Goursat’s lemma
大昔に書いていた残骸を発見したが,これがなんの文献の記述によった物なのかわからなくなってしまった.
1 本文
定義 1.
二つの集合の直積 の部分集合に対して,
と定義する. つまり, は第一成分への射影で, は第二成分への射影である.
注意.
とんでもないノーテーションである.
また,とに対して
と定義する.つまり,スライスのことである.
以下では,
定義 2.
群に対して, , で の部分群全体の集合,の正規部分群全体の集合を表す.
定義 3.
二つの群について,
と定義する.
補題 4.
群とについて 写像 を以下のように定義する. について,
と定義する.ここで, は の正規部分群, は の正規部分群であることに注意せよ. さらに は以下で定義される写像である: に対して, となるを選び, と定義する. このときはwell-defined であり, さらに同型写像である. よってはちゃんと定義されている.
証明.
がの選び方によらないことを示そう. もし, ならば, なので, であるから,であり, 選び方によらない. よってはwell-definedである. 次にが全単射であることを示そう. まずの定義から, が全射であることがわかる. 単射性を示そう. について ならば, なので,である. よって,だが, これはということなので, となる.よってのカーネルが自明なのでは単射である. ∎
定義 5.
を以下のように定義する. に対して とする. そして, を自然な全射として と定義する. このとき はの部分群になっていることに注意しよう.
定理 6 (Goursat’s lemma).
写像 と は互いに逆写像である.
証明.
最初に を示そう. を任意にとる. すると
である. このとき
とし を自然な全射とする. このとき である.今から を示そう. まずとすると の定義から である. よって である. 逆に とすると である.よってとなるを用いて である. このときであるからでとなるものをとるとである. つまりとなる.よってである. 以上からがわかった.
次にを示そう. を任意にとる. 今からを示す. まず とし そして, を自然な全射として で定義されている.ここで とおこう. すると である. ここで であるがが同型であることから でありの定義を鑑みると である. さらに を任意にとると となるが存在する. 特にである. 逆にとするととなる をとればなので である.つまりである. 同様にして かつ である. を示そう. に対してとなるを 用いてと定義するのであった. さてとなるとは定義からして となる なので がわかる. 以上から が示された. ∎
2 作用域を持つ群
定義 7.
を群とする. を集合とする. と写像の組を 作用域を持つ群と呼ぶ. 写像はほぼ省略される. による作用を と書くことにする.
定義 8.
を作用域 を持つ群とする. 準同型 が -準同型であるとは,
が成り立つときにいう.
定義 9.
部分集合 がの-部分群であるとは, となる時にいう.
-正規部分群は,-部分群でかつ正規部分群なものをいう.
での-部分群全体を表す.
定義 10.
は, の定義の中の, 部分群,正規部分群,同型をそれぞれ -部分群, -正規部分群, -同型に置き換えたものとする. この時二つの-群について
写像 と は前節と同様に定義する. このとき以下の定理が同様の証明で成り立つ.
定理 11 (-Goursat’s lemma).
とをを作用域とする二つの群とする. このとき 写像 と は互いに逆写像である.
証明.
定理6 と全く同様に証明できる. ∎
3 同型定理
Goursatの補題を用いて色々な同型定理を導いていく. 以下では全てを作用域にしているとする.
定理 12.
を群とする. を群準同型とする.このとき
証明.
を
と定義する. が準同型であることから ちゃんとになることがわかる. あとはGoursatの補題からわかる. , となるのがポイントである. ∎
命題 13 (第二同型定理).
を群とし , とする. このときは群であり, 同型
が成り立つ.
証明.
を
とする. について積を考えると となるが, はの正規部分群なので となるが存在する. つまりなので でなので がわかりがの部分群であることがわかる. 定義から , がわかる. また で なので 同型がGoursatの補題からわかる. ∎
命題 14 (第三同型定理).
を群とする. で, とする.このとき 同型
が成り立つ.
証明.
を
と定義する. が群なのはとがともに の正規部分群であることが効いてわかる. がの部分群であることから がわかる. またもわかる. そして であり なので同型は あとはGoursatの定理から従う. ∎
定理 15 (胡蝶の定理:Zassenhaus’ lemma).
とを群の部分群とする. , とする.このとき
であり,同型
が成り立つ.
証明.
とする. とが正規部分群であることと がとの両方に含まれていることからがの群であることがわかる. である. である. 同様に かつ である. あとはGoursatの補題からわかる. ∎
注意.
Goursatの定理の良いところは, 直積の部分群を与えたらそれの射影やスライスを計算するだけで同型定理が得られるというところである.
4 組成列とか
胡蝶の定理から群の部分群の列に関する基本的な定理を証明することができる.
定義 16 (-正規列(-subnormal series)).
群について 部分群の有限列
で尚且つ を満たすものを -正規列と呼ぶ.
定義 17.
群について -正規列
の細分とは -正規列
であって,狭義の単調増加列 が存在して となる時にいう.
定義 18.
の二つの正規列を考える.
この時 これらが同値であるとは であり, 全単射 が存在して
が成り立つときに言う.
定理 19 (Schreierの定理).
-群が正規列を持つとする.このとき 二つの -正規列のそれぞれの細分であって同値なものを持つ.
証明.
の二つの-正規列を考える.
| (1) |
| (2) |
まずをの列を使って細分する. の列があるので,それにとの交わりをとる.
ここにさらにを掛ける.すると
となる. ここで とすると胡蝶の定理の前半から以下の列は-正規列となる.
同様に とを入れ替えて とすれば 以下の正規列を得る.
これら二つの列に関して剰余群を考えよう. 胡蝶の定理から以下の同型を得る.
これから後半の話が出てくる. ∎
定義 20 (-組成列(-composition series)).
-正規列であって 因子群 が単純群であるものを組成列と呼ぶ.
定理 21 (Jordan-Hölderの定理).
-群には組成列が存在すると仮定する.このとき 二つの組成列は同値である. (細分を取らずに同値というのがポイントである.)
証明.
クルルシュミットなどもこの文脈でいけるだろうかと試してみたが,なんか無理そうだったのでやめた.
References
- [1] 佐々木隆二, 代数学の基礎, https://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf
- [2] D. D. Anderson and V. Camillo, Subgroups of direct products of groups, ideals and subrings of direct products of rings, and Goursat’s lemma, Contemp. Math. 480, 1–12, 2009, doi: 10.1090/conm/480/09364
- [3] J. Lambek, Goursat’s theorem and the Zassenhaus lemma, Can. J. Math. 10, 45–56 (1958), doi: 10.4153/CJM-1958-005-6