終結式
1 終結式の話
この文章では共通因子を持つ多項式と終結式の関係を紹介する. その応用として 固有値が全て相異なる行列が行列の空間の中で稠密開集合になっていることを紹介する.系として対角化可能な行列は行列の空間の中で第二類集合になっていることがわかる.
補題 1.
を体とする. を上の定数ではない多項式とし, その次数はそれぞれ, とする. このときとが定数ではない共通因子を持つための必要十分条件は 多項式が存在して以下の三つの条件を満たすことである.
-
1.
とは共にではない.
-
2.
かつ である.
-
3.
が成り立つ.
証明.
まずとが定数ではない共通因子を持つと仮定する. つまりある定数ではない多項式が 存在してと を満たす.このときは定数ではないので少なくともその次数はより大きいことに注意しよう. するとかつ であり,とはではない. よってでと置くと
となるのでこの, は補題の条件を満たす.
今度は逆に補題の条件にあるような多項式 が存在すると仮定する. このとき
となる. もしもの素因子が全て を割り切らないとすると全てを割り切ることになり, つまりはの因子になる. しかしなのでこれはあり得ない. よってとは共通因子を持つ. ∎
定義 2.
をそれぞれ定数ではない多項式とし その次数はそれぞれ, とする. そして
| (1) | ||||
| (2) |
と表示されているとする. このときとのシルベスター行列 とは 以下で定義される次の正方行列である.
またとの終結式 とは の行列式のことである. つまり
である. 同じことだが
でもある.
を次以上の多項式とするとき, との微分 の終結式 のことを判別式と呼ぶ.
命題 3.
を体とする. を上の定数ではない多項式とし, その次数はそれぞれ, とする. このときとが定数ではない共通因子を持つための必要十分条件は である.
証明.
| (3) | ||||
| (4) |
と表示されているとする.
まず最初にとが共通因子を持っているとする. このとき補題 1よりと となる多項式で となるものが存在する. ここで
| (5) | ||||
| (6) |
と表す.ここでの場合も含んでいることに注意しよう. の係数を考えると の係数は
である. これを連立方程式と見ると
となる. ベクトル
はゼロベクトルではないので,行列 の固有値に対応する固有ベクトル になっている.特に は固有値を持つのでその行列式はになる. つまり である.
逆にだとすると 固有値に対応する固有ベクトルを
としてここから逆に多項式, を定義してやると となる. ここで,, のいずれかはではないが, 式から他方もではないことがわかる. この式が成り立つので補題 1からと は共通因子を持つことがわかる. ∎
系 4.
を代数閉体とする. を上の定数ではない多項式とし, その次数はそれぞれ, とする. このときとが 共通の根を持つための必要十分条件は である.
系 5.
を代数閉体とする. を上の次以上の多項式とし, その次数はそれぞれ, とする. このときが 重根を持つための必要十分条件は である.
2 応用
終結式の応用として 互いに異なる固有値を持つ複素行列全体が 複素行列の空間の中で稠密開集合になることを示す.
定義 6.
を体とする. このとき を成分がに入っている次正方行列の 全体とする.もしも に位相が入っているならと は自然に同一視できるので に位相を導入することができる.
次の補題の証明は,例えば 参考文献 [3]などを参照せよ. もしくはただ単に多変数の解析関数の一致の定理からももちろん従う.
定理 7 (多項式に関する一致の定理).
を変数の実係数多項式とする. もしもの零点全体の集合が内点を持つならば は恒等的にとなる. つまりが定数に等しくないならば となる全体の集合は のなかで稠密になる.
定理 8.
を の元で互いに異なる固有値を持つもの全体とする. このときはの 稠密開集合である.
証明.
行列がに属することはその行列の 固有多項式が重根を持たないことと同値であることに注意しよう. をの元としたときにその固有多項式を
と表すと,各は特定の行列に依存しない, の成分を変数とする(変数の)(普遍的な)多項式となる. そして判別式 はの係数の多項式になるので, 結局はの成分を変数とする多項式になる. ところでではない多項式の0点は内点を持たない閉集合になるので (定理 7), となる全体はの中で 稠密開集合となる. であることとの固有値が互いに異なるということは同値なので,結局がの中で稠密開集合となっていることがわかる. これで証明が終わる. ∎
系 9.
を の元で対角化可能なもの全体とすると, はの中で 第二類集合となる.
注意.
実係数の行列については異なる固有値を持つものが稠密であるとは限らない.実際,において,その固有値が実数ではない複素数であるもの全体は内点を持つ. なぜなら実係数多項式の 二次方程式の判別式が負であることと実数ではない複素数解を持つことは同値だからである.
References
-
[1]
H. Wppdy,
Polinomial Resultants,
http://buzzard.ups.edu/courses/2016spring/projects /woody-resultants-ups-434-2016.pdf
- [2] S. Lang, Algebra, GTM, Vol. 211, Springer, 2012.
-
[3]
はてなブログ「電波通信」の記事
「多項式に関する一致の定理」,
https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/03/12/160928