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Goursat’s lemma

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

大昔に書いていた残骸を発見したが,これがなんの文献の記述によった物なのかわからなくなってしまった.

1 本文

定義 1.

二つの集合A,Bの直積 A×Bの部分集合Sに対して,

S()={aAbB(a,b)S}
()S={bBaA(a,b)S}

と定義する. つまり, S()は第一成分への射影で, ()Sは第二成分への射影である.

注意.

とんでもないノーテーションである.

また,aAbBに対して

Sb={aA(a,b)S}
aS={bB(a,b)S}

と定義する.つまり,スライスのことである.

以下では,

定義 2.

Gに対して, SG(G)NSG(G)Gの部分群全体の集合,Gの正規部分群全体の集合を表す.

定義 3.

二つの群A,Bについて,

Q(A,B)=
{(U,V,T,Y,θ)VSG(A),UNSG(V),YSG(B),TNSG(B),θ:V/UY/T}

と定義する.

補題 4.

ABについて 写像 L:SG(A×B)Q(A,B)を以下のように定義する. GSG(A×B)について,

L(G)=(G1B,G(),1AG,()G,θG)

と定義する.ここで, G1BG()の正規部分群, 1AG()Gの正規部分群であることに注意せよ. さらに θG:G()/G1B()G/1AGは以下で定義される写像である: [a]G()/G1Bに対して, (a,b)Gとなるbを選び, θG([a])=[b]と定義する. このときθGはwell-defined であり, さらに同型写像である. よってLはちゃんと定義されている.

証明.

θG([a])=[b]bの選び方によらないことを示そう. もし, (a,b),(a,c)G ならば, (1A,bc1)G なので, bc11AG であるから,[b]=[c]であり, 選び方によらない. よってθGはwell-definedである. 次にθGが全単射であることを示そう. まず()Gの定義から, θGが全射であることがわかる. 単射性を示そう. (a,b)Gについて θG(a)=[b]=[1B]ならば, b1AGなので,(1A,b)Gである. よって,(a,b)(1A,b)1=(a,1B)Gだが, これはaG1Bということなので, [a]=[1A]となる.よってθGのカーネルが自明なのでθGは単射である. ∎

定義 5.

R:Q(A,B)SG(A×B)を以下のように定義する. q=(U,V,T,Y,θ)Q(A,B)に対して G~θ={(x,θ(x))V/U×Y/TxV/U} とする. そして, p:V×YV/U×Y/Tを自然な全射として R(q)=p1(G~θ) と定義する. このとき R(q)A×Bの部分群になっていることに注意しよう.

定理 6 (Goursat’s lemma).

写像 L:SG(A×B)Q(A,B)R:Q(A,B)SG(A×B) は互いに逆写像である.

証明.

最初に RL=idを示そう. GSG(A×B)を任意にとる. すると

L(G)=(G1B,G(),1AG,()G,θG)

である. このとき

H={(x,θG(x))G()/G1B×()G/1AGxG()/G1B}

とし p=G()×()GG()/G1B×()G/1AG を自然な全射とする. このとき R(L(G))=p1(H) である.今から G=p1(H)を示そう. まず(a,b)Gとすると θGの定義から ([a],[b])G()/G1B×()G/1AGである. よって (a,b)p1(H)である. 逆に (a,b)p1(H)とすると ([a],[b])=([a],θG([a]))G()/G1B×()G/1AG である.よって(a,c)Gとなるcを用いて θG([a])=[c]である. このとき[c]=[b]であるからsA(s,b)Gとなるものをとると(a,c)(s,b)1=(as1,cb1)1AGである. つまりa=sとなる.よって(a,b)Gである. 以上からRL=idがわかった.

次にLR=idを示そう. q=(U,V,T,Y,θ)Q(A,B)を任意にとる. 今からLR(q)=qを示す. まずG~θ={(x,θ(x))V/U×Y/TxV/U} とし そして, p:V×YV/U×Y/Tを自然な全射として R(q)=p1(G~θ) で定義されている.ここで Z=p1(G~θ)とおこう. すると L(Z)=(Z1B,Z(),1AZ,()Z,θZ) である. ここで Z1B=p1({xV/Uθ(x)=[1B]}) であるがθが同型であることから {xV/Uθ(x)=[1B]}={[U]} でありpの定義を鑑みると Z1B=Uである. さらに aZ()を任意にとると (a,b)ZV×Yとなるbが存在する. 特にaVである. 逆にaVとすると[b]=θ([a])となるbY をとれば(a,b)p1(G~θ)なので aZ()である.つまりZ()=Vである. 同様にして 1AZ=T かつ ()Z=Y である. θ([a])=θZ([a]) を示そう. [a]Z()/Z1B に対して(a,b)Zとなるbを 用いてθZ([a])=[b]と定義するのであった. さて(a,b)Zとなるbとは定義からして θ([a])=[b]となる [b]なので θ([a])=θG([a]) がわかる. 以上から LR(q)=qが示された. ∎

2 作用域を持つ群

定義 7.

Gを群とする. Ωを集合とする. Gと写像l:ΩEnd(G)の組を 作用域Ωを持つ群Gと呼ぶ. 写像lはほぼ省略される. ωΩによる作用を gωと書くことにする.

定義 8.

G Gを作用域 Ωを持つ群とする. 準同型 f:GGΩ-準同型であるとは,

gGωΩf(gω)=f(g)ω

が成り立つときにいう.

定義 9.

部分集合 HGGΩ-部分群であるとは, gHωΩgωH となる時にいう.

Ω-正規部分群は,Ω-部分群でかつ正規部分群なものをいう.

SGΩ(G)GΩ-部分群全体を表す.

定義 10.

QΩ(A,B) は, Q(A,B)の定義の中の, 部分群,正規部分群,同型をそれぞれ Ω-部分群, Ω-正規部分群, Ω-同型に置き換えたものとする. この時二つのΩ-群A,Bについて

写像L:SG(A×B)ΩQΩ(A,B)R:QΩ(A,B)SGΩ(A×B) は前節と同様に定義する. このとき以下の定理が同様の証明で成り立つ.

定理 11 (Ω-Goursat’s lemma).

ABΩを作用域とする二つの群とする. このとき 写像L:SGΩ(A×B)QΩ(A,B)R:QΩ(A,B)SGΩ(A×B) は互いに逆写像である.

証明.

定理6 と全く同様に証明できる. ∎

3 同型定理

Goursatの補題を用いて色々な同型定理を導いていく. 以下では全てΩを作用域にしているとする.

定理 12.

G,Hを群とする. f:GHを群準同型とする.このとき

G/ker(f)im(f)
証明.

ISGΩ(G×H)

I={(x,f(x))xG}

と定義する. fが準同型であることから ちゃんとISGΩ(G×H)になることがわかる. あとはGoursatの補題からわかる. I()=G, I1H=ker(f) となるのがポイントである. ∎

命題 13 (第二同型定理).

Gを群とし HNSGΩ(G), SSGΩ(G)とする. このときHSは群であり, 同型

HS/HS/HS

が成り立つ.

証明.

IG×G

I={(hs,s)hHsS}

とする. (hs,s),(vt,t)Iについて積を考えると (hs,s)(vt,t)=(hsvt,st)となるが, HGの正規部分群なので svs1=uとなるuHが存在する. つまりsv=usなので (hsvt,st)=(hust,st)huHなので (hs,s)(vt,t)I がわかりIG×Gの部分群であることがわかる. 定義から I()=HS, I1=Hがわかる. また ()I=S1I=HS なので 同型がGoursatの補題からわかる. ∎

命題 14 (第三同型定理).

Gを群とする. A,BNSGΩ(G)で,ASGΩ(B) とする.このとき 同型

(G/A)/(B/A)G/B

が成り立つ.

証明.

IG/A×G

I={([bg]A,g)gG,bB}

と定義する. Iが群なのはABがともにG の正規部分群であることが効いてわかる. BGの部分群であることから I()=G/Aがわかる. またI1=B/Aもわかる. そして ()I=Gであり [1]AI=B なので同型は あとはGoursatの定理から従う. ∎

定理 15 (胡蝶の定理:Zassenhaus’ lemma).

GHを群Fの部分群とする. ANSGΩ(G), BNSGΩ(H) とする.このとき

A(GB)A(GH)
B(AH)B(GH)

であり,同型

A(GH)A(GB)B(GH)B(AH)

が成り立つ.

証明.

IF×F

I={(ax,bx)aA,bB,xGH}

とする. ABが正規部分群であることと GHGHの両方に含まれていることからIF×Fの群であることがわかる. I()=A(GH)である. I1=A(GB)である. 同様に ()I=B(GH) かつ 1I=B(AH) である. あとはGoursatの補題からわかる. ∎

注意.

Goursatの定理の良いところは, 直積の部分群を与えたらそれの射影やスライスを計算するだけで同型定理が得られるというところである.

4 組成列とか

胡蝶の定理から群の部分群の列に関する基本的な定理を証明することができる.

定義 16 (Ω-正規列(Ω-subnormal series)).

Gについて 部分群の有限列

{1}=G0G1Gm=G

で尚且つ GiGi+1 を満たすものを Ω-正規列と呼ぶ.

定義 17.

Gについて Ω-正規列

{1}=G0G1Gm=G

細分とは Ω-正規列

{1}=H0H1Hu=G

であって,狭義の単調増加列 r:{0,,m}{0,,u} が存在して Hr(i)=Giとなる時にいう.

定義 18.

Gの二つの正規列を考える.

{1}=G0G1Gm=G
{1}=H0H1Hu=G

この時 これらが同値であるとは m=uであり, 全単射r:{1,,m}{1,,m} が存在して

Gi+1/GiHr(i)+1/Hr(i)

が成り立つときに言う.

定理 19 (Schreierの定理).

Ω-群Gが正規列を持つとする.このとき 二つの Ω-正規列のそれぞれの細分であって同値なものを持つ.

証明.

Gの二つのΩ-正規列を考える.

(1) {1}=A0A1Am=G
(2) {1}=B0B1Bn=G

まずAi+1Bの列を使って細分する. Bの列があるので,それにAiとの交わりをとる.

{1}=B0Ai+1BjAi+1BnAi+1=Ai+1

ここにさらにAiを掛ける.すると

Ai=Ai(B0Ai+1)Ai(BjAi+1)Ai(BnAi+1)=Ai+1

となる. ここで Ui,j=Ai(BjAi+1) とすると胡蝶の定理の前半から以下の列はΩ-正規列となる.

{1}=U0,0U0,1U0,nUi,jUn,m=G

同様に ABを入れ替えて Vj,i=Bj(AiBj+1)とすれば 以下の正規列を得る.

{1}=V0,0V0,1V0,mVj,iVm,n=G

これら二つの列に関して剰余群を考えよう. 胡蝶の定理から以下の同型を得る.

Ui,j+1/Ui,j=Ai(Bj+1Ai+1)Ai(BjAi+1)Bj(Ai+1Bj+1)Bj(AiBj+1)=Vj,i+1/Vj,i

これから後半の話が出てくる. ∎

定義 20 (Ω-組成列(Ω-composition series)).

Ω-正規列であって 因子群Gi+1/Gi が単純群であるものを組成列と呼ぶ.

定理 21 (Jordan-Hölderの定理).

Ω-群Gには組成列が存在すると仮定する.このとき 二つの組成列は同値である. (細分を取らずに同値というのがポイントである.)

証明.

シュライアーの定理(定理19)から 二つの組成列は長さが等しい細分を持つ. ところでGi+1/Gi が単純群なので細分と元の組成列は一致する. よって元々の二つの組成列の長さは等しい. またシュライアーの定理(定理19)から因子群は並べ替えをすれば一致 する. ∎

クルルシュミットなどもこの文脈でいけるだろうかと試してみたが,なんか無理そうだったのでやめた.

論文 [2] にはこの文章で紹介したような,準同型から直積の部分群を作るのと直積の部分群から準同型を作る操作が逆操作になっている というのを紹介しているのでこれを参考にしたかもしれない. 論文 [3]では一般的な代数構造の上でGoursat’s lemmaを考察しているようだ.Lambekは一般的な代数構造とGoursat’s lemmaの話をよくしているようなので調べてみると面白いかもしれない.

References

  • [1] 佐々木隆二, 代数学の基礎, https://www2.math.cst.nihon-u.ac.jp/sasaki/wp/wp-content/uploads/2014/12/fa75a316529d0ac746d8f50958ba66ed.pdf
  • [2] D. D. Anderson and V. Camillo, Subgroups of direct products of groups, ideals and subrings of direct products of rings, and Goursat’s lemma, Contemp. Math. 480, 1–12, 2009, doi: 10.1090/conm/480/09364
  • [3] J. Lambek, Goursat’s theorem and the Zassenhaus lemma, Can. J. Math. 10, 45–56 (1958), doi: 10.4153/CJM-1958-005-6