独立集合族
1 導入
この文章ではいわゆるindependent family(独立集合族)を構成する. この文章では,独立集合族とほとんど交わらない集合族が互いに翻訳可能であるということを示す. そのためにこの間を補完する概念として, 弱独立性,弱弱独立性,弱弱弱独立性を導入する. もちろんこれらの概念は集合族に対する適切な変換を通じて互いに翻訳可能である(定理10を参照のこと).
自然数の集合上には濃度が連続体であるような独立集合族が(ZFにおいて)存在することが知られている.これはここで紹介する最後の定理10の系でもある.
2 準備
まず記法について述べる. 記号で非負整数全体の集合を表す. またという記号でカントール集合を表す. つまりこの集合はに値を取る可算点列全体の集合ということである. 集合に対して での有限部分集合全体を表すことにする.
今から定理を述べるのに必要な集合族の概念を導入する.
定義 1.
集合の部分集合からなる集合族 が独立であるとは, の任意の二つの有限部分族 と について を満たすならば 集合
が常に無限集合になるときにいう.
この集合族の独立という言葉は線形独立性と関係がある. 実際,独立集合族は一番最初 ([1, p. 80])には 関数空間の中の(代数的に)独立なベクトルを構成するのに用いられた.
定義 2.
集合の部分集合からなる集合族 が弱独立であるとは, の元 と任意の有限部分族 について を満たすならば 集合
が常に無限集合になるときにいう.
定義 3.
集合の部分集合からなる集合族 が弱弱独立であるとは, の元 と任意の有限部分族 についてを満たすならば
となるときにいう.
定義 4.
集合の部分集合からなる集合族 が弱弱弱独立であるとは, の任意の二つの元 と についてを満たすならば
となるときにいう.
注意.
弱独立性,弱弱独立性,弱弱弱独立性はこの文章のみで通用するものである. ブログなんだしふざけた名前でも勘弁して.
定義 5.
集合の部分集合からなる集合族 がほとんど交わらないとは, の任意の異なる二つの元 と について が有限集合となるときに いう.
3 本文
まず最初に弱弱弱独立な集合族からほとんど交わらない集合族を構成する方法を述べる.
定理 6.
を可算無限集合とし, を弱弱弱独立集合族とする. このときと同じ濃度を持つ ほとんど交わらない集合族が存在する. さらにが無限集合のみからなるのならばもそのように取れる.
証明.
適当にとを同一視する. 各と に対して とし, とする. このとき集合族 はの部分集合からなる集合族である.
今からがほとんど交わらないことを示す. 任意に異なるとを取る.このとき なので要素をこの集合から取る. するととなるについて であるが なので である. よって は集合 に含まれる. つまり は有限集合であるから はほとんど交わらない集合族である.
また以上の議論から が異なるならばとも異なるので との濃度は等しい. 最後にと の濃度は等しいので,適当に同一視すれば の上にと同じ濃度の ほとんど交わらない集合族が構成できた. ∎
ほとんど交わらない集合族の要素は無限集合と仮定しても良いことを述べるのが次である.
定理 7.
を可算無限集合とし, をほとんど交わらない集合族とする. このときと同じ濃度を持ち, 無限集合族だけからなる ほとんど交わらない集合族が存在する.
証明.
とおく. このとき は の部分集合で は無限集合なのでの濃度は以下である.今を適当に見繕って, 各に対してを が有限集合のときはとし,が無限集合のときは と定義する. このとき各 は無限集合である. さらに 任意のに対してが成り立つ. 特にさらにならばということがわかる. またがほとんど交わらないということから 集合族 が の無限部分集合からなるほとんど交わらないということがわかる. 適当にとを同一視すれば 欲しかった集合族を得ることができる. ∎
定理 8.
を可算無限集合とし, をの無限集合から成るほとんど交わらない集合族とする. このときと同じ濃度を持つ 独立集合族が存在する.
証明.
各に対して
と定義する.つまりはと交わるの部分集合全体の集合である. ここでならばに注意しよう. そして とおく. 今から が独立集合族であることを示そう. 集合族の有限な部分集合族 とでを満たすものをとる. ここでの二つの有限部分集合族 とをとって かつ と表されてるとしても良い. 集合族がほとんど交わらないことを使って 各と に対してをで となるものとする.これは(より), が無限集合,が有限集合であるなどの事実から存在性がわかる. ここで とするとは有限集合であり, 任意のについてであり, 任意のについて である. とくにを含む有限集合であってと交わらない ものは無限個存在し となるので は独立集合族となる. ∎
集合 上では弱弱弱独立集合をかなり具体的に構成できる.
定理 9.
の部分集合からなる集合族で 弱弱弱独立であり連続体濃度を持つものが,ZFのもとで存在する. または無限集合のみを元とするように取れる.
証明.
各 に対して とする.つまりのときはが, のときはがに属する. そして とするとこれが求める集合族になっている. ここでとについてならばかつに注意しよう. ∎
最後に以下の定理がわかる.
定理 10.
を可算集合とし,はの部分集合族からなる 集合であって,以下の条件のどれか一つを満たすとする.
-
(A)
独立性
-
(B)
弱独立性
-
(C)
弱弱独立性
-
(D)
弱弱弱独立性
-
(E)
ほとんど交わらない
-
(F)
各元は無限集合であり,なおかつほとんど交わらない
このときこのとき上の条件それぞれに対してそれを満たす集合族であってと同じ濃度を持つものが存在する. さらに,以下のことが成り立つ.
-
(1)
のときは, 各性質に対して連続体濃度を持つ集合族でその性質を持つものがZFにおいて構成できる.
3.1 独立集合系の構成
この節では,上で述べたことは無視して可算集合の上に 連続体濃度をもつ独立集合系が存在することを証明する. というか上で述べた構成法を一気にやったのが以下の通りである.
定理 11.
上に独立集合系が存在する.
証明.
集合を と定義する. つまり
である.もちろんは可算集合である. 今からの元をアルファベットで表すとき というふうに表示することにする. ここでの互いに素な無限部分集合からなる可算族 であって とする. ここで とに対して
と定義する. さらに写像 を と定義する. まずは単射である事を見よう. がを満たすとする. このときが存在して となる.として とするとであり, かつ となる. よってであり,単射である.
次に が独立集合系であることを証明しよう. とをの 有限な部分集合族とし となるものとする. そして の有限部分集合とによって で と表されているとしても良い. もちろん, は有限集合であり,を満たす. さて,とは有限集合なので が存在して任意の と に対して を満たす. そして と定義しとすると である. そして 任意のに対して でなおかつ任意のについて である. よって 集合 は無限集合である. 以上で連続体濃度をもつ上の 独立集合系が存在する. ∎
References
- [1] G. Fichtenholz, L. Kantorovitch, Sur les opérations linéaires dans l’espace des fonctions bornées. Studia Math. 5 (1935), pp. 69-98.
- [2] S. Geschke, Almost disjoint and independent families, 数理解析研究所講究録第1790巻, 2012, 1–9.
- [3] M. J. Perron, On the Structure of Independent Families, PhD. Thesis, Ohio univ., 68 pages, 2017.