AUTOMATIC HTML VERSION

論文メモ:サードの定理のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

論文メモ
— ブラウン・モース・サードの定理 —

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

本棚を整理したいので, 溜まっている論文のメモを書いて未来への手紙とすることにする.

ここではときとしてブラウン・モース・サードの定理としても呼ばれるサードの定理についての論文を色々紹介する.

1 サードの定理まで

おそらくサードの定理の雛形になるのは 関数の従属関係に関する研究であろう. とりあえずこの方面の研究は 1926年のクノップとシュミットの共著である [29] にまで遡れると思う. この論文は日本語による解説もある [26]. しかしながらそれ以前から ヤコビ行列式と関数それ自体の従属関係 については研究があったようである.

1929年の論文 [43] では任意の閉集合が 何かしらの関数の臨界点(critical point) 全体と一致するようにできることが書かれているらしい. この解説は [56]の注釈3による.

1929年の論文 [57] も臨界点の話をしているがよくわからず.

1929年の論文 [37] は モースの論文である.

1935年のBrownの 論文 [9] の Lemma 3. I. はサードの定理の原型だと思われる.

1939年のモースの論文 [36] では, 値域が の場合のサードの定理の主張が書かれており, 現在よりも大きな微分可能性を仮定した上で それが成り立つことが述べられている. つまりGnの開集合として f:Gr 階微分可能関数とするときrが十分大きければ fの臨界値(critical value) の値が測度ゼロであることが知られていいたことを述べている. どれくらい大きければいいのかというとサードの未発表論文 においてはrn+(n3)2/16 であれば良いということが[36]の冒頭で述べられている. この論文の主定理としては上で述べた 値域が の場合にはr=mのときに も上の主張が正しいことを証明している.

1942年の サードの論文 [49] では 今現在の知られている形でのサードの定理が証明されている. つまり Gmの開集合として f:GnCr級の関数としたとき, もしもrmax{mn+1,1} ならば その臨界値の測度がゼロであることを 証明している. この論文では モースの論文[36] での補題が証明に用いられていることに注意しよう. ここら辺の事情がモース・サードの定理と呼ばれる所以だと思われる.

サードの 1958年の 論文 [50] では,サードの定理が本質的に ハウスドルフ次元にまつわる現象であることが見抜かれている.例えばfの定義域内の集合Aについて fのrankが<sとなるならばf(A)s次元ハウスドルフ測度は 0になることなどが証明されている.

サードの 1965年の論文 [52] では臨界点の像の話が バナッハ多様体の話へと拡張されている. この論文には修正 [51] があることに注意しよう.

2 サードの定理から

1966年のFederer の論文 [17] は1ページしかない. そこでサードの定理の変種の話をしているのだが, 証明は有名なFedererのGeometric Measure Theory に入っていることを述べている. 論文というよりアナウンスというであろう.

1967年の論文 [16] でも臨界値のハウスドルフ測度の話をしている.

1967年の論文 [38] では 普通にfunctional dependenceの話をしている. 多分この話題について知りたければこの論文を読むと良いのではないだろうか.

1968年の論文 [45] ではバナッハ空間上で定義されたフレドホルム作用素についての臨界値のハウスドルフ次元の話をしている. こういうフレドホルム作用素の話でサードの定理をやるのは Smaleがやり始めたらしい(An infinite version of Sard’s theorem).

1971年の論文 [10] ではサードの定理の 構成的証明(constructive proof) を与えているらしい.

1983年の論文 [58] はなぜだか知らないが, すごく面白そうな気がする. この論文を読むと何かいいことがあるような気がするが あんまり読めていない.ごめんね.

1986年の論文 [39] ではなんか色々やっている. 多分サードの定理の証明読みたい時はこれを読むといいんじゃないかな.

1987年の 論文 [24] ではC関数に関するサードの定理に対して 簡略化した関数を与えている. おそらく大抵の人が目にするサードの定理の証明は この論文が元ネタなのではないだろうか? 違う可能性もある.

1991年の論文 [46] では関数の変数を二つの部分に分けて片側では Ckでもう片側では Cω のときのサードの定理を証明している.

1992年の論文 [3] ではヘルダー連続性を混ぜた話をしている. 1993年の論文 [4] はその続きである.

1993年の論文 [6] では Cp,α 級関数についての サードの定理が証明されている. Cp,α というのは p 階微分が局所 α 次ヘルダーということである.

1994年の論文 [42] では 微分可能性とZygmund 関数を混ぜた関数についての サードの定理を証明している. Ck+Zygmund級関数の話ということ. Zygmundはある種の微分可能性である.

1996年の論文 [2] では実数直線のコンパクト部分集合が 臨界値になるための条件を調べているようだ. 面白い論文だと思う.

2001年の論文 [14] では Ck,α 級関数の臨界値のハウスドルフ次元の 評価を行なっているようだ.

2004年の論文 [25] では 臨界値のより詳しいハウスドルフ次元の評価をしているようだ.

2006年の論文 [31] では Ω2 を開集合として v:Ω0CLIntDv(Ω) を満たすならば vの臨界値の測度がゼロになることを証明している. これが成り立つのはなんか すごいような気がする.

2009年の論文 [35] では curve selection lemma というものを使って サードの定理の証明を簡略化している. ただしこの curve selection lemma というのは o-minimal structureの理解がないと証明できなさそうである.

2015年の論文 [1] では関数の微分に適切な条件を課すと サードの定理の仮定を少し緩められるという 話をしているようだ.

2019年の論文 [27] は 論文 [35] の発展である. Bochnak–Łojasiewicz inequality の不等式というのがあってそれの一般化と見做せる いい不等式を使ってサードの定理を証明している. Bochnak–Łojasiewicz inequality はcurve selection lemma というか o-minimal というか semi-analytic sets の話なので なんかすごい難しい.

2021年の論文 [33] はヘルダーを混ぜたサードの定理の話だと思う. 多分これを読むといいんじゃないかな.

3 サードの定理にまつわる反例

微分可能性が低い場合にはサードの定理が成り立たなかったりするがそのような例を 構成した論文を紹介する.

サードの定理にまつわる最初の反例は Whitney の論文 [56] である. Whitneyは自身の証明した有名な Whitneyの拡張定理を用いて C1級関数f:2 であってその臨界値が非退化な区間を含むものを 構成している. 注意すべきなのはサードの定理が証明される以前に Whitneyは現在のサードの定理の 仮定を ギリギリ満たさない反例を構成しているということである.

1942年の論文 [48] では 連続で単調増加な 特異関数 を構成しているが, これは多分サードの定理に関係ないと思う. 紛れていた.

1965年の論文 [32] では無限次元多様体の間の写像に関する サードの定理の反例の話のようだ.

1979年の論文 [28] では,Rnnn次元立方体としたときに C1級関数 f:R3R2 であって, 全射でなおかつ 至る所のrankが1 となるような例が構成されている. これはハーシュの「微分トポロジー」 の演習問題に載っている未解決問題であった. またこれはサードの定理の仮定も満たさないし, 結論も満たさない.

1985年の論文 [20] では,カントール集合Cについて C+C={x+yx,yC}=[0,2] という現象を用いてサードの定理の仮定を満たさないし 結論も満たさない例を構成している.

1989年の論文 [40] では quasi-arcが 関数の臨界点になるための十分条件が考察されている.

1991年の論文 [46] では関数の変数を二つの部分に分けて片側では Ckでもう片側では Cω のときのサードの定理を証明しているということを上で紹介したが, 論文 [41] では片側を Cにすると Pughの結果が成り立たないことを示しているらしい.

1993年の 論文 [5] では任意の可分バナッハ空間Eに対して 全射C1級関数f:E2 であってその微分のランクは至るところ 1になっているものを構成している. これはKaufmanの論文 [28] の発展と見做せる.

1999年の論文 [13] では Whitney arcというものを構成している. これはおそらくWhitneyの論文 [56]に出てくるようなarcのことだと思われる.

2003年の論文 [22] では Assouadの埋め込み定理を用いて Whiney型の例を構成している.

2008年の 論文 [12] もWhitneyの例の話をしている.

2009年の論文 [55] は Whitneyの例を受け, 連結集合が臨界点になるような特徴付けを発見したらしい. すごい.

2011年の論文 [34] では 滑らかなある曲線上で 接微分が消えるような 定数でない連続関数を構成しているようだ.

2020年の論文 [19] は面白いと思う. 𝕊n+1から 𝕊nへの写像について ホモトピー的な考察と サード的な考察を行なっており大変興味深いと思う. ちょっと細かいところはわかんなかった.

4 サードの定理の系

1963年の論文 [23] では サードの定理を用いて n次元単体Eについて その境界EEのレトラクトではないことを証明している. このことから ブラウワーの不動点定理などを証明できる.

1975年の論文 [54] ではKnとして f:Knをリプシッツ写像 としてKのルベーグ測度が有限としたときに C={yncard(f1(y))=} がルベーグ測度で測度0 になることを述べている. fC1級のときはこのことはサードの定理の系である.

5 サードの定理の変種

可微分ではなく他のいろいろな種類の関数についての サードの定理の類似が色々証明されているようだ.

5.1 Delta-convex

2008年の論文 [44] ではバナッハ空間の間のdelta-convex関数という クラスについて, 定義域が の区間の場合にはその臨界値の 1/2ハウスドルフ測度はゼロになることを証明している.

5.2 Borel

論文[21] ではBorel写像に関するサードの定理のようなものを 証明している. サードの定理の系として f:mnをいい感じに滑らかな関数としたときに f1(y)が大体のyについて mn次元 可微分多様体になっているというものがある. この論文では 適切な条件のもと,ボレル写像f:mn についてf1(y)がほとんどのyについて ハウスドルフ次元がmn以下ということを示している.

5.3 ソボレフ

ソボレフ空間に属する関数についての サードの定理に関する論文は 以下の通りである. [15](大元の論文?), [7], [18](simple proof?), [53], [8].

5.4 リーマン多様体の距離関数

論文 [47] はリーマン多様体の距離関数 に関するサードの定理の話である.

5.5 よくわかんないやつ

多分サードの定理に関係するが, よくわからなかったやつ. [11], [30].

以上の論文以外にも本当にたくさんのサードの定理に関係する論文があるとは思うがおそらくこれらの論文の参考文献やこれらの論文を引用している論文から全て見つけ出せるのではないだろうか.

References