ボレル同型の定理と確率空間の同型定理
この文書ではボレル空間同士の同型, 確率空間同士の同型,そしてボレル集合同士の同型定理を紹介する.
ポーランド空間が絶対であることは証明なしで使う.
以下では とし離散位相が入っているものとする.
と を集合とするとき記号で からへの写像全体の集合を表すとする. この記法はを省略していると考えるとわかりやすいと思う. の有限部分集合を用いて と表される写像についてで でなおかつとなる元全体の集合を表すとする.このとき全体の集合系はに離散位相を導入した場合の の各点収束の位相を生成する. またこの位相はに離散位相を入れて個直積した直積位相と一致する.
記号 はからへの写像全体を表す. この空間に直積位相(写像としてみると各点収束の位相) を入れたものをカントール集合と呼ぶ.
記号はからへの写像全体であり,そして直積位相が入っているとする. この空間はBaire空間とか無理数の空間とか呼ぶ.
記号で, あるを使ってと表すことのできる写像全体を表すとする. ここでである. またこのときこのをで表す. ここでに注意せよ. そしてについて 記号はあるが存在して となることを意味する. そしてはあるについて を意味する. そしてとに対して は写像 で でとなるものを表すとする. はその値を用いて と書かれることもあるのかも.
記号 で,あるを使ってと表すことのできる写像全体を表すとする.ここでである. これはの部分集合である.
1 ボレル空間のボレル同型
この節では非可算なポーランド空間はどれもこれも 互いにボレル同型であることを証明する.
位相空間の開集合から生成される-代数を のボレル集合族と呼び, その元をボレル集合と呼ぶ. 記号という記号でのボレル集合族を表す. 写像 がボレル写像であるとは 任意の に対して となることである. また, 写像 が余ボレル写像であるとは任意の に対して となることをいう. 写像がボレルかつ余ボレルであるとき 双ボレルであるという. 双ボレルな単射を双ボレル埋め込みと呼ぶ. 写像 は全単射でなおかつ双ボレルであるとき ボレル同型写像であるといい, とは ボレル同型であるという.
集合に対して での冪集合,つまりの部分集合全体を表すことにする.
この文書においては 以下の定理を用いてボレル同型を構成する.
定理 1 (双ボレル埋め込みに関するベルンシュタインの定理).
とをポーランド空間とし, とを双ボレルな単射写像とする. このときボレル同型 が存在する.
証明.
証明は通常のベルンシュタインの定理と全く同じである. それがどのようなものであったのか思い出そう. 写像 を とする.このには不動点,すなわち となる が存在すること,そしてそれがボレル集合として選べることを示そう. 各集合を以下のように帰納的に 構成する. であり,一般にと定義する. そして と定義する.このときと が共に単射であることから となることがわかるのではの不動点である. またとが共に双ボレルであることから はのボレル集合であることに注意しよう. 写像の定義から
つまり
であり,
である. よって写像を
でと定義するとこれは全単射になっている. またがボレルでと が双ボレルなのでも双ボレルであり, 全単射なのではボレル同型である. ∎
1.1 可能な限り初等的な証明
この節ではボレル同型定理の可能な限り初等的な証明を与える.
定理 2.
位相的埋め込み が存在する.はコンパクトなので, この埋め込みには双ボレル埋め込みにもなっている.
証明.
写像 を に対して
と定義する. はコンパクトなのでが単射で連続であることを示せば位相的埋め込みであることがわかる. まず単射性を見よう. 異なる二つの元をとる. そしてをならば で となるものとする. このとき
である. なのでである. よって
となる. ここで
を上から評価しよう. 各と はかのどちらかの値しか取らないので である.よって
よって
よって となるから単射である. 次に連続性を見よう. とし, を任意にとる. そしてとする. このとき
となる. 任意のに対して となるようにをとれば が連続になることがわかる. ∎
定理 3.
双ボレル埋め込み が存在する.
証明.
に対して をとの列での 2進数としての表示の係数を表すことにする. ただし二通りの表し方がある場合にはが無限に現れるものを採用する. まず をに対して を対応させる関数とする. このときは連続である. さらに である. よって は単射である. 写像 が双ボレルであることを示そう. ここでが二進有理数ならは二点であり そうでないならばは一点になる. このことからの任意の閉集合について は閉集合であり 可算集合が存在して となる. よって からを 引き戻して を得る. よって である. 写像は単射なので なのではボレル写像である. さらに のコンパクト空間に対して可算集合が存在して となる. よってが余ボレルであることがわかる. 以上のことからは双ボレルであることがわかる.
多分コンパクトだとか双ボレルだとか適当な条件つけて, 全射写像 がの可算個の点除いたらが単射で除いた可算個の各店についてによる引き戻しがたかだか可算だったらからへの双ボレル埋め込みが存在するというような定理があると思う.おそらくこれはKuratwski–Ryll-Nardzewski の選択子定理の雛形なのではないかと思う. ∎
系 4.
二つの空間 と はボレル同型である.
定理 5.
双ボレル埋め込み が存在する.
証明.
をに埋め込む写像から誘導される 単射が位相的埋め込みになっている. はコンパクトなのでこの埋め込みは双ボレルでもある. ∎
定理 6.
双ボレル埋め込み が存在する.
証明.
は と同相なので を に位相的に埋め込むことを考える. に対して を以下のように定義する.
そして を これは単射であり, 連続でもある. この写像が何なのか説明しよう. この写像は の第行に個のを列目から連続して書き込んだ元であり,それ以降はずっとになっているものである.
位相的埋め込みであることを示すために がに収束したとしよう. とし, と定義する. 写像 をと定義し, とする. このは をの近傍であり, その元は の範囲での成分と一致している ようなもの全体である. このとき 十分大きい番号で, でありとの定義から との第成分は一致しているので とが近いことがわかる. よってのとき となる. よっては位相的埋め込みである. これも少し説明しよう.は とがの意味で近ければ, はの第行の初めてが現れる 列まで一致している.の定義からして, 初めてが現れる列まで一致していると,第列のの個数を数えて となることがわかるので とはの直積位相で近いということがわかる.
が双ボレル埋め込みであることは がポーランドであり,ゆえに絶対 であることからわかる.
ところで,無理数の空間の位相的特徴付けを知っていれば, から可算稠密部分集合を取り除くとそれはに同相であることがわかる. ∎
系 7.
と はボレル同型である.
から への埋め込みは次の一般的な定理からもわかる.
定理 8 (“次元ウリゾーンの距離化可能定理”).
を可分距離空間とし,なおかつ次元, つまりクロープンな集合からなる開基をもつとする. このときはに埋め込み可能である.
証明.
をのクロープンな集合からなる開基であるとする. そしてを の特製関数とする.つまりのときでそれ以外の時とする. そして を とするとこれは位相的埋め込みになっている. ∎
定理 9.
以下の空間はボレル同型である.
-
(1)
実数直線
-
(2)
単位閉区間
-
(3)
単位開区間
-
(4)
無理数の空間,あるいはベール空間
-
(5)
カントール集合
-
(6)
ヒルベルト立方体
-
(7)
なんかでかい空間
証明.
今から 定理 9の更なる拡張, つまり非可算なポーランド空間が全て同型であるということを証明を目指す.
位相空間が完全であるとは孤立点を持たないことである.
定理 10 (カントール・ベンディクソンの定理).
任意のポーランド空間について, を有限か可算集合になるような開近傍を持つの点全体とする.このときは開集合でなおかつ可算集合になる. そして は完全集合になる.
証明.
の各点 についてをの可算な開近傍とする. このときである. この式からが開集合であることがわかる. 今がポーランドであることから特に可分であることがわかる.よってその部分空間であるも可分である. ゆえにはリンデレフである. なのでから可算個の元を選んでを被覆するようにできる.各は可算集合なのでは可算集合である.最後に が完全集合であることを示そう. 任意の点 を取ると任意のの開近傍については非可算なのでは孤立点ではない. よって は完全集合である. ∎
定理 11.
を非可算なポーランド空間とする. このとき位相的埋め込み が存在する.
証明.
定理 10 よりを最初から完全集合であると仮定しても一般性を失わない. 以下ではには完備な距離 が備わっているとする. カントールツリー によって添字づけられた族 で以下を満たすものを構成する.
-
(1)
各はの非可算集合で閉な完全集合
-
(2)
ならば;
-
(3)
またはならば;
-
(4)
任意の について
今からこのような族を構成していく. まずに対しては 適当にをとって と定義する. 次にに対して が構成されたとして と を構成する. 今は完全集合で非可算なので 適当に二点 と十分小さい をとって とすれば条件は満たされる. さて, 今とすると なので の完備性から は一点集合となる.これを とし,写像 を考えるとこれは連続で単射になっている. はコンパクトなので は位相的埋め込みになっている. ∎
定理 12 (“ウリゾーンの距離化可能定理”).
を可分な距離化可能空間とする. このとき位相的埋め込み が存在する. さらにがポーランドであるならば は双ボレル埋め込みでもある.
証明.
証明を思い出すと埋め込みはわかる. 後半はポーランド空間が絶対 であることからわかる. ∎
定理 13.
任意の二つの非可算なポーランド空間はボレル同型である. つまり任意のポーランド空間は とも同型だし,とも同型である.
1.2 ジェネトポわかってる人向けの証明
このサブセクションでは 定理 13のジェネトポの知識をふんだんに用いる証明を紹介する.
定理 14.
以下の空間はボレル同型である.
-
(1)
カントール集合
-
(2)
無理数の空間
-
(3)
-
(4)
任意の非可算ポーランド空間
証明.
カントール・ベンディクソンの定理(定理 11のことを指している)からに カントール集合が埋め込める. またウリゾーンの距離化可能定理(定理12)より, は に埋め込める. よって定理 1を念頭に置くとと がボレル同型であることを示せば良いが, とこれの可算直積は同相なので結局 とがボレル同型であることを示せば良い. これを遂行するためにこの二つの空間が無理数の空間 とボレル同型であることを示す. 0次元ウリゾーンの距離化可能定理 (定理 8)より, は に位相的に埋め込める.はポーランドなので この埋め込みは双ボレル埋め込みになっている. 再びカントール・ベンディクソン (定理 11のことを指している)より にはカントール集合 が位相的に 埋め込めるので 定理 1からと はボレル同型である. 次に とが同型であることを示そう. をのなかの無理数全体とし,を のなかの有理数全体とする. このとき無理数の空間の位相的特徴づけ(ジェネトポの知識)から はと同型である.この同相写像をとする. または可算離散空間を部分空間として含んでいるが, に適当に番号をつけてこののなかの可算離散空間に移す写像を とする. もちろんが可算であることからは双ボレル埋め込みである. そしての2個の 位相的直和がであることから以下のような単射写像 を構成できる. は上では位相的埋め込みであり,上ではの可算離散空間に写像する.さらにである. 具体的には をのとき でのとき と定義してとの適当な同相写像を合成してやれば が得られる. このは双ボレル埋め込みである. またと が同相なのではに位相的に埋め込めて はなので(というかポーランドなので絶対である)この埋め込みは双ボレル でもある. よって 定理 1から と はボレル同型である. 以上で証明が終了する. ∎
注意.
以下の事実に注意しよう.
-
(1)
位相空間がに同相 であることは がコンパクトで距離化可能で,なおかつ孤立点を持たないということと同値である.
-
(2)
位相空間が と同相であることは は孤立点を持たず可分で距離化可能で,そして の任意のコンパクト部分集合が内点を持たないことと同値である.
2 確率空間の同型定理
この節では非可算なポーランド空間に乗っかってる確率ボレル測度空間は同型を除いて一意的に定まってしまうことを証明する.
ポーランド空間上のボレル測度の 台 とは包含関係について最大な開かつ零集合の補集合のことである.そのような最大な開集合が一意的に存在することは が(遺伝的)リンデレフであることから従う. また,は閉集合であることに注意しよう. のとき, はフルサポートであるという. 一般の距離空間とその上の確率ボレル測度 に関して極大な開零集合が取れることは 可測基数の非存在性 とまあ大体おおよそ同値であるようだ. 詳しくは[12]を参照のこと. このことからが可分と仮定した方が集合論的困難を考えずに済みそうだ.ただし[12]を読めばわかるがseprability が ぐらいだったら極大な開零集合の存在は言えるようである (距離空間のパラコンパクト性を使ったりする). これはが可測基数ではないという観察に基づいているようである.
以下では零集合といったら測度がゼロでなおかつボレルなものを指す.
補題 15.
をポーランド空間とし, をその上の確率測度とする. このとき任意のボレル集合と 任意のに対して コンパクト集合が存在して と が成り立つ.
証明.
かもしくは [5, 命題 11]を参照のこと. ∎
(位相空間に乗っかってるとは限らない) 測度空間のアトムとは, 次の条件を満たす可測集合のことを言う. でなおかつ 任意の可測集合 は かもしくは である. 一般にアトムは,極小でも一点集合とは限らないが (counting measureとか)(そもそも一般には一点集合が可測とは限らない), ポーランド空間上の確率ボレル測度だと 一点集合として選びなおせる.
補題 16.
をポーランド空間とし, をその上の確率ボレル測度とする. そしてボレル集合をのアトムとする. このとき点 が存在して となる.
証明.
ポーランド空間の上の完備距離を一つ適当に固定する. ポーランド空間の上のボレル測度は (コンパクト集合を使う方の意味で)内部正則であるため (補題 15) コンパクト集合が存在して でありを満たす. このときがアトムなので となる. 帰納的に次のようなコンパクト集合の列 を構成できる.
-
(1)
-
(2)
かつ
-
(3)
コンパクト性を使うと構成できます. このとき は一点集合になるが 有限測度の収束公式から なのでが求めるものである. ∎
ポーランド空間上の確率ボレル測度 が 連続であるとは任意の に対して となるときにいう.
補題 17.
ポーランド空間上の確率ボレル測度 は連続なボレル測度 と高々可算個の重み付きディラック測度の和でかける.
証明.
とすればが有限測度だから は可算集合になるので証明はいける. ∎
測度空間と可測空間 と,そして可測写像 に対してという記号で以下のように定義される 上の測度を表すことにする. . この測度をによる の押し出し測度と呼ぶ.
補題 18.
を非可算なポーランド空間上の連続な確率ボレル測度空間とする. ボレル同型 が存在して は連続になる.
証明.
ボレル同型 が存在するのでこれを押し出せば良い. ∎
補題 19.
を 上の連続確率ボレル測度とする. このときの零集合と ボレル同型 が存在して は上の連続でフルサポートな 確率ボレル測度となる.
証明.
とする. このときが連続測度であることから には孤立点が存在しない. そしての閉集合なので は距離化可能なコンパクト空間である. よってはカントール集合と同相である. ゆえに 補題はが フルサポートの場合のみ証明すれば良いので以下ではそのように仮定する. を カントール集合の元を二進実数として解釈する写像とする. そしてを十分大きい番号ではずっとが続く の元全体とすると は と の間のボレル同型となる. また,は連続であることに注意しよう. 確率測度 が連続でフルサポートであることを示そう. まずが単射なので一点を で引き戻したものは一点になる. よっての連続性から も連続になる. またの開集合を取ると, の連続性からは の開集合になる. 測度はフルサポートなので はに関して正の測度を持つ. よって はフルサポートである. ∎
記号は上のルベーグ測度を表すものとする.
補題 20.
を上のフルサポートな 連続確率測度とする. このとき ボレル同型 が存在して となる.
証明.
を とするとこれは連続な単調増加関数になる. 今がフルサポートなので これは狭義単調増加関数になるのでは同相写像になる. とおく. 今からとなることを示そう. 半区間を考える. このとき なので
が成り立つ. ゆえに である. よってとおけばはの逆写像になるので となる. ∎
定理 21.
を非可算なポーランド空間とし, をその上の連続確率ボレル測度とする. このとき あるの零集合 とと ボレル同型 が存在して である.
証明.
単位閉区間 上の確率ボレル測度 が 標準測度 であるとは,たかだか可算個の点 と非負の重みと が存在して とかける時にいう, ここでは点に台を持つ ディラック測度のことである. もちろんここでである.
定理 22.
を非可算なポーランド空間とし, をその上の確率測度とする. このとき あるの零集合と ある標準測度 と ボレル同型 が存在して である.
証明.
上で述べたことを組み合わせるとわかる. 補題 17から は連続な測度と可算このディラック測度の重み付きの和で書くことができる. そのディラック測度の和の台を として とするとこれはポーランド空間 の集合になるのでポーランド空間である. 今として という測度を考えると これは上の連続確率ボレル測度になっている. よって定理 21より 零集合とボレル同型 が存在して となる. つまり となる. 今の濃度がと同じ集合をとる. とすると は依然としてボレル同型 を与えている. そして適当に全単射をとり, ディラック測度の重み付き和を で押し出した測度をとし, と定義するとこれは 標準測度である. また写像 を
と定義すれば となっている. ∎
定理 22の 系として次の同型定理を得る.
定理 23.
と を二つの非可算ポーランド空間の上の確率空間とする. そしてとは連続的とする. このとき とは 零集合を除いて同型である.
3 ボレル集合のボレル同型
この節ではポーランド空間のボレル集合は濃度が等しければ全部同型であることを証明する. この定理の証明のためには,ポーランド空間の間の ボレル単射は実は余ボレルになることを用いる.これからは ポーランド集合の間の写像の質について調べる.
まずはボレル集合族と完全加法族に関する以下の命題から始める.
命題 24.
をポーランド空間 とする. は部分集合族であって, 交わらない可算部分集合族の和集合はに属し, 可算部分集合族の共通部分はに属するとする. このとき以下が成り立つ.
-
(1)
とすると,この族の 交わらない可算部分集合族の和集合はに属し, 可算部分集合族の共通部分はに属するとする.
-
(2)
がの開集合を含んでいるとする. このとき は完全加法族であり, である. 特に である.
証明.
[(1)の証明]
まず が可算部分集合族の共通部分族で閉じていることを証明する. を の可算個の集合とする. するとでもあるし でもある. そして , , …, …, と定義する.これらは互いに素である. 各についてである. このとき であり, である. よってである.
次にが互いに素な可算集合族の 和集合がに属することを証明する. をの互いに交わらない可算部分集合族とする. このときなので 仮定から である. そして なので よって である.
[(1)の証明終わり]
[(2)の証明]
最初にが完全加法族になっていることを示そう.とする. このとき なのでである. よっては完全加法族になっている. 次にがの部分集合であることを示す. の閉集合は全て集合なので 仮定から はの全ての閉集合を含む. よって は の全ての開集合と閉集合を含んでいる. よって もそうである. 以上のことから は の全ての開集合を含み,そして完全加法族になっている. よって である. また 以上のことから である.
[(2)の証明の終わり]
以上で証明が終わる. ∎
命題 25.
をポーランド空間とする. このとき任意のボレル集合に対してポーランド空間 と連続全単射が存在する.
証明.
を の部分集合であってポーランド空間からの連続全単射が存在するもの全体とする. 今から がのボレル集合を全て含んでいることを証明する. そのためにが 命題 24の仮定を満たすことを証明する.
まずの任意の開集合はそれ自身ポーランド空間なので はの開集合を全て含んでいる.
次に の互いに素な可算集合族 を考える. このとき を示そう.
各についてポーランド空間 と連続全単射 をとる.そして写像
をのときと定義すると これは連続全単射になる. また直和空間 もポーランド空間である. よってである.
今から の 可算部分集合族 について考える.各に対して ポーランドと連続全単射 をとる. そして写像
をと定義する. さて対角線集合
はの閉集合である. は連続写像なので 集合は の閉集合なのではポーランド空間である. そして写像 をとするとは連続である. するとは に一致するので である. よってはの全てのボレル集合族 を含む.よってのボレル集合はポーランド空間の連続全単射の像になる. ∎
定義 26 (ルジンスキーム).
によって添字づけられた集合の 部分集合族が ルジンスキームであるとは 以下の条件を満たすときにいう.
-
(1)
ならば ;
-
(2)
ならば .
命題 27.
任意のポーランド空間に対して の閉集合と連続全単射写像 が存在する.
証明.
適当にと同じ位相を生成する距離関数 でとなるものをとる. のルジンスキーム であって以下の条件を満たすものを構成する.
-
(1)
;
-
(2)
各はの 集合である;
-
(3)
に対して が成り立つ;
-
(4)
各に対して である;
-
(5)
各に対して が成り立つ;
-
(6)
ならば ;
の長さに関する再帰を以て上で述べた族を構成する. 今となるについては が構成されたとし, となっているとする. このとき各についてを以下のように定義する. 今は集合なので可算個の閉集合 が存在して となる.と置く (と定義したいところだが,これがになる可能性もあるのでこのように定義している). は可分なので可算個の点が存在して となる.族を適当に番号を付け直してとする.各は閉集合であり, で となる. そして各に対して を と定義する. ここでと定義している. このときはであり, 求められていた条件を満たす. ここで,の集合を 以下の条件を満たす全体の集合とする.任意のについて となる. 今からが閉集合であることを証明しよう. をとる. このときあるが存在して となる. そして任意のをとると なので であるから である.よっては閉集合である. 条件 (3)と (4)から各点について であり, この集合は空集合ではなく,一点のみからなる. そしてその一点をと書くことにする. 今からこの写像が連続全単射であることを証明しよう. 条件(6)からの単射性がわかる. 条件(5)からの全射性がわかる. 連続性を示そう.まず
| (1) |
となる. 任意にの開集合について 条件(5)からは適当な が存在してとなるので である. 式(1)から各 はの開集合であるので, は連続である. ∎
系 28.
任意のポーランド空間に対して 全射連続写像 が存在する.
証明.
の任意の閉集合は全体空間の レトラクトになるので定理は正しい. ∎
注意.
というか一般的に超距離空間の空でない閉集合は 全体空間のレトラクトになっている.
命題 29.
をポーランド空間とする.以下が成り立つ.
-
(1)
を のボレル集合とすると の閉集合と連続全単射 が存在する.
-
(2)
を のボレル集合とすると 連続全射 が存在する.
ポーランド空間の部分集合が 解析集合 であるとはそれが ポーランド空間の連続像になる時にいう.
ポーランド空間の部分集合と がボレル分離可能であるとはあるボレル集合 が存在してで となるときにいう.
命題 30.
をポーランド空間とし, 可算部分集合族 と は 各について と はボレル分離可能であるとする. このとき と はボレル分離可能である.
証明.
各について ボレル集合 が存在して かつ となる. 今 とする. このとき任意のについて である. そして とすると である. よってはボレル集合であり, と はボレル分離可能である. ∎
注意.
命題 30 の証明は正則リンデレフ空間が正規であることの証明とパラレルである.ボレル集合の理論のいいところは 開集合性だとか閉集合性だとかを 崩すような操作も許容される点である.
定理 31 (分離定理).
をポーランド空間とし,, を交わらない二つの解析集合とする. このときボレル集合が存在して と を満たす.
証明.
背理法による. 今とはボレル分離可能ではない と仮定する. 連続全射 と をとる. 各について かつ と定義する. このとき 以下のような を構成する.
-
(1)
任意の は とは ボレル分離可能ではない.
実際, 命題30から 集合 と は分離可能ではないのでということから,ある が存在してと はボレル分離可能ではない. かつ とすれば良い.帰納的にと が構成できる. よってかつ である.はもちろんハウスドルフなので とが存在して, かつ が成り立つ. よっての連続性から十分大きいをとると で となる. ゆえにと はボレル分離可能である. これは矛盾である. ∎
注意.
この分離定理から,ポーランド空間の解析かつ余解析であるような部分 集合はボレル集合になることがわかるが, この文書は教科書ではないので省略する.
命題 32.
をポーランド空間とし, を互いに素なの解析集合の族とする. このとき互いに素なのボレル集合の族 が存在して を満たす.
証明.
定理 31から 異なる についてボレル集合であって で となるものが存在する. このとき とするとこれはボレルであり でなおかつ ならば である. よって とすると が求めるものになっている. ∎
補題 33.
をポーランド空間とする. このときに部分集合に関する以下の条件は同値である.
-
(1)
あるポーランド空間とそのボレル集合そして連続写像 であってであり は上で単射であるようなものが存在する.
-
(2)
あるポーランド空間とそのボレル集合そして ボレル写像 であって であり は上で連続となるものが存在する.
証明.
命題 34.
とを ポーランド空間とする. そして はボレル写像であるとする. のボレル集合について が上単射であるなら はのボレル集合になる.
証明.
補題 33からは連続であるとしても良い. また命題 29 から かつはの閉集合としても良い. 各について とすると 族 は解析集合からなるルジンスキームである. 命題 32から, ボレル集合族からなるルジンスキーム であって で となるものが存在する. さらに木の深さに関する帰納法で ボレル集合からなる ルジンスキームを以下のように構成する. のときは
とする. のときは
とする. 一般にまで定義されたときについては
と定義する. これでルジンスキーム が定義できた.これは を満たすことに注意しよう. 今から
を証明する.この右辺の集合を とする. まず の単射性から
がわかり,なので となる.
逆の包含関係を示そう. 任意の点 をとると, の定義から 内の ある列 であって任意のについて 以下の条件を満たすものが存在する.
-
(1)
;
-
(2)
.
このとき となることを示そう. もしもではないとすると ある が存在して となる.ここでで と定義しよう. このとき がルジンスキームであることから, ルジンスキームの定義の最初の条件を使って かつとなることがわかる. そして二番目の条件を用いると なのでこれは矛盾する. よってである. 以上のことから が(一意的に)存在して任意のについて が成り立つ. このときでもある. すると点列内の が存在して以下を満たす.
-
(a)
任意のについて
-
(b)
任意のについて である
条件 (a)より のとき となる. よってである. するとの連続性 と条件 (b) からとなるので である. つまりであるので定理は証明された. ∎
注意.
この 命題 34 からボレル埋め込みの定義の余ボレルという条件は過剰であったことがわかる.しかしもちろん,この定理はその過剰な仮定のもとでの理論で証明されている.
定理 35.
とを ポーランド空間とし,とはそれぞれと のボレル集合とする. このときと の濃度が等しければとはボレル同型である.
証明.
定理 36.
を非可算なポーランド空間とし,をその上の確率測度とする.このとき標準測度 とボレル同型が存在して を満たす.
証明.
系として次を得る.
系 37.
と を二つの非可算ポーランド空間の上の確率空間とする. そしてとは連続的とする. このとき ボレル同型 が存在して となる.
二点集合上の一様測度の可算直積測度はカントール集合 上の連続な確率測度となる.この測度をで表そう.この確率空間は裏と表が平等なコインによる無限コイン投げの空間としてとてもよく使われる. 非可算なポーランド空間上の連続な確率ボレル測度は 全部に同型なので この世の(連続)確率測度はまあおおよそ大体無限コイン投げと同じということである.
4 注記:一般の距離空間の上のサポートについて
その昔バナッハが次のような問題, Measure Problemを考えたらしい.
問題.
次の条件を満たす集合は存在するか? の冪集合上で定義された(つまり任意の部分集合が可測)連続な確率測度が存在する. これはを離散空間とみなしたときに,この空間の上の確率ボレル測度であって連続なものが存在するようなが存在するかという問題と同等である.
この問題はの濃度にしか依存しないので, 上の条件を満たす基数は存在するかという話になる. この問題に肯定的な解,つまり上の条件を満たす基数が存在すると,可測基数という巨大な基数が存在するか,もしくは弱到達不能基数の存在が示せる. ちなみに可測基数は到達不能基数になってこれも弱到達不能基数になるのでいずれにせよ弱到達不能基数の存在がわかる. ちなみに弱到達不能基数が存在するとZFCの(集合の)モデルが存在することになるので,ゲーデルの第二不完全性定理から,公理系「ZFC+“Measure Problemが肯定的に成り立つ”」が無矛盾であることは,もはやZFCの無矛盾性を仮定しても証明できないことになる. このような集合論の話の詳細は,webページだと [1]と[2]や, 成書だと[13]や[14]を参照されたい.
また,Measure Problemの解になっているような 基数と確率測度については 補題 15が成り立たず,また 補題 16も成り立たない. つまり一点集合ではないようなアトムが存在し得るし, その場合に値をとる連続測度をもつ基数が存在する.
まあそれはさておき,とにかく次のことが知られている.
命題 38.
はMeasure Problemの解にはならない.
この命題の証明はいわゆるウラム行列を用いてなされる. 証明は省略する.
測度のサポートについて 次のことがなりたつ.
補題 39.
を距離化可能空間とし,を有限ボレル測度とする. このとき部分集合 は可分である.
証明.
の距離を適当にとして, の ネットをとする. はネットなので互いに素な 開集合の族 が取れる.このときが有限測度であり, 各は正の測度を持つので は高々可算でなければならない. よって はの可算部分集合で稠密になる. よっては可分である. ∎
上で定義したをサポートと定義したいところだが, となる保証がないのである. ただしのseparabilityつまりの稠密部分集合の最小濃度がMeasure Problemの解ではないならば の補集合が零集合であることが示せる. 実際, は開集合であるような零集合で被覆できるが,はパラコンパクトなので, その被覆の細分の可算族であって, がの局所有限な細分で が疎であるようなものが存在する. 各は互いに交わらない測度がゼロになる開集合からなり,その濃度はのseparability以下である. もしもの和集合が正の測度を持つならばから誘導される の濃度上の自然な測度はMeasure Problemの解になっている. よってseparabilityがMeasure Problemの解ではないならば の和集合は零集合であり, も零集合になるので測度のサポートが定義できるのである. 特に補題39 からのseparabilityが くらいだったらサポートがちゃんと定義できるというわけである. [12]ではもっといろいろなことが議論されている と思う.
References
- [1] ミスターコン氏のホームページの記事 「Measure Problemと可測基数」, https://konn-san.com/math/measurable-cardinals.html. (2023年07月08日閲覧)
- [2] でぃぐ氏のホームページの記事「可測基数ノート」, https://fujidig.github.io/202301-measurable-cardinals/measurable-cardinals.pdf. (2023年07月10日閲覧)
- [3] はてなブログ電波通信の記事 「直積測度の構成について:確率論その0」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/01/03/011245
- [4] はてなブログ電波通信の記事 「大数の法則について:確率論その1」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/01/16/233527
- [5] はてなブログ電波通信の記事 「距離空間上の測度:確率論その2」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2023/06/20/232112.
- [6] 小谷眞一, 「測度と確率」, 2005 岩波書店.
- [7] 船木直久, 「確率論」, 講座・数学の考え方 20,2004, 朝倉書店.
- [8] K. R. Parthasarathy, Probability measures on metric spaces. Academic Press.
- [9] S. M. Srivastava, A Course on Borel Sets, 1991, vol. 180, GTM, Springer.
- [10] A. S. Kechris, Classical Descriptive Set Theory, 1991, vol. 156, GTM, Springer.
- [11] V. I. Bogachev, Measure Theory, volume 2, 2007, Springer.
- [12] E. Marczewki and R. Sikorski, Measures in non-separable metric space, Colloq. Math. vol. 1 (1948), 133–139.
- [13] T. Jech, Set Theory, 3rd ed., 2003. Springer.
- [14] L. Gillman and M. Jerison, Rings of Continuous Functions, The university series in high mathematics, 1960, Springer, reissued as GTM 43, 1973, Springer, reissued in Dover Books on Mathematics, 2008, Dober Publications.
「知識は公共財」