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善良超フィルターの存在証明のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

善良超フィルターの存在証明

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では Kunen [4]の方法によって善良超フィルター(good ultrafilter)の存在を証明する. よくわかんないところは 学士論文 [3] を参考にした.

善良超フィルターの存在証明といえば 数学書「超積と超準解析」 [1]に記述がある. しかしこの本 が2026年現在 入手困難で, 善良超フィルターの存在が記述された日本語の文書も見かけないことからこの文書を書くことにした. とりあえず善良超フィルターの存在がわかれば 飽和モデルの構成の難しい部分が解消できて, 超準解析の部分は色々な本に記述があるので絶版本を 無理して購入する必要がなくなるのではないかと思われなくもない. ところでこの本は国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能であるらしい.

1 準備: ケーニヒの補題

基数に関する Königの補題が必要になったので,急いで証明する.

定理 1.

基数μによって添字づけられた 基数の二つの族{κα}α<μ と{λα}α<μ は任意のα<μについて

κα<λα

を満たすとする. このとき以下の不等式が成り立つ.

∑α<μκα<∏α<μλα.
証明.

二つの集合族 {Kα}α<μ と {Lα}α<μ は α<μ について card⁢(Kα)=κα, card⁢(Lα)=λα, を満たし, そしてα≠βの時 Kα∩Kβ=∅ と Lα∩Lβ=∅ を満たすとする.このような族は常に取ることが出来る. このとき card⁢(∐α<μKα)=∑α<μκα であり card⁢(∏α<μLα)=∏α<μLα である. まず最初に ∐α<μKα から ∏α<μLα への単射を構成しよう. 適当に各α<μに対して 単射fα:Kα→Lα をとってくる. κα<λα なので, fαは絶対に全射ではない. よってfαの像に含まれない元を一つとり pαとする. このとき写像 h:∐α<μKα→∏α<μLα を x∈Kαのとき h⁢(x)の第α成分がfα⁢(x) でそれ以外のβ成分はpβ となるように定義する. このhが単射となることを見よう. fαの単射性から各Kα上では 単射である.α≠βでx∈Kαかつy∈Kβのときには h⁢(x)の第α成分はfα⁢(x) であり, h⁢(y)のそれはpαである. pαはfαの像には含まれないから fα⁢(x)≠pα であるから h⁢(x)≠h⁢(y) である. 以上でhが単射であることがわかった. つまり ∑α<μκα≤∏α<μλαがわかった. 次にこれが真の不等式になることを示す. そのために任意の 写像f:∐α<μKα→∏α<μLα が全射ではないことを示せば良い. 写像fを成分表示して f=(fα)α<μ とする. このときκα<λα なので写像 fα|Kα:Kα→Lα は全射ではないので これの像に含まれない元pαを取ることが出来る. そして点p∈∏α<μLα を第α成分がpαとなる点とする. 今からpがfの像に含まれないことを証明しよう. そのためには任意のα<μについて pがf⁢(Kα)に属していないことを示せば良い. なんとなればf⁢(Kα)のLαへの射影は fα|Kαの像であるから pαはこれに含まれない. よってpはf⁢(Kα) に含まれない. これでfが絶対に全射ではないことがわかった. つまり目的の不等式が成り立つ. ∎

系 2.

基数κについて κ<κc⁢f⁢(κ) が成り立つ.

証明.

列 {θα}α<c⁢f⁢(κ) をsupα<c⁢f⁢(κ)θα=κかつ θα<κを満たすものとしてとってくる. 定数列{κ}α<c⁢f⁢(κ) と上記の列に対して定理1 を適応すると κ<κc⁢f⁢(κ) を得る. ∎

系 3.

基数κについて κ<c⁢f⁢(2κ) が成り立つ.

証明.

もしもc⁢f⁢(2κ)≤κだとすると

(2κ)c⁢f⁢(2κ)≤(2κ)κ=2κ×κ=2κ

となり 系2 に矛盾する. ∎

2 本文

フィルターの定義は省略する. 特に断りのない限り, フィルターといえば真のフィルターとする.

Xを集合とするとき [X]<ω0 でXの有限部分集合全体の集合を表すとする. そして 𝒫⁢(X) でXの冪集合を表すとする.

定義 4 (単調写像, 準同型).

Xを集合とする. 写像p:[X]<ω0→𝒫⁢(X) が単調であるとは a,b∈[X]<ω0 についてもしも a⊂bならば p⁢(b)⊂p⁢(a) となるときにいう. そしてh:[X]<ω0→𝒫⁢(X) が準同型であるとは 任意のa,b∈[X]<ω0 について h⁢(a∪b)=h⁢(a)∩h⁢(b) を満たすときにいう. 準同型ならば単調であることに注意しよう. そして二つの写像 f,g:[X]<ω0→𝒫⁢(X) についてf≤gとは 任意のa∈[X]<ω0について f⁢(a)⊂g⁢(a) と定義する.

定義 5 (善良超フィルター(good ultrafilter)).

Xを集合とし ℱ をその上のフィルターとする. このときℱが 善良超フィルター(good ultrafilter) であるとは 任意の単調写像 p:[X]<ω0→ℱ について 準同型写像h:[X]<ω0→ℱ が存在してh≤pとなることである.

集合X, Y について Map⁢(X,Y) でXから Yへの写像全体の集合を表すとする.

定義 6 (large oscillation family).

Xを集合とし ℱ をその上の(𝒫⁢(X)も含めた)フィルターとする. このときMap⁢(X,X) の部分集合 𝒮 がlarge oscillation family mod ℱ であるとは 有限個の任意の𝒮の元f1,…⁢fm∈𝒮と同じ個数の任意の有限個のXの元 v1,…,vm∈Xについて

X∖{x∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fi⁢(x)=vi}∉ℱ

が成り立つことである.

注意.

Kunenの論文 [4] では上記概念はindependent set mod ℱ と名付けられている. 論文[2] によれば[4]のプレプリントの段階では large oscillation family という名前が用いられていたらしく, [2]ではlarge oscillation family という名前が使われている. independent setはすでに他の名前に使われているというか [4]では三つくらい異なるindependent setの概念が出てくる(互いに関係があるが)のでややこしいから large oscillation family という名前の方がいいと思う.

補題 7.

Xを集合とし ℱ をその上のフィルターとする. このときMap⁢(X,X) の部分集合 𝒮 が large oscillation family mod ℱ であることと 有限個の任意の𝒮の元f1,…⁢fm∈𝒮と同じ個数の任意の有限個のXの元 v1,…,vm∈X, そして任意のA∈ℱについて

A∩{x∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fi⁢(x)=vi}≠∅

が成り立つことは同値である.

証明.

まず𝒮 がlarge oscillation family mod ℱと仮定し, 有限個の任意の𝒮の元f1,…⁢fm∈𝒮と同じ個数の任意の有限個のXの元 v1,…,vm∈X, そして任意のA∈ℱをとってくる. ここで Z={x∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fi⁢(x)=vi}とおく. すると

X∖Z∉ℱ

である. もしもZ∩A=∅ だとすると A⊂X∖Zなので ℱ がフィルターであることから X∖Z∈ℱ が成り立ち矛盾する. よってZ∩A≠∅ であり,補題の条件が成り立つ.

逆に補題の条件が成り立つとしよう. そして 有限個の任意の𝒮の元f1,…⁢fm∈𝒮と同じ個数の任意の有限個のXの元 v1,…,vm∈Xをとってくる. ここで Z={x∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fi⁢(x)=vi}とおく. ここでもしも X∖Z∈ℱ だとすると 補題の条件から Z∩(X∖Z)≠∅ でなければならないが これはありえない. よって X∖Z∉ℱ である. つまり𝒮は large oscillation family mod ℱである. ∎

さて以下の命題を考えるにあたって {X}はX上のフィルターであることに注意しよう.

命題 8.

κを基数とし Xを濃度κの集合とする. このとき large oscillation family mod {X} となるような 𝒮 であって card⁢(𝒮)=2κ となるものが存在する.

証明.

集合K={(s,r)∣s∈[X]<ω0,r∈Map⁢(𝒫⁢(s),X)} の濃度はκである. そこでこれをXで添字づけして {(sx,rx)}x∈X とする. そして 各A∈𝒫⁢(X) について fA:X→X を fA⁢(x)=rx⁢(A∩sx) と定義する. このとき 𝒮={fA}A∈𝒫⁢(X) が条件を満たすことを見よう. 相異なるA1,…,Am とXの元v1,…,vm を任意にとってくる. このとき A1,…,Amは相異なるから 有限集合t∈[X]<ω0 が存在して A1∩t,…,Am∩t が相異なる. そして関数l:𝒫⁢(t)→X をl⁢(Ai∩t)=viと定義する. これはA1∩t,…,Am∩tが相異なることから可能である. ここでZ={x∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fAi=vi} とする. そして(sa,ra)=(t,l) となるa∈Xをとってくると a∈Z なので Zは空ではない. よって X∖Z≠X であるから X∖Z∉{X} なので 族𝒮は large oscillation family mod {X} である. また𝒮 は𝒫⁢(X) で添字づけられており,この添字づけが単射であることが 上の議論からわかるから card⁢(𝒮)=2κ である. ∎

命題 9.

Xを集合とし ℱ をその上のフィルター, そして 𝒮 をlarge oscillation family mod ℱ とし A∈𝒫⁢(X) とする. このとき X上のフィルター𝒢 と 𝒯⊂Map⁢(X,X) が存在して以下を満たす.

  1. (1)

    ℱ⊂𝒢

  2. (2)

    𝒯 はlarge oscillation family mod 𝒢 であり, 𝒯⊂𝒮 と card⁢(𝒮∖𝒯)<ℵ0 を満たす.

  3. (3)

    AとX∖A のどちらかは 𝒢 に属する.

証明.

場合わけで証明する. ℱ∪{A} から生成される (𝒫⁢(X)も含めた)フィルターを ℋ とする.

最初に𝒮 がlarge oscillation family mod ℋ である場合を考えよう. このとき ℋは真のフィルターであり A∈ℋである. ここで𝒢=ℋ, 𝒯=𝒮 とおけば命題の条件をすべて満たす.

次に 𝒮 がlarge oscillation family mod ℋ でない場合を考えよう. すると補題7からあるf1,…,fm∈𝒮 とv1,…,vmが存在し, さらに F∈ℱが存在して

A∩F∩{x∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fi⁢(x)=vi}=∅

である. ここでZ={x∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fi⁢(x)=vi}とおこう. するとA∩F∩Z=∅ である. ここでℱ∪{Z} から生成されるフィルターを 𝒢 とする.このとき補題7 から𝒢は真のフィルターになっている. そしてA∩F∩Z=∅ から F∩Z⊂X∖Aなので X∖A∈𝒢である. そして 𝒯=𝒮∖{f1,…,fm} とする. この𝒯がlarge oscillation family mod 𝒢であることを見よう. 𝒯からg1,…,gk とXからu1,…,uk をとってくる. そして W={x∈X∣∀i∈{1,…,k}⁢gi⁢(x)=ui} とする. このとき

W∩Z={x∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fi⁢(x)=vi⁢かつ⁢∀j∈{1,…,k}⁢gj⁢(x)=uj}

なので,𝒮がlarge oscillation family mod ℱであることから 補題7 から 任意のF∈ℱ から W∩Z∩F≠∅ である. これは Wが𝒢 の任意の元と交わりを持つということを示している. よって 再び補題7から 𝒯 がlarge oscillation family mod 𝒢 であることが従う. ∎

命題 10.

Xを集合とし ℱ をその上のフィルター, そして 𝒮 をlarge oscillation family mod ℱ とし p:[X]<ω0→ℱ を単調写像 とする. このとき X上のフィルター𝒢 と 𝒯⊂Map⁢(X,X) が存在して以下を満たす.

  1. (1)

    ℱ⊂𝒢

  2. (2)

    𝒯 はlarge oscillation family mod 𝒢 であり, 𝒯⊂𝒮 と card⁢(𝒮∖𝒯)<ℵ0 を満たす.

  3. (3)

    準同型h:[X]<ω0→𝒢 が存在して h≤p を満たす.

証明.

適当にg∈𝒮 をとってくる. そして 𝒯=𝒮∖{g} とおく. そして 各t∈[X]<ω0 に対して qt:[X]<ω0→𝒫⁢(X)を

qt⁢(s)={∅s⊄tp⁢(t)s⊂t

と定義する. そして {tx}x∈X を[X]<ω0 の添字づけとする. そして q:[X]<ω0→𝒫⁢(X) を

q⁢(s)=⋃x∈X(qtx⁢(s)∩g−1⁢({x}))

と定義する. さらに 𝒢を ℱ∪⋃s∈[X]<ω0q⁢(s) から生成される (𝒫⁢(X)を含めた)フィルターとする. まずqが準同型であることを見よう. 任意にa,b∈[X]<ω0 をとる. ここで 一般にw∈[X]<ω0について

q⁢(w) =⋃x∈X(qtx⁢(w)∩g−1⁢(x))=⋃x∈X,w⊂tx(p⁢(tx)∩g−1⁢(x))

となることに注意しよう. この観察のもと 以下の式変形をする.

q⁢(a)∩q⁢(b) =(⋃x∈X,a⊂tx(p⁢(tx)∩g−1⁢(x)))∩(⋃y∈X,b⊂ty(p⁢(ty)∩g−1⁢(y)))
=⋃x∈X,y∈X,a⊂tx,b⊂typ⁢(tx)∩g−1⁢(x)∩p⁢(ty)∩g−1⁢(y)
=⋃x∈X,y∈X,a⊂tx,b⊂typ⁢(tx)∩p⁢(ty)∩g−1⁢(x)∩g−1⁢(y).

ここで,x≠yならg−1⁢(x)∩g−1⁢(y)=∅となるから

⋃x∈X,y∈X,a⊂tx,b⊂typ⁢(tx)∩p⁢(ty)∩g−1⁢(x)∩g−1⁢(y)
=⋃x∈X⁢a⊂tx,b⊂txp⁢(tx)∩g−1⁢(x)=⋃x∈X⁢a∪b⊂txp⁢(tx)∩g−1⁢(x)
=q⁢(a∪b)

となるから q⁢(a∪b)=q⁢(a)∩q⁢(b)となる. よって qが準同型であることがわかる.

次に𝒢 が真のフィルターであることを見てみよう. 写像qが準同型であることから 任意のs∈[X]<ω0 と 任意のF∈ℱについて F∩q⁢(s)≠∅ であることを証明すれば良い. ここでtx=sとなるx∈X をとる. するとg∈𝒮 で𝒮 がlarge oscillation family mod ℱ であることとpの像がℱ であることから F∩p⁢(tx)∩g−1⁢(x)≠∅ となる.s=txなので p⁢(tx)∩g−1⁢(x)⊂q⁢(s) であり, F∩q⁢(s)≠∅ を得る. これで𝒢 が真のフィルターであることがわかった.

ここで q≤pを証明しよう.任意のw∈[X]<ω0 をとる. このとき

q⁢(w) =⋃x∈X,w⊂tx(p⁢(tx)∩g−1⁢(x))

である. 写像p は単調であったので, w⊂txとなるxについて p⁢(tx)⊂p⁢(w)である. 故に

q⁢(x)=⋃x∈X,w⊂tx(p⁢(tx)∩g−1⁢(x))⊂⋃x∈X,w⊂txp⁢(tx)⊂p⁢(w)

となるので q≤p が従う.

最後に𝒯 が large oscillation family mod 𝒢 であることを証明しよう. 任意のf1,…,fm∈𝒮 とv1,…,vm∈Xをとる. そして

Z={z∈X∣∀i∈{1,…,m}⁢fi⁢(z)=vi}

とおく.このとき任意のw∈[X]<ω0と 任意のF∈ℱ をとる.そして tx=wとなるx∈Xをとる. このとき𝒮 がlarge oscillation family mod ℱ であることとp⁢(w)∈ℱであることから (F∩p⁢(w))∩(Z∩g−1⁢(x))≠∅ である. ここでp⁢(w)∩g−1⁢(x)=p⁢(tx)∩g−1⁢(x)⊂q⁢(w)なので (F∩q⁢(w))∩Z≠∅ がわかる. フィルター𝒢はF∩q⁢(w)という形の集合から生成されるから 𝒯が large oscillation family mod 𝒢 であることがわかる. これで証明が終わる. ∎

定義 11.

集合 X 上のフィルター ℱ が可算非完備 であるとは ある可算列{An}n∈ℤ≥0 が存在して An∈ℱと ⋂n∈ℤ≥0An=∅ を満たすときにいう.

定理 12 (Kunen).

κを無限基数とし Xを濃度がκ であるような集合とする. このときX上に 可算非完備な善良超フィルターが存在する.

証明.

冪集合𝒫⁢(X)の濃度は2κ であるから この集合を2κで全単射に添字づけして {Aα}α<2κ とする. そして card⁢([X]<ω0)=κ とcard⁢(𝒫⁢(X))=2κ から Map⁢([X]<ω0,𝒫⁢(X)) の濃度は(2κ)κ=2κ×κ=2κ である. よって Map⁢([X]<ω0,𝒫⁢(X))の部分集合である 単調な写像全体を全射に添字づけしてそれを {pα}α<2κ とする. ただしここで,各単調写像p:[X]<ω0→𝒫⁢(X) について p=pαとなるα は2κ個あるように添字づけする. これは2κ×2κ=2κ であるから可能である.

今から超限再帰によって以下のような 列{ℱα}α<2κ と{𝒮α}α<2κ を構成する.

  1. (K1)

    各α<2κ について ℱα はX上の真のフィルターであり 𝒮α はlarge oscillation family mod ℱα である.

  2. (K2)

    任意のα<2κ について card⁢(𝒮α)=2κ である.

  3. (K3)

    もしも γ<2κ が極限順序数であるときには ℱγ=⋃α<γℱα と 𝒮γ=⋂α<γ𝒮α が成り立つ.

  4. (K4)

    任意のα<2κについて 𝒮α∖𝒮α+1 は有限集合である.

  5. (K5)

    ℱ0 は可算非完備である.

  6. (K6)

    任意のα<2κ について AαかX∖Aα のいずれか一方は ℱα+1 に属する.

  7. (K7)

    任意のα<2κ について pα:[→]<ω0⁢𝒫⁢(X)が pα⁢([X]<ω0)⊂ℱαを満たすとき準同型 q:[X]<ω0→ℱα+1 が存在して q≤pα を満たす.

まず 𝒮0と ℱ0 の構成をしよう. 命題 8 で保証されるlarge oscillation family mod {X} を𝒮−1 とする. そして f∈𝒮−1 をとる.そして 𝒮0=𝒮−1∖{f} とする.ここで Xの空でない部分集合の可算族{Jn}n∈ℤ≥0 であって, Jn≠X, Jn+1⊂Jnかつ ⋂n∈ℤ≥0Jn=∅ となるものをとり {f−1⁢(Jn)}n∈ℤ≥0から生成されるフィルターを ℱ0とする.このときℱ0 はもちろん可算非完備である. 族𝒮−1が large oscillation family mod {X}であることから 𝒮0がlarge oscillation family mod ℱ0であることがわかる. すると 命題9 と命題10 から上記の性質を満たす {ℱα}α<2κ と{𝒮α}α<2κ が構成できる. このとき

ℱ=⋃α<2κℱα

と定義する. 各ℱα が真のフィルターなのでそのいずれも∅ を含んでいない. よってℱも∅を含んでおらず これが真のフィルターであることがわかる. 条件(K6)から 任意のA∈𝒫⁢(X) について AとX∖A のいずれか一方は ℱに属するので ℱは超フィルターである. またℱ0が可算非完備であるから ℱもそうである. このフィルターℱ が善良であることを示すために 任意のp:[X]<ω0→ℱ を考える. 系3からκ<c⁢f⁢(2κ) であり [X]<ω0の濃度はκ なので ℱの定義から pの像は十分大きい番号β<2κを持つ ℱβに含まれる. 添字づけ{pα}α<2κ はダブりが2κ回起こるようにとったので 十分大きいβ<γとなるγ<2κ についてp=pγとなる. するとpγは単調写像pγ:[X]<ω0→ℱγ となるので, 条件(K7)から 準同型q:[X]<ω0→ℱγ+1 が存在しq≤pを満たす. よってℱが善良であることがわかる. これで証明が終わる. ∎

注意.

上記の証明においてℱ0 の定義をうまく変えることによって X上の善良超フィルター全体の濃度が 22κとなることがわかる. 今からそれを見よう. 記号は流用する. 部分族 Θ⊂𝒮−1 で card⁢(Θ)=2κ かつcard⁢(𝒮−1∖Θ)=2κとなるものと θ∈𝒮−1∖Θを 任意にとって固定する. ところでこのようなΘは22κ個あることに注意しよう(2κ+2κ+2κ=2κから当濃度で3分割して一つの成分の部分集合と他の成分の和集合を考えれば良い). そして G⁢(Θ)={θ−1⁢(Jn)}n∈ℤ≥0∪{X∖f−1⁢(J0)}f∈Θ から生成されるフィルターをℱ0 とし,𝒮0=𝒮−1∖Θ とする. 作り方からℱ0が 可算非完備なのはわかる. また J0≠∅と J0≠X そして 𝒮−1 がlarge oscillation family mod {X}であることから G⁢(Θ) が有限交差性を持つことがわかる. よって ℱ0は真のフィルターであることがわかる. ここでもしもΘ0≠Θ1 と仮定する. ここで対称性からh∈Θ0∖Θ1 が取れるとしても一般性を失わない. このときh−1⁢(J0)はG⁢(Θ0) の元と空な交わりをもつ. そしてh−1⁢(J0)はG⁢(Θ)と空でない交わりを常に持つ. よってΘごとのℱ0およびそれを含む超フィルターはΘごとに絶対に相異なる. そしてΘの選び方は22κ 個あるので善良超フィルター全体が22κ の濃度を持つことがわかる.

References

  • [1] 齋藤正彦, 超積と超準解析, 東京図書, 1972.
  • [2] W. W. Comfort  and S. Negrepontis, On families of large oscillation, Fund. Math., 75 (1972), 275–290, doi: 10.4064/fm-75-3-275-290
  • [3] G. Montagna, Good ultrafilter and saturated models, Bacheler Thesis, 2019, Delft University of Technology, Netherland. https://repository.tudelft.nl/record/uuid:f5cc2f93-556f-46b6-9833-a2d08b33538e
  • [4] K. Kunen, Ultrafilters and independent sets, Trans. Am. Math. Soc. 172, 299–306 (1973) doi: 10.2307/1996350.