AUTOMATIC HTML VERSION

数学的失敗とその教訓:ファイバーバンドルのLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

数学的失敗とその教訓:ファイバーバンドル

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章ではファイバーバンドルの理論を 被覆の言葉だけで記述しようとした場合に起こった大失敗を 紹介する.

経緯を述べると6年くらい前に ファイバーバンドルの理論を勉強しようと思ったのだが, なんか難しくって,聞くところによるとバンドルの理論というのは被覆の言葉で書き直せるとのことであった. 被覆の方が私に馴染みがあったし, またバンドルを被覆の言葉で記述した場合, (確か一次の)非可換(チェック)コホモロジー と見做せるのでそのように記述した方が都合がいいと思って ファイバーバンドルの理論を被覆の言葉で書き直したPDF を用意していた. しかしながら, プルバックのホモトピー不変性を証明するに至って, あまりにも証明が書き直せないことから6年くらい塩漬けになっていた.勉強も塩漬けになっていた.

最近年末の大掃除をしている時に 塩漬けになっているのを再発見して なんとかプルバックのホモトピー不変性 を証明できないかと唸っていたところ, おそらく成功したので,また将来の私が困らないように メモとして残しておく. 成功したかどうかよくわからないが, アイデアの方向性はあっていると思うのでメモを残して これ以上この方向で進むのをやめろという警告とする.

証明が精密でなくとも,この方向でやろうとするのはやめろという警告程度にはなるだろう.

端的に言って,バンドルの理論は写像の言葉で行った方が とても良い.

元々の未完成のPDFをこの文章の後にくっつけておく. 完成する予定だったのでうまくいったとか書いているが, 完成してないしうまくもいっていない.

1 何を定義したのか?

まずオリジナル版では添字付きの被覆を定義し,変換関数を 導入する. 元々電波通信はやぼったいほど基礎的なことを書き込み方針だったのだ.

定義 1 (添え字付き開被覆).

集合Aから𝔒(X)への写像U:A𝔒(X)

X=aAU(a)

を充たすとき、Uを添え字付き開被覆といい、Aのことを添え字という。 UaAにおける値U(a)Uaと書いたりする。また、 なまぐさをしてUのことをU={Ua}aAとか書いたりする。

集合として同じでも添え字が違う場合は別のものとして扱いたいので添え字付き開被覆を用いる。 大げさだが、つぎのように定義する。

OMP(X,G)=P𝔒(X)Map(P,G)

つまりOMP(X)Xの開集合からGへの写像を全部集めた集合である。 また集合Aに対してA2A×Aを表すことにする。

定義 2 (変換関数).

UXの添え字付き開被覆とし、その添え字をAとする。g:A×A:OMP(X,G)Uに付随する変換関数であるとは次の条件を充たすときに言う。111以下ではg(b,a)gbaと書くことにする。

  1. (1)

    gbaの定義域はUbUaである。

  2. (2)

    gba:UbUaGは連続写像である。

  3. (3)

    xUcUbUagcb(x)gba(x)=gca(x) (コサイクル条件)

注意.

UbUa=Øのときgbaは空写像である。また、UcUbUa=Øのとき条件(3)は真になることに注意しよう。

注意.

コサイクル条件からUaØのときgaa1Gとなることや、 UbUaØのときgba=(gab)1が成り立つことなどがわかる。

ついで 抽象束 なる概念を位相空間の上の被覆と変換関数の集まりで定義する.

定義 3.

位相空間Xと位相群Gに対して、 XG、添え字集合AAを添え字に持つX上の添え字付き開被覆U, およびUに付随する変換関数gの五つ組(X,G,A,U,g)のことをX上のG-抽象束(もしくはX上のG-変換関数付き開被覆、またはX(G,1)-チェックコサイクル)と呼ぶ。 Xを底空間、Gをこの束の構造群と呼ぶ。 X上のG-抽象束全体を𝒞(X,G)と書く。222𝒞はcocycleのcである。

注意.

抽象束にはファイバーがないことに注意せよ。

例 4.

任意の位相空間Xと位相群Gを与える。添え字付き開被覆U:{1}𝔒(X)U(1)=Xと定義し、変換関数g:{1}2OMP(X)g111Gと定義する333X=の場合にはg11は空写像と定義する。(X,G,{1},U,g)は抽象束になる。この束のことを自明束という。 どんな位相空間と位相群Gについても 𝒞(X,G)である。これはG上の自明束が常に存在するからである。

バンドルの理論の教科書などに書いている通り, このような「抽象束」 というのはファイバーバンドルと同じのはずであり (ファイバーを指定していないので主束と同じのような気がする), ファイバーバンドルの理論をこの「抽象束」 の言葉で書き換えることができてしかるべきである.

次に束同士の同値性について定義するのである.

以下では抽象束をフラクトゥールの一文字で表す。

1.1 抽象束の束同値

二つのG-抽象束が束同値であるということを定式化する。

定義 5.

𝔄,𝔅𝒞(X,G)について

𝔄=(X,G,A,U,g),𝔅=(X,G,B,V,h)

とする。任意の(a,b)A×Bについて連続関数

pba:VbUaG,qab:UaVbG

が存在して、以下の条件を充たすとき𝔄𝔅は束同値であるという。

  1. (1)

    (a,b,c)A×A×BxVcUbUapcb(x)gba(x)=pca(x)

  2. (2)

    (a,b,c)A×B×AxUcVbUaqcb(x)pba(x)=gca(x)

  3. (3)

    (a,b,c)B×A×AxUcUbVagcb(x)qba(x)=qca(x)

  4. (4)

    (a,b,c)B×B×AxUcVbVaqcb(x)hba(x)=qca(x)

  5. (5)

    (a,b,c)B×A×BxVcUbVapcb(x)qba(x)=hca(x)

  6. (6)

    (a,b,c)A×B×BxVcVbUahcb(x)pba(x)=pca(x)

𝔄𝔅が束同値であることを

𝔄𝔅

と表す。

注意.

p𝔄から𝔅への変換で、q𝔅から𝔄への変換であり、

pba=(qab)1

を充たす。

さすがにファイバーがないと束同士の写像は定義できない。

オリジナルのPDFでは単位区間のバンドルが全て自明であることを証明しようとした痕跡がある.

「区間のあれ」 と書かれている補題は, 単位閉区間にルベーグ数の存在とかを適応して 被覆度が高々2の被覆で細分できることを示したかったのだと思う.

補題 6.

区間のあれ

区間上の束が自明であることを証明するために 変換関数を頑張って引き伸ばすことをしている.

命題 7.

単位閉区間I=[0,1]と任意の位相群Gについて、

card(𝒞(I,G)/)=1

つまりI上の抽象束はすべて自明束である。

証明.

𝔄I上の抽象束とする。 この束の被覆は[a0,b0),(a1,b1),,(an1,bn1),(an,bn]という形で、

a0=0,bn=1,ai1<ai<bi1<bi

を充たすとしてよい。さてc1,c2,cnd0,d2dn1

[ci,di1](ai,bi1)

となるようにとる。

𝔄𝔅である。

s0:[a0,b0)Gs01

x(ai,bi)のとき(i=nのときはx(an,bn]si(x)=gi,i1(t(x))si1|(ai,bi1)(t(x))と定義する。(ci,di1)上ではs(x)=gi,i1(x)si1(x) なので(ci,di1)の上でsisi11=gi,i1なので𝔅は自明である。よって𝔄も自明である。 ∎

2 束同値に関する注意

上で定義した束同値だが,同型として強すぎる. 二つの主束BCがあったときにこれらの局所自明開被覆を全く同じように取れるかどうかは全く自明ではない. というか成り立たない. よって 束同値は主束の話だと思うと, BC共通の局所自明開被覆が取れて尚且つ同型というかなりきつい同型になっている. なので通常の意味での主束の同型を被覆の言葉で書きたいのであれば,二つの抽象束それぞれの細分が存在してそれが上の意味での束同値という風に修正しなければならない. このことに気が付かなかったのが オリジナルの文書の執筆を滞らせる一因になっていた.

3 何を証明したかったのか?

以下のような命題が証明したかったはずである. この命題は 大まかには ファイバーバンドルのプルバックの ホモトピー不変性である.

定理 8.

Xをパラコンパクトハウスドルフ空間とし, 𝔗X×[0,1] 上の 抽象束とする. このとき𝔗|X×{0}𝔗|X×{1} は束同値である.

全く証明できなかった. 色々頑張ると次のようなことは証明できる.

命題 9.

Xをパラコンパクトハウスドルフ空間とする。 X×I上の束は{Ui×I}iという形の添え字付き被覆を持つ抽象束と束同値である。

この命題はつまり局所自明な被覆として {Ui×I}iという形のものが取れるということである.

4 定理8の証明? 大体こういう感じでできると思う

今から𝔗の被覆は常に 命題9のようなものとする. さらに局所有限とする. そして𝔄=𝔗|X×{0} とする.

V𝔄suppfVとなる f:X[0,1]に対して 𝔄={Oi}(V,f)-変形 𝔄(V,f)を以下のように定義する. 𝔄(V,f)={Oisuppf}{V} で変換関数はgab(x,f(x)) とする.ただしOiV は含まれていないとする. このとき𝔄(V,f)𝔄 と同値である. なぜならOisuppf しているからである. また𝔗(V,f)X×[0,1] 上の束で変換関数が gab(x,f(x)+t) となるものとする.

一般に有限個のVj1,Vjn𝔄suppfjVjjfj(x)[0,1]とような {fj}について ({Vj},fj)-変形 𝔄(({Vj},fj)) を 以下のように定義する. 𝔄={Oij(suppfj)}{Vjj<ksuppfk}で 変換関数は gab(x,jfj(x)) とする. このとき これは元の被覆と同値である. なぜなら 2枚の場合を考えるとそれは (V1,f1)-変形𝔄(V1,f1)𝔗(V1,f1) に対する 変形なので 𝔄𝔄(V1,f1) に同型で, 𝔄(V1,f1)𝔄({V1,V2},{f1,f2})に同型なので 結局同型である. この議論はようは 𝔄(V1,f1)(V2,f2)=𝔄({V1,V2},{f1,f2}) ということである.

ついで 一般のVjfjについて ({Vj},fj)-変形を 定義する.まず添字集合は整列されているとして, 𝔄({Vj},fj)={Oij(suppfj)}{Vjj<ksuppfk}で 変換関数は gab(x,jfj(x)) とする. ただしOi たちにはVjは含まれていないとする. まず被覆になっていることを示す. 点pをとる. pVjとなるものが存在しない時は pOiをとると pOijsuppfj である. pVjとなるものが存在するときは局所有限なので Vjn,Vjn が存在して これらしか pを含まない. jnが一番大きいとすると pVjnjn<ksuppfk なので被覆である. これはもとの被覆と同値である. pの周りを考えると有限回の反復なので 有限の場合の話から大丈夫. つまりpの局所有限性を体現する近傍Up を取りUp による被覆 {Up}pX𝔄 を細分してその上で議論をするとわかると思う. よってgab(x,0)を変換関数とする 𝔗|X×{0} と とgab(x,1)を変換関数とする 𝔗|X×{1}が同値であることがわかった.たぶん.

大人しく写像の話でバンドルを議論した方がよい.

References