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距離空間上の確率測度

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では, 距離空間上の確率測度の基本的な性質や, 確率測度からなる空間の話をする.

1 基本的な定義や定理など

基本的なことは [1]や[2] を参照しても良い.

定義 1.

位相空間Xに対して,Xの開集合系から生成される 完全加法族を𝔅⁢(X)と書くことにする. この集合族をボレル集合族と呼ぶ.

定義 2.

測度空間 (X,𝔐) 上の測度 μが 確率測度であるとは, μ⁢(X)=1 を満たすときにいう. μ が確率測度であるとき,測度空間 (X,𝔐,μ)を 確率空間と呼び, Xの元のことを 事象と呼ぶ.

定義 3.

確率空間 (X,𝔐,μ)から 可測空間(Y,𝔑)への可測写像可測写像を (Y,𝔑)-値確率変数と呼ぶ. あるいは紛れがないときには単に 確率変数と呼んだりもする.

定義 4.

確率空間 (X,𝔐,μ) とその上の確率変数fについて ∫Xf⁢𝑑μを 𝔼⁡(f)と書いたりする. 特に 𝔼⁡(f)を fの期待値と呼んだり, fの平均値と呼んだりする. そしてn∈ℤ≥1に対して, 𝔼⁡(fn)をfのn次モーメントと 呼んだりする. 𝔼⁡(fn)<∞であるときfはLn 関数とか言ったりするが,これは測度論と同じ言葉遣いである. また, 𝕍⁡(f)=𝔼⁡((f−𝔼⁡(f))2) をfの分散と呼ぶ. 簡単な式変形で 𝕍⁡(f)=𝔼⁡(f2)−(𝔼⁡(f))2 となることがわかる.

定義 5.

(X,𝔐,μ) を確率空間とし, (Y,𝔑) を可測空間とする. このとき可測写像ϕ:X→Yに対して 写像ϕ∗⁢μ:𝔑→[0,∞] を ϕ∗⁢μ⁢(A)=μ⁢(ϕ−1⁢(A)) と定義するとこれは (Y,𝔑)上の測度になる. この測度 ϕ∗⁢μ をϕによるμの押し出し測度と呼ぶ.

定義 6.

Xを位相空間とする. このとき,可算個のXの開集合の共通部分で表される集合を Gδ集合と呼ぶ. また,Xの可算個の閉集合の和集合で表される集合を Fσ集合と呼ぶ.

定義 7.

Xを位相空間とする. X上の ボレル集合族上で定義された測度をX上の ボレル測度と呼ぶ.

定義 8.

Xを位相空間とし, μをその上の測度とする. このとき,μが位相的σ有限 であるとは,開集合の可算列 {Oi}i∈ℤ≥0 が存在して μ⁢(Oi)<∞ を満たすときにいう.

定義 9.

Xを位相空間とし, μをその上のボレル測度とする. このときμが外部正則であるとは 任意のボレル集合Aに関して μ⁢(A)=inf{μ⁢(U)∣A⊂U,U⁢は開集合} となるときにいう. また 内部正則であるとは μ⁢(A)=sup{μ⁢(F)∣F⊂A,F⁢は閉集合} が成り立つときにいう. μが外部正則かつ外部正則であるとき, 正則という. そしてμがコンパクト正則であるとは μ⁢(A)=sup{μ⁢(F)∣F⊂A,F⁢はコンパクト} が成り立つときにいう. またボレル集合Aが上で述べた条件を満たすときに, A自体をそれぞれ外部正則,内部正則,コンパクト正則と呼ぶ.

注意.

ここでいうコンパクト正則という言葉は通常は内部正則と呼ばれるが,名前がかぶるので独自の用語を導入した.

2 距離空間上の確率測度

この節では距離空間上の確率測度の正則性について紹介する. まず最初に外部正則性と内部正則性を紹介する.

命題 10.

μを距離空間X上の位相的σ-有限なボレル測度とする. このとき μは正則測度である. つまり, 任意の A∈𝔅⁢(X) に対して開集合Uと閉集合F が存在して F⊂A⊂U と μ⁢(U∖F)<ϵ が成り立つ.

証明.

まず最初にμ が有限測度の場合に命題を証明する. 定理が成り立つような X の部分集合全体を 𝔖⊂𝔅⁢(X) と置く. この 𝔖 が 𝔅⁢(X) と一致することを示す. まず任意の閉集合Fについて,Un={x∈S∣d⁢(x,F)<2−n} とすると,Unは開集合であり, Un+1⊂Un でさらに ⋂n∈ℕUn=F なので十分大きいnを取ればμ⁢(Un∖F)<ϵ である.これはμが有限測度であるから可能なことである. つまり𝔖はXの閉集合を全て含んでいる.

今から𝔖が完全加法族であることを示そう.

∅,X∈𝔖は𝔖がXの閉集合を全て含んでいることからわかる.

次にA∈𝔖ならばX∖A∈𝔖が成り立つことを示そう. A∈𝔖ならば閉集合Fと開集合Uが存在して F⊂A⊂Uでμ⁢(U∖A)<ϵとなるが, このときX∖U⊂X∖A⊂X∖F なので μ⁢((X∖F)∖(X∖U))=μ⁢(U∖F)<ϵとなる. よって, A∈𝔖ならば X∖A∈𝔖である.

次に 𝔖の 完全加法性を示そう. {Ai}i∈ℕ⊂𝔖 とし,閉集合 FiとUiを

Fi⊂Ai⊂Ui

と

μ⁢(Ui∖Fi)<ϵ/2i

を満たすもの とする. U=⋃iUiとし, Ln=⋃inFi とする. このとき Ln⊂⋃iAi⊂U であり, 測度の有限性から limn→∞μ⁢(U∖Ln)=μ⁢(U∖L∞)≤∑iϵ/2i<ϵ が成り立つ. なので,十分大きいnを取れば μ⁢(U∖Ln)<2⁢εとなる. これはμが有限測度だから可能なことである. よって ⋃iAi∈𝔖であるから 完全加法性が示された.

さて𝔖が完全加法族であることと, 𝔖がXの全ての閉集合族を含んでいることから 𝔖=𝔅⁢(S) がわかる.

一般にμが位相的σ-有限の場合を考えよう. {Si}i∈ℤ≥0をXの開被覆でμ⁢(Si)<∞を満たすものとする. このとき μi=(ιSi)∗⁢(μ|Si) として上で述べた場合を使うと, ある開集合Uiが存在して μi⁢(Ui∖A)=μ⁢((Ui∖A)∩Si)<ϵ/2i となる.これはつまり μ⁢(Ui∩Si∖A∩Si)<ϵ/2i ということである. そしてU=⋃iUi∩Si とおくとこれは開集合である. そして

μ⁢(U∖A)≤∑iμ⁢(Ui∩Si∖A)≤∑iμ⁢(Ui∩Si∖A∩Si)≤∑iϵ/2i≤ϵ

である. An=A∩(Sn+1∖Sn)に対して上の議論を適用すると 閉集合Fn が存在して Fn⊂An と μ⁢(Fn∖An)<ε/2n を満たす. Fn⊂Sn+1∖Sn なので,{Fn} は局所有限な族なので, F=⋃nFn は閉集合であり,

μ⁢(A∖F)≤∑nμ⁢(An∖Fn)≤∑nϵ/2n≤ϵ

である. 以上で定理が示された. ∎

次に完備可分距離空間上の確率測度のコンパクト正則性について述べる.

命題 11.

Xを完備可分距離空間とする. この時X上のボレル確率測度はコンパクト正則である. つまり, 任意のボレル集合Aと任意の ϵ>0 についてコンパクト集合Kが存在して μ⁢(A∖K)<ϵ である.

証明.

閉集合F⊂Xが存在してμ⁢(A∖F)<ϵ になる. {ai}をFの可算稠密集合とする. xを中心とする半径rの閉球をB⁢(x,r)と書くことにする.また,BF⁢(x,r)=F∩B⁢(x,r)と定義する. この時,任意のk∈ℕについて

⋃i=1∞BF⁢(ai,1/k)=F

である. μ⁢(F)<∞なので,

limn→∞μ⁢(F∖⋃i=1∞BF⁢(ai,1/k))=0

である. よって十分大きいNkが存在して

μ⁢(F∖⋃i=1NkBF⁢(ai,1/k))<ϵ/2k

が成り立つ.これは有限測度だから可能なことである. そこで

K=⋂k=1∞⋃i=1NkBF⁢(ai,1/k)

とすると, Xの完備性からKはコンパクトである. また

μ⁢(F∖K)≤μ⁢(⋃k(F∖BF⁢(ai,1/k)))≤∑k=1μ⁢(F∖BF⁢(ai,1/k))≤∑kϵ2k=ϵ

が成り立つ. 故に

μ⁢(A∖K)≤μ⁢(A∖F)+μ⁢(F∖K)<2⁢ϵ

が成り立つ.これで命題は証明された. ∎

3 確率測度からなる空間

この節では,確率測度からなる空間の性質について述べる. 特に弱収束性などに関するものである.

3.1 確率測度の空間

リースマルコフ角谷の定理については [3]や[4]を参照しても良い.

定義 12.

Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とする. このときX上の測度μがRMK測度であるとは以下の条件を満たすときにいう

  1. (1)

    μは[0,∞]に値をとるボレル測度である.

  2. (2)

    Xの任意のコンパクト集合Kについてμ⁢(K)<∞

  3. (3)

    Xの任意のボレル集合は外部正則である.つまり μ⁢(E)=inf{μ⁢(V)|V∈𝔒X⁢E⊂V}が成り立つ.ここで𝔒XはXの開集合系である.

  4. (4)

    Eが開集合もしくはμ⁢(E)<∞ならばEは コンパクト正則である.つまり, μ⁢(E)=sup{μ⁢(K)|K∈C⁢p⁢t⁢(X)⁢K⊂E} が成り立つ.ここでC⁢p⁢t⁢(X)はXのコンパクト集合全体である.

X上のRMK測度全体をM⁢(X)と書くことにする X上の符号付き測度で二つのRMK測度の差で表されるもの全体をS⁢(X)と書くことにする.

定義 13.

Xを位相空間とする. このとき C⁢(X)でX上の実連続関数全体の集合を表す・ Cb⁢(X)でX上の有界実連続関数全体の集合を表す. また,Xが距離空間で距離関数dを備えているとき, Cu⁢(X)でX上の(dに関して)一様連続な実関数全体を表す.dを明示的に書いていないが,以下では紛れがないので心配は無用である. また,以下ではCb⁢(X)にはsupノルムが備わっているとする.

以下の定理はRiesz–Markov–Kakutaniの表現定理の一つの形態である.

定理 14.

Xをコンパクトハウスドルフ空間とする. このとき

Cb⁢(X)∗=C⁢(X)∗=S⁢(X).

である. より詳しく述べると,μ∈Cb⁢(X)∗に対して 二つのRMK測度αとβが(差を除いて)一意的に対応して, 任意のf∈Cb⁢(X)に対して

μ⁢(f)=∫Xf⁢𝑑α−∫Xf⁢𝑑β

が成り立つ. 特に非負なμ∈Cb⁢(X)∗つまり f≥0ならばμ⁢(f)≥0を満たすようなμ は通常の意味での測度(非負の値しか取らない測度) に対応する.

注意.

一般に位相空間Xに関して, Cb⁢(X)≡C⁢(β⁢X)である.ここで,β⁢XはXの ストーンチェックコンパクト化である. よって,Cb⁢(X)∗の元はβ⁢X上の RMK測度(の差で表される符号付測度)とみなすことができる.

定義 15.

Xを位相空間とする. X上のボレル確率測度全体の集合を 𝒫⁢(X)で表すことにする. 上の注意から, 𝒫⁢(X)はCb⁢(β⁢X)∗の部分集合であり,さらに凸集合でもある.

定義 16.

Xを位相空間とする.このとき μ∈Cb⁢(X)∗とf∈Cb⁢(X)について ⟨f,μ⟩=μ⁢(f) と定義する. 特にμが二つのRMK測度αとβの差に対応しているのならば, ⟨f,μ⟩=∫Xf⁢d⁢(α−β) である.

定義 17.

位相空間X上のボレル確率測度列{μn}が X上のボレル確率測度μ∈𝒫⁢(X)に弱収束するとは, 任意のf∈Cb⁢(X)について

limn→∞∫Xf⁢𝑑μn=∫Xf⁢𝑑μ

が成り立つ時にいう. また,この時μn⟹μと表す. 𝒫⁢(X)⊂Cb⁢(X)∗ を踏まえると,この測度の弱収束は 𝒫⁢(X)上の汎弱位相と同じである. 以下では𝒫⁢(X)にはこの汎弱位相が定義されているものとする.

汎弱位相について以下の有名な定理がある. 証明は適当な関数解析の本を読むと良い.

定理 18 (Banach-Alaoglu).

Vを実ノルム空間とする.このとき V∗の単位閉球体は汎弱位相についてコンパクトである.

Banach-Alaogluの応用が次である.

命題 19.

Xをコンパクトハウスドルフ空間とするとき, 𝒫⁢(X)はコンパクトハウスドルフ空間となる. さらにXがコンパクト距離化可能空間ならば, 𝒫⁢(X)も コンパクト距離化可能空間となる.

証明.

まずは前半を証明しよう. Cb⁢(X)にはsupノルムが備わっていることに注意しよう. このときμ∈𝒫⁢(X)と任意のf∈Cb⁢(X) に対して |⟨f,μ⟩|=|∫Xf⁢𝑑μ|≤∫X|f|⁢𝑑μ≤∥f∥∞ となるから任意のμ∈𝒫⁢(X)は Cb⁢(X)∗の単位閉球体に含まれる. よってBanach-Alaogluの定理(定理 18) から𝒫⁢(X)がコンパクトであることを示すには 𝒫⁢(X)が汎弱位相について閉集合であることを示せば良い.

α∈Cb⁢(X)∗を 𝒫⁢(X)の閉包の元とする. 今からα⁢(X)=1を示そう. 恒等的に1をとるX上の関数χX∈Cb⁢(X)について,任意のϵ∈(0,∞)を与えると, ν∈𝒫⁢(X)が存在して |⟨χX,α⟩−⟨χX,ν⟩|<ϵとなる. ところで,任意の μ∈𝒫⁢(X)に対して ⟨χX,μ⟩=μ⁢(X)=1であり, ϵは任意だったので,結局 α⁢(X)=1となる.

次にαが測度として非負の値しか取らないことを示そう. αは二つのRMK測度β,γを用いて α=β−γとかくことができる. ここでβとγは正則測度であることに注意しよう.これはXのコンパクト性とRMK測度の定義から従うとも考えられるし,もしくは命題 10から従うとも考えても良い. ここで背理法のためにαは負の値もとると仮定しよう. するとボレル集合Sが存在して α⁢(S)<0となる. つまり β⁢(S)−γ⁢(S)<0である. δ=γ⁢(S)−β⁢(S)/10>0とおく. βとγの正則性から 閉集合F1,F2が存在して F1⊂S,F2⊂Sと β⁢(S∖F1)<δ, γ⁢(S∖F2)<δ となる.ここで改めてF=F1∪F2 とおけば, F⊂Sと β⁢(S∖F)<δと γ⁢(S∖F)<δ を満たす. するとδの定義から

β⁢(F)≤β⁢(S) =β⁢(S)−γ⁢(F)+γ⁢(F)
≤(β⁢(S)−γ⁢(F)+γ⁢(S∖F)+γ⁢(S∖F))+γ⁢(F)
≤(β⁢(S)−γ⁢(S)+γ⁢(S∖F))+γ⁢(F)
<(β⁢(S)−γ⁢(S)+δ)+γ⁢(F)<γ⁢(F)

となる.つまりα⁢(F)<0である. η=(γ⁢(F)−β⁢(F))/10とおく. そしてさらにβの外部正則性を用いると, 開集合Uが存在して F⊂Uと β⁢(U∖F)<η を満たす.

ここでXはコンパクトハウスドルフなので特に正規空間である.よってウリゾーンの補題よりg∈Cb⁢(X)が存在して 0≤g≤1とg|F=1とgX∖U=0 を満たす.さてここで ⟨g,α⟩ を評価しよう.

∫Xg⁢𝑑α =∫Xg⁢𝑑β−∫Xg⁢𝑑γ≤β⁢(U)−γ⁢(F)=β⁢(U)−β⁢(F)+β⁢(F)−γ⁢(F)
=β⁢(U∖F)+β⁢(F)−γ⁢(F)
≤η+β⁢(F)−γ⁢(F)<0

つまり⟨g,α⟩<0である.ここで ϵ=−⟨g,α⟩/2 とおく.αは𝒫⁢(X)の閉包の元なので, ν∈𝒫⁢(X)が存在して |⟨g,ν⟩−⟨g,α⟩|<ϵ を満たす.特に ⟨g,ν⟩<⟨g,α⟩+ϵである. これから ⟨g,ν⟩<⟨g,α⟩/2<0 がわかるが0≤gなのでこの式はνが非負の値をとる測度であるということに矛盾する.よって 背理法からαも非負の値をとる測度である.

以上のことからα∈𝒫⁢(X) であることがわかる. つまり, 𝒫⁢(X) はコンパクトハウスドルフ空間である.

命題の後半はXがコンパクト距離化可能空間ならば Cb⁢(X)は可分になることと,可分なノルム空間の 双対空間に汎弱位相を入れると距離化可能になるという関数解析の事実から 従う. ∎

3.2 Potmanteauの定理

この節では,測度の弱収束性の同値な言い換えを述べた Portmanteauの定理を紹介する.

補題 20 (Portmanteau theorem).

Xを距離化可能空間とする.この時以下は同値である.

  1. (1)

    μn⟹μ

  2. (2)

    Xの位相と同じ位相を生成する距離関数d を任意に固定する.以下ではCu⁢(X)はこの距離関数に関するものとする.このとき ∀f∈Cu⁢(X)∩Cb⁢(X)⁢⟨f,μn⟩→⟨f,μ⟩

  3. (3)

    Xの任意の閉集合Fについて lim supn→∞μn⁢(F)≤μ⁢(F)

  4. (4)

    Xの任意の開集合Uについて lim infn→∞μn⁢(U)≥μ⁢(U)

  5. (6)

    任意の A∈𝔅⁢(X)について μ⁢(∂A)=0 ならばlimn→∞μn⁢(A)=μ⁢(A).

証明.

[(1)⟹(2)の証明]

条件(2)は(1)の定義よりも弱い条件である.

[(1)⟹(2)の証明終わり]

[(2)⟹(3)の証明]

まず最初に

r⁢(t)={1t≤01−tt∈(0,1]0o.w.

と定義するとrはℝ上の一様連続関数になる. そして閉集合Fについて fk⁢(x)=r⁢(k⁢d⁢(x,F))とすると fk∈Cu⁢(S)∩Cb⁢(S) である. また,k→∞のとき,各点収束の意味でfk→χFであり, χF≤fkである. よって各kごとに

lim supn→∞μn⁢(F)=lim supn→∞∫XχF⁢𝑑μn≤limn→∞∫Xfk⁢𝑑μn=∫Xfk⁢𝑑μ

がわかる. よってk→∞とすると,ルベーグの収束定理から,

lim supn→∞μn⁢(F)≤μ⁢(F)

がわかる.条件(2)ではCu⁢(X)という距離dに依存するものが現れているが,他の条件はdには依存しない条件であることにとても 注意しよう.

[(2)⟹(3)の証明終わり]

[(3)⟹(1)の証明]

まずfを有界連続関数とする.このとき 0≤f<1としても一般性を失わない. k∈ℕを固定して0≤i≤kに対して Fi={x∈S∣f⁢(x)≥i/k} と定義する. このとき Fi+1⊂Fiである. すると,

∑i=1k1k⁢χFi≤f≤∑i=0k1k⁢χFi

が成り立つので,ボレル確率測度νについて

∑i=1k1k⁢ν⁢(Fi)≤∫Sf⁢𝑑ν≤1k+∑i=1k1k⁢ν⁢(Fi)

を得る. この不等式の右辺について,μ=μnとすると(2)から

lim supn→∞∫Sf⁢𝑑μn≤1k+∑i=1k1k⁢μ⁢(Fi)

また,左辺について,ν=μとすれば

∑i=1k1k⁢μ⁢(Fi)≤∫Sf⁢𝑑μ

であるから,

lim supn→∞∫Sf⁢𝑑μn≤1k+∫Sf⁢𝑑μ

を得るので,k→∞とすれば

lim supn→∞∫Sf⁢𝑑μn≤∫Sf⁢𝑑μ

を得る.1−fを考えるとlim infについても同様の式が得られるので,(3)を得る.

[(3)⟹(1)の証明終わり]

以上で,(1), (2), (3)の同値性がわかった.

[(4)⇔(3)の証明]

(4)については,(3)の補集合を考えると同値であることがわかる.

[(4)⇔(3)の証明終わり]

[(2)+(3)⟹(5)の証明]

条件 (2)と(3)を用いて(5)を示そう. A∈ℬ⁢(S)について,Int⁡(A)⊂A⊂CL⁡(A) で,∂A=CL⁡(A)∖Int⁡(A)なので

lim supn→∞μn⁢(CL⁡(A))≤μ⁢(CL⁡(A))=μ⁢(A)

かつ

lim infn→∞μn⁢(Int⁡(A))≥μ⁢(Int⁡(A))=μ⁢(A)

であるからlimn→∞μn⁢(A)=μ⁢(A)である.

[(2)+(3)⟹(5)の証明終わり]

[(5)⟹(3)の証明]

逆に(5)を仮定しよう. このとき閉集合Fとr∈(0,∞)について,

Fr={x∈S∣d⁢(x,F)≤r}
Br={x∈S∣d⁢(x,F)=r}

と定義する. このとき∂Fr⊂Br であり,F⊂Frである. μは有限測度なので,μ⁢(Br)>0となる rは高々可算個しかない. よって,μ⁢(Br)=0となるrは稠密に存在するので,このような rについて,

lim supn→∞μn⁢(F)≤limn→∞μ⁢(Fr)=μ⁢(Fr)

である. r→0とすると,

lim supn→∞μn⁢(F)≤μ⁢(F)

がわかる.

[(5)⟹(3)の証明終わり]

以上の場合分けから証明が終わる. ∎

定理 21.

補題 20において, X=ℝの場合には,次の(6)も同値になる.

  1. (6)

    μnの分布関数をFnで表し, μの分布関数をFで表す. このときFの任意の連続点xについて limn→∞Fn⁢(x)=F⁢(x) が成り立つ.

証明.

[(5)⟹(6)の証明]

まず Fn⁢(x)=μn⁢((−∞,x]), F⁢(x)=μ⁢((−∞,x]) であることに注意しよう. xがμの連続点ならばμ⁢({x})=0 であることと, ∂(−∞,x]={x} なので,(5)より limn→∞Fn⁢(x)=F⁢(x) となる.

[(5)⟹(6)の証明終わり]

[(6)⟹(2)の証明]

実数 ϵ∈(0,∞) を任意に与える. そして f∈Cu⁢(ℝ)∩Cb⁢(ℝ)を任意に与える. δ∈(0,∞) を|x−y|<δならば|f⁢(x)−f⁢(y)|<ϵとなるものにする.これはf∈Cu⁢(ℝ)なので可能である. M∈(0,∞)を|f|≤Mとなる定数とする. このような定数はf∈Cb⁢(ℝ)なので存在する. ところでFは単調増加関数なので,その不連続点は高々可算個である.よってFの連続点はℝ上で稠密なので,Fの連続点のみからなる集合{ak}k∈ℤが存在して 任意のk∈ℤに対して ak<ak+1および |ak−ak+1|<δとなる. 任意のk∈ℤに対して, Ik=(ak,ak+1]と定義する. ここで,g:ℝ→ℝを

g⁢(x)=∑k∈ℤf⁢(ak+1)⋅χIk

と定義する. fが有界なのでgも有界で,今考えている測度はどれも確率測度だからgは今考えているどの測度についても可積分であることに注意しよう.

まずνをμnかμのいずれかとする.このとき

|⟨f,ν⟩−⟨g,ν⟩| ≤∫ℝ|f⁢(x)−g⁢(x)|⁢𝑑ν=∑k∈ℤ∫Ik|f⁢(x)−f⁢(ak+1)|⁢𝑑ν⁢(x)
≤ϵ⋅∑k∈ℤ∫Ik𝑑ν=ϵ⁢ν⁢(ℝ)=ϵ.

を得る. 次に |⟨g,μ⟩−⟨g,μn⟩| を評価する. まず,μは確率測度なので, 十分大きいN∈ℤ≥0を取ると, μ⁢(⋃|k|>NIk)<ϵ となる. aN+1やa−N−1はFの連続点なので, 条件(6)より十分大きいnについて μn⁢(⋃|k|>NIk)<2⁢ϵとなる. すると

|⟨g,μ⟩−⟨g,μn⟩|≤∑k∈ℤf⁢(ak+1)⁢|μ⁢(Ik)−μn⁢(Ik)|≤∑|k|≤Nf⁢(ak+1)⁢|μ⁢(Ik)−μn⁢(Ik)|+3⁢M⁢ϵ

となる.最右辺の第一項に注目しよう. 条件(6)と{ak}k∈ℤがFの連続点の集合ということから各|k|≤Nを満たすkに対して |μ⁢(Ik)−μn⁢(Ik)|→0⁢(n→∞)となる. よって十分大きいnについては

|⟨g,μ⟩−⟨g,μn⟩|≤ϵ+3⁢M⁢ϵ=(3⁢M+1)⁢ϵ

が成り立つ.

今から|⟨f,μ⟩−⟨f,μn⟩| を評価しよう.

|⟨f,μ⟩−⟨f,μn⟩|≤|⟨f,μ⟩−⟨g,μ⟩|+|⟨g,μ⟩−⟨g,μn⟩|+|⟨g,μn⟩−⟨f,μn⟩|

となるから,上での評価を使えば十分大きいnについて

|⟨f,μ⟩−⟨f,μn⟩|≤3⁢(M+1)⁢ϵ

となるので,結局 ⟨f,μ⟩→⟨f,μn⟩ である.よって(2)が成り立つ.

[(6)⟹(2)の証明終わり] ∎

3.3 緊密性とProkhorovの定理

この節では確率測度の空間のコンパクト性と 緊密性の同値性について紹介する.

定義 22 (緊密性).

Xを距離化可能空間とし, {μi}i∈I⊂𝒫⁢(X)とする. この時 {μi}i∈Iが緊密であるとは,任意の ε>0に対して Xのコンパクト集合K が存在して

supi∈Iμi⁢(X∖K)≤ε

を満たす時にいう.

定理 23 (Prokhorov).

Xを可分完備距離化可能空間とし, 𝒮⊂𝒫⁢(X)とする. このとき以下は同値である.

  1. (1)

    𝒮は相対コンパクトである.

  2. (2)

    𝒮は緊密である.

証明.

[(2)⟹(1)の証明]

緊密ならば相対コンパクトを示そう. Xに相対コンパクトな距離を入れて,その完備化を Yとする. Yはコンパクトであることに注意しよう. i:X→Yを包含写像とする. 𝒯={i∗⁢(μ)∣μ∈𝒮} とする. 命題 19 から𝒫⁢(Y) はコンパクト距離空間なので, 𝒯は相対コンパクトである. よって列{μn}n が存在して i∗⁢μnはνに弱収束する. さて,𝒮は緊密なので, 任意のN∈ℤ≥0について Xのコンパクト集合KNが存在して

μn⁢(KN)≥1−2−N

が成り立つ. KNはコンパクトなので,i⁢(KN)もコンパクトであり,特にY の閉集合となる. よってn→∞として,

1−2−N≤lim supn→∞i∗⁢μn⁢(KN)≤ν⁢(KN)

となる. 従ってU=⋃N=1KNとおけば i⁢(U)∈𝔅⁢(T)であり,かつν⁢(i⁢(U))=1 である. S上の確率測度μを A∈𝔅⁢(S)について

μ⁢(A)=ν⁢(i⁢(A∩U))

とするとこれはボレル確率測度になっている. ここで,A∈𝔅⁢(X)について i⁢(A∩U)∈𝔅⁢(Y) となることを用いた.これは𝔅⁢(S) が閉集合から生成されていることと,Uがコンパクト集合の可算和であることからわかる.

さて,f∈Cu⁢(X)∩Cb⁢(X)とすると,(主に一様連続性から) fの拡張F∈C⁢(Y)が存在する. そして,

∫Xf⁢𝑑μ=∫Uf⁢𝑑μ=∫YF⁢𝑑ν

が成り立つ. よって

∫Xf⁢𝑑μn=∫YF⁢𝑑i∗⁢μn→∫YF⁢𝑑ν=∫Xf⁢𝑑μ

なので,μnはμに弱収束する.

[(2)⟹(1)の証明終わり]

[(1)⟹(2)の証明]

逆は少し頑張る. {ai}ı∈ℤ≥0をXの稠密可算集合とする. このとき任意のnについて X=⋃i∈ℤ≥0B⁢(ai,2−i) が成り立つ. ここでB⁢(x,r)はxを中心とする半径rのXの開球である. 今から

∀n∈ℕ⁢∀ϵ>0⁢∃m∈ℕ⁢∀μ∈𝒮⁢μ⁢(⋃k=1mU⁢(ai,2−n))≥1−ε

を示そう.

背理法を使い,この示したい命題が成り立たないとする. すると あるn∈ℕとη∈(0,∞) が存在して, 任意のm∈ℕについてあるμ∈𝒮が存在して

μ⁢(⋃k=1mU⁢(ai,2−n))<1−η

が成り立つ. 各mに存在する測度をμmとする. このとき𝒮の コンパクト性から, ある列{mi}i∈ℤ≥0と{μi}i∈ℤ≥0 が存在して m≤miならば

μi⁢(⋃k=1mU⁢(ai,2−n))<1−η

が成り立ち,かつ μi⟹μとして良い. すると,mi→∞なので,補題 20から 任意のmについて

μ⁢(⋃k=1mU⁢(ai,2−n))≤lim infi→∞μi⁢(⋃k=1mU⁢(ai,2−n))≤1−η

となるが,m→∞とすると μ⁢(X)≤1−η<1となるので,矛盾する. つまり,任意のnと任意のϵについて あるmが存在して 任意のμについて

μ⁢(⋃k=1mU⁢(ai,2−n))≥1−ε

が成り立つ. 各n∈ℤ≥0について 整数 mnを

μ⁢(⋃i=1mnU⁢(ai,2−n))>1−ϵ/2n

が成り立つものとしてとる. ここで,

K=⋂n∈ℕ⋃i=1mnB⁢(ai,2−n)

とすると Kは完備距離化可能空間の全有界な閉集合なので,コンパクトである. 任意のμ∈𝒮に対して

μ⁢(X∖K) ≤∑n=1∞μ⁢(X∖⋃i=1mnB⁢(ai,2−n))≤∑n=1∞(1−μ⁢(⋃i=1mnB⁢(ai,2−n)))
≤ϵ⋅∑i=1∞2−n=ϵ.

となるから 緊密性の条件を満たす.

[(1)⟹(2)の証明終わり] ∎

References

  • [1] はてなブログ電波通信の記事 「直積測度の構成について:確率論その0」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/01/03/011245
  • [2] はてなブログ電波通信の記事 「大数の法則について:確率論その1」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/01/16/233527
  • [3] はてなブログ電波通信の記事 「リース・マルコフ・角谷の表現定理の証明(入射角16.225°の測度論入門2)」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/10/28/213025
  • [4] はてなブログ電波通信の記事 「Riesz-Markov-Kakutaniの表現定理II」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2020/02/02/213341
  • [5] 小谷眞一, 「測度と確率」, 2005 岩波書店.
  • [6] 船木直久, 「確率論」, 講座・数学の考え方 20,2004, 朝倉書店.
  • [7] K. R. Parthasarathy, Probability measures on metric spaces. Academic Press.

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