AUTOMATIC HTML VERSION

ボレル同型と確率空間の同型:確率論その4のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

ボレル同型の定理と確率空間の同型定理

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文書ではボレル空間同士の同型, 確率空間同士の同型,そしてボレル集合同士の同型定理を紹介する.

ポーランド空間が絶対Gδであることは証明なしで使う.

以下ではω0=ℤ≥0 とし離散位相が入っているものとする.

Aと Bを集合とするとき記号BAで AからBへの写像全体の集合を表すとする. この記法はMap⁢(A,B)を省略していると考えるとわかりやすいと思う. Aの有限部分集合Sを用いてr:S→B と表される写像についてNrで f∈BAでなおかつf|S=rとなる元全体の集合を表すとする.このときNr全体の集合系はBに離散位相を導入した場合の BAの各点収束の位相を生成する. またこの位相はBに離散位相を入れてcard⁡(A)個直積した直積位相と一致する.

記号 2ω0 はω0から2={0,1}への写像全体を表す. この空間に直積位相(写像としてみると各点収束の位相) を入れたものをカントール集合と呼ぶ.

記号ω0ω0はω0からω0への写像全体であり,そして直積位相が入っているとする. この空間はBaire空間とか無理数の空間とか呼ぶ.

記号ω0<ω0で, あるnを使ってs:n→ω0と表すことのできる写像s全体を表すとする. ここでn={0,…,n−1}である. またこのときこのnを|s|で表す. ここで∅∈2ω0に注意せよ. そしてs,t∈ω0<ω0について 記号s≤tはあるn≤|t|が存在してt|n=s となることを意味する. そしてs⟂tはあるi<min⁡{|s|,|t|}について s⁢(i)≠t⁢(i)を意味する. そしてs∈ω0<ω0とi∈に対して s⌢i は写像 s⌢i:n+1→ω0で s⌢i|n=s でs⌢i⁢(n)=iとなるものを表すとする. s:n→ω0はその値を用いて s⁢(0)⌢s⁢(1)⌢⋯⌢s⁢(n−1)と書かれることもあるのかも.

記号2ω0 で,あるnを使ってs:n→2と表すことのできる写像s全体を表すとする.ここでn={0,…,n−1}である. これはω0<ω0の部分集合である.

1 ボレル空間のボレル同型

この節では非可算なポーランド空間はどれもこれも 互いにボレル同型であることを証明する.

位相空間Xの開集合から生成されるσ-代数を Xのボレル集合族と呼び, その元をボレル集合と呼ぶ. 記号𝔅⁢(X)という記号でXのボレル集合族を表す. 写像f:X→Y がボレル写像であるとは 任意のB∈𝔅⁢(Y) に対してf−1⁢(B)∈𝔅⁢(X) となることである. また, 写像f:X→Y が余ボレル写像であるとは任意のA∈𝔅⁢(X) に対してf⁢(A)∈𝔅⁢(Y) となることをいう. 写像fがボレルかつ余ボレルであるとき 双ボレルであるという. 双ボレルな単射を双ボレル埋め込みと呼ぶ. 写像f:X→Y は全単射でなおかつ双ボレルであるとき ボレル同型写像であるといい, XとYは ボレル同型であるという.

集合Sに対して𝔓⁢(S) でSの冪集合,つまりSの部分集合全体を表すことにする.

この文書においては 以下の定理を用いてボレル同型を構成する.

定理 1 (双ボレル埋め込みに関するベルンシュタインの定理).

XとYをポーランド空間とし, f:X→Yとg:Y→Xを双ボレルな単射写像とする. このときボレル同型h:X→Y が存在する.

証明.

証明は通常のベルンシュタインの定理と全く同じである. それがどのようなものであったのか思い出そう. 写像Φ:𝔓⁢(X)→𝔓⁢(X) をΦ⁢(A)=X∖g⁢(Y∖f⁢(A)) とする.このΦには不動点,すなわち Φ⁢(E)=EとなるE∈𝔓⁢(X) が存在すること,そしてそれがボレル集合として選べることを示そう. 各n∈ℤ≥0集合Wnを以下のように帰納的に 構成する.W0=∅ であり,一般にWn+1=Φ⁢(Wn)と定義する. そしてE=⋃n∈ℤ≥0Wn と定義する.このときfと gが共に単射であることから Φ⁢(E)=⋃n∈ℤ≥0Φ⁢(Wn)=E となることがわかるのでEはΦの不動点である. またfとgが共に双ボレルであることから EはXのボレル集合であることに注意しよう. 写像Φの定義から

X∖g⁢(Y∖f⁢(E))=E

つまり

g⁢(Y∖f⁢(E))=X∖E

であり,

g−1⁢(X∖E)=Y∖f⁢(E)

である. よって写像h:X→Yを

h⁢(x)={f⁢(x)x∈Eg−1⁢(x)x∉E⁢.

でと定義するとこれは全単射になっている. またEがボレルでfと gが双ボレルなのでhも双ボレルであり, 全単射なのでhはボレル同型である. ∎

1.1 可能な限り初等的な証明

この節ではボレル同型定理の可能な限り初等的な証明を与える.

定理 2.

位相的埋め込みt:2ω0→ℝ が存在する.2ω0はコンパクトなので, この埋め込みには双ボレル埋め込みにもなっている.

証明.

写像 t:2ω0→ℝをx=(xi)i∈ℤ≥0∈2ω0 に対して

t⁢(x)=∑i=0∞xi3i

と定義する.2ω0 はコンパクトなのでtが単射で連続であることを示せば位相的埋め込みであることがわかる. まず単射性を見よう. 異なる二つの元x,y∈2ω0をとる. そしてnをi≤nならばxi=yi でxn+1≠yn+1 となるものとする. このとき

t⁢(x)−t⁢(y)=∑i=n+1∞xi−yi3i

である.xn+1≠yn+1 なので|xi−yi|≤1である. よって

|t⁢(x)−t⁢(y)| =|∑i=n+1∞xi−yi3i|=|xn+1−yn+13n+1+∑i=n+2∞xi−yi3i|
≥|xn+1−yn+1|3n+1−|∑i=n+2∞xi−yi3i|≥13n+1−|∑i=n+2∞xi−yi3i|

となる. ここで

|∑i=n+2∞xi−yi3i|

を上から評価しよう. 各xiとyi は0か1のどちらかの値しか取らないので |xi−yi|≤1である.よって

|∑i=n+2∞xi−yi3i|≤∑i=n+2∞13i≤3−n−21−3−1=32⋅13n+2=12⁢13n+1

よって

|t⁢(x)−t⁢(y)|≥13n+1−12⋅13n+1=12⋅13n+1>0.

よってt⁢(x)≠t⁢(y) となるから単射である. 次に連続性を見よう. x∈2ω0とし, n∈ω0を任意にとる. そしてy∈Nx|nとする. このとき

|t⁢(x)−t⁢(y)|≤∑i=n+1∞|xi−yi|3i≤∑i=n+1∞13i≤32⁢13n+1=12⁢13n+1

となる. 任意のϵに対して3−n−1≤2⁢ϵ となるようにnをとれば tが連続になることがわかる. ∎

定理 3.

双ボレル埋め込み s:(0,1)→2ω0 が存在する.

証明.

x∈(0,1)に対して s⁢(x)を0と1の列でxの 2進数としての表示の係数を表すことにする. ただし二通りの表し方がある場合には1が無限に現れるものを採用する. まずf:2ω0→[0,1] をxに対して∑i=0∞xi⁢2−i を対応させる関数とする. このときfは連続である. さらに f∘s=1(0,1)である. よって s は単射である. 写像 sが双ボレルであることを示そう. ここでxが二進有理数ならf−1⁢(x)は二点であり そうでないならばf−1⁢(x)は一点になる. このことから2ω0の任意の閉集合Kについて f⁢(K)は閉集合であり 可算集合Pが存在して f−1⁢(f⁢(K))=K∪P となる. よって f∘s=1(0,1)からf⁢(K)を 引き戻して s−1⁢(f−1⁢(f⁢(K)))=f⁢(K) を得る. よって s−1⁢(K∪P)=f⁢(K) である. 写像sは単射なので s−1⁢(K)=s−1⁢(K∪P)∖s−1⁢(P)=f⁢(K)∖s−1⁢(P) なのでsはボレル写像である. さらに (0,1)のコンパクト空間Lに対して可算集合Qが存在して s⁢(L)=f−1⁢(L)∖Qとなる. よってsが余ボレルであることがわかる. 以上のことからsは双ボレルであることがわかる.

多分σコンパクトだとか双ボレルだとか適当な条件つけて, 全射写像f:X→Y がYの可算個の点除いたらfが単射で除いた可算個の各店についてfによる引き戻しがたかだか可算だったらYからXへの双ボレル埋め込みが存在するというような定理があると思う.おそらくこれはKuratwski–Ryll-Nardzewski の選択子定理の雛形なのではないかと思う. ∎

系 4.

二つの空間 ℝと 2ω0 はボレル同型である.

証明.

定理 2と 3,そして 定理 1からわかる. ∎

定理 5.

双ボレル埋め込みs:2ω0→ω0ω0 が存在する.

証明.

{0,1}をω0に埋め込む写像から誘導される 単射s:2ω0→ω0ω0が位相的埋め込みになっている.2ω0 はコンパクトなのでこの埋め込みは双ボレルでもある. ∎

定理 6.

双ボレル埋め込みs:ω0ω0→2ω0 が存在する.

証明.

2ω0 は2ω0×ω0 と同相なのでω0ω0 を 2ω0×ω0 に位相的に埋め込むことを考える. x∈ω0ω0 に対して(fx⁢(n,i)) を以下のように定義する.

fx⁢(n,i)={1if ⁢n≤x⁢(i)⁢;0x⁢(i)<n⁢.

そして F:ω0ω0→2ω0 を F⁢(x)=(fx⁢(n,i))(n,j)∈ω0×ω0 これは単射であり, 連続でもある. この写像が何なのか説明しよう. この写像fx⁢(n,i)は ω0×ω0 の第i行にx⁢(i)+1個の1を0列目から連続して書き込んだ元であり,それ以降はずっと0になっているものである.

位相的埋め込みであることを示すために F⁢(xm)がF⁢(a)に収束したとしよう. k∈ℤ≥0 とし,mk=1+max1≤i≤k⁡ai と定義する. 写像r:[0,mk]×[1,k]→2 をr⁢(n,i)=fa⁢(n,i)と定義し, Vk=Nrとする. このVkは をF⁢(a)の近傍であり, その元は[0,mk]×[1,k] の範囲でF⁢(a)の成分と一致している ようなもの全体である. このとき 十分大きい番号nで, F⁢(xm)∈Vk でありVkとFの定義から xmとaの第k成分は一致しているので xmとaが近いことがわかる. よってn→∞のとき xm→aとなる. よってFは位相的埋め込みである. これも少し説明しよう.F⁢(a)は とF⁢(xm)がVkの意味で近ければ, fxmはfaの第i(≤k)行の初めて0が現れる 列まで一致している.fxmの定義からして, 初めて0が現れる列まで一致していると,第i列の1の個数を数えて xm⁢(i)=a⁢(i)となることがわかるので xmとaはω0ω0の直積位相で近いということがわかる.

Fが双ボレル埋め込みであることはω0ω0 がポーランドであり,ゆえに絶対Gδ であることからわかる.

ところで,無理数の空間の位相的特徴付けを知っていれば, 2ω0から可算稠密部分集合を取り除くとそれはω0ω0に同相であることがわかる. ∎

系 7.

ω0ω0 と 2ω0 はボレル同型である.

証明.

定理 5, 6に 定理 1 を適用するとわかる. ∎

ω0ω0から 2ω0への埋め込みは次の一般的な定理からもわかる.

定理 8 (“0次元ウリゾーンの距離化可能定理”).

Xを可分距離空間とし,なおかつ0次元, つまりクロープンな集合からなる開基をもつとする. このときXは2ω0に埋め込み可能である.

証明.

{Ui}をXのクロープンな集合からなる開基であるとする. そしてfiを Uiの特製関数とする.つまりx∈Uiのときfi⁢(x)=1でそれ以外の時fi⁢(x)=0とする. そしてF:X⁢2ω0 をF⁢(x)=(fi⁢(x))i∈ω0 とするとこれは位相的埋め込みになっている. ∎

定理 9.

以下の空間はボレル同型である.

  1. (1)

    実数直線 ℝ

  2. (2)

    単位閉区間 [0,1]

  3. (3)

    単位開区間 (0,1)

  4. (4)

    無理数の空間,あるいはベール空間 ω0ω0

  5. (5)

    カントール集合 2ω0

  6. (6)

    ヒルベルト立方体 [0,1]ℵ0

  7. (7)

    なんかでかい空間 ℝℵ0

証明.

まず(0,1) と[0,1]は互いに互いを位相的に埋め込めるので, ボレル同型になる. そして系 4から ℝ, 2ω0がボレル同型であることがわかる. そして系 7から 2ω0とω0ω0 がボレル同型でということがわかる. さらにℝと(0,1)が位相同型なので 四つの空間 ℝ, [0,1], (0,1), 2ω0, ω0ω0 は互いにボレル同型であることがわかる. ボレル同型写像h:ℝ→ω0ω0 をとり, H:ℝℵ0→(ω0ω0)ℵ0 をH⁢((xi))=(h⁢(xi))とするとこれはボレル同型になる. よってℝℵ0と (ω0ω0)ℵ0はボレル同型である. そして明らかに(ω0ω0)ℵ0 とω0ω0は位相同型なので, ℝℵ0 とω0ω0はボレル同型である. [0,1]ℵ0 と他の空間とのボレル同型 も同様に示せる. ∎

今から 定理 9の更なる拡張, つまり非可算なポーランド空間が全て同型であるということを証明を目指す.

位相空間が完全であるとは孤立点を持たないことである.

定理 10 (カントール・ベンディクソンの定理).

任意のポーランド空間Xについて, Qを有限か可算集合になるような開近傍を持つXの点全体とする.このときQは開集合でなおかつ可算集合になる. そしてX∖Q は完全集合になる.

証明.

Qの各点 xについてVxをxの可算な開近傍とする. このときQ=⋃x∈Vxである. この式からQが開集合であることがわかる. 今Xがポーランドであることから特に可分であることがわかる.よってその部分空間であるQも可分である. ゆえにQはリンデレフである. なので{Vx}x∈Qから可算個の元を選んでQを被覆するようにできる.各Vxは可算集合なのでQは可算集合である.最後にX∖Q が完全集合であることを示そう. 任意の点x∈X∖Q を取ると任意のxの開近傍VについてV∩(X∖Q)は非可算なのでxは孤立点ではない. よってX∖Q は完全集合である. ∎

定理 11.

Xを非可算なポーランド空間とする. このとき位相的埋め込みI:2ω0→X が存在する.

証明.

定理 10 よりXを最初から完全集合であると仮定しても一般性を失わない. 以下ではXには完備な距離d が備わっているとする. カントールツリー2<ω0 によって添字づけられた族 {I⁢(s)}s∈2<ω0 で以下を満たすものを構成する.

  1. (1)

    各I⁢(s)はXの非可算集合で閉な完全集合

  2. (2)

    s≤tならばI⁢(s)⊂I⁢(t);

  3. (3)

    s=t⌢0またはs=t⌢1ならばdiam⁡I⁢(s)≤1/2⁢diam⁡I⁢(t);

  4. (4)

    任意のs∈2<ω0 についてI⁢(s⌢0)∩I⁢(s⌢1)=∅

今からこのような族を構成していく. まず∅∈2<ω0に対しては 適当にa∈XをとってI⁢(∅)=B⁢(a,1) と定義する. 次にs∈2<ω0に対してI⁢(s) が構成されたとしてI⁢(s⌢0) とI⁢(s⌢1) を構成する. 今I⁢(s)は完全集合で非可算なので 適当に二点a,b∈I⁢(s) と十分小さいr∈(0,2−100⁢diam⁡I⁢(s)) をとってI⁢(s⌢0)=B⁢(a,r) I⁢(s⌢1)=B⁢(a,r) とすれば条件は満たされる. さて, 今s∈2ω0とすると diam⁡(I⁢(x|n))→0 なので Xの完備性から ⋂n∈ℤg⁢e⁢0I⁢(xn) は一点集合となる.これをf⁢(x) とし,写像f:2ω0→X を考えるとこれは連続で単射になっている. 2ω0はコンパクトなので fは位相的埋め込みになっている. ∎

定理 12 (“ウリゾーンの距離化可能定理”).

Xを可分な距離化可能空間とする. このとき位相的埋め込みI:X→[0,1]ℵ0 が存在する. さらにXがポーランドであるならば Iは双ボレル埋め込みでもある.

証明.

証明を思い出すと埋め込みはわかる. 後半はポーランド空間が絶対Gδ であることからわかる. ∎

定理 13.

任意の二つの非可算なポーランド空間はボレル同型である. つまり任意のポーランド空間Xは 2ω0とも同型だし,ℝとも同型である.

証明.

定理 12から Xは[0,1]ℵ0 に双ボレル埋め込みができる. 定理 11から 2ω0を Xに位相的に埋め込めることができる. 定理 9から 2ω0 と[0,1]ℵ0 とボレル同型なので Xは2ω0 とボレル同型である. ∎

1.2 ジェネトポわかってる人向けの証明

このサブセクションでは 定理 13のジェネトポの知識をふんだんに用いる証明を紹介する.

定理 14.

以下の空間はボレル同型である.

  1. (1)

    カントール集合 2ω0

  2. (2)

    無理数の空間ω0ω0

  3. (3)

    [0,1]ℵ0

  4. (4)

    任意の非可算ポーランド空間X

証明.

カントール・ベンディクソンの定理(定理 11のことを指している)からXに カントール集合2ω0が埋め込める. またウリゾーンの距離化可能定理(定理12)より, Xは[0,1]ℵ0 に埋め込める. よって定理 1を念頭に置くと2ω0と[0,1]ℵ0 がボレル同型であることを示せば良いが, 2ω0とこれの可算直積は同相なので結局 2ω0と[0,1]がボレル同型であることを示せば良い. これを遂行するためにこの二つの空間が無理数の空間 ω0ω0とボレル同型であることを示す. 0次元ウリゾーンの距離化可能定理 (定理 8)より, ω0ω0は2ω0 に位相的に埋め込める.ω0ω0はポーランドなので この埋め込みは双ボレル埋め込みになっている. 再びカントール・ベンディクソン (定理 11のことを指している)よりω0ω0 にはカントール集合2ω0 が位相的に 埋め込めるので 定理 1から2ω0とω0ω0 はボレル同型である. 次に [0,1]とω0ω0が同型であることを示そう. Aを[0,1]のなかの無理数全体とし,Bを[0,1] のなかの有理数全体とする. このとき無理数の空間の位相的特徴づけ(ジェネトポの知識)から Aはω0ω0と同型である.この同相写像をh:A→ω0ω0とする. またω0ω0は可算離散空間を部分空間として含んでいるが, Aに適当に番号をつけてこのω0ω0のなかの可算離散空間に移す写像をr:B→ω0ω0 とする. もちろんBが可算であることからrは双ボレル埋め込みである. そしてω0ω0の2個の 位相的直和がω0ω0であることから以下のような単射写像 F:[0,1]→ω0ω0を構成できる. FはA上では位相的埋め込みであり,A上ではω0ω0の可算離散空間に写像する.さらにF⁢(A)∩F⁢(B)⁢∅である. 具体的にはf:[0,1]→{0}×ω0ω0⊔{1}×ω0ω0 をx∈Aのとき f⁢(x)=(0,h⁢(x))でx∈Bのとき f⁢(x)=(1,r⁢(x)) と定義して{0}×ω0ω0⊔{1}×ω0ω0とω0ω0の適当な同相写像を合成してやれば Fが得られる. このFは双ボレル埋め込みである. またAとω0ω0 が同相なのでω0ω0は[0,1]に位相的に埋め込めて AはGδなので(というかポーランドなので絶対Gδである)この埋め込みは双ボレル でもある. よって 定理 1から[0,1] とω0ω0 はボレル同型である. 以上で証明が終了する. ∎

注意.

以下の事実に注意しよう.

  1. (1)

    位相空間Xが2ω0に同相 であることは Xがコンパクトで距離化可能で,なおかつ孤立点を持たないということと同値である.

  2. (2)

    位相空間Xがω0ω0 と同相であることは Xは孤立点を持たず可分で距離化可能で,そして Xの任意のコンパクト部分集合が内点を持たないことと同値である.

上で述べたボレル同型定理はいわば,ポーランド空間の中の 非可算なGδ集合はどれもボレル同型ということを証明している.実は 一般に濃度が等しいポーランド空間の中のボレル集合はGδ全てボレル同型である.このことはセクション3で証明する. このセクションの次に直ちに セクション3 の内容をやってもいいのだが, 初頭的な知識だけでここまでできるというものをお見せしたいのでこういう構成にしている.

2 確率空間の同型定理

この節では非可算なポーランド空間に乗っかってる確率ボレル測度空間は同型を除いて一意的に定まってしまうことを証明する.

ポーランド空間X上のボレル測度μの 台 supp⁡μ とは包含関係について最大な開かつ零集合の補集合のことである.そのような最大な開集合が一意的に存在することは Xが(遺伝的)リンデレフであることから従う. また,supp⁡μは閉集合であることに注意しよう. supp⁡μ=Xのとき,μ はフルサポートであるという. 一般の距離空間Xとその上の確率ボレル測度μ に関して極大な開零集合が取れることは 可測基数の非存在性 とまあ大体おおよそ同値であるようだ. 詳しくは[12]を参照のこと. このことからXが可分と仮定した方が集合論的困難を考えずに済みそうだ.ただし[12]を読めばわかるがseprability がℵ1 ぐらいだったら極大な開零集合の存在は言えるようである (距離空間のパラコンパクト性を使ったりする). これはℵ1が可測基数ではないという観察に基づいているようである.

以下では零集合といったら測度がゼロでなおかつボレルなものを指す.

補題 15.

Xをポーランド空間とし, μをその上の確率測度とする. このとき任意のボレル集合Aと 任意のϵ∈(0,∞)に対して コンパクト集合Kが存在して K⊂Aと μ⁢(A∖K)<ϵ が成り立つ.

証明.

かもしくは [5, 命題 11]を参照のこと. ∎

(位相空間に乗っかってるとは限らない) 測度空間(X,μ)のアトムAとは, 次の条件を満たす可測集合のことを言う. μ⁢(A)>0でなおかつ 任意の可測集合 B⊂Aは μ⁢(B)=0 かもしくは μ⁢(B)=μ⁢(A) である. 一般にアトムは,極小でも一点集合とは限らないが (counting measureとか)(そもそも一般には一点集合が可測とは限らない), ポーランド空間上の確率ボレル測度だと 一点集合として選びなおせる.

補題 16.

Xをポーランド空間とし,μ をその上の確率ボレル測度とする. そしてボレル集合Aをμのアトムとする. このとき点a∈A が存在してμ⁢(a)=μ⁢(A) となる.

証明.

ポーランド空間の上の完備距離を一つ適当に固定する. ポーランド空間の上のボレル測度は (コンパクト集合を使う方の意味で)内部正則であるため (補題 15) コンパクト集合Kが存在してK⊂A でありμ⁢(K)>0を満たす. このときAがアトムなので μ⁢(A)=μ⁢(K)となる. 帰納的に次のようなコンパクト集合の列{Ki}i∈ℤ≥0 を構成できる.

  1. (1)

    K0=K

  2. (2)

    Ki+1⊂Ki かつμ⁢(Ki)=μ⁢(Ki+1)

  3. (3)

    diam⁡Ki+1≤1/2⁢diam⁡Ki

コンパクト性を使うと構成できます. このとき⋂Ki は一点集合{a}になるが 有限測度の収束公式から μ⁢(a)=limμ⁢(Ki)=μ⁢(A) なのでaが求めるものである. ∎

ポーランド空間X上の確率ボレル測度 μが 連続であるとは任意のx∈X に対してμ⁢({x})=0 となるときにいう.

補題 17.

ポーランド空間上の確率ボレル測度μ は連続なボレル測度 θと高々可算個の重み付きディラック測度の和でかける.

証明.

P={a∈X∣μ⁢({a})>0} とすればμが有限測度だからP は可算集合になるので証明はいける. ∎

測度空間(X,μ)と可測空間 とY,そして可測写像f:X→Y に対してf∗⁢μという記号で以下のように定義されるY 上の測度を表すことにする. f#⁢μ⁢(A)=μ⁢(f−1⁢(A)). この測度をfによる μの押し出し測度と呼ぶ.

補題 18.

(X,μ) を非可算なポーランド空間上の連続な確率ボレル測度空間とする. ボレル同型 f:X→2ω0 が存在してf#⁢μ は連続になる.

証明.

ボレル同型f:X→2ω0 が存在するのでこれを押し出せば良い. ∎

補題 19.

θを 2ω0上の連続確率ボレル測度とする. このとき2ω0の零集合Aと ボレル同型f:2ω0∖A→[0,1] が存在して f#⁢θは[0,1]上の連続でフルサポートな 確率ボレル測度となる.

証明.

K=supp⁡θとする. このときθが連続測度であることからK には孤立点が存在しない. そして2ω0の閉集合なので Kは距離化可能なコンパクト空間である. よってKはカントール集合と同相である. ゆえに 補題はθが フルサポートの場合のみ証明すれば良いので以下ではそのように仮定する. fを カントール集合の元を二進実数として解釈する写像とする. そしてNを十分大きい番号ではずっと0が続く 2ω0の元全体とすると fは 2ω0∖N と [0,1]の間のボレル同型となる. また,fは連続であることに注意しよう. 確率測度f#⁢θ が連続でフルサポートであることを示そう. まずfが単射なので一点を fで引き戻したものは一点になる. よってθの連続性から f#⁢θ も連続になる. また[0,1]の開集合Uを取ると, fの連続性からf−1⁢(U)は2ω0∖N の開集合になる. 測度θはフルサポートなのでf−1⁢(U) はθに関して正の測度を持つ. よってf#⁢θ はフルサポートである. ∎

記号λは[0,1]上のルベーグ測度を表すものとする.

補題 20.

θを[0,1]上のフルサポートな 連続確率測度とする. このとき ボレル同型 g:[0,1]→[0,1] が存在して g#⁢θ=λ となる.

証明.

F:[0,1]→[0,1] を F⁢(t)=θ⁢([0,t]) とするとこれは連続な単調増加関数になる. 今θがフルサポートなので これは狭義単調増加関数になるのでFは同相写像になる. f=F−1とおく. 今からf#⁢λ=θとなることを示そう. 半区間(a,b]を考える. このときf−1⁢((a,b])=(F⁢(a),F⁢(b)] なので

f#⁢λ⁢((a,b])=λ⁢(f−1⁢((a,b]))=λ⁢((F⁢(a),F⁢(b)])=F⁢(b)−F⁢(a)=θ⁢((a,b])

が成り立つ. ゆえに f#⁢λ=θ である. よってg=Fとおけばgはfの逆写像になるので g#⁢θ=λとなる. ∎

定理 21.

Xを非可算なポーランド空間とし, μをその上の連続確率ボレル測度とする. このとき ある(X,μ)の零集合A と([0,1],λ)と ボレル同型 f:X∖A→[0,1] が存在して f#⁢μ=λ である.

証明.

補題 18よりボレル同型 r:X→2ω0によって 押し出された測度r#⁢μ は2ω0上の連続測度である. β=r#⁢μとおく. 補題 19 から (2ω0,β)の 零集合Zとボレル同型w:2ω0∖Z→[0,1] が存在して w#⁢βは[0,1]上でフルサポートになる. 今β=r#⁢μなのでr−1⁢(Z) は(X,μ)の零集合であることに注意しよう. ここでγ=βとおく. そして補題 20から ボレル同型q:[0,1]→[0,1] が存在してq#⁢γ=λ となる.よって A=r−1⁢(Z)で f=q∘w∘rとすれば, f:X∖A→[0,1]はボレル同型だし, f#⁢μ=λとなる. ∎

単位閉区間[0,1] 上の確率ボレル測度ν が 標準測度 であるとは,たかだか可算個の点{pi}i∈S と非負の重みcと{bi}i∈S が存在して ν=c⋅λ+∑i∈Sbi⋅δpi とかける時にいう, ここでδpは点pに台を持つ ディラック測度のことである. もちろんここでc+∑i∈Sbi=1である.

定理 22.

Xを非可算なポーランド空間とし, μをその上の確率測度とする. このとき ある(X,μ)の零集合Aと ある標準測度ν と([0,1],ν) ボレル同型 f:X∖A→[0,1] が存在して f#⁢μ=ν である.

証明.

上で述べたことを組み合わせるとわかる. 補題 17から μは連続な測度θと可算このディラック測度の重み付きの和で書くことができる. そのディラック測度の和の台を P={pi}i∈ω0として Y=X∖Pとするとこれはポーランド空間X のGδ集合になるのでポーランド空間である. 今c=θ⁢(X)として β=1c⁢θという測度を考えると これはY上の連続確率ボレル測度になっている. よって定理 21より (Y,β)零集合Eとボレル同型 g:Y∖E→[0,1] が存在して g#⁢β=λ となる. つまりg#⁢θ=c⁢λ となる. 今[0,1]の濃度がPと同じ集合Qをとる. F=g−1⁢(Q)とすると gは依然としてボレル同型 g:X∖(E∪F)→[0,1]∖Q を与えている. そして適当に全単射h:P→Qをとり, ディラック測度の重み付き和γ=μ−θを hで押し出した測度をρとし, ν=c⁢λ+ρと定義するとこれは 標準測度である. また写像f:X∖(E∪F)→[0,1] を

f⁢(x)={g⁢(x)x∈Y∖(E∪F)⁢;h⁢(x)x∈P

と定義すれば f#⁢(μ)=ν となっている. ∎

注意.

この文章の定理 22 の証明のいいところは 補題 19において 測度のサポートを考えてそれがカントール集合であることを用いる点である.

定理 22の 系として次の同型定理を得る.

定理 23.

(X,μ)と(Y,θ) を二つの非可算ポーランド空間の上の確率空間とする. そしてμとθは連続的とする. このとき (X,μ) と(Y,ν)は 零集合を除いて同型である.

3 ボレル集合のボレル同型

この節ではポーランド空間のボレル集合は濃度が等しければ全部同型であることを証明する. この定理の証明のためには,ポーランド空間の間の ボレル単射は実は余ボレルになることを用いる.これからは ポーランド集合の間の写像の質について調べる.

まずはボレル集合族と完全加法族に関する以下の命題から始める.

命題 24.

Xをポーランド空間 とする. 𝔐はX部分集合族であって, 交わらない可算部分集合族の和集合は𝔐に属し, 可算部分集合族の共通部分は𝔐に属するとする. このとき以下が成り立つ.

  1. (1)

    𝔇={A∈𝔐∣X∖A∈𝔐}とすると,この族の 交わらない可算部分集合族の和集合は𝔇に属し, 可算部分集合族の共通部分は𝔇に属するとする.

  2. (2)

    𝔐がXの開集合を含んでいるとする. このとき 𝔇は完全加法族であり, 𝔅⁢(X)⊂𝔇である. 特に𝔅⁢(X)⊂𝔐 である.

証明.

[(1)の証明]

まず 𝔇が可算部分集合族の共通部分族で閉じていることを証明する. {Ai}i∈ω0を 𝔇の可算個の集合とする. するとAi∈𝔐でもあるし X∖Ai∈𝔐でもある. そして B0=X∖A0, B1=(X∖A1)∩A0, …Bi=(X∖Ai)∩⋂k=0i−1Ak, …, と定義する.これらは互いに素である. 各i∈ω0についてBi∈𝔐である. このとき X∖(⋂i∈ω0Ai)=∐i∈ω0Biであり, ∐i∈ω0Bi∈𝔐である. よって⋂i∈ω0Ai∈𝔇である.

次に𝔇が互いに素な可算集合族の 和集合が𝔇に属することを証明する. {Ai}i∈ω0 を𝔇の互いに交わらない可算部分集合族とする. このときX∖Ai∈𝔐なので 仮定から ⋂i∈ω0(X∖Ai)∈𝔐である. そして X∖(∐i∈ω0Ai)=⋂i∈ω0(X∖Ai) なので よって ∐i∈ω0Ai∈𝔇 である.

[(1)の証明終わり]

[(2)の証明]

最初に𝔇が完全加法族になっていることを示そう.A∈𝔇とする. このとき X∖(X∖A)=A∈𝔐 なのでX∖A∈𝔇である. よって𝔇は完全加法族になっている. 次に𝔅⁢(X)が𝔇の部分集合であることを示す. Xの閉集合は全てGδ集合なので 仮定から 𝔐はXの全ての閉集合を含む. よって 𝔐は Xの全ての開集合と閉集合を含んでいる. よって 𝔇もそうである. 以上のことから 𝔐∩𝔇 は Xの全ての開集合を含み,そして完全加法族になっている. よって 𝔅⁢(X)⊂𝔇 である. また 以上のことから 𝔅⁢(X)⊂𝔐 である.

[(2)の証明の終わり]

以上で証明が終わる. ∎

命題 25.

Xをポーランド空間とする. このとき任意のボレル集合Aに対してポーランド空間Z と連続全単射f:Z→Aが存在する.

証明.

𝔈を Xの部分集合であってポーランド空間からの連続全単射が存在するもの全体とする. 今から 𝔈がXのボレル集合を全て含んでいることを証明する. そのために𝔈が 命題 24の仮定を満たすことを証明する.

まずXの任意の開集合はそれ自身ポーランド空間なので 𝔈 はXの開集合を全て含んでいる.

次に 𝔈の互いに素な可算集合族 {Ai}i∈ω0 を考える. このとき∐iAi∈𝔈 を示そう.

各i∈ω0についてポーランド空間Zi と連続全単射 fi:Zi→Ai をとる.そして写像

F:∐∈ω0Zi→∐i∈ω0Ai

をx∈ZiのときF⁢(x)=fi⁢(x)と定義すると これは連続全単射になる. また直和空間∐i∈ω0Zi もポーランド空間である. よって{Ai}i∈ω0である.

今から 𝔈の 可算部分集合族{Ai}i∈ω0 について考える.各i∈ω0に対して ポーランドZiと連続全単射 fi:Zi→Ai をとる. そして写像

F:∏i∈ω0Zi→Xω0

をF⁢(x)=(fi⁢(xi))i∈ω0と定義する. さて対角線集合

D={(xi)i∈ω0∣任意の⁢i,j∈ω0⁢について⁢xi=xj}

はXω0の閉集合である. Fは連続写像なので 集合A=F−1⁢(D)は ∏i∈ω0Zi の閉集合なのでAはポーランド空間である. そして写像g:A→X をg⁢(x)=f0⁢(x0)とするとgは連続である. するとg⁢(A)は⋂i∈ω0Ai に一致するので ⋂i∈ω0Ai∈𝔈 である. よって𝔈はXの全てのボレル集合族 を含む.よってXのボレル集合はポーランド空間の連続全単射の像になる. ∎

定義 26 (ルジンスキーム).

ω0<ω0によって添字づけられた集合Xの 部分集合族{As}s∈ω0ω0が ルジンスキームであるとは 以下の条件を満たすときにいう.

  1. (1)

    s≤tならば At⊂As;

  2. (2)

    s⟂tならば As∩At=∅.

命題 27.

任意のポーランド空間Xに対して ω0ω0の閉集合Aと連続全単射写像 f:A→X が存在する.

証明.

適当にXと同じ位相を生成する距離関数d でdiam⁡(X)≤1となるものをとる. Xのルジンスキーム{Fs}s∈ω0ω0 であって以下の条件を満たすものを構成する.

  1. (1)

    F∅=X;

  2. (2)

    各FsはXの Fσ集合である;

  3. (3)

    s≤tに対して CL⁡(Ft)⊂Fsが成り立つ;

  4. (4)

    各s∈ω0<ω0に対して diam⁡Fx|n≤2−|s| である;

  5. (5)

    各s∈ω0<ω0に対して Fs=⋃i∈ω0Fs⌢iが成り立つ;

  6. (6)

    s⟂t ならば Fs∩Ft=∅;

s∈ω0<ω0の長さ|s|に関する再帰を以て上で述べた族を構成する. 今|s|≤nとなるs∈ω0<ω0についてはFs が構成されたとし, diam⁡(Fs)≤2−|s|となっているとする. このとき各i∈ω0<ω0についてFs∗iを以下のように定義する. 今FsはFσ集合なので可算個の閉集合Ci が存在してFs=⋃i∈ω0Ci となる.r=2−100⁢(diam⁡(Fs)+2−|s|)と置く (r=2−100⁢diam⁡(Fs)と定義したいところだが,これが0になる可能性もあるのでこのように定義している). Xは可分なので可算個の点piが存在して Fs⊂⋃i∈ω0B⁢(pi,r)となる.族{Ci∩B⁢(pj,r)}(i,j)∈ω02を適当に番号を付け直して{Hi}i∈ω0とする.各Hiは閉集合であり, diam⁡(Hi)≤4−1⁢(diam⁡(Fs)+2−|s|)≤2−|s|−1で Fs=⋃i∈ω0Hiとなる. そして各i∈ω0に対して Fs⌢iを Fs⌢i=Hi∖Hi−1と定義する. ここでH−1=∅と定義している. このときFs∗iはFσであり, 求められていた条件を満たす. ここで,ω0ω0の集合Aを 以下の条件を満たすx全体の集合とする.任意のn∈ω0について Fx|n≠∅となる. 今からAが閉集合であることを証明しよう. x∉Aをとる. このときあるn∈ω0が存在して Fx|n=∅となる. そして任意のy∈Nx|nをとると y|n=x|nなので Fy|n=∅であるから y∉A である.よってAは閉集合である. 条件 (3)と (4)から各点x∈Aについて ⋂i∈ω0Fx|n=⋂i∈ω0CL⁡(Fx|n)であり, この集合は空集合ではなく,一点のみからなる. そしてその一点をf⁢(x)と書くことにする. 今からこの写像f:A→Xが連続全単射であることを証明しよう. 条件(6)からfの単射性がわかる. 条件(5)からfの全射性がわかる. 連続性を示そう.まず

(1) f−1⁢(Fs)=A∩Ns

となる. 任意にXの開集合Uについて 条件(5)からUは適当なI⊂ω0<ω0 が存在してU=⋃s∈IFsとなるので f−1⁢(U)=⋃s∈If−1⁢(Fs)である. 式(1)から各f−1⁢(Fs) はAの開集合であるので, fは連続である. ∎

系 28.

任意のポーランド空間Xに対して 全射連続写像f:ω0ω0→X が存在する.

証明.

ω0ω0の任意の閉集合は全体空間の レトラクトになるので定理は正しい. ∎

注意.

というか一般的に超距離空間の空でない閉集合は 全体空間のレトラクトになっている.

命題 29.

Xをポーランド空間とする.以下が成り立つ.

  1. (1)

    Aを Xのボレル集合とすると ω0ω0 の閉集合Eと連続全単射f:E→A が存在する.

  2. (2)

    Aを Xのボレル集合とすると 連続全射f:ω0ω0→A が存在する.

証明.

命題 25, 27と 系 28 からわかる. ∎

注意.

定理 11 と命題 29 からポーランド空間の非可算なボレル集合は カントール集合を部分空間として含むことがわかり, このことからさらに連続体濃度をもつことがわかる.

ポーランド空間の部分集合が 解析集合 であるとはそれが ポーランド空間の連続像になる時にいう.

ポーランド空間の部分集合AとB がボレル分離可能であるとはあるボレル集合 Cが存在してA⊂Cで C∩B=∅ となるときにいう.

命題 30.

Xをポーランド空間とし, 可算部分集合族 {Ai}i∈ω0と {B}i∈ω0は 各n,m∈ω0について AnとBm はボレル分離可能であるとする. このとき ⋃i∈ω0Ai と ⋃i∈ω0Bi はボレル分離可能である.

証明.

各n,mについて ボレル集合Cn,m が存在してAn⊂Cn,m かつCn,m∩Bm=∅ となる. 今 Dn=⋂m∈ω0Cn,mとする. このとき任意のm∈ω0について Dn∩Bm=∅である. そしてE=⋃n∈ω0Dn とすると ⋃i∈ω0Ai⊂E である. よってEはボレル集合であり, ⋃i∈ω0Ai と⋃i∈ω0Bi はボレル分離可能である. ∎

注意.

命題 30 の証明は正則リンデレフ空間が正規であることの証明とパラレルである.ボレル集合の理論のいいところは 開集合性だとか閉集合性だとかを 崩すような操作も許容される点である.

定理 31 (分離定理).

Xをポーランド空間とし,A, Bを交わらない二つの解析集合とする. このときボレル集合Cが存在して A⊂CとC∩B=∅ を満たす.

証明.

背理法による. 今AとBはボレル分離可能ではない と仮定する. 連続全射f:ω0ω0→A とg:ω0ω0→B をとる. 各s∈ω0<ω0について As=f⁢(Ns)かつ Bs=g⁢(Ns) と定義する. このとき 以下のようなx,y∈ω0ω0 を構成する.

  1. (1)

    任意のn∈ω0 は Ax|nとBy|nは ボレル分離可能ではない.

実際, 命題30から 集合 A=⋃i∈ω0Ai と B=⋃i∈ω0Bi は分離可能ではないのでということから,ある i,jが存在してAiとBj はボレル分離可能ではない. x0=iかつy0=j とすれば良い.帰納的にxとy が構成できる. よってf⁢(x)∈Aかつg⁢(y)∈B である.Xはもちろんハウスドルフなので UとVが存在してf⁢(x)∈U, g⁢(y)∈VかつU∩V=∅ が成り立つ. よってfの連続性から十分大きいnをとると f⁢(Nx|n)⊂U でg⁢(Ny|n)⊂V となる. ゆえにAx|nと By|nはボレル分離可能である. これは矛盾である. ∎

注意.

この分離定理から,ポーランド空間の解析かつ余解析であるような部分 集合はボレル集合になることがわかるが, この文書は教科書ではないので省略する.

命題 32.

Xをポーランド空間とし, {Ai}i∈ω0 を互いに素なXの解析集合の族とする. このとき互いに素なXのボレル集合の族 {Ci}i∈ω0 が存在してAi⊂Ci を満たす.

証明.

定理 31から 異なるn,m∈ω0 についてボレル集合En,mであって An⊂En,mで En,m∩Am=∅ となるものが存在する. このとき Rn=⋂m≠nEn,m とするとこれはボレルであり An⊂Rnでなおかつ n≠mならば Rn∩Am≠∅である. よって Cn=Rn∖⋂m≠nRm とすると{Ci}i∈ω0ω0 が求めるものになっている. ∎

補題 33.

Xをポーランド空間とする. このときXに部分集合Sに関する以下の条件は同値である.

  1. (1)

    あるポーランド空間Wとそのボレル集合Aそして連続写像 f:A→Sであってf⁢(A)=Sであり fはA上で単射であるようなものが存在する.

  2. (2)

    あるポーランド空間Wとそのボレル集合Aそして ボレル写像 f:A→Sであって f⁢(A)=Sであり fはA上で連続となるものが存在する.

証明.

まず(1)から(2)は 連続写像がボレルであることから従う. 逆を示そう. 今W×Xの中の部分集合 G={(s,t)∈W×X∣t=f⁢(s),s∈A} を考える. 写像F:W×X→W×W をF⁢(s,t)=(f⁢(s),t)とする.このときFはボレル写像である. また対角線集合D={(a,a)∣a∈W}は 閉集合なのでF−1⁢(D)はボレル集合である. そしてG=F−1⁢(G)なのでGはボレル集合である. 第二成分への射影p:W×X→Xは連続であり, fがA上で単射なのでpも G上では単射である. そして p⁢(G)=f⁢(X)=Sなので補題は示された. ∎

命題 34.

XとYを ポーランド空間とする. そしてf:X→Y はボレル写像であるとする. Xのボレル集合Aについて fがA上単射であるならf⁢(A) はYのボレル集合になる.

証明.

補題 33からfは連続であるとしても良い. また命題 29 から X=ω0ω0かつAはω0ω0の閉集合としても良い. 各s∈ω0<ω0について Bs=f⁢(A∩Ns)とすると 族{Bs}s∈ω0<ω0 は解析集合からなるルジンスキームである. 命題 32から, ボレル集合族からなるルジンスキーム {Cs}s∈ω0<ω0であって C∅=Yで Bs⊂Csとなるものが存在する. さらに木の深さに関する帰納法で ボレル集合からなる ルジンスキーム{Es}s∈ω0<ω0を以下のように構成する. |s|=0のときは

E∅=Y

とする. |s|=1のときは

Ei=Ci∩CL⁡(Bi)

とする. 一般に|s|=nまで定義されたときs⌢iについては

Es⌢i=Es∩Cs⌢i∩CL⁡(Bs⌢i)

と定義する. これでルジンスキーム{Es}s∈ω0<ω0 が定義できた.これは Bs⊂Esを満たすことに注意しよう. 今から

f⁢(A)=⋂k∈ω0⋃s∈ω0<ω0,|s|=kEs

を証明する.この右辺の集合を Wとする. まず fの単射性から

f⁢(A)=⋂k∈ω0⋃s∈ω0<ω0,|s|=kBs

がわかり,Bs⊂Esなので f⁢(A)⊂Wとなる.

逆の包含関係を示そう. 任意の点 p∈Wをとると, Wの定義から ω0<ω0内の ある列{sn}i∈ω0 であって任意のn∈ω0について 以下の条件を満たすものが存在する.

  1. (1)

    |sn|=n;

  2. (2)

    x∈Esn.

このとき sn≤sn+1 となることを示そう. もしもsn≤sn+1ではないとすると あるm<n が存在してsn⁢(m)≠sn+1⁢(m) となる.ここでu=sn|m+1で v=sn+1|m+1と定義しよう. このとき {Es}s∈ω0<ω0 がルジンスキームであることから, ルジンスキームの定義の最初の条件を使って p∈Euかつp∈Evとなることがわかる. そして二番目の条件を用いると Eu∩Ev=∅なのでこれは矛盾する. よってsn≤sn+1である. 以上のことからx∈ω0ω0 が(一意的に)存在して任意のk∈ω0について p∈Ex|kが成り立つ. このときp∈CL⁡(Bx|k)でもある. すると点列A内の{yi}i∈ω0 が存在して以下を満たす.

  1. (a)

    任意のiについて yi∈Nx|k∩A

  2. (b)

    任意のiについて d⁢(f⁢(yi),p)≤2−iである

条件 (a)より i→∞のとき yi→xとなる. よってx∈Aである. するとfの連続性 と条件 (b) からf⁢(x)=pとなるので p∈f⁢(A)である. つまりf⁢(A)=Wであるので定理は証明された. ∎

注意.

この 命題 34 からボレル埋め込みの定義の余ボレルという条件は過剰であったことがわかる.しかしもちろん,この定理はその過剰な仮定のもとでの理論で証明されている.

定理 35.

XとYを ポーランド空間とし,AとBはそれぞれXとY のボレル集合とする. このときAと Bの濃度が等しければAとBはボレル同型である.

証明.

AとBが可算の場合はどの全単射もボレル同型になるから AとBの濃度が等しく,その濃度が非可算の場合を調べれば良い. 命題 29からω0ω0の閉部分集合 Sと T,および連続全単射 f:S→A とg:T→Bが存在する. 命題 34 よりfとgはボレル同型でもあるので, SとTがボレル同型であることが示れば定理の証明は終わる. さて SとTはそれ自体ポーランド空間で非可算なので 定理13より ボレル同型である.これで証明が終わる. ∎

定理 36.

Xを非可算なポーランド空間とし,μをその上の確率測度とする.このとき標準測度ν とボレル同型f:X→[0,1]が存在して f#⁢μ=νを満たす.

証明.

μが連続の場合に証明すれば良い. 定理 22より Xの零集合Aとボレル同型 h:X∖A→[0,1] が存在して がボレル同型で h#⁢μ=λ となる. ここで[0,1]の非可算な零集合Tをとる. するとS=h−1⁢(T)も非可算な零集合となる. よって h:X∖(A∪S)→[0,1]∖(T)もボレル同型でなおかつ f#⁢μ=λである. さて今, 定理 35を⁢使⁢っ⁢て⁢ボ⁢レ⁢ル⁢同⁢型⁢g:A∪S→Tをとる. そして f:X→[0,1] を

f⁢(x)={h⁢(x)x∈X∖(A∪S)⁢;g⁢(x)A∪S⁢.

と定義するとFはボレル同型で f#⁢μ=λである. ∎

系として次を得る.

系 37.

(X,μ)と(Y,θ) を二つの非可算ポーランド空間の上の確率空間とする. そしてμとθは連続的とする. このとき ボレル同型f:X→Y が存在してf#⁢μ=ν となる.

二点集合上の一様測度の可算直積測度はカントール集合 2ω0上の連続な確率測度となる.この測度をαで表そう.この確率空間は裏と表が平等なコインによる無限コイン投げの空間としてとてもよく使われる. 非可算なポーランド空間上の連続な確率ボレル測度は 全部(2ω0,α)に同型なので この世の(連続)確率測度はまあおおよそ大体無限コイン投げと同じということである.

4 注記:一般の距離空間の上のサポートについて

その昔バナッハが次のような問題, Measure Problemを考えたらしい.

問題.

次の条件を満たす集合Sは存在するか? Sの冪集合𝔓⁢(S)上で定義された(つまり任意の部分集合が可測)連続な確率測度μが存在する. これはSを離散空間とみなしたときに,この空間の上の確率ボレル測度であって連続なものが存在するようなSが存在するかという問題と同等である.

この問題はSの濃度にしか依存しないので, 上の条件を満たす基数は存在するかという話になる. この問題に肯定的な解,つまり上の条件を満たす基数が存在すると,可測基数という巨大な基数が存在するか,もしくは弱到達不能基数の存在が示せる. ちなみに可測基数は到達不能基数になってこれも弱到達不能基数になるのでいずれにせよ弱到達不能基数の存在がわかる. ちなみに弱到達不能基数が存在するとZFCの(集合の)モデルが存在することになるので,ゲーデルの第二不完全性定理から,公理系「ZFC+“Measure Problemが肯定的に成り立つ”」が無矛盾であることは,もはやZFCの無矛盾性を仮定しても証明できないことになる. このような集合論の話の詳細は,webページだと [1]と[2]や, 成書だと[13]や[14]を参照されたい.

また,Measure Problemの解になっているような 基数と確率測度については 補題 15が成り立たず,また 補題 16も成り立たない. つまり一点集合ではないようなアトムが存在し得るし, その場合{0,1}に値をとる連続測度をもつ基数が存在する.

まあそれはさておき,とにかく次のことが知られている.

命題 38.

ω1はMeasure Problemの解にはならない.

この命題の証明はいわゆるウラム行列を用いてなされる. 証明は省略する.

測度のサポートについて 次のことがなりたつ.

補題 39.

Xを距離化可能空間とし,μを有限ボレル測度とする. このとき部分集合 SX,μ={x∈X∣x⁢の任意の開近傍は正の測度を持つ} は可分である.

証明.

Xの距離を適当にdとして, SX,μの 2−nネットをRnとする. Rnはネットなので互いに素な 開集合の族{Ux}x∈Rn が取れる.このときμが有限測度であり, 各Uxは正の測度を持つので Rnは高々可算でなければならない. よって⋃n∈ω0Rn はSX,μの可算部分集合で稠密になる. よってSX,μは可分である. ∎

上で定義したSX,μをサポートと定義したいところだが, μ⁢(SX,μ)=μ⁢(X)となる保証がないのである. ただしXのseparabilityつまりXの稠密部分集合の最小濃度がMeasure Problemの解ではないならば SX,μの補集合が零集合であることが示せる. 実際, E=X∖SX,μは開集合であるような零集合で被覆できるが,Eはパラコンパクトなので, その被覆の細分の可算族{𝒱i}i∈ω0であって, ⋃i𝒱iがEの局所有限な細分で 𝒱iが疎であるようなものが存在する. 各𝒱iは互いに交わらない測度がゼロになる開集合からなり,その濃度はXのseparability以下である. もしも𝒱iの和集合が正の測度を持つならばμから誘導される 𝒱iの濃度上の自然な測度はMeasure Problemの解になっている. よってseparabilityがMeasure Problemの解ではないならば 𝒱iの和集合は零集合であり, Eも零集合になるので測度のサポートが定義できるのである. 特に補題39 からXのseparabilityがℵ1 くらいだったらサポートがちゃんと定義できるというわけである. [12]ではもっといろいろなことが議論されている と思う.

References

  • [1] ミスターコン氏のホームページの記事 「Measure Problemと可測基数」, https://konn-san.com/math/measurable-cardinals.html. (2023年07月08日閲覧)
  • [2] でぃぐ氏のホームページの記事「可測基数ノート」, https://fujidig.github.io/202301-measurable-cardinals/measurable-cardinals.pdf. (2023年07月10日閲覧)
  • [3] はてなブログ電波通信の記事 「直積測度の構成について:確率論その0」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/01/03/011245
  • [4] はてなブログ電波通信の記事 「大数の法則について:確率論その1」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/01/16/233527
  • [5] はてなブログ電波通信の記事 「距離空間上の測度:確率論その2」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2023/06/20/232112.
  • [6] 小谷眞一, 「測度と確率」, 2005 岩波書店.
  • [7] 船木直久, 「確率論」, 講座・数学の考え方 20,2004, 朝倉書店.
  • [8] K. R. Parthasarathy, Probability measures on metric spaces. Academic Press.
  • [9] S. M. Srivastava, A Course on Borel Sets, 1991, vol. 180, GTM, Springer.
  • [10] A. S. Kechris, Classical Descriptive Set Theory, 1991, vol. 156, GTM, Springer.
  • [11] V. I. Bogachev, Measure Theory, volume 2, 2007, Springer.
  • [12] E. Marczewki and R. Sikorski, Measures in non-separable metric space, Colloq. Math. vol. 1 (1948), 133–139.
  • [13] T. Jech, Set Theory, 3rd ed., 2003. Springer.
  • [14] L. Gillman and M. Jerison, Rings of Continuous Functions, The university series in high mathematics, 1960, Springer, reissued as GTM 43, 1973, Springer, reissued in Dover Books on Mathematics, 2008, Dober Publications.

「知識は公共財」