.

故に O はclopenであり, GO を満たす. さらに Vi について ViG ならば ViH= なので HXO となるから O は求める集合になっている. ∎

Proposition 2.6.

X を空でない可分距離化可能空間とする. もしも可算個の閉集合の族 {Ai}i0DDimAi0X=i0Ai を満たすならば DDimX=0である.

Proof.

X が 補題 2.5 の条件を満たすことを証明しよう. X の交わらない二つの閉集合 G, Hを与える. 今から 帰納的に i0 に対して Pi, Qi, Ri, そして Li を構成する. まず GA0HA0A0 のなかの交わらない閉集合であることに注目しよう. 集合 A0DDimA00 を満たすので, 補題 2.5 より A0 の中のあるclopen集合 P0Q0が存在して以下の条件を満たす.

(2.3) GA0P0;
(2.4) HA0Q0;
(2.5) P0Q0=;
(2.6) P0Q0=A0.

さて A0 は閉集合だから P0Q0X の閉集合でもあるし, GP0HQ0X の交わらない閉集合である. ここで X の正規性(距離化可能空間は常に正規である)を用いて 以下を満たす X の 二つの開集合 R0L0 を得る.

(2.7) GP0R0;
(2.8) HQ0L0;
(2.9) CL(R0)CL(L0)=.

そして 一般に Pi, Qi Ri, Li を帰納的に 以下を満たすように定義する.

(2.10) PiQi はAiのclopen集合;
(2.11) CL(Ri1)AiPi;
(2.12) CL(Li1)AiQi;
(2.13) PiQi=;
(2.14) PiQi=Ai;
(2.15) RiLi はXの開集合;
(2.16) CL(Ri1)PiRi;
(2.17) CL(Li1)QiLi;
(2.18) CL(Ri)CL(Li)=.

このように構成できることは 各 Ai がclopenであることと X の正規性から従う. このとき任意の i0 について以下が満たされる

(2.19) AiRiLi;
(2.20) CL(Ri1)Ri;
(2.21) CL(Li1)Li.

そして R=iRi, L=iLi とすると RLX の開集合である. ここで X=iAiRL なので X=RL が得られる. 矛盾を導き出すために xRL が存在すると仮定しよう. すると xRixLj となる i, j が存在するが k=max{i,j} とおけば xRkLk= となり矛盾する. つまり RL= である. 集合 RLは交わらない開集合で定義から GRHL を満たす. そして RL=X なので RL は閉集合でもある. このことは補題 2.5から DDimX=0 を意味する. ∎

Definition 2.6.

X を位相空間とする. X の部分集合 SFσ であるとは SX 内の可算個の閉集合の和集合として表される時に いう.

Corollary 2.7.

可分距離空間が 0 次元であるような可算個の Fσ 集合の和集合で表されるのならば全体空間も 0 次元である.

Theorem 2.8.

n0 とする. X を可分距離空間とする. このとき X の可算個の Fσ 集合 {Ai}i0 が存在し DDimAinX=iAi を満たすならば DDimXn である.

Proof.

n に関する帰納法で証明する. n=0 の時は既に 命題 2.6で 証明されている. n+1 より小さい数では定理が成り立つとする. このとき 可算個の閉集合 {Ai}i0 が存在し DDimAin+1X=i0Ai を満たすと仮定してもよい. このとき B0=A0, Bi=Aij=0i1Aj と定義する. すると各 BiFσ 集合であり DDimBin+1 を満たしさらに Bi たちは交わらず X=i0Bi が成り立つ. さて DDimn+1 の定義から 各 i0 について Bi の部分集合 MiNiBi=MiNiDDimMinDDimNi=0 となるものが存在する. 次に M=iMiN=iNi と定義する. 各 Mi は互いに交わらないので Mi=MBi となる. よって MiM のなかで Fσ 集合である. よって帰納法の仮定より DDimMn となる. 同様に DDimN=0である. XMNの和集合なので, 補題 2.2から DDimXn+1 が成り立つ. ∎

さて今から DDimnnDDim𝕊nn を証明する.

Lemma 2.9.

n0 とする. このとき n0次元である.

Proof.

一点集合は閉集合でなおかつ 0 次元なので 命題 2.6 から導かれる. ∎

Lemma 2.10.

n0 とする. このとき ()n0 次元である.

Proof.

x=(x1,,xn)()n をとる. 任意に ϵ>0 をとり, 各 i{1,,n} について ηi,κi>0 を以下の条件を満たすようにとる.

  1. (1)

    i について ηi<ϵ かつ κi<ϵ;

  2. (2)

    (x1η1,,xnηn)n;

  3. (3)

    (x1+κ1,,xn+κn)n.

条件 (2), (3) を満たす ηi,κi が存在するのは の中で が稠密だからである. U=i=1n(xiηi,xi+κi) かつ C=i=1n[xiηi,xi+κi] とおく. これらの集合について U()n=C()n なので U()n()n のclopen集合であり, x の近傍でもある. ϵ は任意なので各点 x について ()n 内の clopenな近傍系が存在することがわかった. よって DDim()n=0 である. ∎

Lemma 2.11.

n1 とし k{0,,n} する. このとき DDim(n,k)=0 である.

Proof.

I(n,k){1,,n1} の濃度がちょうど k 個の 部分集合全体とする. そして σ={i1,,ik}I(n,k)v=(v1,,vk)k について S(σ,v) を 任意の j{1,,k} について 第 ij 座標が vj になるような n の点全体とし, T(σ,v) を 任意の j{1,,k} について 第 ij 座標が vj になり, それ以外の座標が無理数に属するような n の点全体の集合とする. このとき以下が成り立つ.

(2.22) (n,k)=σI(n,k)vkS(σ,v).

さて 各 S(σ,v)n の閉集合であり ()nk と同相なので DDim(T(σ,v))=0 がわかる. 故に I(n,k)k は高々可算集合なので, 命題 2.6 から DDim(n,k)=0 が従う. ∎

Lemma 2.12.

n1 とし k{0,,n} とする. このとき DDim(n,k)kDDim(n,k)nk が成り立つ.

Proof.

まず以下が成り立つ.

(2.23) (n,k)=i=0k(n,i)=(n,0)(n,1)(n,k);
(2.24) (n,k)=i=kn(n,i)=(n,k)(n,k+1)(n,n).

よって 補題 2.11 から DDim(n,k)kDDim(n,k)nk

Lemma 2.13.

n0 とする. このとき DDimnnDDim𝕊nn が成り立つ.

Proof.

明らかに n=k=0n(n,k) なので, 補題 2.11 から DDimnn を得る (補題2.12からもわかる). 次に 𝕊n について考えよう. は n の一点コンパクト化であり, 𝕊n=(E0{})k=1nEk である. そして 命題 2.6 から DDim(E0{})=0 なので, DDim𝕊nn が導かれる. ∎

indを使った別証明.

m1とする. m+1𝕊m+1 はともに境界が 𝕊m となる開集合からなる開基を持つ. よって DDimm+1DDim𝕊m+1DDim𝕊m+1DDim𝕊m+1 が成り立つ. 𝕊1 は境界が2点になるような開集合からなる開基を持つから DDim𝕊11 である. もしくは が有理数と無理数という二つの 0 次元集合の和であることと 𝕊1の 一点コンパクト化であることを用いても DDim𝕊11 であることがわかる. よって帰納的に DDimnnDDim𝕊nn が成り立つ. ∎

Proposition 2.14.

第二可算な n 次元位相多様体 M について DDimMn が成り立つ.

Proof.

局所ユークリッド性と 第二可算性と DDimnnと 定理 2.8 から命題が成り立つことが従う. もしくは 境界が 𝕊n1 と同相な開集合からなる開基が存在することと 系 2.17 からもわかる. ∎

2.2 帰納的次元と分解次元の一致

Lemma 2.15.

X を可分距離化可能空間とし, AX の部分集合 で DDimA=0 をみたすとする. そして KX の閉集合とし X の開集合 UKU を満たしているとする. このとき X 内の 開集合 W が存在して KWUABdryXW= が成り立つ.

Proof.

まず X の正規性から開集合 V であって KVCLX(V)U となるものをとる. そして L=CLX(V)とおく. ここで DDimA=0 より LA の 近傍 NALANUA かつ BdryAN= となるものが存在する. 今から NKACLX(NL) は互いにもう一方の閉包と交わらないことを証明する. 最初に NACLX(NL) について考える. 明らかに

(2.25) CLX(N)(ACLX(NL))=.

であり,また以下が成り立つ.

CLX(K)(ACLX(NL)) =K(ACLX(NL))
K(ACLX(N))
K(A(LA))
K(A(KA))
=K(A(KA))
=(KA)(KA)
=.

以上の計算を組み合わせると CLX(NK)(ACLX(NL))= を得る. さらにN=NAなどを使って以下の計算をする.

NCLX(ACLX(NL)) NCLX(ACLX(N))
=NACLX(ACLX(N))
=NACLA(A(ACLX(N)))
=NACLA(ACLA(N))
=NCLA(ACLA(N))
=N((ACLAN)BdryAN)
=N(ACLAN)
=.

また KVであることとXVが閉集合であることから以下が従う.

KCLX(ACLX(NL)) KCLX(ACLX(L))
=KCLX(AL)
KCLX(XL)
KCLX(XV)
K(XV)
V(XV)
=.

故に KCLX(ACLX(NL))= である. 以上のことから NKACLX(NL) は互いにもう一方の閉包と交わらない. よって XT5 であることから X の開集合 W が存在して NKWCLX(W)(ACLX(NL))= を満たす. 後半の条件から以下が導かれる.

(2.26) ACLXWACLX(NL).

ここで CLX(NL)=CLXNCLXL=(CLXN)L であり, LANなので以下の包含関係が得られる.

(2.27) ACLXWACLXN.

必要なら WVWに置き換えて WV としてもよい. さて以上と 補題 1.8 を踏まえると以下を得る.

ABdryXW =A(CLX(W)(XW))ACLX(N)(XN)
=A(CLX(N)N)=BdryAN=.

ゆえに ABdryXW= が導かれる. ∎

Theorem 2.16.

X を可分距離化可能空間とする. この時 DDimXn であることと X の開基 {Vi}i0 が存在して DDimBdryXVin1 であることは同値である.

Proof.

最初に DDimXn と仮定する. すると X の部分集合 A0,,An が存在して DDimAi0i=0nAi=X を満たす. 補題 2.15 より, 各 i と各 pA について pX 内の開近傍系 𝒩p,i が存在して, 任意の V𝒩p,i について AjBdryXV= を満たす. このとき BdryXVAkBdryV (ki) の和集合なので DDimBdryXVn1 である. そして 以下の集合族を考える.

(2.28) i=0npAi𝒩p,i.

これは X の開基になるので 補題 1.6 より可算な開基 {Vi}i0 が存在し DDimBdryXVin1 を満たす.

逆を示そう. 今 X の開基 {Vi}i0 が存在して DDimBdryXVin1 を満たすとする. このとき 定理 2.8 より S=i0BdryXViDDimSn1 を満たす. さらに A=XS とおくと, {AVi}i0A の開基になる. そして 補題 1.7 より BdryAViABdryXVi= なので DDimA0 を得る. そして X=SA なので補題 2.2 より DDimXn が従う. ∎

定理 2.16 から次のことが従う.

Corollary 2.17.

可分距離化可能空間 X について indX=DDimX が成り立つ.

Theorem 2.18.

n0 とし X を可分距離化可能空間とする. このとき以下は同値である.

  1. (1)

    DDimXn である.

  2. (2)

    X の任意の閉集合 K と任意の開集合 UKU を満たしているならば 開集合 V が存在して KVCLXVU かつ DDimBdryXVn1

  3. (3)

    X の開基 {Vi}i0 が存在して DDimBdryXVin1 である.

Proof.

[(1)(2)]の証明: 条件(1), つまり DDimXn という仮定から X の部分集合 A0,,An が存在して DDimAi0i=0nAi=X を満たす. ここで XX の任意の閉集合 K と任意の開集合 UKU を満たしているとしよう. すると 補題 2.15 より, X の開集合 V が存在して KVCLXVUA0BdryXV= を満たす. すると DDim の定義より DDimBdryXVn1 となる. これで (2)が示された.

[(2)(3)]の証明: X の可算開基 ={Bi}i0 をとる. そして 𝒞 を以下で定義する.

(2.29) 𝒞={(Bi,Bk)Bi,Bk,CL(Bi)Bk}.

このとき 𝒞 はたかだか可算集合であることに注意しよう. そして (Bi,Bk)𝒞 となる BiBk について CLX(Bi)Bkに 条件(2) を適応して 開集合 Vi,kCLX(Bi)Vi,kCL(Vi,k)Bk そして DDimBdryXVi,kn1 となるものが存在する. このとき {Vi,k}X の開基になるので (3)が示された.

[(3)(1)]の証明: 今 X の開基 {Vi}i0 が存在して DDimBdryXVin1 を満たすとする. このとき 定理 2.8 より S=i0BdryXViDDimSn1 を満たす. さらに A=XS とおくと, {AVi}i0A の開基になる. そして 補題 1.7より BdryAViABdryXVi= なので DDimA0 が得られる. そして X=SA なので補題 2.2 より DDimXn が従う. ∎

定理2.18から次のことが従う.

Corollary 2.19.

可分距離化可能空間 X について indX=IndX=DDimX が成り立つ.

帰納的次元の話の 最後に帰納的次元と被覆次元の間の不等式を示そう. 部分空間の開集合をもとの空間の開集合に持ち上げるための次の補題から始まる.

Lemma 2.20 ([5]).

距離空間 (X,d) の部分空間 A の開集合 U について 𝔅(U) を以下のように定義する.

𝔅(U)={xXd(x,U)<d(x,AU)}.

すると 𝔅(U)X の開集合であり, 𝔅(U)A=U を満たす. ここで d とは X の距離の一つである. さらに A の二つの開集合 U, V について UV= ならば 𝔅(U)𝔅(V)= である.

Proof.

まず 𝔅(U) が開集合であることはすぐにわかる. 次に 𝔅(U)A=U を示そう. 点 x𝔅(U)A を任意にとる. このとき 0<d(x,AU) が成り立つので xAU である. これと xA を組み合わせると xU が従う. 逆に xU としよう. このとき d(x,U)=0 であり, Uが開集合であることから d(x,AU)>0 である. 故に d(x,U)<d(x,AU) が成り立つ. よって x𝔅(U)A である. 次に A の交わらない二つの 開集合 UV を考える. このとき VAUUAV が成り立つから 任意の xX について d(x,AU)d(x,V)d(x,AV)d(x,U) が成り立つ. 故に 𝔅(U)𝔅(V)= が成り立つ. ∎

Theorem 2.21.

X は可分距離化可能空間で DDimXn を満たすとする. そして 𝒰 を空間 X の開被覆とする. このとき 𝒰 の細分である X の局所有限な開被覆 𝒱 と開集合からなる(被覆とは限らない) n+1 個の族 𝒲0,𝒲1,,𝒲n が存在して 各 i{0,,n} について 𝒲i は互いに素な族であり, 以下が成り立つ

𝒱=𝒲0𝒲1𝒲n.
Proof.

X は距離化可能空間であるから X と同じ位相を生成する距離を一つ固定して d とする. さらに X はパラコンパクト(一般に距離空間はパラコンパクトである.可分距離空間のパラコンパクト性は一般的なそれよりも容易に証明できる)であるので 𝒰 の細分である局所有限な開被覆である 𝒞 が存在する. ところで X は可分距離空間なので特に リンデレフ である. よって 𝒞 は可算であるとしても一般性を失わない. 𝒞={Uk}k0 とおこう. さて DDimXn から n+1 個の高々 0 次元部分空間 {Ai}i=0n が存在して X=i=0nAiを満たす. ここで各 i について Ai 上で Aiの被覆 {AiUk}k0 を考えよう. 各 Ai0 次元なので開かつ閉な開基を持つ. また可分でもあるので {AiUk}k0 の細分で高々可算な開かつ閉な集合からなる Ai の被覆 {Ol(i)}l0が存在する. これを用いて帰納的に以下のように定義する.

(2.30) G0(i)=O0(i),Gj(i)=Oj(i)l<jOl(i)(j2).

すると {Gj(i)}j0Aiの開集合からなる (Aiの閉集合でもあるが,そのことは使わない). そして {Gj(i)}j0Ai の被覆で {AiUk}k0 の細分になる. また定義から明らかに ab ならば Ga(i)Gb(i)= であるので {Gj(i)}j0 の元は互いに素である. そして {Ia(i)}a0 を帰納的に定義する. まず a=0 のとき以下のように定義する.

(2.31) I0(i)={j0GjU1}.

そして I0(i),,Im1(i) が定義されているとして Im(i) を 帰納的に定義する:

(2.32) Im(i)={j0GjUm}a=1m1Ia(i).

そしてこれを用いて a0 について以下のように集合を定義する.

(2.33) Pa(i)=sIaGs(i).

するとこれは Ai の開集合であり, {Pa(i)}a0Ai の被覆となり, 定義から明らかに {Pa(i)}a0は互いに素な族である. さらにこれを用いて Qm(i)=𝔅(Pm(i))Um と定義しよう (補題2.20参照). このとき 補題 2.20 から {Qm(i)}m0 は互いに素な族となり, Aiを被覆する (ただし Qm(i)は空である場合もある). また, Qm(i)Um から {Ui}i0 の細分になっている. さて, 任意の点 xX について 𝒞 の局所有限性を担保する x の近傍を N とすると,一般に 以下が成り立つ.

(2.34) NQm(i)NUm.

このことから {Qm(i)}m0 は局所有限な族であることが分かる. ただしXの被覆であるとは限らない. 各 i{0,1,,n} について 𝒲i={Qm(i)}m0 と定義する. このとき 𝒲i は互いに素な族で,局所有限であり, かつ 𝒞={Uk}k0 の細分となっている. そして 𝒱=𝒲0𝒲1𝒲n と置けば各 𝒲i が局所有限で 𝒞={Uk}k0 の細分であることから 𝒱は局所有限であり, 𝒞={Uk}k0 の細分となる. また Ai𝒲iX=i=0nAi なので 𝒱X の被覆となる. 𝒞={Uk}k0𝒰 の細分であることから 𝒱𝒰 の細分である. 以上で証明は終わった. ∎

Theorem 2.22.

X を可分距離化可能空間とする. この時 dimXindX が成り立つ.

Proof.

定理 2.21 から従う. ∎

後々本稿では この不等式が等式であることを証明する.

2.3 正規空間における被覆次元

この節では まず一般的に 正規空間の上で 被覆次元の議論を行い 最終的に可分距離化可能空間上の議論 を行う.

Lemma 2.23.

X を正規空間とする. このとき以下は同値である.

  1. (1)

    dimXn

  2. (2)

    Xの任意の有限開被覆 {U1,,Um} について 開被覆 𝒱={V1,,Vm} が存在して ViUi かつ deg(𝒱)n+1 が成り立つ.

  3. (3)

    Xの任意の有限開被覆 {U1,,Um} について 開被覆 𝒱={V1,,Vm} が存在して ViUi かつ{1,,m} の濃度がn+2の部分集合J について jJVj= が成り立つ.

  4. (4)

    Xの 濃度が n+2 の 任意の開被覆 {U1,,Un+2} について 開被覆 𝒱={V1,,Vn+2} が存在して ViUi かつ j=1n+2Vj= が成り立つ.

Proof.

同値性 [(2)(3)] は自明である. また [(2)(1)][(3)(4)] も自明である.

[(1)(2)] の証明: 開被覆 {U1,,Um} に対してその細分となる開被覆 𝒢={G1,,Gk}deg(𝒢)n+1 となるものが存在する. ここで l:{1,,k}{1,,m}l(a)GaUb となる最小の b として定義する. そして各 i{1,,m} について Vi=l(a)=iGa と定義し 𝒱={V1,,Vm} とすれば 𝒱Xの開被覆であり, deg(𝒢)n+1 から deg(𝒱)n+1 を満たす.

[(4)(3)] の証明: Xの有限開被覆 {U1,,Um} を任意に与える. もしも m<n+2のときは適当に空集合を付加して やって n+2m と仮定しても良い. そして 𝒜 を集合 {1,,m}n+2 個の部分集合の直和分割全体の集合とする. つまり 𝒜 の元は {I1,,In+2} であって各 Ik{1,,n+2} の空でない部分集合で ab の時 IaIb=kIk={1,,n+2} である. 𝒜 は有限集合なので 番号をつけて {A1,,Ar} とする. 以下の操作を帰納的に繰り返して X の開被覆 {Gl,1,,Gl,m} (l=0,1,,r+1) を構成する. まず G0,i を以下のように定義する.

(2.35) G0,i=Ui.

そして {Gl,1,,Gl,m} が構成されたとき Gl+1,i 次のように構成する. Al={I1,,In+2} と定義する. そして k=1,,n+2について Ok=jIkGl,j とする. すると {O1,,On+2}X の開被覆になるので (4)を用いて その細分となる開被覆 {P1,,Pn+2}i=1n+2Pi= となるものが存在する. ここで i{1,,m} について 以下のように定義する.

(2.36) Gl+1,i=Pk(i)Gl,i.

ここで k(i)iIk(i) となる k(i){1,,n+2} である. 今 Gl+1,iGl,i に注意しよう. ここで Vi=Gr+1,i𝒱={V1,,Vm} と定義する. 今から deg(𝒱)n+1 を示そう. {1,,m} の濃度が n+2 の任意の部分集合 K について K={a1,,an+2} として I1=a1,,In+1={an+1} として In+2 は余った {1,,m} の元全部とする. そして Al={I1,,In+2} とする. 上で構成したのと同じ記号を用いる. 任意の aiKについて以下が成り立つ.

(2.37) Vai=Gr+1,aiGl+1,aiGl,aiPi.

よって i=1n+2Pi= なので aKVa= である. よって (3)が成り立つ.

以上で証明が終わる. ∎

Lemma 2.24.

X を正規空間とする. このとき以下は同値である.

  1. (1)

    dimXn

  2. (2)

    Xの任意の有限開被覆 {U1,,Um} について 開被覆 𝒱={V1,,Vm} が存在して CLViUi かつ deg(𝒱)n+1 が成り立つ.

  3. (3)

    Xの 濃度がn+2の 任意の開被覆 {U1,,Un+2} について 閉被覆 𝒱={F1,,Fn+2} が存在して FiUi かつ j=1n+2Fj= が成り立つ.

Proof.

[(1)(2)] は補題 1.4から従う. また [(2)(3)] は自明である.

[(3)(1)] は補題 1.5 から従う. ∎

被覆の境界のdegreeによって 被覆次元を特徴付けることができる.

Proposition 2.25.

X を正規空間とする. このとき以下は同値である (以下の条件において,被覆とは仮定していないことに注意せよ).

  1. (1)

    dimXn

  2. (2)

    Xの任意の有限開集合族 {U1,,Um} と閉集合族 {F1,,Fm} について 開集合族 𝒱={V1,,Vm} が存在して FiViCLViUi を満たし かつ deg({BdryV1,,BdryVm})n が成り立つ.

  3. (3)

    Xの任意の有限開集合族 {U1,,Um} と閉集合族 {F1,,Fm} について 開集合族 𝒱={W1,,Wm}𝒱={V1,,Vm} が存在して FiViCLViWiCLWiUi を満たし deg({CLW1V1,,CLWmVm})n が成り立つ.

  4. (4)

    Xの 濃度が n+1 の 任意の開集合族 {U1,,Un+1} と 閉集合族 {F1,,Fn+1}FiUi となるもの について 開集合族 𝒱={V1,,Vn+1} が存在して FiViCLViUi を満たし かつ j=1n+1BdryVj= が成り立つ.

Proof.

[(1)(2)]の証明: {U1,,Um}{XF1,,XFm} の濃度が m の部分集合族の共通部分で表される集合全体 とする. このとき仮定から X の開被覆となる. よって (1) から degreeがn+1 であるような 開被覆 {W1,,Wq} の細分になるものが存在する. さらに 閉被覆 {K1,,Kq}KrWr となるものをとる. ここで r{1,,q} に対して NrFiWr となるような i=1,,m の集合全体とする. そして 補題 1.4 から 各 iNr について Vi,rKrVi,rCLVi,rWr となるようにとる. ここで,i,jNri<j を満たすならば CLVi,rVj,r となるようにとる. さて, i{1,,m} について以下のように定義する.

(2.38) Vi={Vi,riNr}.

このとき FiVi が成り立つ. というのも, xFi かつ xKr となる i,r が存在するので xVi,rVi となるからである. また Nrの定義と の定義から iNr なら WrUi であり, Vi を定義する式は有限和であるから CLViUi となることがわかる. 最後に背理法のために 濃度が n+1{1,,m} の部分集合 I が存在し iIBdryVi となるとしよう. 点 xiIBdryVi をとる. さて xBdryVi であるから xiNrBdryVi,r である. ここで各 i について r(i)xBdryVi,r(i) 満たすものとして定義しよう. このとき ij ならば r(i)r(j)である. というのも, i<jと仮定して もしも r(i)=r(j) ならば, CLVi,r(i)Vj,r(i) より xBdryVi となり矛盾するからである.

さて xBdryVi,r(i) なので 特に xVi,r(i) である. ここで xKr(n+2) となる番号 r(n+2) をとる. {Kr}r=1q は被覆なのでこれは可能である. 今 xVi,r(i) なので r(n+2)r(i) たちとは異なる. よって BdryViWr(i) より xi=1n+2Wr(i) となるが, これは deg({W1,,Wm})n+1 に矛盾する. よって deg({BdryV1,,BdryVm})n である.

[(2)(3)]の証明: (2)から 開集合族 {V1,,Vm}FiViCLViUi を満たしかつ deg({BdryV1,,BdryVm})n となるものが存在する. このとき BdryViUi であるから 補題 1.5 から 開集合族 {P1,,Pm}{CLP1,,CLPm}{BdryV1,,BdryVm} が相似なもので BdryViPiUi となるものが存在する. ここで Wi=ViPi と定義すると, CLViWi であり BdryViCLWiVi かつ CLWiViCLPi なので {CLW1V1,,CLWmVm}{BdryV1,,BdryVm} と相似である. よって deg({CLW1V1,,CLWmVm})n である.

[(3)(4)]の証明: 自明である.

[(4)(1)] の証明: Xn+2 枚の開集合からなる開被覆 {O1,,On+2} を任意に与える. 補題 1.4 から 閉被覆 {A1,,An+2} が存在して AiOi を満たす. ここで {O1,,On+1}{F1,,Fn+1} に対して (4) を用いて 開集合族 {H1,,Hn+1}FiHiCLHiUi を満たし i=1n+1BdryHi= を満たすものが存在する. そして ここで閉集合 i{1,,n+2} について 閉集合 Lii=1,,n+1のとき Li=CLHik<iHkLn+2=Fn+2k=1n+1Hk と定義する. このとき {L1,,Ln+2}X の閉被覆である. というのも任意の xX について xHi となる i が存在しなければ xLn+2 であり, xHi となる添字が存在するなら値が最小のそれを j として xLj となるからである. さらに LiOi である. さて以下が成り立つ.

(2.39) i=1n+2Li=Ln+2i=1n+2(CLHik<iHk)Ln+2i=1BdryHi=.

故に 補題 2.24から dimXn が従う. ∎

Proposition 2.26.

X を正規空間とする. このとき以下は同値である

  1. (1)

    dimXn

  2. (2)

    交わらない 二つの閉集合の n+1 個の組み (A1,B1),,(An+1,Bn+1) について閉集合C1,,Cn が存在し 各 CiAiBi を分離し, i=1n+1Ci= が成り立つ.

Proof.

[(1)(2)] の証明: 閉集合族 {A1,,An+1} と 開集合族 {XB1,,XBn+1} に対して 命題 2.25 を 適応して 開集合族 {V1,,Vn+1}AiVi かつ CLViUi を満たし i=1n+1BdryVi=. となるものが存在する. Ci=BdryVi とすれば (2) が得られる.

[(2)(1)] の証明: 閉集合族 {F1,,Fn+1} と 開集合族 {U1,,Un+1}FiUi となるものを与える. このとき n+1 個の組 (F1,XU1),,(Fn+1,XUn+1) に対して 条件 (2) を適応して FiXUi を分離する 閉集合 Cii=1n+1Ci= を満たすものを 得る. このとき 開集合 ViViViCiVi=XFiVi かつ XUiVi となるものとする. すると BdryViCi かつ CLViUi となり i=1n+1BdryVii=1n+1Ci= となる. よって 命題 2.25 から dimXn が導かれる. ∎

Theorem 2.27.

n0 とし, XdimXn である正規空間とし, {Fi}i0{Ui}i0 をそれぞれ閉集合族, 開集合族 で FiUi を満たすとする. このとき 開集合族 {Vi}i0 であって FiViCLViUi を満たしかつ deg({BdryVi}i0)n を満たすものが存在する.

Proof.

まず 0 の部分集合であって 濃度が n+1 のもの全体を考える. そのような集合は高々可算個しかないので, 番号をつけて列挙して

(2.40) Γ1,Γ2,,Γi,

とする. そして 今から帰納法により, k0 によって添字付られた 以下のような開集合の列の列 {Pi(k)}i0, {Qi(k)}i0 で 任意の i0 について FiPi(k)CLQi(k)Ui を満たしかつ 任意の l{1,,k} について以下が成り立つものを構成する.

(2.41) deg({CL(Qa(k))Pa(k)aΓl})n.

k までは上記の列が構成できたとする. 今から{Pi(k+1)}i0, {Qi(k+1)}i0 を構成する. まず aΓk+1 については {CLPa(k)}aΓk+1{Qa(k)}aΓk+1 について 命題 2.25 を用いて CLPa(k)Pa(k+1)Qa(k+1) かつ CLQa(k+1)Qa(k) で以下を満たす {Qa(k+1)}aΓk+1{Pa(k+1)}aΓk+1 をとる.

(2.42) deg({CLQa(k+1)Pa(k+1)}aΓk+1)n.

次に b0Γk+1 については Pb(k+1)=Pb(k) かつ Qb(k+1)=Qb(k) と定義する. ここで任意の i0 について CLQi(k+1)Pi(k+1)CLQi(k)Pi(k) なので, 任意の l について以下が成り立つ.

(2.43) deg({CL(Qa(k))Pa(k)aΓl})n.

さて,この k0 によって添字付られた 列 {Pi(k)}i0, {Qi(k)}i0 を用いて, 任意の i0 について Vi=k0Pi(k) と定義する.もちろん FiViCLViUi は満たされる. また任意の k について Pi(k)Vi かつ CLViQi(k) なので BdryViCL(Qi(k))Pi(k) である. よって Γkについて以下が成り立つ.

(2.44) deg({BdryVaaΓk})n.

これで証明が終わる. ∎

2.4 可分距離空間と被覆次元

Theorem 2.28.

X を可分距離化可能空間とし, n0 とする. このとき以下は同値である.

  1. (1)

    dimXn が成り立つ.

  2. (2)

    X には開基 が存在して deg({BdryBB})n を満たす.

  3. (3)

    indXn が成り立つ.

特にindXdimXが成り立つ.

Proof.

[(1)(2)] の証明: X の可算な 閉集合族 {Fs}s0{Us}s0 であって {IntFs}s0{Us}s0Xの開基になり, 任意の s0 について FsUs となるものとする. 空間 X が可分距離化可能空間であることから このような族は存在する. そして 二つの可算族 {Fs}s0{Us}s0 に対して 定理 2.27 を用いて 開集合の族 {Vs}s0 であって 任意の s0 について FsVsCLVsUs を満たすもので,さらに 以下の不等式を満たすものをとる.

(2.45) deg({BdryVs}s0)n.

任意の s0 について FsVsCLVsUs を満たすことと {IntFs}s0{Us}s0Xの開基になること から {Vs}s0X の開基となる. よって (2) は成り立つ.

[(2)(3)] の証明: 帰納法によって証明する. n=0のとき [(2)(3)]ind の定義から成り立つ. n1 までは [(2)(3)] が成り立つとして n の場合を証明する. 仮定(2) X で述べられている Xの 開基 で以下を満たすものを取る.

(2.46) deg({BdryBB})n

任意に A を取る. このとき {BBdryAB}BdryA の開基となる. 補題 1.7 より以下が成り立つ.

(2.47) BdryBdryA(BBdryA)Bdry(B)BdryA.

よって 相異なる n個 の 元 B1,,Bn{A} を取ると,(2.46)より以下を得る.

(2.48) i=1nBdryBdryA(BiBdryA)BdryAi=1nBdryBi=.

よって, S=BdryA には 開基 ={BSB}であって deg({BdrySBB})n1 を満たすものが存在する. よって帰納法の仮定より, n1の場合を考えると indBdryAn1 が従う. ここで A は任意であり, Xの開基であったから indの定義より indXn がわかる. これで n のときにも (3) が証明された.

[(3)(1)] の証明: 定理 2.22 で既に証明している. ∎

Theorem 2.29.

X を可分距離化可能空間とする. このとき以下の等式が成り立つ.

(2.49) indX=IndX=dimX=DDimX.
Proof.

2.19 と 定理 2.22 および 2.28 より従う. ∎

2.5 球面への写像の拡張問題が被覆次元を特徴付けること:可算パラコンパクト性を仮定して

位相空間 X可算パラコンパクト であるとは X×[0,1] が正規になることである. 被覆を用いた特徴付けもあるが, 今回使うのは X×[0,1] が正規であるという性質なので 本節ではこの事実のみを用いる. 当然だが 距離化可能空間は 可算パラコンパクトである.

Theorem 2.30 (Borsukのホモトピー拡張定理).

n0X を可算パラコンパクトな正規空間とし A をその閉集合とする. 連続写像 H:A×[0,1]𝕊n について H(x,0)=f(x)H(x,1)=g(x) とおく. このときもしも F:X𝕊nF|A=f となるものが存在するならば G:X𝕊nG|A=g となるものが存在する. さらに GF とホモトピックに選べる. つまり,空間全体に 拡張されるという性質は (球面に値をとるホモトピーに関して)ホモトピー 不変ということである.

Proof.

X が可算パラコンパクトなので X×[0,1] は正規である. 定理の仮定にある F を用いて写像 H:A×[0,1]𝕊nを 拡張して H:X×{0}A×[0,1]𝕊n とみなす. もちろん X×{0} 上で HF に一致するということである. さらにこの Hn+1 への写像とみなして Tietze-Urysohn の拡張定理を適応すると H の拡張 P:X×[0,1]n+1 を得る. そして W=P1(n+1{0}) とし, Q:W𝕊n を以下のように定義する.

(2.50) Q(x,t)=P(x,t)P(x,t).

すると QW 上連続である. もちろん X×{0}A×[0,1]W であり Q|X×{0}A×[0,1]=P である (以上の議論は 𝕊n がANR(正規空間)ということをこの言葉を用いずに証明したものである). そして X の 開集合 UpX であってある近傍 pN が存在し N×[0,1]W となるもの全体 とする. すると Tube Lemma と A×[0,1]W から AU そして X の正規性から ある連続写像 u:X[0,1]u(A)=1 かつ u(XU)={0} となるものが取れる. そこで L:X×[0,1]𝕊n を 以下のように定義する.

(2.51) L(x,t)=Q(x,tu(x))

もちろんこれは連続であり G(x)=L(x,1)g の拡張になっていて, GF とホモトピックである. ∎

Theorem 2.31.

X可算パラコンパクトな正規空間とする. このとき dimXn であることと以下の条件は同値である. X の任意の閉集合 A と 連続写像 f:A𝕊n に対して連続写像 F:X𝕊n が存在し F|A=f を満たす.

Proof.

位相的には同じなので 𝕊nBdry𝕀n+1 を同一視する. まず最初に dimXn を仮定する. このとき写像 f は 写像 f:ABdry𝕀n+1 である. そして f=(f1,,fn+1) と成分表示し 以下のように KiLi を定義する.

(2.52) Ki={xAfi(x)=1};
(2.53) Li={xAfi(x)=1}.

すると KiLiX の閉集合でなおかつ KiLi= を満たしさらに以下を満たす.

(2.54) A=i=1n+1(KiLi).

ここで 定理 2.25{Ki}i=1n+1{XLi}i=1n+1 に適応し 各 i について 開集合 PiQiAiPiPiQi CLQiXLi でなおかつ i=1n+1(CLQiPi)= を満たすものが存在する. さらにTietze-Urysohnの拡張定理から 各 i について 連続写像 ui:X[1,1] であって ui(CLPi)=1 かつ ui(XQi)=1 となるものが存在する. このとき ui1(0)QiCLPiCLQiPi なので i=1n+1ui1({0})= となる. もちろん 各 i について Kiui1({1}), Liui1({1}) を満たすことに注意せよ. 次に 写像 u:X[1,1]n+1u=(u1,,un) と定義する. すると A=i=1n+1(KiLi)ui の性質から xA のとき u(x)Bdry𝕀n+1 への写像になる. 今 v=u|A:ABdry𝕀n+1 とおく. そして h:A×[0,1]n+1 を以下のように定義する.

(2.55) h(x,t)=(1t)v(x)+tf(x).

さて A=i=1n+1(KiLi) であることと Ki, Li, そして ui の定義から h(x,t) は常にその成分のいずれかは絶対値が 1 である. 例えば xKi ならば ui(x)=fi(x)=1 なので h(x,t) の第 i 成分が 1 ということである. つまり h(x,t)0 である. ここで -ノルムである. つまり 連続写像 H:A×[0,1]Bdry𝕀n+1 を以下の式で定義することができる.

(2.56) H(x,t)=h(x,t)h(x,t).

ここで H(x,0)=v(x)H(x,1)=f(x) に注意せよ. この Hvf を結ぶホモトピーであり, vX 全体への連続拡張 u/u を持つから Borsukのホモトピー拡張定理 (定理2.30)から f は拡張 F:XBdry𝕀n+1 を持つ.

逆に拡張問題が常に解けるとして, X の次元の評価をしよう. X の 濃度が n+1 の 任意の開集合族 {U1,,Un+1} と 閉集合族 {F1,,Fn+1}FiUi となるもの を考える. 今 Hi=XUi として A=i=1n+1(FiHi) とする. そして 各 ui:A[1,1]ui(Fi)={1} かつ ui(Hi)={1} を満たすものとする. このとき u=(u1,,un+1)Bdry𝕀n+1 への写像になっている. さて,定理の仮定から 連続写像 g=(g1,,gn+1):XBdry𝕀n+1g|A=u となるものが存在する. そして Vi=gi1([1,0)) とすると CLVigi1([1,0])FiViCLViUi を満たす. さらに BdryVigi1({0}) なので gBdry𝕀n+1 への写像であることから i=1n+1BdryVi= が従う. よって 命題 2.25 から dimXn である. ∎

Remark 2.1.

定理 2.30 は実は X に可算パラコンパクト性の仮定がなくても成り立つ ([8]). よって 定理 2.31 も可算パラコンパクト性の仮定がなくても成り立つ. しかし 本稿では X が距離化可能な場合にしか これらの結果を利用することはないので, 可算パラコンパクト性を付加したとしても 本稿の理論展開は損なわれない.

3 不動点定理

この節ではユークリッド空間の次元と不動点定理の関係を明らかにする.

3.1 不動点定理と同値な命題

ブラウワーの不動点定理の証明を目的として, 不動点定理と同値な命題を紹介する.

Definition 3.1.

X を位相空間とし A, B, C をその部分集合とする. AB= と仮定する. このとき CABを分離する とは開集合 UV が存在して AU, BV, UV= そして XC=UV を満たす時にいう. この時必然的に C は閉集合になることに注意しよう.

まずは次の準備補題から始めよう.

Lemma 3.1.

A[1,1] の閉集合で尚且つ {1}{1} を分離しているとする. そして [1,1]A=UV とし 1V とする. このとき V の任意の元 x について以下が成り立つ.

|xd(x,A)|1.
Proof.

まず最初に 0xd(x,A) のときを考える. このとき 0d(x,A) なので |xd(x,A)|xd(x,A)x1 を得る. 次に 0d(x,A)x のときを考える. このとき c=minA について, A{1}{1} を分離することから 1<c である. また UV の定義と 1V であることから c<x である. よって d(x,A)|xc|=xc となる. すると |xd(x,A)|=d(x,A)xxcx=c<1 となる. ∎

有名な ブラウワーの不動点定理と 同値な命題が 以下の通りである.

Theorem 3.2.

n1 について以下は同値である.

  1. (1)

    (No retraction theorem) レトラクション r:𝔻n𝕊n1 は存在しない.

  2. (2)

    (Brouwer’s fixed point theorem) 任意の連続写像 f:𝔻n𝔻n は不動点を持つ.

  3. (3)

    i{1,,n} を添字とする 閉集合 Ci𝕀n の族が 𝕀+n,i𝕀n,i を分離するならば i=1nCi が成り立つ.

  4. (4)

    (the Poincaré-Miranda theorem) i{1,,n} を添字とする連続写像の族 fi:𝕀nfi(𝕀+n,i)[0,)fi(𝕀n,i)(,0] を満たすならば, ある点 p𝕀n が存在して fi(p)=0 が成り立つ. つまり共通零点が存在する.

Proof.

[(1)(2)]の証明: 不動点を持たない連続写像 f:𝔻n𝔻n が存在するとしよう. 即ち任意の x𝔻n について f(x)x ということである. さて e(x)=xf(x) と定義すると e:𝔻nn は連続である. さらに L:𝔻n×nL(x,t)=f(x)+te(x) と定義すればこれもやはり連続である. 今, t に関する二次方程式 L(x,t)2=1 を考える. つまり 次の二次方程式を考える.

(3.1) e(x)2t2+2f(x),e(x)t+f(x)21.

係数が x の関数になっていることに注意しよう. いまはこれを t の方程式として見ている. また, (3.1) の解は x に依存することに注意せよ. そして, この二次方程式の二つの解は以下の式で表される.

(3.2) 1e(x)2(f(x),e(x)±f(x),e(x)2e(x)2(f(x)21)).

さていま, f(x)1 が常に成り立つので, e(x)2(f(x)21)0である. よって以下を得る.

(3.3) f(x),e(x)2e(x)2(f(x)21)|f(x),e(x)|.

故に 方程式 (3.1) の解は実数解であり, 非負の解と非正の解を持つ. そのうち, 非負の解を T(x) としよう. T(x) は明示的に 以下の式でかける.

(3.4) T(x)=1e(x)2(f(x),e(x)+f(x),e(x)2e(x)2(f(x)21)).

この式から分かるように, 写像 T:𝔻n は連続である. さて, xSn1 のとき, L(x,1)=x なので T(x)=1 である. 以上から, g:𝔻n𝕊n1g(x)=L(x,T(x)) と定義するとこれは連続写像で, xSn1のとき g(x)=L(x,T(x))=L(x,1)=xとなる. つまり gは レトラクションになっている. つまり𝕊n1𝔻n のレトラクトになっている. 連続なレトラクション g:𝔻n𝕊n1 が存在するので (1)に反し, 背理法により (2)が成り立つ.

[(2)(3)]の証明: 各 i{1,,n} に対して 𝕀n の開集合 Pi, Ni𝕀nCi=NiPi𝕀+n,iPi かつ 𝕀n,iNi を満たすものを取る. このような開集合の組は複数存在し得るが,そのうち一つを選ぶ (Ciの補集合の連結成分が二つより大きいことがあり得るからである). そして 写像 mi:𝕀n を以下の式で定義する.

(3.5) mi(x)={d(x,Ci)xCiPi;d(x,Ci)xCiNi.

このとき CiPiCiNi はともに閉集合で, これらの共通部分である Ci 上では d(x,Ci)d(x,Ci) は同じ値 0 を取り, CiPiCiNi 上ではもちろん連続なので 貼り合わさって mi はwell-defined であり連続になる. そして fi:𝕀n を次で定義する.

(3.6) fi(x)=ximi(x).

このとき |fi(x)|1 となることを今から証明しよう. xPi のときのみ証明する. 他の場合は同様に証明できる. このとき fi(x)=xid(x,Ci)である. まず 0xid(x,Ci) のときは 0d(x,Ci) なので

|fi(x)|=xid(x,Ci)xi1

であるから求める結果が成り立つ. 次に 0d(x,Ci)xi の場合を調べる. このとき x を通る直線で 𝕀+n,i𝕀n,i に垂直なもの, つまり L={z𝕀nzk=xk,ki} を考える. そして aL𝕀+n,i を構成する唯一の点とし 同様に bL𝕀n,i を構成するただ唯一の点とする. つまり ai 成分が 1 でそれ以外が x と同じ成分であり, bi成分が 1でそれ以外が x と一致するものである. すると LCiLの部分集合として ab を分離する. 今 L[1,1] を同一視すれば 補題 3.1 が適応できて |xid(x,LCi)|1 となる. さて |fi(x)| を計算しよう.

(3.7) |fi(x)|=d(x,Ci)xid(x,LCi)xi=|d(x,LCi)xi|1.

以上の計算より求める不等式を得る. 上の議論からどんな状況においても |fi(x)|1 が成り立つことがわかった. ここで写像 f:𝕀n𝕀nf=(f1,,fn) で定義する. さっき証明した不等式から f の値域 は 𝕀n になっている. よって (2)から不動点 p が存在する. f の定義からこの pd(p,Ci)=0 を満たす. つまり pi=1nCi なので i=1nCi がわかり (3)が成り立つ.

[(3)(4)] の証明: 各 i{1,,n}k0 について以下のように置く.

(3.8) Li,k={x𝕀n|xi|12k}

そして 写像 wi,k:𝕀n を次の式で定義する.

(3.9) wi,k(x)=xid(x,Li,k).

そして gi,k:𝕀ngi,k(x)=fi(x)+wi,k(x) と定義する. この時常に gi,k(𝕀+n,i)(0,)gi,k(𝕀n,i)(,0) である. よって Ci,k=gi,k1({0})𝕀+n,i𝕀n,i を分離する閉集合である. 故に (3)から i=1nCi,k である.この集合から点 pk をとる. このとき 𝕀n のコンパクト性から収束する部分列 {pϕ(k)}k0 が存在する. その収束先をpとする. さて gi,kfi に一様収束するので, kのとき gi,ϕ(k)(pϕ(k))fi(p) である. よって任意の i{1,,n} について fi(p)=0となる. つまり (4) が成り立つ.

[(4)(1)] の証明: まず 𝕀n𝔻n, そして 𝕊n1Bdry𝕀n を同一視する. 背理法のためにレトラクション r:𝕀nBdry𝕀n が存在すると仮定する. このとき r の各成分 ri はもちろん ri(𝕀+n,i)[0,)ri(𝕀n,i)(,0] を満たすので, (4) からある p𝕀n が存在して r(p)=0 を満たす. しかしこれは r の値域が Bdry𝕀n であることに反するので 上記のようなレトラクションは存在しえない. よって (1) が成り立つ. ∎

3.2 不動点定理の証明

定理 3.2 だけだと, 同値性しか証明していないので, 不動点定理が実際に正しいのかどうかは判断できない. しかし以下のことが知られているので, 定理 3.2 で述べたすべての命題は正しいことがわかる.

Theorem 3.3.

任意の n1 について レトラクション r:𝔻n𝕊n1 は存在しない.

Proof.

まずはホモロジーを用いた証明を紹介する. n=1 のときは中間値の定理からレトラクションの不存在がわかる.以下では 1<nとする. また Hi() でホモロジー群の関手を表すとする. 上記のようなレトラクションが存在したとしよう. このとき ι𝕊n1 から 𝔻n への包含写像として rι=1𝕊n1 が成り立つので, n1について以下の式を得る.

Hn1(r)Hn1(ι)=Hn1(1𝕊n1)=1Hn1(𝕊n1)

となる. 故に Hn1(ι):Hn1(𝕊n1)Hn1(𝔻n) は単射になる. ところで Hn1(𝔻n){0}Hn1(𝕊n1) なので, 単射 Hn1(ι) の存在はあり得ない. よって レトラクション r は存在しえない. ∎

解析学を用いても 𝕊n1𝔻n のレトラクトではないことを証明できる. 以下では,滑らかなレトラクションに関する命題を用いてこれを証明する.

Proposition 3.4.

レトラクション f:𝔻n𝕊n1 が存在するならば, 滑らかなレトラクション g:𝔻n𝕊n1 が存在する. ここで g𝔻n で滑らかというのは, 𝔻n を含むような開集合上で g が定義されさらに滑らかという意味である.

Proof.

まず u(x)=f(x)x と定義する. ここで u(x)2 に注意しよう. f|𝕊n1=1𝕊n1 なので u|𝕊n1=0 である. 故にある δ(3/4,1) が存在して

(3.10) δx1u(x)<41

となる. また, ワイエルストラスの多項式近似定理から各成分が多項式であるような写像 P:nn が存在して以下が満たされる.

(3.11) x1P(x)u(x)<41.

また多項式 Q: で以下を満たすものが存在する.

(3.12) r[0,δ]3/4Q(r2)1;
(3.13) r[δ,1]Q(r2)1;
(3.14) Q(1)=0.

さて, v(x)=x+Q(x2)P(x) と定義すると g:𝔻nn は連続で, 𝔻n で滑らかである. 更に x[0,δ] のとき以下の計算を得る.

v(x)=x+Q(x2)P(x)=x+f(x)f(x)+Q(x2)P(x)
=f(x)(f(x)x)+Q(x2)P(x)
=f(x)(f(x)x)+Q(x2)(f(x)x)Q(x2)(f(x)x)+Q(x2)P(x)
=f(x)+Q(x2)(P(x)f(x)+x)+(Q(x2)1)(f(x)x)
f(x)|Q(x2)|P(x)(f(x)x)|1Q(x2)|f(x)x

P(x)(f(x)x)<1/4f(x)=1, かつ |Q(x2)|1であり, x[0,δ] ならば 3/4Q(x2)1 なので 01Q(x2)1/4である. よって上記の計算と合わせて以下を得る.

v(x) f(x)|Q(x2)|P(x)(f(x)x)|1Q(x2)|f(x)x
11424=14.

つまり v(x)1/4 である.

一方, x[δ,1]ならば以下の計算を得る.

v(x) =x+Q(x2)P(x)
=x+Q(x2)P(x)+Q(x2)(f(x)x)Q(x2)(f(x)x)
x+Q(x2)(P(x)(f(x)x))+Q(x2)(f(x)x)
x|Q(x2)|(P(x)(f(x)x)+f(x)x).

|Q(x2)|1, かつ P(x)(f(x)x)1/4 であり x[δ,1] なので f(x)x1/4 である. よって 上記計算と合わせて以下を得る.

v(x) x|Q(x2)|(P(x)(f(x)x)+f(x)x)
δ(14+14)3424=14.

つまり v(x)1/4 である.

以上のことから x𝔻n ならば常に v(x)0 である. 故にg:𝔻n𝕊n1 を以下の式で定義することができる.

(3.15) g(x)=v(x)v(x).

これは 𝔻n 上で滑らかである. もしも x𝕊n1 ならば Q(x2)=Q(1)=0 なので, v(x)=x つまり g(x)=x がわかる. よって g:𝔻n𝕊n1 は求めるレトラクションになる. ∎

Theorem 3.5 ([7]).

滑らかな関数 f:𝔻n𝕊n1f|𝕊n1=1𝕊n1 となるものは存在しない.

Proof.

そのような関数が存在したとして矛盾を導く. 今 g(x)=f(x)x と置く. 写像 F:𝔻n×[0,1]𝔻n を以下で定義する.

(3.16) F(x,t)=x+tg(x)=x+t(f(x)x)=(1t)x+tf(x).

これは 𝕊n1 を固定する 1𝔻nf の間のホモトピーである. 以下では ホモトピーであることを強調して F(x,t)Ft(x) とも表記する. この F(x,t)xf(x) を結ぶ直線の内分点である. さて 𝔻n はコンパクトで g は滑らかなので g(x)=f(x)x は特にリプシッツである. g のリプシッツ性を担保する定数を L>0 とすると, F(x,t)=F(y,t) を仮定したときに xy=t(g(y)g(x)) なので以下が成り立つ.

(3.17) xytg(y)g(x)tLxy.

よって 0t<L1 ならば Ft(x) は単射である. さて F(x,t)x についてのヤコビ行列を考えると 以下の等式が成り立つ.

(3.18) Jx(Ft(x))=En+tJx(g(x)).

ところで det は連続関数なので t0 を十分小さくとれば t[0,t0] のとき detJx(F(x,t))>0 が成立する. さらに小さく t0<L1 と取っておく. さていまから t[0,t0] のとき F(x,t)x について全単射になっていることを証明しよう. 集合 U𝔻n の内核とする. つまりU={xnx<1}である. 逆関数定理から Ft(U)n の開集合である. さていま aFt(U) となる 𝔻n の点を任意に取る. これの逆像の存在が言えれば Ftが全射であることがわかる. ここで bFt(U) となる 𝔻n の点を適当に取る. すると Ft(U)𝔻n から ab を結ぶ線分 [a,b]𝔻n の中に入っており, [a,b] が連結であることから [a,b]Bdry(Ft(U)) である. この集合の中から c を取る. Ft(𝔻n) はコンパクトで, 特に閉集合であるから 以下が導かれる.

(3.19) Bdry(Ft(U))CL(Ft(U))Ft(𝔻n).

よって c=Ft(x) となる x𝔻n が存在する. 今 cFt(U) であるから x𝕊n1 となる. ゆえに Ft𝕊n1 を動かさないことから c=Ft(x)=xとなる. つまり c𝕊n1 が成り立つ. 集合 Ft(U)n の開集合であるから Bdry(Ft(U))Ft(U)= である. 特に cbである.そして c[a,b]c𝕊n1から a=c がわかり, 結局 a=Ft(x) を得る. 結果として Ft は全射である.

そして I(t) を以下で定義する.

(3.20) I(t)=𝔻ndet(JxF(x,t))dx1dx2dxn.

すると Ft(𝔻n)=𝔻n と変数変換公式から t[0,t0] のとき I(t)=n(𝔻n)>0 である. ここで n(𝔻n)𝔻nn 次元ルベーグ測度である. ところで I(t)t の多項式であり, しかも I(t)[0,t0] 上で定数なので, [0,1] 上でも定数でなければならない. つまり 任意の t[0,1] で以下が満たされるはずである.

(3.21) I(t)=n(𝔻n)>0.

しかしながら F1(x)=f(x)𝕊n1 から f,f=1 である. これを適当に変数 xi で微分して以下を得る.

(3.22) fxi,f=0.

つまり f(x)Jx(f)(x) の転置行列の 固有ベクトルで, その固有値は 0となる. 固有値に 0 を もつ行列の行列式は 0 なので det(Jx(f)(x))=0 が成り立つはずである. これは I(1)=0 を意味するが, (3.21)に矛盾する. これで証明が終わる. ∎

3.3 ユークリッド空間の次元の決定

ここではユークリッド空間の次元を決定する.

Theorem 3.6.

n1k{0,,n} とする. このとき dim𝔻n=dimn=n である. さらに dim(n,k)=k かつ dim(n,k)=nk である.

Proof.

不動点定理の 正しさはすでに確かめられているとする. このとき 定理 3.2 と 命題 2.26 から n1<dim𝕀n が導かれる. このことと 2.13 から dimn=dim𝔻n=n がわかる. このことから dim(n,k)=k かつ dim(n,k)=nk も従う. ∎

Corollary 3.7.

n,m1 とする. もしも mn が同相ならば m=n である.

Corollary 3.8.

n,k0 とする. n の部分集合 A1,,AkDDimAi0n=i=1kAi が成り立っているとする. このときn+1kである.

定理 3.2, 定理 4.2, 系 3.7 は歴史的経緯や, 証明手法を鑑みると 同値であると考えられる. もちろん正しい命題はすべて同値になるのだが, 少し深い意味で同値のように感じられる. 実際 [4] では, テレンスタオ による領域不変性定理の証明 [9] に触発されて, この同値である雰囲気を逆数学の上で論じているようだ. しかし筆者は逆数学に詳しくないのでこれ以上のことは解説できないのだ.

4 領域不変性定理

この節では 次元論の 応用の一つとして ブラウワーの領域不変性定理を証明する. この定理は n 次元空間内の 開集合 Un 次元ユークリッド空間への 単射連続像 は 開集合であることを述べる定理である.

4.1 領域不変性定理の証明

以下の定理により ユークリッド空間内のコンパクト部分集合 K の境界点は K の位相的言明のみで特徴付けできることがわかる. これが領域不変性定理の肝である.

Theorem 4.1.

n1 とし Kn のコンパクト部分集合とする. このとき pBdrynK となるための必要十分条件は pK 内の任意の近傍 N について pK 内の開近傍 U であって UN を満たしかつ 任意の連続写像 f:KU𝕊n1 は連続な拡張 g:K𝕊n1 を持つようなものが存在することである.

Proof.

まず最初に pBdryK を仮定して定理の条件を導く. Np の任意の近傍とする. そして Bp を中心とする十分小さい半径を持つ開球で KBN を満たすものとする. このとき U=KB が条件を満たすことを見よう. ここで L=BdryB とすると L𝕊n1 と同相である. 今ここで任意の連続写像 f:KU𝕊n1 を考える. ここで KUK の閉集合である. 特に n の閉集合でもある. ここで dimLn1 なので dim(KL)n1 である. ここで LKKU に注意して 定理 2.31 から連続写像 f|LK:LK𝕊n1 の拡張である連続写像 u:L𝕊n1 を得る. さて LKU の共通部分は LK で, この上では uf は同じ値を取るので写像が貼り合わさって連続写像 h:(KU)L𝕊n1 を得る. そして pK の境界なので B の点であって K に属さないもの q を取ることができる. 任意の点 xK について q から xK へ伸ばした直線と L との交点を b(x) とする. このとき b:KL は連続写像である. そして g:K𝕊n1 を以下の式で定義する.

g(x)={h(b(x))xU(LK);f(x)xKU.

すると 定義内の二つの関数 h(b(x))f(x)LK 上で値が一致するので張り合って g は連続関数になる. もちろん gf の拡張になっている.

逆に pK が 定理の条件を満たすとしよう. 背理法のために pKK の内点であるとする. ここで p を中心とする十分小さい半径を持つ 開球 BCLBK となるものを考える. すると定理の仮定より p の開近傍 UUB で任意の連続関数 f:KU𝕊n1K 上に拡張するものが存在する. ここで写像 f:KU𝕊n1 を以下のように定義する. 点 p から xKU へと直線を伸ばし BdryBとの交点を f(x) とする. これは連続写像で BdryB𝕊n1 と同相なので 連続写像 f:KU𝕊n1 を得る. このとき fBdryB 上で恒等写像になることに注意しよう. すると定理の条件より 連続写像 g:K𝕊n1 が存在する. さて CLBK であった. このとき g|CLB:CLBBdryB を考えると g|CLBCLB から BdryB へのレトラクトになる. これは No retraction theorem (定理 3.2) に矛盾するので pK は境界点でなければならない. ∎

本節では領域不変性定理を証明する.

Theorem 4.2 (領域不変性定理).

n1 とし Un の開集合とする. そして f:Un を連続単射とする. このとき f(U)n の開集合である.

Proof.

任意の pU について f(p)f(U) の内点であることを証明すれば良い. p の十分小さい近傍 NCLN がコンパクトで CLNU であるものをとる. このとき f|CLN を考えると f はコンパクト集合からハウスドルフ空間への 連続単射なので位相的埋め込みになる. 定理 4.1 より 点 p が境界点かどうかは CLN の内在的な位相的条件で特徴づけられる. つまり pCLN の内点であるから f(p)f(CLN) の内点になる. よって特に f(p)f(U) の内点である. ∎

Corollary 4.3.

MN を同じ次元の境界つき 位相多様体とし f:MN を同相写像とする. このとき fMN に移す.

Proof.

もしも fpMNN に移すと, f1 を考えることによって局所的には ユークリッド空間の内点が p に写っていることになるが, p は上半平面の境界点なので領域不変性定理に矛盾する. ∎

5 n次元ユークリッド空間内のn次元集合

この節では, 次元論の応用の一つとして n ユークリッド空間 内の n 次元空間は 内点を持つことを証明する.

まずは, ユークリッド空間の 可算稠密推移性と呼ばれる 性質を証明する. 1 次元ユークリッド空間のその性質の証明のために有理数の 順序的な構造に対する考察が必要となる.

5.1 有理数の順序論的特徴付けと直線の可算稠密推移性

まずは線型順序の定義から始める.

Definition 5.1 (線形順序).

集合 X 上の二項関係 が線形順序であるとは以下の条件が満たされるときにいう.

  1. (1)

    任意の aX について aa が成り立つ.

  2. (2)

    任意の a,bX についてもしも ab かつ ba ならば a=b である.

  3. (3)

    任意の a,b,cX について もしも ab かつ bc ならば ac である.

  4. (4)

    任意の a,bX について abba が成り立つ.

また a<bab かつ ab と定義する.

Definition 5.2 (自己稠密性).

線形順序集合 (X,)自己稠密であるとは x<y となる任意の x,yXについて x<s<y となる sX が存在するときにいう.

集合 X の上の順序を Xと書いたりするが, 文脈上明らかな場合は省略して と書いてしまうことにする.

Lemma 5.1.

(X,X), (Y,Y) を最大値及び最小値を持たない 可算で自己稠密な二つの線形順序集合とする. さらに SX, TY はその有限部分集合とし, 順序同型写像 h:ST により ST は順序同型であると仮定する. このとき任意の xXS について, ある yYT が存在して h は順序同型写像 H:S{x}T{y} へと拡張できる.

Proof.

S, T の元の番号付け S={si}i=1n, T={tj}j=1n は以下の条件を満たすとしても一般性を失わない.

(5.1) s1<s2<<sn;
(5.2) h(si)=ti.

そして三つに場合分けする.

Case 1. [あるiについてsi<x<si+1のとき]: このときには Y の自己稠密性から ti<y<ti+1 となる y が存在するので, これを用いて H(x)=y かつ H(si)=tiH を定義すれば, H は求めるものになっている.

Case 2. [sn<xのとき]: このときやはり, Y の自己稠密性 と最大値を持たないという仮定から tn<y となる yY が存在するので H(x)=y かつ H(si)=ti と定義すればよい.

Case 3. [x<s1のとき]:

上と同様である(最小値を持たないという仮定を用いる).

以上で補題は証明された. ∎

写像 f:AB について domf=Acodf=f(A) と定義する.

Theorem 5.2.

最大値及び最小値を持たない可算で自己稠密な線形順序集合は互いに順序同型である. 特に有理数と順序同型である.

Proof.

所謂back-and-forth argument により帰納法によって証明する.

(A,A),(B,B) を最大値及び最小値を持たない可算で自己稠密な二つの順序集合とする. そして A={ai}i0,B={bi}i0 と番号付けされていると仮定する. この番号付けを用いて関数の拡張列 {fn}n0 を以下の条件を満たすように帰納的に定義する.

  1. (1)

    fnは順序を保つ全単射である.

  2. (2)

    domfnは有限集合で, {a0,,an}を含む.

  3. (3)

    codfn は有限集合で{b0,,bn} を含む.

Step 0 (f0の定義): f0f0:{a0}{b0}f0(a0)=b0という写像として定義する.

Step 1 (fnが構成されたとしてfn+1を構成する): 補助的に gn という順序同型写像を以下のように定義する. もし an+1dom(fn) ならば, gn=fn とする. もし an+1dom(fn) ならば, fnan+1, および cod(fn),dom(fn) に 補題 5.1 を用いて fndom(fn){an+1} まで拡張した順序同型写像を gn とする.

また更に補助的に hn という順序同型写像を以下のように gn1 を拡張して定義する. もし bn+1dom(gn1)=cod(gn) ならば hn=gn1 とする. もし bn+1dom(gn1)=cod(gn) の場合には, gn1, bn+1 に 補題 5.1 を用いて gn1dom(gn1){bn+1} まで拡張した写像を hn とする. 最後に fn+1=hn1 と定義すれば帰納法の仮定をすべて満たす.

Step 3: 以上で得られた順序同型写像の列 {fn}n0 を用いて, 写像 F:ABF(an)=fn(an)と定義する. 列 {fn}n が写像の拡張列になっているので, この定義はwell-definedである.

Step 4: 写像 F が順序同型写像になっていることを示す. まず最初に x,yA について x<y ならば F(x)<F(y) であることを示す. これが分かれば, 単射性と順序保存性を得られる. 十分大きい n を取れば x,ydom(fn) となるものが見つかる. 写像 F の定義と {fn}n0 が写像の拡張列であることから, F(x)=fn(x)F(y)=fn(y) がわかる. さて fn は順序同型であるから直ちに F(x)<F(y) を得る. 最後に F が全射であることを示す. 任意の yB に対して十分大きい n を取れば ycod(fn) となる. 写像 fn は順序同型なので, ある xdom(fn) が存在して fn(x)=y となる. つまり F(x)=y なので F は全射である. ∎

Remark 5.1.

上の証明で gnhn を構成する操作は AB を往復(前後)している. これを指して back-and-forth (行ったり来たり) と呼んでいる.

Example 5.1.

の部分集合 (0,1) と順序同型である.

Example 5.2.

集合 {a+b2a,b} と順序同型である.

Example 5.3.

二進表示で有限小数で表すことのできる数全体, つまり {m2n|n,m}と順序同型である.

Lemma 5.3.

Aの稠密可算集合とし, SA は最大元を持たず, u,vAvSu<v を満たす ならば uS を満たすとする. このときある y が存在して S=A(,y) を満たす. さらにこの場合 AS=A[y,) である.

Proof.

y=supSとすれば良い. ∎

Theorem 5.4.

AB の可算稠密部分集合とする. このとき 順序を保つ写像 f:ABは 同相写像 f:f(A)=B を満たすものに拡張される.

Proof.

A, B の稠密可算集合とすると, これらは 定理 5.2 の仮定を満たす. よって AB は順序同型なので その順序同型写像を f:AB とする. 適当に A, B を番号付けして f:ABf(ai)=bi と定義したときに順序同型になるようにする. 今からこの写像を 全体に拡張することを考えよう. x について Rx=(,x), Lx=[x,) と定義する. そして Sx=f(ARx), Tx=f(ALx) とおく. このとき f は順序を保つので Sxu,vu<v かつ vSx を満たすならば uSxを満たす. さらに Sx には最大元が存在しない. よって 補題 5.3 より, ある y が存在し Sx=B(,y)となる. 同様に Tx=B[y,) となる. そこでこの y を用いて f(x)=y と定義する. ここでもし x=ai ならば y=bi になることに注意しよう. この f: が連続であることを証明しよう. まず, f が順序を保つことを証明しよう. つまり x<yならばf(x)<f(y)を示す. そのためにまず, A の稠密性から x<an<y という anA が 存在することに注意しよう. すると bnSf(x)bnSf(y) が成り立つ. 特に bnTf(x) なので f(x)bn<f(y)である. 故に f は順序を保つ. このことから特に f は単射である. 連続性を証明するために 任意に ϵ>0x を取る. すると B の稠密性から bNbM が存在して 以下が成立する.

(5.3) f(x)ϵ<bN<f(x)<bM<f(x)+ϵ.

写像 f が順序を保つことから aN<x<aM が従う. つまり(aN,aM)x の開近傍となる. 任意の z(aN,aM) を取ると f が順序を保つことと式 (5.3) から |f(z)f(x)|<ϵ がわかる. よって f は連続である. さて, f1:BA も同じように拡張を施して 連続写像 g: を得る. このとき任意の n0 について g(f(an))=anf(g(bn))=bn が成り立つので fg の連続性から 任意の xについて f(g(x))=xg(f(x))=x を得る. よって fgは互いに逆写像である. 故に fは同相写像である. 写像 f の定義から f(A)=B なので定理が示された. ∎

5.2 ユークリッド空間の可算稠密推移性:一般の場合

ここではユークリッド空間の 可算稠密推移性を紹介する. つまり, n 次元ユークリッド空間 n の可算稠密集合 A, B が与えられたときに同相写像 f:nn が存在して f(A)=B が成り立つことを証明する. まず 多項式に関する一致の定理から始める.

Theorem 5.5 (多項式に関する一致の定理).

pn 変数の実係数多項式とする. もしも p の零点全体の集合 Z が内点を持つならば p は恒等的に 0 となる. つまり pが定数 0 に等しくないならば p(x)0 となる xn 全体の集合は n のなかで稠密になる.

Proof.

n=1 の時には k 次多項式は高々 k 個の零点しか 持たないことから定理は成り立つ. 次に一般の n について考える. Z の内点を a とする. このとき十分小さい r が存在して 開円盤 B={xnxa<r}Z の部分集合となる. ここで u𝐁(0,1;) を任意にとり q:q(t)=p(a+ut) と定義する. すると qt に関する多項式であり, pB 上で 0 になることから qt(r,r) の時 q(t)=0 となる. よって 1 変数の場合から q は恒等的に 0 になる. ここで u𝐁(0,1;) は任意だったので p は全空間で恒等的に 0 になる. ∎

Lemma 5.6.

n1 とする. そして v=(v1,,vn)n×ni{ 1,,n} および an に対して Sp(v,i,a){vk}kia から生成される n の線形部分空間とする. このとき集合

Ta,i={v=(v1,,vn)n×nrankSp(v,i,a)=n}

n×n のなかで稠密開集合である.

Proof.

v=(v1,,vn)n×n に対して f(v) を行列 (v1,,vn) の第 i 列を a に変えた行列の行列式を表すことにする. すると fn×n 次多項式であり, 恒等的に0ではない. よって f(v)0 となる v は稠密に存在し (定理 5.5), またこのような v 全体は開集合をなす. そして rankSp(v,i,a)=nf(v)0 は同値なので,これで証明が終わる. ∎

記号 GL(n)n次正方行列 で可逆なもの全体を表すことにする. このときベクトルの組 v=(v1,,vn)GL(n) を考えると, これはn の基底になっている事に注目しよう. ベクトルの組 v=(v1,,vn)GL(n)an に対して prv,i(a) で 基底 v1,,vn に関する a の第 i 成分を表すとする. つまり a=i=1nprv,i(a)vi である.

Theorem 5.7.

n>0 とする. Sn の可算な部分集合で 0S とする. このとき 基底 v=(v1,,vn)n×n が存在して, 任意の xS について pri(x)0 となるものが存在する.

Proof.

定理 5.5n×ndet に適応すると GL(n)n×n の稠密開集合であることが導かれる. そして T を以下のように定義する.

(5.4) T=GL(n)aSi=1nTa,i

すると各 Ta,i は稠密開集合なので ベールの範疇定理から Tn の稠密集合となる. よって v=(v1,,vn)T をとれば求める基底になる. なぜならばもしもそうでないとすると, ある iaS について prv,i(a)=0 となるが, これは {vk}ki が張る線型空間に a が属していることを意味し, それは rankSp(v,i,a)<n を導く. これは vTa,i に反するので定理が従う. ∎

以下では prv,i(x) を単に xi(x)i などと書いたりする.

Definition 5.3.

(x1,x2)n×n差について一般の位置にあるとは, 任意の i{1,,n} について

(x1)i(x2)i0

を満たすことである. 集合 An が差について一般の位置にあるとは, 任意の 異なる組 (x,y)A×A が差について一般の位置にある時に言う.

Lemma 5.8.

An の可算部分集合とする. この時, n の基底 (v1,v2,,vn)で, これによる座標系において A が差について一般の位置になるものが存在する.

Proof.

S={xyx,yA}{0} に対して 定理 5.7 を適応すれば 補題は従う. ∎

Definition 5.4.

差について 一般の位置にある二つの組 (x1,x2),(y1,y2)n×n共鳴的に場所取り しているとは, 任意の i{1,,n}について, (x1)i(x2)i(y1)i(y2)i が同じ符号を持つ時に言う. 番号付された二つの高々可算な, 有限の場合には同じ濃度を持つ集合 A={ai}i0,B={bi}i0n共鳴的に位置取り しているとは, 任意の組 (i,j)02 について, (ai,aj)(bi,bj) が共鳴的に位置取りしている時に言う.

Proposition 5.9.

A={ai}i0, B={bi}i0n の可算な稠密集合で, それぞれ一般の位置にあるとする. この時 A, B が共鳴的に位置取りするように番号付けできる.

Proof.

帰納的に {ci}i0=A, {di}i0=B という列を以下のように作っていく. まず, c0=a0, d0=b0, d1=b1 と定義する. 次に i(c0,ai)(d0,d1) が共鳴的に位置取りするような最小の自然数とする. そして, c1=aiと定義する. 集合 A が稠密であることから, このような i は存在する. 一般に 奇数番まで cidi が構成されたとしよう. つまり, c0,c1,,c2j+1d0,d1,,d2j+1 が構成されたとしよう. この時 c2j+2d2j+2 を以下のように構成する. 自然数 s0を, c0,c1,,c2j+1 に属さない aiの番号 i のうち, 番号の一番小さいものとする. この時 c2j+2=as と定義する. 次に自然数 tc0,c1,,c2j,c2j+1d0,d1,,d2j,bt が共鳴的に位置取りする番号の一番小さいものとする. そして d2j+2=bt と定義する.

さらに c2j+3d2j+3 を以下のように構成する. 自然数 pd0,d1,,d2j+2に含まれない bp の一番小さい番号とする. そして d2j+3=bp と定義する. 次に, 自然数 qc0,c1,,c2j+2,aqd0,d1,,d2j+2,d2j+3 が共鳴的に位置取りしているようになる aq のうち最小の番号とする. そして c2j+3=aq と定義する.

以上の帰納的構成は, AB が共に稠密であることから可能である. ∎

Theorem 5.10.

A, Bn の可算稠密集合とする. この時, 同相写像 f:nn が存在して, f(A)=B を満たす.

Proof.

適当に基底と番号を取り替えて, A={ai}i0, B={bi}i0 は共鳴的に位置取りしており, AB は共に一般の位置にあるとしても良い. 一般に ai=(ai,1,,ai,n), bi=(bi,1,,bi,n) と表すことにする. 集合 AB が差について一般の位置になるように座標をとっているので ij ならば任意の k{1,,n} について ai,kaj,k かつ bi,kbj,k となる. 今 k{1,,n} に対して Ak=πk(A), Bk=πk(B) とする. ここで πkk 番目の座標の射影である. すると AkBk の可算稠密部分集合でさらに共鳴的に番号付けされていることから fk(ai,k)=bi,k で定義すると fk は順序を保つ同型写像になる(もし AB が差について一般の位置になければ, 潰れる番号もあるので, このように f を定義しても順序同型にならないし, そもそも f が定義できない可能性もある). ここで 定理 5.4 より, fkは同相写像 fk:fk(Ak)=Bk になるものに拡張できる. いま f:nnf(x)=(f1(x1),,fn(xn)) と定義しよう. このとき ai=(ai,1,,ai,n) について f(ai)=(f1(ai,1),,fn(ai,n))=(bi,1,,bi,n) なので f(A)=B である. g(x)=(f11(x1),,fn1(xn)) とすれば gf の逆写像になる. よって f は同相写像である. ∎

Theorem 5.11.

n0 とする. このとき n の 部分集合 SdimS=n を満たしているのならば S は 内点を持つ.

Proof.

背理法のために S は内点を持たないと仮定する. このとき nS は稠密である. よって n の可算稠密部分集合 AAS= を満たすものを取ることができる. このとき 5.10 から 同相写像 f:nn で あって f(A)=n であるものが 存在する. ここで nn=(n,n1) であるから, 補題 2.12 より dim((n,n1))n1 がわかる. 故に dimf(S)n1 である. 写像 f は同相なので dimSn1 が従うが, これは dimS=nに矛盾する. ∎

6 有限次元空間の埋め込み定理

この節では 次元論の 応用の一つとして, 有限次元可分距離化可能空間は ユークリッド空間に 位相的に埋め込めることを証明する.

6.1 アフィン結合や一般の位置

Definition 6.1.

l1 とする. ユークリッド空間 l 内の 有限個の点 e1,,emアフィン的独立であるとは t1,,tmi=1mti=0i=1mtiei=0 を満たしているならば, t1==tm=0 を満たす時にいう. これは e2e1,,eme1 が線型独立であることと同値である. また, l 内の有限個の点 w1,,wmアフィン結合とは m 個の実数 t1,,tm であって i=1mti=1 を満たすものを使って i=1mtiwi と表される 点のことである. もしも w1,,wm がアフィン的独立であるのならば これらのアフィン結合の係数は一意的である ことに注目しよう. また w1,,wm が張る アフィン部分空間 Aff(w1,,wm) とは, w1,,wm のアフィン結合 全体の集合のことである. Aff(w1,,wm)w2w1,,wmw1 で張られる線型空間 W を使うと Aff(w1,,wm)=w1+W と表されることに注目しておこう. 特に mlのとき Aff(w1,,wm)l の閉集合であり,さらに内点を持たない.

Definition 6.2.

l1 とする. このとき 部分集合 Sl一般の位置にある とは 任意の i{1,,l+1} について Si 個の 異なる元は アフィン的独立であるときにいう.

Proposition 6.1.

l1 を任意に与え, Ol を稠密開集合とする. そして CO を高々可算な 一般の位置にある集合とする. このとき 可算な稠密 集合 SOCS が一般の位置にあり CS= となるものが存在する.

Proof.

l の 可算稠密集合を適当にとり E とする. そして E×>0 を適当に番号付して E×>0={(qk,rk)}k0 とおく. 帰納法により 次のような列 e1,,ek を構成する: C{e1,,ek} は一般の位置にあり, 任意の i{1,,k} について eiqi<ri を満たす. 帰納法により e1,,ek まで構成できたとして ek+1 を構成する. まず C{e1,,ek} の任意の有限部分集合 Icard(I)l となるもの について A(I)=Aff(I) と定義し, A をそのような A(I) 全体の和集合とする. このとき各 A(I) は閉集合で内点を持たなく, A はそのような集合の可算個の和集合なので, Baireの範疇定理により A 自体も内点を持たない. よって OA は稠密である. さらに C も高々可算なので O(AC) も稠密である. よって ek+1O(AC) でなおかつ ek+1qk+1<rk+1 を満たすものが取れる. ここで C{e1,,ek} の任意の有限部分集合 Icard(I)l となるもの について ek+1A(I) となるので C{e1,,ek,ek+1} は一般の位置にあることが従う. ∎

Proposition 6.2.

n,l1 とする. e1,,emll の一般の位置にある列とする. このときもしも 2n+1l ならば, 集合 {1,,m} の 濃度高々 n+1 の部分集合 I を台に持つ アフィン結合 i=1msiei の係数は一意的である. ここで I を台に持つとは iI のとき, そしてその時に限り si0 となるということである.

Proof.

I とは異なる 濃度が高々 n+1{1,,m} の部分集合 J を台にもつ アフィン結合 i=1mtieii=1msiei と等しいと しよう. このとき以下を得る.

(6.1) iIJsiei+iJI(ti)ei+iJI(siti)ei=0.

この式の係数を見ると以下を得る.

(6.2) iIJsi+iJI(ti)+iJI(siti)=0.

ここで IJ の濃度が高々 2n+2 であり, l2n+1l, つまり 2n+2l+1 を満たすので e1,,em が一般の位置にあることから {ei}iIJ はアフィン独立である. よって IJ上で si=0 かつ JI 上で ti=0 かつ IJ 上で si=ti となるが, siti がそれぞれ IJ を台にもつので I=J でなければならず このとき I=J=IJ なので si=tiI 上で成り立ち, 係数の一意性が成り立つ. ∎

6.2 関数空間と埋め込み

Definition 6.3.

X を位相空間とする. そして (K,d) を コンパクト距離空間とする. 本稿では C(X,K) という記号で Xから K への連続写像全体 を表す. そして d から誘導される C(X,K) 上のsup距離関数 を d^ で表す.つまり d^(f,g)=supxXd(f(x),g(x)) である. ここで採用した C(X,K) の定義から d^ は有限の値を取る.

標準的な議論により以下の命題を得る. 証明は省略する.

Proposition 6.3.

X を位相空間とし (K,d) はコンパクト距離空間とする. このとき (C(X,K),d^) は完備であり, 特にベール空間である.

Definition 6.4.

位相空間 X の被覆 𝒰 について 写像 fC(X,H)𝒰-map (あるいは 𝒰-small) であるとは 任意の zH についてある z の近傍 NU𝒰 が存在し f1(N)U を満たすことである. 本稿では E(𝒰)C(X,H) 内の 𝒰-map 全体を表すとする.

Proposition 6.4.

X を位相空間とし 𝒰 はその被覆で (K,d) を コンパクト距離空間とする. このとき E(𝒰)C(X,K) の開集合である.

Proof.

fE(𝒰) を任意にとる. 各点 zK について Nzz の開近傍である U𝒰 が存在し f1(Nz)U となるものとする. このとき {Nz}zKK の被覆で K はコンパクトだから {Nz}zKのルベーグ数 r(0,) が存在する. ここで gd^(f,g)<23r となる任意の gC(X,K) とする. 任意に zK を取る. そして M=𝐔(z,23r;d), つまり Mz を中心とする 半径 23rd による開球とする. そして p(z)K𝐔(z,r;d)Np(z) となるものとする. さて, 任意に xg1(M) を取る. このとき g(x)M である. つまり d(z,g(x))23r である. また d^(g,f)<23r から d(g(x),f(x))<23r である. よって f(x)𝐔(z,r;d) なので f(x)Np(z) である. Np(z) の定義より f1(Np(z))U となる U𝒰 が存在する. このとき xf1(Np(z)) より xU である. ここでxg1(M) は任意であったから g1(M)U である. 以上で証明が終わる. ∎

Proposition 6.5.

X を距離空間とし, dimXn で, 𝒰X の有限被覆とする. そして l12n+1lを満たすとし Kl のコンパクト部分集合で IntKは凸で CL(IntK)=K を満たすとする. そして dl の標準的な内積から誘導される ノルムによる距離とする. このとき E(𝒰)C(X,K) のなかで稠密である.

Proof.

任意のfC(X,K) を取る. そして 任意の η(0,) を与える. このとき K を直径が 210η 以下の有限個の開集合 O1,,Oq で覆うことができる. そして {Uf1(Oi)U𝒰,i=1,,q} を考えるとこれは X の有限被覆であり, 故に dimXn なのでこの被覆 の細分であるような有限被覆 𝒱={V1,,Vm} が存在して deg(𝒱)n+1 を満たす. 適当にコゼロ集合が Vi に一致するような関数 wi:X[0,1] を取り,適当に正規化して i=1mwi=1 を満たすとしても良い( 例えば wi(x)=d(x,XVi)など). このとき f(Vi) の直径は 210η 以下であることに注意しよう. 命題 6.1 を稠密部分集合 lC= に用いて 稠密な一般の位置にある集合 El を取る. そして i{1,,m} について eiEIntKd(f(Vi),ei)<25η を満たすようにとる. これは CL(IntK)=K であるから可能である. そして写像 g:XKg(x)=i=1mwi(x)ei と定義する. このとき任意の xX について以下が導かれる.

d(f(x),g(x)) =f(x)i=1mwi(x)ei=i=1mwi(x)f(x)i=1mwi(x)ei
i=1mwi(x)f(x)ei

すると wi(x)>0 となる i については f(x)ei の距離は, ei の定義 と f(Vi)の直径の評価から (25+210)η 以下 と評価できる. よって上記式から d^(f,g)<η が従う. 次に gE(𝒰) に属することを示そう. 列 e1,,em の高々 n+1 個の元の凸結合で表される集合を R とすると これは 高々n次元の 単体と同相な有限個の集合の和集合であるからコンパクトである. そして g の像は R に含まれている. よって R に含まれない zK については R の補集合を Nz と取れば g1(Nz)= なので 条件は満たされる. 次に zR としよう. ここで z=iIcieiIcard(I)n+1 となるような {1,,m} の部分集合とし ci0 とする. ここで アフィン結合の定義から I である. 十分小さい ϵ(0,) を取れば 任意の y𝐔(z,ϵ;d)R については y=iaiei と表したとき iI について ai0 となる. これは 命題 6.2 から可能である. もしも g の像が 𝐔(z,ϵ;d) と共通部分を持たない場合には g による 𝐔(z,ϵ;d) の引き戻しは空集合なので 𝒰-map の条件は満たされている. 集合 N=𝐔(z,ϵ;d)g の像が共通部分を持つとしよう. このとき g(x)N となる xX について iI を適当に取ると ϵ の取り方から wi(x)>0 なので xVi である. つまり g1(N)Vi である. 以上で gE(𝒰) がわかった. よって E(𝒰)C(X,K) のなかで稠密である. ∎

位相空間 X の被覆 𝒰xX について St(x,𝒰)={U𝒰xU} と定義する.

位相空間 X の有限被覆の列 𝒰0,,𝒰n,被覆の基本列 であるとは 任意のxX について {St(x,𝒰n)}n0x の基本近傍系になるときにいう.

Lemma 6.6.

X を可分距離化可能空間とする. このとき X には被覆の基本列 が存在する.

Proof.

X は可分距離化可能空間であるから [0,1]0 に位相的に埋め込める(ウリゾーンの距離化可能定理). よって Xと同じ位相を生成する距離 d(X,d) が全有界であるもの が存在する. このとき 𝒰nXを被覆する 半径 2n 以下の開球 の有限集合とする. このような取り方ができるのは (X,d) が全有界だからである. すると {𝒰n}n0 は被覆の基本列になっている. ∎

Proposition 6.7.

X を距離化可能空間とし, (K,d) を コンパクト距離空間とする. そして {𝒰i}i0 は被覆の基本列とする. このとき i0E(𝒰i) の任意の元は 位相的埋め込みになっている.

Proof.

fi0E(𝒰i) を任意にとる. 今からこれが埋め込みになることを示そう. まず単射性を示そう. xy とする. このとき被覆の基本列の定義から ある i0 が存在して ySt(x,𝒰i) となる.そして fE(𝒰i) であるから f(x) の近傍 N が存在して f1(N)U となる U𝒰i が存在する. 今 ySt(x,𝒰i) なので yU であり f(y)N が従う. 特に f(x)f(y) である. 次に f が位相的埋め込みであることを示そう. 点 xX を任意に与え,その近傍 V も任意に与える. このとき被覆の基本列の定義から ある i0 が存在して St(x,𝒰i)V である. そして fE(𝒰i) であるから f(x) の近傍 N が存在して f1(N)U となる U𝒰i が存在する. このとき f1(N)St(x,𝒰i)V である. よって f1f(x) で連続であることが証明された. これで証明が終わる. ∎

X から K への位相的埋め込み全体 を Emb(X,K) と書くことにする.

Theorem 6.8.

X を可分距離空間とし, dimXnl12n+1l を満たすとし Kl のコンパクト部分集合で IntK は凸で CL(IntK)=K を満たすとする. そして dl の標準的な内積から誘導される ノルムによる距離とする. このとき X から K への位相的埋め込み全体 Emb(X,K)C(X,K) のなかで Gδ かつ稠密である. 特に 有限次元の可分距離化可能空間は ユークリッド空間に埋め込み可能である.

Proof.

命題 6.3, 6.4, 6.5, 補題 6.6 を 組み合わせるとわかる. ∎

6.3 普遍空間

次に高々 n 次元の 可分距離化可能空間を全て埋め込めるような 可分距離空間を構成しよう.

l0Xを位相空間とし, l の部分集合 K, および l の部分アフィン空間 M について Avoid(M)C(X,K) の元で CL(f(X))M= となるもの全体とする.

Proposition 6.9.

X を距離空間とし, dimXn で, 𝒰X の有限被覆とする. そして l12n+1l を満たすとし Kl のコンパクト部分集合で IntK は凸で CL(IntK)=K を満たすとする. このとき l の任意の 高々 n 次元のアフィン部分空間 M について Avoid(M) は稠密かつ 開集合である.

Proof.

まず Avoid(M) が開集合であることを示そう. 任意に hAvoid(M) を取る. このとき CL(h(X))M= であり, K がコンパクトであることから CL(h(X)) もコンパクトである. よって十分小さい η を取れば CL(h(X))M の距離は η 以上になる. そして d^(f,h)<21η のとき fCL(f(X))M=を満たす. よって Avoid(M) は開集合である.

次に稠密性を示そう. 任意に fC(X,K) を取る. ここで アフィン空間 M を張る アフィン的独立な元 c1,,cq を取る. このとき qn+1 であることに注意せよ. そして C={c1,,cq} に対して 命題 6.1 を適応して 一般の位置にある稠密可算集合 ElCE も一般の位置にあり, CE= となるものをとる. ここで 命題 6.5 の証明 と同じ構成をして g(x)=i=1mwi(x)ei を構成する. 異なるのは E の取り方のみである. この gf を近似することは 命題 6.5 の証明と同様である. 今から gAvoid(M) を証明しよう. 列 e1,,em の高々 n+1 個の元の凸結合で表される集合を R とすると これは 高々 n次元の 単体と同相な有限個の集合の和集合であるからコンパクトである. そして g の像は R に含まれている. このとき 命題6.2EC= より RM= である. よって CL(g(X))M= であり gAvoid(M) を得る. これで証明が終わる. ∎

n0 を任意に与える. このとき 記号 Nn2n+1[0,1]2n+1 の部分空間で その点の 座標のうち 有理数であるものの個数が 高々 n 個であるもの 全体を表すとする. つまり Nn2n+1=[0,1]2n+1(2n+1,n) とする. この空間は Nöbeling space と呼ばれることもあるようである. この空間が n 次元の可分距離空間の 普遍空間であることを証明しよう.

Theorem 6.10.

n0 とし X を 可分距離化可能空間で dimXn とする. このとき X から Nn2n+1 への位相的埋め込みが存在する.

Proof.

{1,,2n+1} の濃度が n+1 の部分集合 I={u1,,un+1}q=(q1,,qn+1)n+1 について

(6.3) M(I;q)={x2n+1i{1,,n+1},xui=qi}

と定義する. このとき M(I;q)n次元 アフィン部分空間である. このとき Nn2n+1 の定義から [0,1]2n+1Nn2n+1=[0,1]2n+1I,qM(I;q) である.ここで I の動く範囲は有限だし q の動く範囲は可算である. さて 命題 6.3, 定理 6.8, そして 命題 6.7 より 以下の集合は 稠密かつ Gδ である.

(6.4) Emb(X,[0,1]2n+1)I,qAvoid(M(I;q)).

よって X から Nn2n+1 への位相的埋め込みが存在する. ∎

定理 3.6 から Nn2n+1 の次元が n であることが導かれる. このとき以下を得る.

Corollary 6.11.

n0 とし X を 可分距離化可能空間で dimXn とする. このとき Xのコンパクト化 Y であって距離化可能かつ dimX=dimY となるものが存在する.

Proof.

式 (6.4) の集合から 写像 f を取ると f の像の閉包 YNn2n+1 に含まれる. また Y は コンパクト空間 [0,1]2n+1 の閉部分集合 なので コンパクトである. ∎

Remark 6.1.

数学書 [1] では 系 6.11 を元に可分距離化可能空間の上の 三つの次元が等しいこと (2.29) を 証明している.

7 多様体のユークリッド空間への埋め込み

この節では 次元論の応用の一つとして 可微分多様体を 可微分写像によって ユークリッド空間に埋め込めることを 証明する.

7.1 極限集合

Definition 7.1.

X を第二可算で局所コンパクトな距離化可能空間とする. このとき点列 {xi}i0 について xi とは, 任意のコンパクト集合 Kについて N0 が存在して Nn となる任意の n0 について xnK が成り立つときにいう. これは X の一点コンパクト化 において xi が無限遠点 に収束するということと同値である.

Definition 7.2.

第二可算で局所コンパクトな距離化可能空間 X, Y と 連続写像 f:XYに対し

L(f)={yYxiとなる{xi}i0Xが存在してf(xi)yとなる.}

と定義する. これを f極限集合 と呼ぶ.

Proposition 7.1.

第二可算な局所コンパクトハウスドルフ空間 X のコンパクト部分集合の列 {Ki}i0 で以下の二つを満たすものが存在する.

(7.1) X=i0Ki;
(7.2) KiIntX(Ki+1)

またこのとき X の任意のコンパクト部分集合 K についてある m0 が存在して KKm となる. これは 一点コンパクト化の中で無限遠点の 可算な基本近傍系を取ることに対応する.

Remark 7.1.

この命題内の性質を満たす {Ki}i0 が存在する空間のことを Hemicompactと呼ぶ. 一般に σ コンパクトな局所コンパクトハウスドルフ空間は Hemicompactである.

命題 7.1 の後半の注意からすぐに次のことがわかる.

Proposition 7.2.

{Ki}i0 を命題 7.1 で述べられている X のコンパクト部分集合列としよう. このとき xiが成り立つことと 以下が成り立つことが同値になる. 任意の m0 について N0 が存在し Ni を満たす任意の i0 について xiKm が成り立つ.

まず簡単に次のことがわかる.

Proposition 7.3.

第二可算で局所コンパクトな距離化可能空間 X, Yと 連続写像 f:XY について 集合 L(f)Y の閉集合 である.

Proof.

命題 7.1 で述べられているコンパクト集合の列 {Ki}i0をとる. 空間 Y の位相と両立する距離の一つを e としよう. Y 内の点列 {yi}i0yiL(f) であり, {yi}yY に収束しているとする. ここで,適当に部分列をとって e(yi,y)<2i としても一般性を失わない. 各 m0 毎に ymL(f) なので, X 内の点列 {xi(m)}i0 が存在して, xi(m) でかつ limif(xi(m))=ym となる. さてここで単調増加写像 ϕ:00iϕ(m) ならば xi(m)Km かつ e(ym,f(xi(m)))<2m となるように定める. そして zi=xϕ(i)(i)とする. ϕ の定義から任意の i について zi=xϕ(i)(i)Ki が成り立つ. 今 KiKi+1 なので, nN ならば znKN が成り立ち, 命題 7.2 から zi が従う. そして, e(y,f(zi))e(y,yi)+e(yi,f(zi))2i+1 が成り立つ. よって f(zi)y である. 故に yL(f) となるから L(f) は閉集合である. ∎

Proposition 7.4.

第二可算で局所コンパクトな距離化可能空間 X, Y と 連続写像 f:XY について f を単射と仮定する. このとき f が 位相的埋め込み であることと L(f)f(X)= が成り立つことは同値である.

Proof.

まず最初に f が位相的埋め込みであると仮定しよう. そして 背理法のために L(f)f(X) を仮定する. 今 yL(f)f(X) を取ると xi かつ f(xi)y となる X 内の点列 {xi}i0 が存在し, また y=f(x) となる xX が存在する. xi であることから {xi}i0 X内のどの点にも収束しない. よって Y 内の点列 {f(xi)}f(xi)y にも関らず, 以下が成り立つ.

(7.3) limif1(f(xi))f1(y)(=x).

故に f1:f(X)Xは連続ではない. よって特に f は埋め込みではない. これは矛盾するので L(f)f(X)= である.

次に L(f)f(X)= を仮定する. 今から f1:f(X)X が連続であることを示す. つまり任意の Af(X) について 以下が成り立つことを証明する.

(7.4) f1(CLf(X)(A))CLX(f1(A))

任意に yCLf(X)(A) を取る. すると A 内の点列 {yi}i0 が存在して y に収束する. さて xi=f1(yi)とする. L(f)f(X)= という仮定と yf(X) から yL(f) が従う. よって xi↛ を得る. すなわち {xi}i0 は点列として集積点を持つ. よって収束する部分列 {xϕ(i)}i0 が存在する. 点列 {xϕ(i)}i0 の収束点を xX とする. 写像 f の連続性から f(xϕ(i))f(x)がわかり, さらに f(xϕ(i))=yϕ(i) であり, 収束列の部分列は元の列の収束点に収束するので f(x)=yである. つまり x=f1(y) である. 以上から {yi}i0 の部分列を適当にとれば f1(yϕ(i))f1(y) となることがわかった. ここで {f1(yϕ(i))}i0f1(A) 内の点列であるから f1(CLf(X)(A))CLX(f1(A)) が成り立つ. 故に f1 は連続である. ∎

Proposition 7.5.

第二可算で局所コンパクトな 距離空間 XY, そして 連続関数 f:XY について, f(X)Y の閉集合であることと L(f)f(X) が成り立つことが同値である.

Proof.

f(X)Y の閉集合のとき L(f)f(X) となることは L(f)の定義から自明である.

次に L(f)f(X) を仮定して f(X)Y の閉集合であることを示そう. 集合 f(X) 内の点列 {yi}i0yiy を満たすと仮定する. そして点列 {xi}i0xif1(yi) となるように定義する.

もし {xi}i0 が収束する部分列を持つならば f の連続性からその部分列の収束点 x について f(x)=y になるので yf(X) を得る.

もし {xi}i0 が収束する部分列を持たない, すなわち xi ならば yL(f) であり, 仮定から L(f)f(X) なので yf(X)である.

いずれにせよ yf(X) なので f(X)Y の中で閉集合である. ∎

結果として次のことがわかる.

Corollary 7.6.

f:XY を単射と仮定する. このときもしも L(f)= ならば f は閉写像でかつ埋め込みになっている.

7.2 埋め込みの構成

二つの多様体 Cr 級 可微分多様体 M,N について Embr(M,N)M から N への Cr 級の埋め込み写像全体 の集合を表すとする. 次に 多様体のユークリッド空間への埋め込みの存在の証明をする.

Theorem 7.7.

Nn 次元 Cr 級多様体とする. このとき Embr(N,(n+1)2) が成り立つ.

Proof.

まず 2.14 より DDimNn である (実際はこの不等式は等式であるがそこまで精密な評価は使わない). すると N の相対コンパクトな局所座標系 からなる N の被覆 𝒜 に対して 定理 2.21 を用いて, 𝒜 の細分 と開集合からなる(被覆とは限らない) n+1 個の族 𝒰0,𝒰1,,𝒰n が存在して 各iについて𝒰iは互いに素な族であり, 以下を満たす

=𝒰0𝒰1𝒰n.

必要ならば, 各 i について V,W𝒰i が異なるならば CL(V)CL(W)= と仮定しても良い. これはN が 正規空間であるから可能である. 適当に番号付して, 𝒰k={Ui(k)}i0 とする. また正規性に関する補題 1.4 を用いて 集合族の有限列 {𝒱k}k=0n𝒱k={Vi(k)}i0 と番号付されていてなおかつ CL(Vi(k))Ui(k) を満たしかつ, 𝒱0𝒱1𝒱nN の被覆になっているようなものとする. また, 同様に集合族の有限列 {𝒲k}k=0n𝒲k={Wi(k)}i0 と番号付されていて CL(Wi(k))Vi(k) を満たしかつ, 𝒲0𝒲1𝒲nN の被覆になっているようなものとする.

さて, Ai(k)CL(Vi(k))Ai(k) となる 𝒜 の元とする. このとき Ai(k) 上の局所座標で以下を満たすものが存在する.

  1. (1)

    もしも ij ならば ϕi(k)(CL(Vi(k)))ϕj(k)(CL(Vj(k)))= が成り立つ.

  2. (2)

    もしも N 内の 点列 {xs}s0 任意の s0 について xsVis(k) が成り立ち かつ xs を満たす ならば ϕis(k)(xs) が成り立つ.

これはユークリッド空間内の平行移動や, コンパクト集合は局所有限族の元の有限個のものとしか交わらないことなどを考えると存在性が保証される.

そして bi(k):N を,非負の値を取り, Vi(k) 上で 1 の値をとり, Ui(k) の外では 0 の値をとる N 上の Cr 級関数とする. これを用いて θ(k):Nn を以下のように定義する.

θ(k)(x)={bi(k)(x)ϕ((k)x)xUi(k);0nxiUi(k).

ここで θ(k)|Vi(k)=ϕi(k) に注意しよう.

CL(Wi(k))Vi(k) なので次が従う.

(7.5) ϕi(k)(CL(Wi(k)))ϕi(k)(Vi(k)).

次に 滑らかな関数 pi(k):nϕi(k)(Wi(k)) 上で 1ϕi(k)(Vi(k))の外で 0 の値をとる関数とする. そして η(k):N を次で定義する.

(7.6) η(k)(x)={pi(k)ϕi(k)(x)xVi(k);0xiVi(k).

このとき η(k)Cr 級である.

さて l=(n+1)2 とおいて 写像 Φ:Nl を次で定義する.

(7.7) Φ(x)=(θ(0)(x),,θ(n)(x),η(0)(x),,η(n)(x)).

今から Φ は可微分な埋め込みであることを 証明しよう.

まず Φ の微分のランクが退化していないことは, Vi(k)たちが Nを被覆することと θ(k) の定義から従う.

次に単射性を調べよう. Φ(x)=Φ(y) とすると, Wi(k) たちが N の被覆であるから ある k{0,,n} が存在して 0<η(k)(x)=η(k)(y) が成り立つ. よって x,yi0Vi(k) である. ここで Φ(x)=Φ(y)から θ(k)(x)=θ(k)(y) も導かれる. よって bi(k) の定義から ある i0 について ϕi(k)(x)=ϕi(k)(y) が成り立つ. ここで ϕi(k) は座標系だったので x=y を得る.

次に Φ が位相的埋め込みであることを示そう. L(Φ)Φ の極限集合として, 命題 7.4から L(Φ)= を示せば Φ が埋め込みであることが従う. 空間 N 内の点列 {xs}s0xs を満たすとする. このとき適当に部分列をとればある k{0,,n} に対して以下が成り立つと仮定しても一般性を失わない.

(7.8) xsi0Vi(k).

このとき局所座標 ϕi(k) の定め方から θ(k)(xs)となる. よって特に Φ(xs) である. これは L(Φ)= を意味する. ∎

Remark 7.2.

この証明から Φ は閉写像であることがわかる. また,Sardの定理を応用して Embr(N,2n+1) であること が証明でき, 微分トポロジーの技法を用いると 2n+1l ならば Embr(N,l) が可微分写像の空間の中で稠密であることを証明することができる.

和文資料

参考文献

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