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平方数ではない整数の平方根が無理数であることのニュートン法を用いた証明のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

ニュートン法を用いた整数の平方根の無理性の証明
— Proving irrationality by Newton method —

電波通信 ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章ではニュートン法を用いて, 平方数ではない(正の)整数aに 対してa が無理数であることを証明する.

最初に大事なことを伝えておくが, 普通に証明したほうが早いし汎用性がある.

1 本文

まず最初にこの文章で用いる無理数の判定法を 紹介する.

補題 1.

任意の有理数xについて,定数C>0が存在して以下の条件を満たす:任意の整数aとb が0<|a−x⁢b|を満たすとすると, C≤|a−x⁢b| が成り立つ.

証明.

いま xは有理数なので整数pと正の整数qを用いて x=p/qと書くことができる. すると

|a−x⁢b|=|q⁢a−p⁢b|q

が成り立つ.そして0<|a−x⁢b|という仮定から 0<|q⁢a−p⁢b|がわかる. ここで |q⁢a−p⁢b|は整数なので |q⁢a−p⁢b|≥1である.よって

|a−x⁢b|≥1q

がわかる. ゆえにC=1/qとすれば定理は成り立つ. ∎

命題 2.

xを実数とする. そして 以下のような整数の列 {An}n∈ℤ≥0と {Bn}n∈ℤ≥0が存在すると仮定する: 任意のn∈ℤ≥0に対して 0<|An−Bn⁢x|かつ limn→∞|An−Bn⁢x|=0 が成り立つ. このとき xは無理数である.

証明.

上の補題 1からわかる. ∎

この補題にある 無理数の判定法については, (その昔に) 筆者は 文献[2, p.1] で初めて学習したと思う.

次にニュートン法で得られる aの近似列に関する基本事項を 証明する.

命題 3.

a∈ℝ>0とする. そして,x0を適当に選んで 数列{xn}n∈ℤ≥0 を

xn+1=xn−xn2−a2⁢xn=12⁢(xn+axn)

と定義する.このとき以下が成り立つ.

  1. (1)

    もしも x0>0ならば任意のn∈ℤ≥0についてxn>0 が成り立つ.

  2. (2)

    任意のn∈ℤ≥0について

    xn+1−a=12⁢xn⁢(xn−a)2

    が成り立つ. 特にx0>0ならば任意のn∈ℤ≥1 について a<xnが成り立つ.

  3. (3)

    x0>0とする. 数列 {Pn}n∈ℤ≥0 と {Qn}n∈ℤ≥0 を以下のように定義する.

    1. (a)

      n=0の時は適当に以下を満たすものとする.

      x0=P0Q0
    2. (b)

      n>0の時は

      Pn+1=a⁢Qn2+Pn2

      でなおかつ

    3. (c)
      Qn+1=2⁢Pn⁢Qn

    と定義する. このとき 任意のn∈ℤ≥0について

    xn=PnQn

    が成り立つ.

  4. (4)

    いまaを平方数にはならない正の整数と仮定する. このとき x0をaよりも大きい整数のうち最小のものとし, P0=x0, Q0=1とする.さらに η0=x0−aとし帰納的に {ηn}n∈ℤ≥0を

    ηn+1=ηn2

    と定義する. このとき任意のn∈ℤ≥0について PnとQnは整数であり,

    |xn−a|≤ηn⁢1Qn

    が成り立つ.

証明.

(1) は定義からわかる.

(2) を示そう.

xn+1−a=12⁢(xn+axn)−a=12⁢xn⁢(xn2−2⁢xn⁢a+a)=12⁢xn⁢(xn−a)2

なので成り立つ.

(3) を示す. 今nについて

xn=PnQn

が成り立つと仮定する. この時

xn+1=12⁢(xn+axn)

に xn=Pn/Qnを代入すると

xn+1=12⁢(PnQn+a⁢QnPn)=a⁢Qn2+Pn22⁢Pn⁢Qn=Pn+1Qn+1

なので成り立つ.

(4)を示す. まずPnとQn が整数であることがa が整数と仮定されていることから帰納的にわかる. 最後の不等式を示そう.帰納法による.n=0のときは定義からわかる. nまでは成り立つとしてn+1の場合を考える. このとき (2) から

|xn+1−a|=12⁢xn⁢|xn−a|2

が成り立つ. 今nについては |xn−a|=ηn/Qn が成り立つと仮定しているので,

|xn+1−a|=12⁢xn⁢|xn−a|2≤Qn2⁢Pn⁢1Qn2⁢ηn2=ηn+1⁢1Qn+1

が成り立つ. よって (4) が成立する. ∎

命題 3 の系として以下の定理を得る.

定理 4.

aを平方数にはならない正の整数とする. このときaは無理数である.

証明.

命題 3の (4) と同じくx0 を aよりも真に大きい整数のうち最小のものとする. いまa は整数なので 命題 3の (3)で定義した PnとQnが整数であることが帰納的にわかる. さらに |Pn−Qn⁢a| を考えると, 命題 3 の(2)からa<xnがわかる. よって特に,任意のn∈ℤ≥0について

0<|Pn−Qn⁢a|

が成り立つことがわかる. またaは平方数にならないので, η0=x0−aは (0,1)に属する. 命題 3 の (4) から任意のn∈ℤ≥0 について

|Pn−Qn⁢a|≤ηn

である. さらにηn=η02n でありη0∈(0,1) であることから limn→∞|Pn−Qn⁢a|=0 が従う. よって 命題2から aは無理数である. ∎

2 解説

命題2 は無理数の判定のちょっとした有名な事実である. これを用いることで 自然対数の底 e が無理数であることが簡単にわかったりする. この 命題 2 の他の応用はないものかと考えた結果, ニュートン法から得られるa に収束する点列に適応する応用を考えついた. 詰まるところ 命題2 を適応することありきで考察をしているので あんまり健康的ではないかもしれない (でもこういうのって楽しいと思う). それで お分かりかもしれないが 上で述べた{xn}n∈ℤ≥0 の定義はx2−aにニュートン法を適応して得られる x2−aの零点に収束する点列である. ちなみにその昔Pythonを触っていたことがあって, ニュートン法で 2 の小数点以下100桁とかを求めたりしていたので, 上のPnとQnを思いついたという経緯がある (Pythonのint型?ってなんか桁の制限がない?とかなんとかなのでこういう無茶なことができたりする). それで二次多項式以外に三次多項式とかでも同様のことできないかと思ったが,なんだか二次方程式の場合だけうまくいって,他の場合は上で述べたのと同様の方法は適応できなさそうであった.aの無理性の証明は普通にaの素因数の偶奇を考えたりした方が早いし汎用性あると思う. まあもしかしたらこの方針に何か面白いことが見つかるかもしれない ので一応ここにメモとして残しておく.

私の知識の範囲においては 無理数と超越数両方を扱った数学の和書は[2]が唯一である.POD版もある. タイトルの通り無理数のみならず超越数も扱っている. 変わった感じの議論で何かしらの数の無理性を示す論文としては [4]なども面白いと思う.

3 追記

この文章を書き終わってから思いついたのだが, 上で述べた方法がうまくいくのは,以下に基づくのではないかとなんとなく推測する.

  1. (1)

    おそらく奇跡的にaのニュートン法による近似が 連分数によるaの近似と同じになっており, それが最良近似?だから無理性を証明できるのではないだろうか?

  2. (2)

    そしてなぜニュートン法による近似と連分数による 近似が奇跡的に一致しているのかというと, 二次の代数的数の連分数表示は循環的という事実に由来するのではないか?

しかし面倒だし,やる気とか時間の都合とかあるのでこれらを確かめるのは私はやらない.

訳が分からない現象に対しても自分の知識から関連する現象を取り出して関連性を確かめようとするのは 数学者と呼ばれる類の人たちの 習慣なのではないかと思われる. たくさん論文を読んだり本を読んだりするといいよ.

私がこれ以上このことを調べないことのお詫びと言ってはなんだが,連分数の和書を紹介しよう.とはいえ 連分数を詳しく解説している和書はよく知らないのだが, 最近出版された [3]は連分数の成書であり, 数学セミナー2014年8月号[1] は連分数の特集で基本事項がまとまっていると思う.

References

  • [1] 雑誌「数学セミナー2014年8月号」, 日本評論社.
  • [2] 塩川宇賢, 「無理数と超越数」, 森北出版, 1999.
  • [3] 木田雅成, 「連分数」, 大学数学スポットライト・シリーズ第9巻, 2022年 近代科学社.
  • [4] M. R. Murty, and V. K. Murty, Irrational numbers arising from certain differential equations, Canad. Math. Bul. 20 (1) (1977), 117–120.