可分距離空間上の 被覆次元と帰納次元
この文書では正規空間の被覆次元にまつわる基本的な命題を紹介していく. 特におまけの球面の拡張問題の話は興味深いと思う. この文書の内容は [8] を大いに参考にした. 基本的な命題を述べた後に, 可分距離化可能空間において, 被覆次元で帰納的次元が上から抑えられることを証明する.
1 位相的準備
補題 1 (被覆の収縮補題).
正規空間 の有限開被覆 について,開被覆 が存在して が満たされる.
証明.
帰納法によって証明できる. 詳細は省略する. ∎
集合族の相似という概念を導入する.
を添字集合とする. 集合 の部分集合族 と が 相似であるとは の任意の部分集合 について と が同値になることである. 同じことだが と が同値になるということでもある.
位相空間論では特に 特に などの包含関係が存在して や が開集合だったり 閉集合だったりするような状況において 相似な集合族を構成できるかどうかに興味がある. この文章では一般的な話は行わず 有限集合族の場合に限って話を進めるということにする.
補題 2.
を 正規空間とする. そして と を それぞれ 閉集合族と開集合族で を満たしているとする (を被覆しているなどの条件はつけない). このとき 開集合族集合族 が存在して と を満たしさらに と は相似である.
証明.
帰納法によって証明する. 自然数について 族 が と相似であり かつ を で満たしているとする. 今から を構成する. 今 の有限個の共通部分で表される集合のうち と交わらないものを とかく. そして と定義すると, は有限集合であるから は の開集合であり を満たす. ここで の正規性を用いて を かつ となる開集合とする. このとき の定義から と は相似である. 以上で証明が終わる. ∎
2 被覆次元
集合 の 集合族 と について を を含む の個数とする. そして を と定義する.
さて位相空間 と について であるとは の任意の有限開被覆 について, その細分となる開被覆 が存在して となることである. また とは の否定が成り立つときにそう書く.
補題 3.
を正規空間とする. このとき以下は同値である.
-
(1)
-
(2)
の任意の有限開被覆 について 開被覆 が存在して かつ が成り立つ.
-
(3)
の任意の有限開被覆 について 開被覆 が存在して かつ の濃度がの部分集合 について が成り立つ.
-
(4)
の 濃度がの 任意の開被覆 について 開被覆 が存在して かつ が成り立つ.
証明.
同値性 は自明である. また と も自明である.
の証明: 開被覆 に対してその細分となる開被覆 で となるものが存在する. ここで を を となる最小の として定義する. そして各 について と定義し とすれば は の開被覆であり, から を満たす.
の証明: の有限開被覆 を任意に与える. もしも のときは適当に空集合を付加して やってと仮定しても良い. そして を集合 の個の部分集合の直和分割全体の集合とする. つまりの元は であって各はの空でない部分集合で の時 で である. は有限集合なので 番号をつけて とする. 以下の操作を帰納的に繰り返して の開被覆 を構成する. まず とする. そして が構成されたとき を構成する. としてについて とする. すると は の開被覆になるので (4)を用いて その細分となる開被覆 で となるものが存在する. ここで について と定義する.ここでは となる である. 今 に注意しよう. ここで で と定義する. 今からを示そう. の濃度がの任意の部分集合 について として としては余った の元全部とする. そして とする. 上で構成したのと同じ記号を用いる. 任意の について
| (2.1) |
であり, なので である. よって (3)が成り立つ.
以上で証明が終わる. ∎
補題 4.
を正規空間とする. このとき以下は同値である.
-
(1)
-
(2)
の任意の有限開被覆 について 開被覆 が存在して かつ が成り立つ.
-
(3)
の 濃度がの 任意の開被覆 について 閉被覆 が存在して かつ が成り立つ.
被覆の境界のdegreeによって 被覆次元を特徴付けることができる.
命題 5.
を正規空間とする. このとき以下は同値である (以下の条件において,被覆とは仮定していないことに注意せよ).
-
(1)
-
(2)
の任意の有限開集合族 と閉集合族 について 開集合族 が存在して と を満たし かつ が成り立つ.
-
(3)
の任意の有限開集合族 と閉集合族 について 開集合族 と が存在して と を満たし が成り立つ.
-
(4)
の 濃度がの 任意の開集合族 と 閉集合族 で となるもの について 開集合族 が存在して と を満たし かつ が成り立つ.
証明.
の証明: を の濃度がの部分集合族の共通部分で表される集合全体 とする. このとき仮定から は の開被覆となる. よって (1) から degreeが であるような 開被覆 で の細分になるものが存在する. さらに 閉被覆 で となるものをとる. ここで に対して を となるような の集合全体とする. そして 補題 1 から 各 について を となるようにとる. ここで, がを満たすならば となるようにとる. さて, について
| (2.2) |
と定義する. このとき が成り立つ. というのも, かつ となるが存在するので となるからである. また の定義と の定義から なら であり, を定義する式は有限和であるから となることがわかる. 最後に背理法のために 濃度がのの部分集合 が存在し となるとしよう. 点 をとる. さて であるから である. ここで各について を 満たすものとして定義しよう. このときならば である. というのも,と仮定して もしもならば, なので となり矛盾するからである. さて なので 特に である. ここで となる番号 をとる. は被覆なのでこれは可能である. さて なので はたちとは異なる. よって より となるが, これは に矛盾する. よって である.
の証明: (2)から 開集合族 で と を満たしかつ となるものが存在する. このとき であるから 補題2 から 開集合族 で と が相似なもので となるものが存在する. ここで と定義すると, であり かつ なので は と相似である. よって である.
の証明: 自明である.
定理 6.
とし, を である正規空間とし, と をそれぞれ閉集合族, 開集合族 で を満たすとする. このとき 開集合族 であって と を満たしかつ を満たすものが存在する.
証明.
まず の部分集合であって 濃度が のもの全体を考える. そのような集合は高々可算個しかないので, 番号をつけて列挙して とする. そして 今から帰納法により, によって添字付られた 以下のような開集合の列の列 , で 任意の について と を満たしかつ 任意の について が成り立つ ものを構成する. 今までは上記の列が構成できたとする. 今から, を構成する. まず については と について 命題 5 を用いて かつ で となる と をとる. については かつ と定義する. ここで任意のについて なので, 任意の について について が成り立つ. さて,この によって添字付られた 列 , を用いて, 任意のについて と定義する.もちろん は満たされる. また任意のについて かつ なので である. よって について となる. これで証明が終わる. ∎
3 可分距離空間
定理 7.
とする. そして を を満たす 可分距離化可能空間とする. さらにの閉集合 と開集合 は を満たしているとする. このとき開集合 が存在して と を満たし さらに を満たす.
証明.
に全有界な距離関数でと同じ位相を生成するのもを与える.これはが完備距離化可能であることから に位相的に埋め込み可能であることから とってこれる. 適当に正の有理数全体を番号付して とし 空間の可算稠密部分集合を とする. そして について を半径がで 中心が に関する閉球 とし, を を半径がで 中心が に関する 開球 とする. もちろん である. 今 二つの可算族 と に対して 定理 6 を用いて かつ となる開集合 と かつ となる開集合 であって となるものをとる. このとき であることを示そう. 閉集合族 と開集合族 は と を満たすとする. さては に関して全有界であるから 開被覆 にはルベーグ数 が存在する. となる をとる. 再び全有界性から 有限集合 が存在して がを被覆する. ここで, を個数の部分集合 に と 直和分割してさらに について 各 は となる ようにする. ここで適当にに有限個の元を追加することにより 任意のについて としても良い. これは なので可能である. そして と定義するとについて である. これはからの帰結である. ここで であることから を用いて
| (3.1) |
となる. よって 5 より である. 以上で証明が終わる. ∎
補題 8.
を正規空間で を満たしているとする. このとき はclopen な開基を持つ. つまり である.
証明.
点 をとる. そして を の 開近傍とする. ここで 開被覆 を考える. より かつ で となる 開集合 であって を満たすものが存在する. この条件から である. そして より と はclopenである. このとき であるから にclopenな開基が存在することがわかった. ∎
定理 9.
を可分距離空間とする. このとき である.
4 おまけ:球面への写像の拡張問題が被覆次元を特徴付けること
定理 10 (Borsukのホモトピー拡張定理).
で を可算パラコンパクトな正規空間とし をその閉集合とする. 連続写像 について で とおく. このときもしも で となるものが存在するならば で となるものが存在する. さらに はとホモトピックに選べる. つまり,空間全体に 拡張されるという性質は (球面に値をとるホモトピーに関して)ホモトピー 不変ということである.
証明.
が可算パラコンパクトなので は正規である. 定理の仮定にあるを用いて写像 を 拡張子て とみなす. もちろん上で はに一致するということである. さらにこのを への写像とみなして Tietze-Urysohn の拡張定理を適応すると の拡張 を得る. そして とし, を
| (4.1) |
と定義すると は上連続である. もちろん であり である (以上の議論はがANR(正規空間)ということをこの言葉を用いずに証明したものである). そして の 開集合 を であってある近傍のが存在し となるもの全体 とする. すると Tube Lemma と から そして の正規性から ある連続写像 でかつ となるものが取れる. そこで を
| (4.2) |
と定義する. もちろんこれは連続であり はの拡張になっていて, はとホモトピックである. ∎
定理 11.
を正規空間とする. このとき であることと以下の条件は同値である. の任意の閉集合 と 連続写像 に対して連続写像 が存在しを満たす.
証明.
位相的には同じなので と を同一視する. まず最初に を仮定する. このとき写像は 写像である. そして と成分表示し
とすると と は の閉集合でなおかつ を満たしさらに
となる. ここで 定理 5 を と に適応し 各 について 開集合 と で と でなおかつ を満たすものが存在する. ここでTietze-Urysohnの拡張定理から 各 について 連続写像 であって かつ となるものが存在する. このとき なので となる. もちろん 各について , を満たすことに注意せよ. ここで
を と定義する. ここで と の性質からのとき は への写像になる.ここで とおく. そして を
と定義する. であることと , の定義から は常にその成分のいずれかは絶対値が である. つまりである. ここで は-ノルムである. つまり を
と定義できる. ここで で に注意せよ. この はと を結ぶホモトピーであり, は全体への連続拡張 を持つから Borsukのホモトピー拡張定理 (定理10)から は拡張 を持つ.
逆に拡張問題が常に解けるとして, の次元の評価をしよう. の 濃度がの 任意の開集合族 と 閉集合族 で となるもの を考える. 今 として とする. そして 各 を かつ を満たすものとする. このとき は への写像になっている. さて,定理の仮定から 連続写像 で となるものが存在する. そして とすると で を満たす. さらに なのでが への写像であることから である. よって 命題 5 から である. ∎
References
- [1] 電波通信 「不動点定理」 https://concious4410.hatenablog.com/entry/2017/08/27/182714
- [2] 電波通信, 「次元論ショートコース:0次元から始める位相次元」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/03/12/161532
- [3] 電波通信, 「不動点定理と同値な命題」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2026/04/05/181441
- [4] 電波通信, 「次元論からの領域不変性定理の証明」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2026/04/15/220550
- [5] M. G. Charalambous, Dimension theory. A selection of theorems and counterexamples Springer/Atlantis Press (2019).
- [6] W. Hurewicz and H. Wallman,Dimension Theory,Princeton Univ. Press,1948
- [7] A. R. Pears, Dimension theory of general spaces, Cambridge University Press 1975.
- [8] K. Morita, On the dimension of normal spaces, I. , Japanese journal of mathematics :transactions and abstracts, vol 20 (1950), pp. 5–36, DOI: 10.4099/JJM1924.20.0_5