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バナッハ・ストーンの定理:おまけ

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

別のpdfのおまけとして書いていたが,やたら複雑な議論 をやっていたので,独立した文書として残す.

『この文書では コンパクトハウスドルフ空間K 上の 関数空間C⁢(K) の等長類がKの位相的情報を 持っているということを述べた Banach–Stoneの定理を紹介する. 双対空間の有界閉集合のextreme pointがディラック測度になっていることを使って証明するという方針は聞いていたので,実際にやってみたら自力で証明できたので文書として残しておく.』 ということになっていたが証明が間違っていたので頑張って修正する. コンウェイの関数解析の教科書[8] などを参考にした.

1 準備

定義 1 (extreme point).

局所凸空間Eの凸集合L の点p∈L がextreme point であるとは, 任意のx,y∈L についてもしもt∈(0,1)が存在して t⁢x+(1−t)⁢y=pならば p=x=yとなるときにいう. 凸集合L のextreme point 全体の集合を ∂e⁢x⁢t(L) と書くことにする.

定義 2.

コンパクトハウスドルフ空間 X に対して C⁢(X;ℝ) (C⁢(X;ℂ)) でその上の実(複素)連続関数の全体を表すとする. ノルムとしてsupノルムを導入すると C⁢(X;ℝ)(C⁢(X;ℂ)) は実(複素)バナッハ空間になる.

2 測度に関する準備

この節の詳しい解説は [1]と[2]を参照のこと.

定義 3.

Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とする. このときX上の測度μがRMK測度であるとは以下の条件を満たすときにいう

  1. 1.

    μは[0,∞]に値をとるボレル測度である.

  2. 2.

    Xの任意のコンパクト集合Kについてμ⁢(K)<∞

  3. 3.

    Xの任意のボレル集合は外部正則である.つまり μ⁢(E)=inf{μ⁢(V)|V∈𝔒X⁢E⊂V}が成り立つ.ここで𝔒XはXの開集合系である.

  4. 4.

    Eが開集合もしくはμ⁢(E)<∞ならばEは内部正則である.つまり, μ⁢(E)=sup{μ⁢(K)|K∈C⁢p⁢t⁢(X)⁢K⊂E} が成り立つ.ここでC⁢p⁢t⁢(X)はXのコンパクト集合全体である.

X上のRMK測度全体をM⁢(X)と書くことにする.また, X上の有限RMK測度全体の集合をF⁢(X)と書くことにする. もちろんXがコンパクトハウスドルフ空間のときにはM⁢(X)=F⁢(X)である.

X上の符号付き測度で二つのRMK測度の差で表されるもの全体をS⁢(X)と書くことにする. また,X上の複素測度で,μ,ν∈S⁢(X)を用いて μ+−1⁢νの形で表されるもの全体をH⁢(X)と書くことにする.

定義 4.

ℝ+-可換モノイド(S,+,0)について, その線形空間化 (K⁢(S),+,0)を次のように定義する. まずS×S上の関係Rを次のように定義する. (a,b)⁢R⁢(c,d)とはa+d=b+cである. するとRはS×S上の同値関係となる. そしてK⁢(S)=S×S/R とし,演算を[a,b]+[c,d]=[a+c,b+d]と定義する. この演算についてK⁢(S)は可換群になっている. 単位元は[0,0]であり,[a,b] の逆元 は[b,a]である. また,r∈[0,∞)について

r⁢[a,b]=[r⁢a,r⁢b]

と定義し,r<0の場合には

r⁢[a,b]=[|r|⁢b,|r|⁢a]

と定義すると,K⁢(S)は先ほど定義した+とこのスカラー倍について ℝ上の線形空間になる.

注意.

K⁢(S)は加法について見ればSのグロタンディーク群とみなせるが, この文章ではℝ+-可換モノイドをℝ上の線形空間にするために スカラー倍という付加的な構造が乗っかっている.

定理 5 (実Riesz-Markov-Kakutani).

Xをコンパクトハウスドルフ空間とする.このとき ℝ線形空間としての同型

C⁢(X;ℝ)∗≅K⁢(F⁢(X))

が成り立つ.

定理 6 (複素Riesz-Markov-Kakutani).

Xをコンパクトハウスドルフ空間とする.このとき ℂ線形空間としての同型

C⁢(X;ℂ)∗≅H⁢(X)≅S⁢(X)×ℂS⁢(X)≅ℂ⊗ℝS⁢(X)

が成り立つ.

定義 7.

位相空間X上のボレル測度μ が ラドン測度であるとは μについてコンパクト部分集合は常に有限の値を持ち さらに,内部正則性, つまり任意のボレル集合についてその測度はそれに含まれるコンパクト集合の測度の上限に一致するときにいう. リースマルコフ角谷で得られる測度は微妙にラドン測度ではないのだが([1][2]),確率測度などの有限測度に話を限れば,ラドン測度になる.

命題 8.

μを 局所コンパクトハウスドルフ空間上の RMK複素測度とする. このとき全変動|μ| もRMK測度になる.

証明.

せかせかやるとわかる. ∎

命題 9.

μ∈C⁢(K;ℂ)とする. このとき μの作用素ノルムは 全変動|μ|の作用素ノルムに等しい.

証明.

ラドンニコディム微分 d⁢μd⁢|μ|はほとんど至るところ 絶対値が1の複素数であった. このことと(下からの)単関数近似および Kが正規であることを用いるとわかる. ∎

3 本文

定義 10.

実でも複素でもバナッハ空間Vの双対空間を V∗で表すことにする.

定義 11.

𝔽をℝかℂのどちらかとする. このとき Δ⁢(K)𝔽 を 集合 {w⋅δx∣w∈𝔽,|w|=1,x∈K} と定義する.

命題 12.

𝔽をℝかℂのどちらかとする. Kをコンパクトハウスドルフ空間とする. BをC⁢(K;𝔽) の0を中心とする半径1の閉球体とする. このとき ∂e⁢x⁢t(B)=Δ⁢(K)𝔽 が成り立つ.

証明.

まず Δ⁢(K)𝔽⊂∂e⁢x⁢t(B) を示そう. 任意のw⋅δp∈Δ⁢(K) をとる. そして μ,ν∈Bが

w⋅δp=12⁢μ+12⁢ν

を満たしている と仮定する.今からμ=ν=w⁢δpを示したいが, ここでw=1としても良い. つまり

δp=12⁢μ+12⁢ν

と仮定する. ここでK上のボレル測度α を α=μ−μ⁢({p})⁢δp とすると α⁢({p})=0であり, r,l∈ℂを用いて μ=r⁢δp+α かつ ν=l⁢δp−α とかける.ここで r+l=2である. 背理法のために|r|>1と仮定しよう. 測度αおよび全変動|α|もRMK測度なので α⁢({p})=0と外部正則性 からϵ∈(0,∞) とpの十分小さい開近傍Nで |α|⁢(N)<ϵかつ |r|−ϵ>1となるものが存在する. するとKの正規性そして から 連続写像 f:K→[0,1] でf⁢(p)=1となり Nの外では0になるものが存在する このときμ⁢(f)≥|r|−|α⁢|(f)>|⁢r|−ϵ≥1 となるがこれは|μ⁢(f)|≤1に反する. よって|r|≤1である. 同様に|l|≤1である. このようなr,l∈ℂが r+l=2となるためにはr=1かつl=1でなければならない.つまり μ=δp+α かつ ν=δp−α である. さてもしもα がゼロ測度でなければ |α|⁢(A)≠0 となるボレル集合 Aが存在する. ここでϵ∈(0,∞) を任意にとる. 内部正則性から コンパクト集合Lが存在して |α|⁢(L)≠0かつ p∉Lである. よって再びKの正規性やら外部正則性などを用いて pの十分小さい近傍Nと Lの十分小さい近傍Vが存在して N∩V=∅ で|μ|⁢(N)<ϵかつ|α|⁢(V∖L)<ϵとできる. そしてKの正規性から f,g:K→[0,1]が存在して fはf⁢(p)=1でNの外では0 そしてgはL 上で1をとり Vの外では0となるようにする. このとき |μ⁢(f+g)| μ⁢(f)=1−ϵかつ μ⁢(g)≥α⁢(L)−ϵ でfとgのサポートは交わらないようにできる. さて

c=α⁢(L)¯|α⁢(L)|

とし 以下の計算をする.

|μ⁢(f+c⁢g)|=|∫Kf+c⁢g⁢d⁢μ|=|∫{p}f⁢𝑑μ+∫Lc⁢g⁢𝑑μ+∫N∖{p}f⁢𝑑μ+∫V∖Lg⁢𝑑μ|
≥|∫{p}f⁢𝑑μ+∫Lc⁢g⁢𝑑μ|−|∫N∖{p}f⁢𝑑μ|−|∫V∖L|c|⁢|g|⁢d⁢|μ||
≥|1+c⁢α⁢(L)|−2⁢ϵ=1+|α⁢(L)|−2⁢ϵ

以上から ∥μ∥≥|μ⁢(f+g)|≥1+|α⁢(L)|−2⁢ϵ となりϵの任意性から ∥μ∥≥1+1+|α⁢(L)|>1となるが これは ∥μ∥≤1に反する. よって αはゼロ測度である. つまり μ=δp=νである. よって w⋅δp∈∂e⁢x⁢t(𝒫⁢r⁢(K)) である.

次にμ∈∂e⁢x⁢t(B)をとろう. まずBは−1をかける操作で閉じているので 0はextreme pointではない. よって μは特にゼロ測度ではない. 故に|μ|のサポートは空でない閉集合である. ここで,μのサポートとは, |μ|の零集合となる開集合全ての和集合の補集合である. 点pを|μ|のサポートから取ろう. 今から|μ|のサポートが {p}であることを証明する. 背理法のために pを含まないボレル集合 Sであって |μ⁢(S)|≠0となるものが存在すると仮定しよう. ここで内部正則性からSは コンパクトとしても良い. すると 外部正則性とp∉S,そしてKの正規性から pの十分小さい開近傍VとNで cl⁢(V)⊂Nで |μ|⁢(K∖N)≠0 となるものが存在する. よって再びKの正規性から f:K→[0,1]であって cl⁢(V)で1をとりNの外で0になるものが存在する. ここで

c=∫Kf⁢d⁢|μ|

とおく. このとき c≤∥|μ|∥=∥μ∥≤1 である. また Vは開集合で|μ|のサポートと交わっているので |μ|⁢(V)>0となる. よって c≥|μ|⁢(cl⁢(V))>0 である. さらに

1−c=∫K(1−f)⁢d⁢|μ|≥|μ|⁢(K∖N)>0

が成り立つので c∈(0,1)である. そして α⁢(B)=∫Bf⁢𝑑μ かつ β⁢(B)=∫B(1−f)⁢f⁢μ とすると αcと β1−cは Bに属しさらに

μ=c⁢(αc)+(1−c)⁢(β1−c)

となるので μ はextreme pointにならない. これは矛盾である. よって |μ|の測度正な集合は {p}と交わりを必ずもつ. この状況で測度μはw⋅δp の形をしており, extreme pointであるという仮定から |w|=1でなければならないので μ∈Δ⁢(K)𝔽 が成り立つ. ∎

注意.

実はボレル測度のサポートの補集合となる開集合が零集合になるかどうかは集合論的に決定不可能な問題を含んでいる. 上の議論はそんなことを用いてないので問題ない.

定理 13.

KとLをコンパクトハウスドルフ空間とする. そして f:C⁢(K;ℂ)→C⁢(L;ℂ)を 等長全単射写像とする. このとき 同相写像h:L→Kとa∈C⁢(L;ℂ) で|a⁢(x)|=1となるものおよび b∈C⁢(L;ℂ)が存在して f⁢(s)⁢(y)=a⁢(y)⋅s⁢(h⁢(y))+b⁢(y) となる. 特に C⁢(K)とC⁢(L) が等長同型ならば KとL は同相である.

証明.

まずMazur–Ulamの定理(定理14)から fはアフィン写像となる. よって以下ではfは線型写像としても良い. fは等長なので 等長写像f∗:C⁢(L;ℂ)∗→C⁢(K;ℂ)∗ を誘導する. 今BKとBL でそれぞれ C⁢(K;ℂ)とC⁢(L;ℂ) の0を中心とする単位閉球体を表すとする. f∗⁢(0)=0なので f∗⁢(BL)=BKとなる. さらにfの線形性から f∗⁢(∂e⁢x⁢t(BL))=∂e⁢x⁢t(Bk) となる. よって 任意の p∈Lについて f∗⁢(δp)=a⁢(p)⋅δh⁢(p) となるa⁢(p)∈U⁢(1)={q∈ℂ∣|q|=1} と写像h:L→Kが存在する. 今からa:L→ℂと h:L→K が連続であることを証明しよう.

本題に入る前に τL:L→C⁢(K;ℂ)w∗∗ と τK:K→C⁢(L;ℂ)w∗∗ をディラック測度で埋め込む写像とする. この時コンパクトハウスドルフ空間が完全正則であることから これらの写像は位相的埋め込みになっていることに注意しよう.

まず最初にf∗は汎弱位相の間の同相写像 f∗:C⁢(K;ℂ)w∗∗→C⁢(L;ℂ)w∗∗ でもあることに注意しよう. このことと τL:L→C⁢(K;ℂ)w∗∗が位相的埋め込みであることから 1を噛ませて a⁢(y)=f∗⁢(τL⁢(y))⁢(1)となる. w∗位相でf∗は連続なので f∗⁢(τL⁢(y))⁢(1)も連続である. 故にa⁢(y)の 連続性がわかる.

hの連続性を考えよう.上の議論でa⁢(y)が連続であることがわかったので a⁢(y)−1⁢f∗⁢(τL⁢(y))も連続である. これは集合Δ⁢(K)に属するので h⁢(y)=τK−1⁢(a⁢(y)−1⁢f∗⁢(τL⁢(y))) も連続である. 次にhの単射性を考察しよう. x,y∈Lについて h⁢(y)=h⁢(x)と仮定しよう. このとき

τK−1⁢(a⁢(y)−1⁢f∗⁢(τL⁢(y)))=τK−1⁢(a⁢(x)−1⁢f∗⁢(τL⁢(x)))

となる.よって

a⁢(y)−1⁢f∗⁢(τL⁢(y))=a⁢(x)−1⁢f∗⁢(τL⁢(x))

となる.さらにf∗は線形なので

f∗⁢(a⁢(y)−1⁢τL⁢(y))=f∗⁢(a⁢(x)−1⁢τL⁢(x))

となりf∗ は単射なので

a⁢(y)−1⁢τL⁢(y)=a⁢(x)−1⁢τL⁢(y)

となる. ここでもしもx≠yならば Lは完全正則なので特に 異なる2点x,y∈Lに対して |u⁢(x)|<|u⁢(y)|となるu∈C⁢(L;ℂ)∗ が存在する. このuから上の式を用いて

a⁢(y)−1⁢u⁢(y)=a⁢(x)−1⁢u⁢(x)

となるがこれは |u⁢(x)|<|u⁢(y)| に矛盾するので x=yでなければならない. よってhは単射である. 次に全射性を考えよう. 任意のk∈Kを任意にとる. このときf∗⁢(δp)=a⁢(p)⋅δh⁢(p)だからδkについて f∗⁢(w⁢δy)=δkとなる y∈Lが存在する. このとき f∗⁢(δy)=w−1⁢δk なのでhの定義から k=h⁢(y)となる. よってhは全射である. hはコンパクトハウスドルフ空間同士の間の連続写像であるから特に同相である.

任意のs∈C⁢(K;ℂ)について f∗⁢(δy)=a⁢(y)⁢δh⁢(y) であるから sを噛ませると δy⁢(f⁢(s))=a⁢(y)⁢s⁢(h⁢(y)) つまり f⁢(s)⁢(y)=a⁢(y)⁢s⁢(h⁢(y)) となる.

∎

4 Mazur–Ulamの定理

定理 14.

XとYをバナッハ空間とする. このとき 等長同型f:X→Y はアフィン写像である.

証明.

省略:[6] や[7]を参照のこと. 気が向いたら追加する可能性がなくもない. ∎

5 間違っていた方の証明の風味を残した節

定義 15.

コンパクトハウスドルフ空間 K について 𝒫⁢r⁢(K) で K上のラドン測度であって 確率測度になっているもの全体を表すことにする. また Δ⁢(K) でK上のディラック測度全体を表すことにする.

命題 16 (リース・マルコフ・角谷の定理の応用).

Kをコンパクトハウスドルフ空間とする. そしてSをC⁢(K)∗ の部分集合であってμ⁢(1)=1(ここで左辺の1はK上の定数関数である)かつ任意のf∈C⁢(K)についてf≥0ならば μ⁢(f)≥0となるもの全体とする. すると Sは𝒫⁢r⁢(K)と自然に同一視できる. この同一視のもと 𝒫⁢r⁢(K)はC⁢(K)∗の閉有界凸集合である.

証明.

前半の証明というか,どのように同一視するかの説明である. μ∈S にリース・マルコフ・角谷の定理([1])を適応して K上のラドン測度μを得る(ものぐさで同じ記号で書くことにする).これが確率測度であることは μ⁢(1)=1から従う. 逆にμ∈𝒫⁢r⁢(K) についてμ⁢(f)=∫Kf⁢𝑑μを対応させる(ものぐさで同じ記号で書く)とμ∈Sとなる. 次に𝒫⁢r⁢(K)がC⁢(K)∗ の閉有界凸集合であることを示そう. まず凸集合であることは確率測度の線型結合が確率測度であるから大丈夫.有界性は|μ⁢(f)|≤∫|f|⁢𝑑μ≤∥f∥ から∥μ∥≤1になるからわかる. 閉集合であることを示そう. Sと𝒫⁢r⁢(K)を同一視しているのでSが閉集合であることを示せば良い. これはSの条件が極限で保たれることから従う. ∎

命題 17.

Kをコンパクトハウスドルフ空間とする. このとき∂e⁢x⁢t(𝒫⁢r⁢(K))=Δ⁢(K) が成り立つ.

証明.

まずΔ⁢(K)⊂∂e⁢x⁢t(𝒫⁢r⁢(K)) を示そう. 任意のδp∈Δ⁢(K) をとる. ここでμ,ν∈𝒫⁢r⁢(K)について t∈(0,1)が存在して δp=t⁢μ+(1−t)⁢ν としよう. このときU=K∖{p} について測度をとると 0=t⁢μ⁢(U)+(1−t)⁢ν⁢(U) となる. つまりμ⁢(U)=ν⁢(U)=0 がわかるので μ=ν=δp である.よって δp∈∂e⁢x⁢t(𝒫⁢r⁢(K)) である.

逆の包含関係を示そう. μ∈𝒫⁢r⁢(K) をとる. 背理法のために Kのボレル集合A,Bで A∩B=∅かつ A∪B=Kであるものが存在して 0<μ⁢(A)かつ0<μ⁢(B) となると仮定する. このとき α=1μ⁢(A)⁢(ιA)∗⁢μ|A かつ β=1μ⁢(B)⁢(ιB)∗⁢μ|B とするとμ≠αかつμ≠β で

μ=μ⁢(A)⁢α+(1−μ⁢(A))⁢β

である.ここでμ⁢(A)+μ⁢(B)=1に注意せよ. 以上から μはextreme pointではない.これは矛盾である.

よって以下の主張が成り立つ.

  1. (Cl)

    任意の Kのボレル集合A,BがA∩B=∅かつ A∪B=Kを満たすならば μ⁢(A)=0かμ⁢(B)=0 を満たす.

ここで 𝒩をKのコンパクト集合で μについて正の測度をもつものとする. 𝒩の有限個の元K1,…,Km について背理法のために ⋂i=1mKi=∅ と仮定する. このとき ⋃i=1mK∖Ki=K なので,あるjについて K∖Kjは正の測度をもつ. これは主張(Cl)に矛盾するので ⋂i=1mKi≠∅ である. つまり 𝒩は有限交差性をもつので L=⋂H∈NH≠∅ である. ここでもしLが測度ゼロなら μがラドン測度であることから 測度正のコンパクト集合を含むので 矛盾する. よって μ⁢(L)>0である. ここで点p∈Lをとる.もしも{p}が測度ゼロならば μがラドン測度であることを用いて A∩{p}=∅で μ⁢(A)>0となるコンパクト集合A がとってこれるが,A∈𝒩 とp∉Aは矛盾するので {p}は測度正になる. よってL={p} がわかる. さらに先ほどの主張(Cl)からK∖{p}は測度ゼロになるので μ=δp である. これでμ∈Δ⁢(K) がわかるので ∂e⁢x⁢t(𝒫⁢r⁢(K))=Δ⁢(K) となる. ∎

命題 18.

Kと ∂e⁢x⁢t(𝒫⁢r⁢(K)) は同相である. ここで 𝒫⁢r⁢(K) にはw∗位相を入れて考えている.

証明.

Kが完全正則空間であることから従う. ∎

以下の定理でf⁢(1)=1をつけずに証明をしていたのが前のバージョンのこの文書の間違いであった.

定理 19 (廉価版Banach–Stoneの定理).

KとLはコンパクトハウスドルフ空間とする. このとき線形等長同型写像 f:C⁢(K)→C⁢(L) が存在し,f⁢(1)=1(ここで定数関数としての1である) を満たすならば KとL は同相である.

証明.

定理のf⁢か⁢ら線形等長同型 f∗:C⁢(K)∗→C⁢(L)∗ が誘導される. さらに線形な同型写像 f∗:C⁢(K)w∗∗→C⁢(L)w∗∗ が誘導される. ここでf∗は f∗⁢(1)=1を満たすので 𝒫⁢r⁢(K)を𝒫⁢r⁢(L) に移す.さらにf∗は線形なので ∂e⁢x⁢t(𝒫⁢r⁢(K)) を ∂e⁢x⁢t(𝒫⁢r⁢(L)) に移す. よって KとL が同相であることが従う. ∎

注意.

実は一般にバナッハ空間の間の等長同型はアフィンであることがわかる(Mazur–Ulamの定理([6][7]))ので, 定理19のfが線形という仮定は不要である. さらにFullのBanach–Stoneの定理は等長写像の具体的な形まで決定するものなので,定理19 は廉価版でしかない. ところで上の定理19にはコンパクト性を用いていないように見えるし,命題18では完全正則性しか使っていない.よって一般に完全正則空間Xに対してその有界な実連続関数Cb⁢(X)でも同様のことが成り立ちそうに見える.しかし実は命題 17でコンパクト性を用いており,さらにコンパクト性がなければ成り立たないのである. 実際一般に完全正則空間Xについて Cb⁢(X)はC⁢(β⁢X)と等長同型になるので, Cb⁢(X)とCb⁢(Y)が同型であるだけだと β⁢Xとβ⁢Yが同相であることしかわからないのである.ところで実はXとYが第一可算な完全正則空間だと β⁢Xとβ⁢Yが同相であることからXとY が同相になることが導出できるので([5, p.273], [3, 21.5系, 116ページ]), 一応定理19をノンコンパクトな場合に拡張することはできる. 特にXとY が距離化可能空間の時に Cb⁢(X)とCb⁢(Y) が等長同型であるならば XとY は同相である.

References

  • [1] はてなブログ電波通信, 「リース・マルコフ・角谷の表現定理の証明(入射角16.225°の測度論入門2)」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/10/28/213025
  • [2] はてなブログ電波通信, 「Riesz-Markov-Kakutaniの表現定理II」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2020/02/02/213341
  • [3] 児玉之行,永見啓応, 位相空間論 ,岩波書店, 1974
  • [4] 宮島静雄, 関数解析, 横浜図書, 2005.
  • [5] L. Gillman and M. Jerison, Rings of continuous functions. Reprint of the 1960 original published by Van Nostrand Company. Mineola, NY: Dover Publications.
  • [6] B. Nica, The Mazur-Ulam theorem, Expo. Math. 30, No. 4, 397–398 (2012; Zbl 1267.46023) doi: 10.1016/j.exmath.2012.08.010
  • [7] J. Väisälä, A proof of the Mazur-Ulam theorem, Am. Math. Mon. 110, No. 7, 633–635, doi: 10.2307/3647749
  • [8] J. B. Conway, A course in functional analysis, 2nd ed. 1990, GTM 96, Springer-Verlag.