関数の鏡像拡張
1 準備
定義 1.
とし,を開集合とする. そしてとする. このときがで 全微分可能 であるとは 線型写像111本来は接空間の間の線型写像と書くべきかもしれないが,解析学だとユークリッド空間とその接空間を同一視する.また線型写像ではなく,行列と言ってもよい.なぜなら有限次元空間の間の線型写像は行列と同一視されるからである. が存在し
が成り立つときにいう. このときは点において 任意の方向に偏微分可能であり,さらに は行列として
と表される. こののことをの導関数であるとか ヤコビ行列だとか呼ぶ. ここで と定義する. そしてこのをこの文章では と表す.
定義 2.
とし,を開集合とする. そしては級とする. このとき関数 を
と定義する. この関数は連続関数であることに注意しよう. そして 上の 関数を
と定義する.
この定義のもと次が成り立つ.
補題 3.
とし,を開集合とする. そしてを級とする. このとき任意のについて
が成り立つ.
証明.
全微分可能性の定義から明らか. ∎
初等的な事実として以下が成り立つ.
定理 4.
とし,を開集合とする. そしてとする. このとき を級ならば は内の任意の点で全微分可能である. またこのとき; は連続写像である.
以下は多変数関数に関する平均値の定理である.
補題 5.
とし,を開集合とする. そしてを級とする. 2点に関して とを結ぶ直線がに含まれていると仮定する. すなわち任意の についてということである. このとき, とを結ぶ直線上の点が存在して
が成り立つ.
証明.
関数 を と定義する. このときは上連続で 上では微分可能である. よって一変数の平均値の定理により となるが存在する. とおく. ここで合成関数の微分の公式から となるので,結局
となる. ∎
補題 6.
とする. 上の連続関数からなる族 は関数 に広義一様収束しているとする. このとき の任意のコンパクト集合 と正の数 に対して が存在して以下を満たす. もしが を満たすならば任意のについて と が成り立つ.
証明.
まず, 各は連続であり,に広義一様収束しているので は連続である. ゆえに は上で一様連続である. よって あるが存在して が を満たすならば が成り立つ. さて はに広義一様収束しているので特に上では に一様収束している. つまり十分大きい についてを満たすについて 任意の について が成り立つ. さて, は有限集合であり, は上で一様連続になるので,十分小さい をとれば,もし が を満たすならば任意のについて が成り立つ. ここでとする. そして が を満たすとする. このとき なので について となる. となるについては なので
が成り立つ. これで補題が示された. ∎
注意.
おそらく,コンパクト開位相におけるコンパクトな族は 定義域内のコンパクト集合を与えるとその上で 同程度一様連続になるという定理があるのだと思われる.
命題 7.
とする. 任意の に対して を関数とする. 以下を仮定する.
-
1.
各点について が存在する. 以下ではとおく.
-
2.
各は各について 方向に偏微分可能であり,さらに は上で連続である.
-
3.
各点について は収束し, さらに 上で広義一様収束する.
このとき全微分可能である. 特に 各方向に偏微分可能であり, さらに任意のとについて が成り立つ.
証明.
まずがに広義一様収束していることをみよう. の閉球体上で一様収束すること証明すれば十分である. を任意に取る. 上で一様収束することをこれから示す. 仮定の1, 2から, 十分大きいを取ると 任意のについてと 任意のについて
と
が成り立つ. (収束するので特にコーシー列になる).
をとなるようにとる. このとき 補題5より を任意に取ると とを結ぶ直線上の点とが存在して
| (1) | |||
| (2) |
が成り立つ. このときなので
が成り立つ. よってなので
が成り立つ. とすると
なのでがに上 一様収束している ことがわかる. よって上で はに広義一様収束する.
さて任意の について をと書くことにする. 各が連続なので も連続である.
さて
とする.今から 任意に固定したについて
となることを証明しよう.
補題6より, を与えたとき, が存在して が を満たすならば任意の とについて である.特に もわかる.
ここで上で は に一様収束しているの十分大きいについて である. そしてを十分大きく取れば となるので, となる. よって
なので特にである. よって
である. 従って, が を満たすならば
が成り立つので,
である. これはが全微分可能であり, さらに ということを意味する. ∎
命題 8.
とする. 任意の に対して を関数とする. 以下を仮定する.
-
1.
各点について が存在する. 以下ではとおく.
-
2.
各は各について 方向に偏微分可能であり,さらに は上で連続である.
-
3.
各点について は収束し, さらに 上で広義一様収束する.
このとき全微分可能である. 特に 各方向に偏微分可能であり, さらに任意のとについて が成り立つ.
証明.
各に対し を と定義すると, は命題 7 の仮定を満たすので, 定理が成り立つ. ∎
2 本文
定理 9 (ファンデルモンドの行列式).
とする. このとき任意の に対して
が成り立つ.
補題 10 (クラメルの公式).
とする.を次の可逆な正方行列として
とする. を次元の縦ベクトルとして
とする. このとき 線形方程式 の解は の第成分をとして
で表される. ここで はの第列目の成分をに置き換えた行列である.
補題 11.
以下の条件を満たす二つの実数列 とが存在して以下を満たす.
-
1.
任意のについてを満たす.
-
2.
任意のについて を満たす.
-
3.
任意のについて を満たす.
-
4.
が成り立つ.
証明.
各に対して と定義する. そして を の解とする. つまり次の行列
と全ての成分がである次元の縦ベクトル
についての線形方程式 の第成分を とする. するとクラメルの公式から は
と表される. ここではの第列をに変えた行列である. 今からこの量を具体的に表示しよう. まず を
と表示する. このときならば であり,の時はである.
さて,まず はファンデルモンドの行列式の公式が使えて
となる. また もファンデルモンドの行列式が適応できる行列の形になっている.よって第列の成分がになっていることに気をつけると
すると
となる. 今ここで を
とし, を
とすると
である. さて, を と定義したいのだが,この極限が存在することを確かめよう. 今からと を上から評価する. まずのとき, なので
なので
次にを評価する. の各因子について
となるのとき に注意しよう. のとき に注意すると
となる. つまりを固定したとき は有界でその絶対値は上からで抑えられる. そしてが増加するごとにより大きい因子がかけられていくのではが増加するとき単調増加する.つまりはのとき収束する.はに依存しないので は存在する. さらに上での評価から
| (3) |
という不等式を得る. ここでなので 各について
は有限の値に収束する. のときにはと暫定的に置いてやると の定義から各について
が成り立つ. なので優収束定理が使えて
となる. よって 数列 とは条件を満たす. ∎
定義 12.
とする. 集合 を
と定義し, を であって,その任意階数の導関数 は 上に連続関数として拡張できるもの全体とする.
定理 13.
とする. 数列 と を補題11で存在が保証される数列とする. そして を関数であって のときで のときとなるものとする. このとき に対しては 上に連続関数として拡張できるのでその拡張を同じ記号で表すことにして
と定義するとは上で関数で である.
証明.
各 について をとする.また, と考える.そして 各 についてを
と定義する. に注意しよう.
とし, とする. を固定する.このとき
である. さて とするとならば の定義から となる. よってなので ならば, に依存しない定数 が存在して となる. よってならば なので, は広義一様収束する.
上の議論から優収束定理が使えて,なので
を得る. ここで上の関数 を
と定義する. の定義から は連続関数である. また上の関数 を
と定義する.優収束定理より は定義域の上で連続となる. すると定義域の共通点では同じ値を取るので, では, では と定義するとこれは上の関数として連続になる. そして命題 8を帰納的に適応すると であることがわかり,これで定理の証明が終わる. ∎
定義 14.
とする. をハウスドルフ空間であって, 各点においては の開集合と同相な開近傍をもつとする. このとき 以下の条件を「条件(B1)」と呼ぶことにする: 開被覆 と同相写像 が存在して 任意のについて は の開集合で定義された関数であり,尚且つは 上ではであり, とその任意階数の微分は 上へ連続な拡張を持つ.
また以下の条件を「条件(B2)」と呼ぶことにする: 開被覆 と同相写像 が存在して任意のについて は の開集合で定義された関数であり,尚且つ を含む上の開集合 とその上の級写像が存在して をに制限するとになり は滑らかな埋め込みになる.
系 15.
とする. をハウスドルフ空間であって, 各点においては の開集合と同相な開近傍をもつとする. このとき 条件(B1)と条件(B2)は同値である.
References
- [1] E. Bierstone, Differentiable functions, Bull. Braz. Math. Soc., 11 (2) (1980), 139–189.
- [2] R. T. Seeley, Extension of functions defined in a half space, Proc. Amer. Math. Soc., 15 (1964), 625–626.