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廉価版領域不変性定理の証明のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

廉価版領域不変性定理の証明

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では領域不変性定理を 次元論などの 難しいことをなるべく使わないで証明してみる. 次元論を捨てたことにより球面への連続写像の拡張で 次元を特徴づける定理の範囲がユークリッド空間に狭まった. しかし,ユークリッド空間では次元論の代わりに ユークリッド空間特有の現象,つまり †解析学† を使うことができる(実際にはリプシッツ性があれば今回使う程度のサードの定理は証明できるので,本当に解析っぽい部分はサードの定理で測度ゼロの概念を用いるところのみである).

以下の証明方法,特にサードの定理を使う部分については テレンス・タオ[10]がブログ, もしくはその元ネタである [9] に影響を受けた.

証明の方針は [4] と全く同じである. 違うのは 定理 6 の適応範囲をユークリッド空間の球面のみに絞って ユークリッド空間特有の性質で証明した部分のみである. 第二節の領域不変性定理の証明は [4] をそのまま流用している.

1 本文

記号 U⁢(a,r) でaを中心とする 半径rの開球を表すとする.

定理 1.

n,k∈ℤ≥1 とし Kを ℝn のコンパクト部分集合とし f:K→ℝk を 連続写像とする. このとき 任意の ϵ∈(0,∞) に対して C∞級 関数 h:ℝn→ℝk が存在して supx∈K∥f⁢(x)−h⁢(x)∥<ϵ が成り立つ.

証明.

Kのコンパクト性から fはK上一様連続である. そして fの一様連続性から あるδ∈(0,∞) が存在して x,y∈K が∥x−y∥<δ を満たすならば ∥f⁢(x)−f⁢(y)∥<ϵ となる. そして Kのコンパクト性から ある点列a1,…,am∈K が存在して U⁢(a1,δ),…,U⁢(am,δ),X∖K がℝkの開被覆となる. よって 滑らかな 単位の分割{ui}i∈{1,…,m+1}が 存在して uiはU⁢(ai,δ)に従属し um+1 はX∖K に従属する. よってx∈K のとき ∑i=1mui⁢(x)=1 となる. そして h:ℝn→ℝk を

h⁢(x)=∑i=1mf⁢(ai)⋅ui⁢(x)

と定義する. するとhは滑らかであり任意の x∈Kについて

∥f⁢(x)−h⁢(x)∥ =∥∑i=1mf⁢(x)⁢u⁢(x)−∑i=1mf⁢(ai)⁢u⁢(x)∥=∥∑i=1m(f⁢(x)−f⁢(ai))⁢u⁢(x)∥
≤∑i=1mu⁢(x)⁢∥f⁢(x)−f⁢(ai)∥<∑i=1mu⁢(x)⁢η=η

∎

なので,定理が成り立つことがわかる.

注意.

他にも方法はある.まず 関数fに対してティーチェの拡張定理を用いて fをg:ℝn→ℝk に拡張する.そしてこのgを 例えば多項式近似定理や ストーン・ワイエルストラスの定理を使ってK上で近似すると証明できる. あるいは 軟化子でほぐしてあげると 定理が証明できる. 実は微分可能性はサードの定理を適応する時にしか使わず, さらに今回使うサードの定理のためには リプシッツ性があれば十分なので, 上の定理で滑らかな単位の分割の代わりに リプシッツな単位の分割をこさえてやればこの文書の話は回すことができる.

定理 2 (Sardの定理スペシフィック).

関数f:ℝn→ℝn+1 はC∞級とする. このとき f⁢(ℝn)はℝn+1 の中で測度ゼロである.

証明.

大まかにいえばfが局所リプシッツであることから fの像が測度ゼロになることが従う. つまり fが局所的にMリプシッツだとすると fによる半径rのボールの像は半径M⁢rのボールに含まれる.なのでこのような写像で測度ゼロ性は保たれるのである. ∎

補題 3.

n∈ℤ≥0でr∈(0,1)とする. そして Ar={x∈ℝn+1∣1−r<∥x∥<1+r}と おく. なめらかなレトラクション π:ℝn+1∖{0}→𝐒n を

π⁢(x)=x∥x∥

と定義する. このとき rに依存する定数 Mrが存在して π はAr 上でMrリプシッツ写像である.

証明.

Arは相対コンパクトで πの微分のノルムが上から抑えられるからである. ∎

系 4.

n∈ℤ≥0 とし Xを ℝn のコンパクト部分集合とし AをXの閉部分集合とする. このとき 任意のϵ∈(0,∞) と 任意の連続写像 f:A→𝐒n に対して (なめらかな)関数 h:ℝn→𝐒n が存在し 以下の条件を満たす.

  1. (1)

    supx∈A∥f⁢(x)−h⁢(x)∥<ϵ.

  2. (2)

    像h⁢(ℝn)は0∈ℝn+1 を含まない.

証明.

r=min⁡{2−1,ϵ}かつ η=min⁡{ϵ,r}1000⁢(Mr+1) と定義する. 写像 f:A→𝐒n を f:A→ℝn+1 とみなす. そして 定理 1 を適応して なめらかな関数 u:ℝn→ℝn+1 で supx∈A∥f⁢(x)−u⁢(x)∥<η となるもの を得る. このとき 定理 2 から u⁢(ℝn) はℝn+1 のなかで 測度ゼロなので 特にℝn+1∖u⁢(ℝn) は稠密である. よって 十分小さいα∈(0,ϵ/10) を使ってv⁢(x)=u⁢(x)+αと定義される関数 v:ℝn→ℝn+1は 0∉v⁢(ℝn) を満たす. このとき supx∈A∥f⁢(x)−v⁢(x)∥≤2⁢η である. そして h=π∘v:ℝn→𝐒n と定義する. すると x∈Aのとき supx∈A∥f⁢(x)−u⁢(x)∥<η<rから u⁢(x),f⁢(x)∈Arなので f=π∘fと組み合わせて 補題3から x∈A のとき

∥f⁢(x)−h⁢(x)∥=∥π∘f⁢(x)−π∘v⁢(x)∥≤Mr⁢∥f⁢(x)−v⁢(x)∥≤2⁢Mr⁢η

である. よって supx∈A∥f⁢(x)−h⁢(x)∥≤2⁢Mr⁢η<ϵとなり, 証明が終わる. ∎

定理 5 (球面の拡張手性と次元の関係性スペシフィック).

n∈ℤ≥0 とし Xを ℝn のコンパクト部分集合とし AをXの閉部分集合とする. このとき任意の連続写像 f:A→𝐒n は拡張となる連続写像 g:X→𝐒n を持つ.

証明.

これはちゃんと証明する. まず 系4 を使って (なめらかな)関数 h:ℝn→𝐒n で あって

  1. (1)

    supx∈A∥f⁢(x)−h⁢(x)∥<1.

  2. (2)

    像h⁢(ℝn)は0∈ℝn+1 を含まない.

を満たすものをとる. 次に ティーチェの拡張定理を使って fの拡張となる連続関数 w:X→ℝn+1 を得る. そして

V={x∈X∣∥h⁢(x)−w⁢(x)∥<1}

と定義するとVはXの開集合である. ここでA上で ∥h⁢(x)−f⁢(x)∥<1となるという仮定から A⊂Vである. さてウリゾーンの補題から 連続写像ϕ:X→[0,1] で A上で1を常にとり X∖V上で 恒等的に0となるものが存在する. ここでJ:X×[0,1]→ℝn+1 を

J⁢(x,t)=(1−t)⁢h⁢(x)+t⁢w⁢(x)

と定義するとこれは連続写像になる. 今から J⁢(x,ϕ⁢(x))が任意のx∈X についてノンゼロであることを証明しよう.

まずx∈Vについてはhの値域は 𝐒nなので 任意のt∈[0,1]について 以下の計算を得る.

∥J⁢(x,t)∥ ≥∥h⁢(x)∥−∥h⁢(x)−h⁢(x,t)∥
=∥h⁢(x)∥−∥t⁢h⁢(x)−t⁢w⁢(x)∥
=∥h⁢(x)∥−t⁢∥h⁢(x)−w⁢(x)∥
≥∥h⁢(x)∥−1⋅∥h⁢(x)−w⁢(x)∥
>∥h⁢(x)∥−1
=0

つまり J⁢(x,t)≠0 である. 特にJ⁢(x,ϕ⁢(x))≠0である.

次にx∉Vの時はϕ⁢(x)が0の値を取り続けることから 恒等的にJ⁢(x,ϕ⁢(x))=h⁢(x) である.特にJ⁢(x,ϕ⁢(x))≠0 である. 以上から任意のx∈X でJ⁢(x,ϕ⁢(x))≠0となることがわかった. そこでg:X→𝐒n を

g⁢(x)=J⁢(x,ϕ⁢(x))∥J⁢(x,ϕ⁢(x))∥

と定義すれば x∈A上では確かにfと一致する. これで証明が終わる. ∎

定理 6.

n∈ℤ≥0 とし Aを 𝐒n の閉部分集合とする. このとき任意の連続写像 f:A→𝐒n は拡張となる連続写像 g:𝐒n→𝐒n が存在する.

証明.

𝐒n を上半球𝐇+n と 下半球𝐇−n に分ける. この二つの共通部分である赤道を 𝐄 とおく. そして S=𝐇−n∩A で T=𝐇+n∩A とする. このとき, まず 𝐇−n について 𝐇−n は𝐃n に 同相なので 定理 5 を適応して f|S:S→𝐒n を g0:𝐇−n→𝐒n に拡張する. このときg0はS上でfと同じ値を取るので 𝐇−nとAの共通部分 Sで貼り合わさって fは𝐇−n∪A上まで拡張されたことになる.この拡張された関数を g1:𝐇−n∪A→𝐒n とする. 次に𝐇+nについて g1の定義域∩𝐇−n∪A と𝐇+n の共通部分は 𝐄∪T である. ここで𝐇+n と 𝐄∪T, そして g1|𝐄∪T:𝐄∪T→𝐒n に 定理 5 を適応すると 連続写像 g2:𝐇+n→𝐒n をえる. もちろん g1とg2の定義域𝐇+n と𝐇−n の共通部分 𝐄 上ではg1とg2 は同じ値を取るので 連続写像が貼り合わさって 連続写像g:𝐒n→𝐒n をえる. 作り方から g|A=fなので 定理が示された. ∎

2 領域不変性定理

以下の定理により ユークリッド空間内のコンパクト部分集合Kの境界点は Kの位相的言明のみで特徴付できることがわかる. これが領域不変性定理の肝である.

この説の内容は [4]と同じである. テレンス・タオ[10]のブログでは こうした境界点の位相的特徴付けも簡略化することにより 簡単な領域不変性定理の証明をえているが, この定理自体をなくしてしまうことは勿体無いと思ったので,この文書では簡略化などはしていない.

定理 7.

n∈ℤ≥1 とし Kをℝn のコンパクト部分集合とする. このときp∈∂ℝnK となるための必要十分条件は pのK内の任意の近傍 Nについて p のK内の開近傍U であってU⊂Nを満たしかつ 任意の連続写像 f:K∖U→𝐒n−1 は連続な拡張g:K→𝐒n−1 を持つようなものが存在することである.

証明.

まず最初にp∈∂Kを仮定して定理の条件を導く. Nをpの任意の近傍とする. そしてBをpを中心とする十分小さい半径を持つ開球で K∩B⊂N を満たすものとする. このときU=K∩B が条件を満たすことを見よう. ここでL=∂BとするとLは 𝐒n−1 と同相である. 今ここで任意の連続写像 f:K∖U→𝐒n−1 を考える. ここでK∖Uは Kの閉集合である. 特にℝnの閉集合でもある. ここで dimTL≤n−1 なので dimT(K∩L)≤n−1 である. ここでL∩K⊂K∖U に注意して 定理 6 から連続写像 f|L∩K:L∩K→𝐒n−1 の拡張である連続写像 u:L→𝐒n−1 を得る. さてLとK∖Uの共通部分はL∩K で,この上ではuとfは同じ値を取るので写像が貼り合わさって連続写像 h:(K∖U)∪L→𝐒n−1 を得る. そしてpがK の境界なので Bの点であってKに属さないものqを取ることができる. 任意の点x∈Kについて qからx∈Kへ伸ばした直線と Lとの交点をb⁢(x)とする. このときb:X→L は連続写像である. そしてg:X→𝐒n−1を

g⁢(x)={h⁢(b⁢(x))x∈U∪(L∩K)f⁢(x)x∈K∖U

と定義すると これら二つの関数h⁢(b⁢(x))とf⁢(x)はL∩K上で値が一致するのでちゃんと張り合って連続関数になる. このgはちゃんとfの拡張になっている.

逆にp∈Kが 定理の条件を満たすとしよう. 背理法のためにp∈KはK の内点であるとする. ここでpを中心とする十分小さい半径を持つ 開球BでCL⁡B⊂Kとなるものを考える. すると定理の仮定よりpの開近傍Uで U⊂B で任意の連続関数f:K∖U→𝐒n−1がK上に拡張するものが存在する. ここで写像 f:K∖U→𝐒n−1 を以下のように定義する. 点pからx∈K∖Uへと直線を伸ばし ∂Bとの交点をf⁢(x)とする. これは連続写像で∂Bは𝐒n−1 と同相なので ちゃんと連続写像 f:K∖U→𝐒n−1 を得る.このとき fは∂B上で恒等写像になることに注意しよう. すると定理の条件より 連続写像g:K→𝐒n−1 が存在する. さてCL⁡B⊂Kであった. このときg|CL⁡B:CL⁡B→∂B を考えると g|CL⁡B はCL⁡Bから ∂B へのレトラクトになる. これはNo retract theorem に矛盾するので p∈Kは境界点でなければならない. ∎

いよいよ領域不変性定理を証明する.

定理 8 (領域不変性定理).

n∈ℤ≥1 とし Uはℝn の開集合とする. そして f:U→ℝn を連続単射とする. このときf⁢(U) はℝnの開集合である.

証明.

任意のp∈Uについて f⁢(p)がf⁢(U)の内点であることを証明すれば良い. pの十分小さい近傍NでCL⁡Nがコンパクトで CL⁡N⊂Uであるものをとる. このときf|CL⁡Nを考えると fはコンパクト集合からハウスドルフ空間への 連続単射なので位相的埋め込みになる. 定理7より 点pが境界点かどうかはCL⁡Nの内在的な位相的条件で特徴づけられる.つまりpはCL⁡Nの内点であるから f⁢(p)はf⁢(CL⁡N)の内点になる. よって特にf⁢(p)はf⁢(U)の内点である. ∎

系 9.

MとNを同じ次元の境界つき多様体とし f:M→Nを同相写像とする. このときfは∂Mを∂Nに移す.

証明.

もしもfがp∈∂MをN∖∂N に移すと,f−1を考えることによって局所的には ユークリッド空間の内点がpに写っていることになるが, pは上半平面の境界点なので領域不変性定理に矛盾する. ∎

References

  • [1] 電波通信 「不動点定理」 https://concious4410.hatenablog.com/entry/2017/08/27/182714
  • [2] 電波通信, 「次元論ショートコース:0次元から始める位相次元」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/03/12/161532
  • [3] 電波通信, 「不動点定理と同値な命題」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2026/04/05/181441
  • [4] 電波通信,「次元論からの領域不変性定理の証明」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2026/04/15/220550
  • [5] M. G. Charalambous, Dimension theory. A selection of theorems and counterexamples Springer/Atlantis Press (2019).
  • [6] W. Hurewicz and H. Wallman,Dimension Theory,Princeton Univ. Press,1948
  • [7] T. Kihara, The Brouwer invariance theorems in reverse mathematics, Forum of Mathematics, Sigma, vol.8, 2020, doi: 10.1017/fms.2020.52.
  • [8] C. Kuratowski, Une Méthode de Prolongement des Ensembles Relativement Fermés ou Ouverts, Colloq. Math. 1 (1948), 273-278, doi:10.4064/cm-1-4-273-278.
  • [9] W. Kulpa, The Poiancré–Miranda Theorem, Amer. Math. Monthly 104, No. 6, 545–550 (1997) doi: 10.2307/2975081
  • [10] T. Tao, Brouwer’s fixed point and invariance of domain theorems, and Hilbert’s fifth problem, https://terrytao.wordpress.com/2011/06/13/brouwers-fixed-point-and-invariance-of-domain-theorems-and-hilberts-fifth-problem/
  • [11] A. R. Pears, Dimension theory of general spaces, Cambridge University Press 1975.