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平方剰余の相互法則

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では 平方剰余の補充則と 相互法則の可能な限り代数的な証明を 紹介する.

まず最初に で

a≡bmodp

という式を入力するのがとても面倒だと思ったので, この文章では,この式を

a=pb

と書くことにする. x∈ℤと素数pに対して x=pa2となる aが存在する時xをpの平方剰余という. 平方剰余でない数を平方非剰余と呼ぶ.

可換環Rに対してR×で, Rの可逆元全体からなる群を表す.

素数pに対して 𝔽pでℤ/p⁢ℤを表す. 商写像 ℤ→𝔽pを πpで表す. 𝔽pは標数がpの体のになる. また𝔽p×は巡回群になる. この巡回群の生成元をpの原始根という.

写像 s:𝔽p×→𝔽p×を s⁢(x)=x2で定義する. 𝔽p×は可換なので, fは準同型になる. よって特にs⁢(𝔽p×) は𝔽p×の部分群になる. この群をSpと書くことにする. 乗法群 𝔽p×は可換なので もちろん Sは正規部分群である. p≠2 ならば, 体の一般論から a∈𝔽pに対して x2=a となる x∈𝔽p はちょうど2つあるので, S の位数は (p−1)/2である. よって p≠2のとき, 剰余群 𝔽p×/Sp は位数が2の 群になる. 位数が2の群は全て同型なので, 同型写像 ep:𝔽p×/Sp→{1,−1} をとる. このとき a∈ℤ に対してルジャンドル記号を (a|p):=ep∘s∘πp⁢(a) と定義する. (ap) は (a|p) と同じ意味であると約束する. ルジャンドル記号は次のように明示できる.

(ap)={1a⁢は⁢p⁢の平方剰余,−1a⁢は⁢p⁢の平方非剰余.

つまり平方剰余が 1であるか−1であるかに応じて平方剰余かそうでないかがわかる.

定義から次のことがわかる.

命題 1.

任意のa∈ℤに対して,

(ap)=(a+pp)=(a−pp)

が成り立つ.

今からルジャンドル記号の計算方法を説明してゆく. まず次のオイラーの基準が基本的である.

命題 2.

pを奇素数とする. このとき任意の a∈ℤに対して

(ap)=pap−12

が成り立つ.

証明.

最初に注意するが, pが奇数なので p−12は整数である. まずフェルマーの小定理から任意の x∈𝔽p×に対して

xp−1=1

が成り立つ. つまり任意の a∈𝔽p× は多項式 xp−1−1 の根になっている. さらに

(1) xp−1−1=(xp−12−1)⁢(xp−12+1)

と因数分解できる. さてSp={y2∣y∈𝔽p×} でに注意すると 任意のx∈Spに対して x=y2となるy∈𝔽pが存在する. 再びフェルマーの小定理から xp−12=yp−1=1なので, xp−12−1=0である. 体の一般論から多項式 xp−12−1の根は高々p−12個であり card⁡(Sp)=p−12なので

(2) Sp={x∣xp−12−1=0}

である. 任意のx∈𝔽p∖Spは平方非剰余の剰余類だが, xp−1−1=0を満たすということと 式(1), (2)から, xp−12+1=0 を満たさなければならない.(体には零因子は0しかない.) よってオイラーの基準が示された. ∎

このオイラーの基準を使って直ちに平方剰余の相互法則の第一補充則がわかる.

命題 3.

奇素数pと整数について,

(−1p)=(−1)p−12

が成り立つ.

証明.

オイラーの基準から, (a|p)=p(−1)p−12 である. この両辺は 1か −1の値しか取らず, またpが奇素数であることから 2≠p0なので実際の等式として (a|p)=(−1)p−12を得る. ∎

平方剰余の相互法則の第二補充則は次のものである.

命題 4.

奇素数pに対して

(2p)=(−1)p2−18
証明.

A={1,…,p−12}とおく. 任意のa∈Aについてもちろん

a=((−1)a⁢a)⁢(−1)a

が成り立つ. よって

∏a∈Aa =∏a∈A((−1)a⁢a)⁢(−1)a
=∏a∈A((−1)a⁢a)⁢∏a∈A(−1)a=(−1)∑a∈Aa⁢∏a∈A((−1)a⁢a)
=(−1)p2−18⁢∏a∈A((−1)a⁢a)

ここで等差数列の和の公式から ∑a∈A=p2−18 であることを用いている.

B={2⁢i∣0<2⁢i∈A,i∈ℤ},

でなおかつ C=A∖Bとおく. BはAに属する偶数全体の集合で CはA に属する奇数の集合である. もちろん A=B⊔Cである. D={2⁢i∣p2<2⁢i<p,i∈ℤ} とおく. Dはp2より大きく p よりも小さい偶数全体の集合である. 簡単にわかることだが, 任意の d∈D に対して, c∈C がただ一つ存在して p−c=dとなる. よって Dと Cの濃度は等しいことに注意しよう. よって,

∏a∈B(−a)=p∏2⁢i∈D2⁢i=2card⁡C⁢∏p4<i<p2i

となる. また,

∏a∈Ba=∏2⁢i∈B2⁢i=2card⁡B⁢∏0<i<p4i

となる.よって,

∏a∈A((−1)a⁢a) =p(2card⁡C⁢∏p4<i<p2i)⁢(2card⁡B⁢∏0<i<p4i)
=p2card⁡(B)+card⁡(C)⁢∏0<i<p2i
=p2card⁡(A)⁢∏a∈Aa=p2p−12⁢∏a∈Aa

よって 以上の式を合わせて,

∏a∈Aa=p(−1)p2−18⁢2p−12⁢∏a∈Aa

を得る. ∏a∈Aa は 𝔽pの中で0 ではないので,

2p−12=p(−1)p2−18

よってオイラーの基準から,

(2p)=p(−1)p2−18

を得るが, 両辺はそれぞれ1か−1の値しか取らず, 2≠p0なので, 結局

(2p)=(−1)p2−18

を得る. これが示すべき等式であった. ∎

平方剰余の相互法則は次のものである.

命題 5.

2つの異なる奇素数p,qに対して,

(pq)⁢(qp)=(−1)p−12⁢q−12
証明.

中国剰余定理を用いた証明を紹介する. p,qは異なる奇素数なので, 特に互いに素である. よって中国剰余定理から可逆元の間の同型

(ℤ/p⁢q⁢ℤ)×≅(ℤ/p⁢ℤ)××(ℤ/q⁢ℤ)×

を得る. さらに詳しくいうと, 写像

δ:(ℤ/p⁢q⁢ℤ)×→(ℤ/p⁢ℤ)××(ℤ/q⁢ℤ)×,[k]p⁢q↦([k]p,[k]q)

はwell-defined だし,同型写像であるということである. さて,

A={[a]p⁢q∈(ℤ/p⁢q⁢ℤ)∣0<a<p⁢q/2},

でなおかつ

B={([a]p,[b]q)∈(ℤ/p⁢ℤ)××(ℤ/q⁢ℤ)×∣a∈ℤ,0<b<q/2}

とする. 任意の (a,b)∈B に対して k∈A が存在して δ⁢(k)=(a,b) かもしくは δ⁢(k)=−(a,b) のどちらか一方のみが成り立つ. よって, あるϵ∈{1,−1} が存在して.

∏(x,y)∈B(x,y)=ϵ⁢∏k∈Aδ⁢(k)

が成り立つ. さて,

∏(x,y)∈B(x,y) =∏0<a<p,0<b<q/2([a]p,[b]q)=∏0<b<q/2∏0<a<p([a]p,[b]q)
=∏0<b<q/2([(p−1)!]p,[bp−1]q)=([((p−1)!)q−12]p,[((q−12)!)p−1]q)

である. ここでウィルソンの定理から[(p−1)!]p=[−1]pであり,

((q−12)!)2=q(q−1)!⁢(−1)q−12=q(−1)⁢(−1)q−12

なので,

(3) ∏(x,y)∈B(x,y)=([(−1)q−12]p,[(−1)p−12⁢(−1)p−12⁢q−12]q)

である. そして

∏k∈Ak =∏1≤k<p⁢q/2,g⁢c⁢d⁢(k,p⁢q)=1k
=(∏1≤k⁢<p⁢q/2,p|̸⁢kk)⋅(∏1≤k⁢<p⁢q/2,q|⁢kk)−1
=(∏0<k<pk)⁢(∏p<k<2⁢q)⁡⋯⁢(∏(Q−1)⁢p<k<Q⁢pk)⁢(∏Q⁢p<k<p⁢q/2k)⁢(∏1≤k⁢<p⁢q/2,q|⁢kk)−1

今からこの量のpを法とした値を考える.

∏(i−1)⁢p<k<i⁢pk=p(p−1)!=p−1

であり, {k∈ℤ∣Q⁢p<k<p⁢q/2}={k∈ℤ∣Q⁢p+1≤k≤(p⁢q−1)/2}={Q⁢p+1,Q⁢p+2,…,Q⁢p+P} なので

∏Q⁢p<k<p⁢q/2k=pP!

また, {k∈ℤ∣1≤k<p⁢q/2}={k∈ℤ∣1≤k≤(p⁢q−1)/2}={1,2,…,(p⁢q−1)/2} であるから, {k∈ℤ∣1≤k<p⁢q/2}={q,2⁢q,…,P⁢q} なので

∏1≤k⁢<p⁢q/2,q|⁢kk=∏1≤i≤P(q⁢i)=qP⁢P!

となる. よって,

∏k∈Ak=p(−1)Q⋅P!qP⁢P!

であるが, オイラーの基準から

∏k∈Ak=p(−1)Q⁢(qp)

今の議論を, pと q の役割を入れ替えて適用すると, 同様にして

∏k∈Ak=q(−1)P⁢(pq)

よって(3)と比較すると,

(−1)Q⁢(qp)=pϵ⁢(−1)Q

と

(−1)P⁢(pq)=qϵ⁢(−1)P⁢(−1)P⁢Q

これら二式の両辺のそれぞれの量も 1 か −1 のどちらかの値しか取らず, 2≠p0でなおかつ 2≠q0なので, 実際の等式として

(qp)=ϵ

と

(pq)=(−1)P⁢Q

を得る. この二式から,

(pq)⁢(qp)=(−1)p−12⁢q−12

を得る. これが示したい等式であった. ∎

References

  • [1] S. Y. Kim, An elementary proof of the quadratic reciprocity law, Amer. Math. Soc. 111 (2004), no. 1, 48–50.
  • [2] G. Rousseau, On the quadratic reciprocity law, J. Austral. Math. Soc. (Series A), 51 (1991), 423–425.
  • [3] Stack Exchangeの質問「Legendre symbol. second supplementary law」に対する回答,
    https://math.stackexchange.com/questions/
    180002/legendre-symbol-second-supplementary-law/180022#180022