Lebesgue–Stieltjes Measure
この文章ではLebesgue–Stieltjes測度を構成してゆく. つまり以下の定理を証明する.
定理 1.
を右連続な非減少関数とする.このとき, 上の測度で, 任意のでを満たすものに対して
となるものが存在する.
1 Riesz–Markov–Kakutaniによる方法
定義 2.
を局所コンパクトハウスドルフ空間とする. このとき上の測度がRMK測度であるとは以下の条件を満たすときにいう
-
(1)
はに値をとるボレル測度である.
-
(2)
の任意のコンパクト集合について
-
(3)
の任意のボレル集合は外部正則である.つまり が成り立つ.ここではの開集合系である.
-
(4)
が開集合もしくはならばは コンパクト正則である.つまり, が成り立つ.ここではのコンパクト集合全体である.
上のRMK測度全体をと書くことにする 上の符号付き測度で二つのRMK測度の差で表されるもの全体をと書くことにする.
定義 3.
を位相空間とする. このとき で上の実連続関数全体の集合を表す・ で上の有界実連続関数全体の集合を表す. また,が距離空間で距離関数を備えているとき, で上の(に関して)一様連続な実関数全体を表す.を明示的に書いていないが,以下では紛れがないので心配は無用である. また,以下ではにはノルムが備わっているとする.
以下の定理はRiesz–Markov–Kakutaniの表現定理の一つの形態である.
定理 4.
をコンパクトハウスドルフ空間とする. このとき
である. より詳しく述べると,に対して 二つのRMK測度とが(差を除いて)一意的に対応して, 任意のに対して
が成り立つ. 特に非負なつまり ならばを満たすような は通常の意味での測度(非負の値しか取らない測度) に対応する.
定義 5.
を右連続な非減少関数とする. このとき, 任意のに対して を以下のように定義する.
と定義する.の台がコンパクトなので,これは有限和である.
補題 6.
を右連続な非減少関数とする. 任意のに対して が存在する.
証明.
をを満たすものとし, とする. 任意にを与える. このときは一様連続なので,ある が存在して, ならばを満たす. をとすると, をみたすについて, を ならば とし, と定義すると,
となるから,
を得る. つまり, はコーシー列なので, が存在する. ∎
定義 7.
を右連続な非減少関数とする. このとき, を
と定義する.
補題 8.
を右連続な非減少関数とする. このとき は正値線形形式である.
証明.
各が正値線形形式だからその極限で定義される もそうである.
∎
定義 9.
命題 10.
を右連続な非減少関数とする. このとき 任意のでを満たすものに対して
が成り立つ.
証明.
まず最初に, が で を使って , と表される場合に等式を証明する. をとして, , とおく. このときを以下のように定義する.
すると,のとき なので,
である. として, を計算する.
となるので特に
である. は右連続なので,のとき右辺はに近づくから,
よって
がわかる.が一般の場合には,測度論を使えばわかる. つまり, とを の形で表される数で とを満たし と を満たすものとする. すると なので,有限測度に関する極限公式との右連続性を使えば がわかる. ∎
2 分位関数を使う方法
この節では, Lebesgue–Stieltjes測度の存在を Quantile function(分位関数)を使って証明する. ただし,通常のLebesgue測度の存在は前提とする点には注意しよう.
定義 11.
を上の右連続な単調増加関数とする. このとき, と定義する (ここでわざわざとの共通部分をとっているのは, やがやの値を取る場合を見越してのことであり,そうでない場合には余計なものである). の分位関数を以下のように定義する.
分位関数のことを一般化した逆関数と呼んだりもする.
補題 12.
任意のとについて と は同値である.
証明.
まずを仮定する. このときの定義から である.
逆にを仮定する. このときの右連続性から は閉集合であるから この集合のであるも この集合に属する.よって である. 今,と仮定しているので, の単調性からである. ∎
系 13.
を固定すると
が成り立つ.
補題 14.
を上の右連続な単調増加関数とする. このとき任意のについて が成り立つ. また,任意のについて が成り立つ.
証明.
まず当然なので 先の補題からが成り立つ. また,当然なので,当然 が成り立つ. ∎
補題 15.
を上の右連続な単調増加関数とする. このとき は右連続な単調増加関数 である.
証明.
記述を簡単にするためにと書くことにする. の単調性は定義から従う.
を任意に固定する. とおく. すると である. となるを任意にとる. 今と仮定して とする. ここで,もしも とするととなるがこれは仮定に反するのでである. さらに,より, が成り立つ. よって である. ゆえにとなって矛盾する. つまりであり,の左連続性が示された. ∎
まず最初にが有界な場合にLebesgue–Stieltjes測度を構成する.
定理 16.
を右連続な非減少関数とする. さらには有界であると仮定する. このとき, 上の測度で, 任意のでを満たすものに対して
となるものが存在する.
証明.
上の通常のルベーグ測度を と書くことにする. そしてと書くことにしよう. ここでは左連続だから特にボレル可測であることに注意しよう. このが求めている測度であることを以下で証明しよう. まず任意のについて であるが,
であるから, である. が有界なので,この値は有限の値であることに注意しよう. よって
となる. ∎
次にが一般の場合にLebesgue–Stieltjes測度を構成しよう.
定理 17.
を右連続な非減少関数とする. このとき, 上の測度で, 任意のでを満たすものに対して
となるものが存在する.
証明.
各についてを と定義する. これは
と書いても同じことである. この関数は有界で右連続な単調関数になっている. よって先の定理から 各について
となる測度が存在する. は右連続なので二つの集合 と には最小元が存在する. は単調増加なので である. それをそれぞれ , と書くことにする. まず 任意のとについて が成り立つことを示そう. この式が成り立つ全体をとおく. するとはの形の集合を全て含んでいる. が系であることを示そう. と が単調な族について閉じている ことは簡単にわかる. なのでも成り立つ. よって-定理によって, となることがわかる.
同様にして, 任意のとについて
となることがわかる.
次に任意のとについて となることを示す. まずと置くと,定義から となることがわかる. よって なので成り立つ.
関数 を と定義する. の単調性からこの極限は存在する. このがあの式を満たすことは がに各点収束することからわかる. が測度であることを示そう.完全加法性を示せば良い. に関する単調収束定理,つまり数え上げ測度に関する 単調収束定理から
よっては完全加法的である. 以上で一般のに対しても Lebesgue–Stieltjes測度が存在することがわかった. ∎
3 おまけ:についてのProkhorovの定理
に対するProkhovの定理はHellyの選出定理を使えば比較的簡単に示せるので,おまけとして紹介する.
以下の定理の証明は[1]などを参考にしても良い.
定理 18 (Hellyの選出定理).
をに値をとる右連続な非減少関数の列とする.このとき部分列とある右連続な非減少関数が存在しての連続点毎に
を満たす.
定理 19 (についてのProkhorovの定理).
とする. このとき以下は同値である.
-
(1)
は相対コンパクトである.
-
(2)
は緊密である.
証明.
相対コンパクト性から緊密性を示す.
を示そう. 背理法による.
を仮定する. 各について対応する測度を とかく. このとき,のコンパクト性から, 部分列と が存在してならば
と
が成り立つ. そして弱収束していることとから 任意のについて
が成り立つが,とすると, となるので矛盾する.
今度は逆を示そう. は緊密であるとする.このとき
が成り立つ. 内の部分列をとる. の分布関数をと書くことにする. このとき, Hellyの選出定理から の部分列と単調非減少関数で, の連続点について 各点収束する. 緊密性から,を満たすについて
であり,の不連続点は高々可算個しかないので, を連続点としてとすると,
が成り立つ. とすると,
が成り立つ. また,はの収束先であることからすぐわかるので, この文章の前半で頑張って示した内容から はある確率測度の分布関数になる. つまり,となるので,が相対コンパクトであることがわかる. ∎
References
- [1] はてなブログ電波通信の記事 「Helly空間とHellyの選出定理」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2021/03/25/100947
- [2] はてなブログ電波通信の記事 「リース・マルコフ・角谷の表現定理の証明(入射角16.225°の測度論入門2)」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/10/28/213025
- [3] はてなブログ電波通信の記事 「Riesz-Markov-Kakutaniの表現定理II」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2020/02/02/213341
- [4] 伊藤清三,「ルベーグ積分入門」, 1963年, 裳華房.
- [5] 船木直久, 「確率論」, 講座・数学の考え方 20,2004, 朝倉書店.