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コラム?:中間値の定理,有限増分の定理,平均値の定理,テイラーの定理のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

コラム: 中間値の定理,有限増分の定理,平均値の定理,テイラーの定理

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

1 とりあえず平均値の定理の証明

この文章ではまず普通の平均値の定理を知っていることを前提とする. この文章では紙面の都合というものを考えなくて良いから, もうここでとりあえず主張を述べ,さらに証明をしておく. 本当はロルの定理を独立に証明しておいてその応用として示すのが 数学的に効率的なのだが,とりあえずの証明なので一つの証明に全部丸め込んでしまう. なぜ事前に平均値の定理の主張が必要なのかというと, この文章での実用的面では少なくとも 中間値の定理の章での Darbouxの定理で用いるからだけ なのだが, 有限増分の定理と「平均値の定理不要論」に触れるためには 平均値の定理を事前に知っておいた方が良いとも思う.

以下の定理はFermatの定理とも言われている.

命題 1 (極小値・極大値と微分係数の消失).

f:[a,b]→ℝ を可微分な連続関数とし, 点cは(a,b)内の極小点,もしくは 極大点とする.このとき f′⁢(c)=0 が成り立つ.

証明.

f⁢(c)が極大値である場合にのみ証明をしても, −fを考えれば極小値の場合も極大値の場合 に還元できるので, 一般性を失わない.

このときx<cとなる十分cに近い任意のxについて, f⁢(c)が極大値であることから

f⁢(x)−f⁢(c)x−c≥0

である.つまりf′⁢(c)≥0である. またc<xとなるcに十分近いxについては

f⁢(x)−f⁢(c)x−c≤0

なのでf′⁢(c)≤0である. 以上からf′⁢(c)=0である. ∎

定理 2 (平均値の定理).

a,b∈ℝはa<bを満たすとし, f:[a,b]→ℝは[a,b]上で連続で (a,b)上で可微分とする. このときc∈(a,b)が存在して

f⁢(b)−f⁢(a)b−a=f′⁢(c)

を満たす.

証明.

まず関数F:[a,b]→ℝを

F⁢(x)=(f⁢(x)−f⁢(a))⁢(b−a)−(f⁢(b)−f⁢(a))⁢(x−a)

と定義する.このとき Fは[a,b]上連続であり, F⁢(b)=F⁢(a)=0である. また(a,b)上Fは可微分である. 今からF′⁢(c)=0となるc∈(a,b) が存在することを示す.

最大値最小値の原理からFは[a,b] 上に最大値と最小値をもつ. もしもそれらが一致する場合にはFは定数となるので (a,b)上常にF′=0である.

次にFの最大値と最小値が異なる場合を考えよう. F⁢(a)=F⁢(b)なので,最大値と最小値のいずれかは F⁢(a)(=F⁢(b))とは異なる.−Fを考えれば最大値と最小値は入れ替わるので, 最大値がF⁢(a)(=F⁢(b))と異なるとしても一般性を失わない. つまりFはc∈(a,b)となる点で最大値F⁢(c)をとる. このとき命題1からF′⁢(c)=0である.

以上でF′⁢(c)=0となるc∈(a,b)存在がわかった. そして

F′⁢(c)=f′⁢(c)⁢(b−a)−(f⁢(b)−f⁢(a))

なので移項して整理すると

f⁢(b)−f⁢(a)b−a=f′⁢(c)

がわかる. ∎

2 準備

2.1 ノルムとノルム空間

ノルム空間のことは知っているとする. この文章では実ノルム空間しか扱わない. また,ノルム空間V上のノルムを |⋅|Vと表すことにする. 混乱がないと思われる場合にはただ単に|⋅| と表すことにする. ノルム空間の間の線型写像の空間をノルム空間にする方法を紹介する.

補題 3.

V, Wをノルム空間とする. そしてA:V→W を線型写像とする.このとき 以下は同値である.

  1. (1)

    Aは0∈Vにおいて連続である.

  2. (2)

    Aは連続である.

  3. (3)

    M>0が存在して 任意のx∈Vについて |A⁢x|W≤M⁢|x|が成り立つ.

  4. (4)

    M>0が存在して 任意のx∈Vについて|x|V≤1が成り立つならば |A⁢x|W≤M⁢|x|が成り立つ.

  5. (5)

    M>0が存在して 任意のx∈Vについて|x|V=1が成り立つならば |A⁢x|W≤Mが成り立つ.

証明.

(3)–(5)が同値なのは簡単にわかる. (1)と(2)が同値なのは |A⁢x−A⁢y|=|A⁢(x−y)|が成り立つことからわかる. (3)から(2)が導かれるのは簡単にわかる. (1)から(5)を示そう. (1)からあるδ>0 が存在して |x|≤δ を満たす任意のxについて |A⁢x|<1を満たす. (5)を今から示していく. 任意にxを取り|x|=1 を満たすとする. このときy=δ⋅x は|y|≤δ なので先に行ったように |A⁢y|<1 が成り立つ. よって|A⁢x|<δ−1 が成り立つので(5)が示された. ∎

連続線型写像のことを有界作用素などと言ったりする.

定義 4.

V, Wをノルム空間とし, VからWへの連続な線形写像の全体の集合 をL⁢(V,W)と書くことにする. A∈L⁢(V,W) を線型写像とする. この時Aの作用素ノルムを

|A|L⁢(V,W)=supx∈ℝk,x≠0|A⁢x|W|x|V

と定義する. このノルムの良いところは |A⁢x|W≤|A|L⁢(V,W)⋅|x|Vが成り立つところである.

補題 5.

Vをノルム空間とする. このときL⁢(ℝ,V) はV の間の写像Aをf∈L⁢(ℝ,V)について A⁢f=f⁢(1)と定義する. このときAはL⁢(ℝ,V)とVの間の ノルム空間としての同型を与える. つまりAは全単射な線形写像であって任意のxについて|A⁢x|=x が成り立ちA−1も同じく全単射で連続な線形写像である.

この補題をもとにL⁢(ℝ,V)とVを同一視する.

2.2 可微分性

定義 6.

E, Fをバナッハ空間とし, とし,U⊂Eを開集合とする. そしてf:U→Fとする. このときfがa∈Uで 全微分可能 であるとは 線型写像 A∈L⁢(E,F) が存在し

limx→a,x≠a|f⁢(x)−f⁢(a)−A⁢(x−a)|F|x−a|E

が成り立つときにいう. このAのことをfの導関数であるとか ヤコビ行列だとか呼ぶ. ここで f=(f1,…,fl)と定義する. そしてこのAをこの文章では A=(𝐃⁢f)⁢(a)と表す.

2.3 有限次元の場合

定義 7.

A:ℝk→ℝl を行列とする. この時Aの作用素ノルムを

|A|=supx∈ℝk,x≠0|A⁢x||x|

と定義する. このノルムの良いところは |A⁢x|≤|A|⋅|x|が成り立つところである.

定義 8.

k,l∈ℤ≥1 とし,U⊂ℝkを開集合とする. そしてf:U→ℝlとする. このときfがa∈Uで 全微分可能 であるとは 線型写像111本来は接空間の間の線型写像A:Ta⁢U→Tf⁢(a)⁢ℝlと書くべきかもしれないが,解析学だとユークリッド空間とその接空間を同一視する.また線型写像ではなく,行列と言ってもよい.なぜなら有限次元空間の間の線型写像は行列と同一視されるからである. A:ℝk→ℝl が存在し

limx→a,x≠a|f⁢(x)−f⁢(a)−A⁢(x−a)||x−a|

が成り立つときにいう. このときfは点aにおいて 任意の方向に偏微分可能であり,さらに Aは行列として

A=(∂fj∂xi⁢(a))i=1,…,k,j=1,…,l

と表される. このAのことをfの導関数であるとか ヤコビ行列だとか呼ぶ. ここで f=(f1,…,fl)と定義する. そしてこのAをこの文章では A=(𝐃⁢f)⁢(a)と表す.

初等的な事実として以下が成り立つ.

定理 9.

k,l∈ℤg⁢e⁢1 とし,U⊂ℝkを開集合とする. そしてf:U→ℝlとする. このとき fをC1級ならば fはU内の任意の点で全微分可能である. またこのとき𝐃⁢f:U→ℝk×l; x→(𝐃⁢f)⁢(x) は連続写像である.

定義 10.

一変数の可微分写像に関しては 𝐃⁢fをdd⁢x⁢f とかf′ とか書くことにする.

3 中間値の定理

このセクションでは中間値の定理に関する話をする. そもそも中間値の定理とは連結位相空間の連続像が 連結であるというより一般的な定理(この定理も中間値の定理と呼ばれたりする) と実数の連結部分集合は区間に限るという特徴付けを合わせただけのことであるが,連続でなくても可微分関数の導関数になりうる関数も同様の性質を持つので 一変数関数特有の現象もあるにはある.

3.1 本文

定理 11 (一般の中間値の定理).

Xを連結位相空間とする. そしてYを位相空間とし f:X→Yを全射連続写像とする. このときYは連結である.

証明.

Yの開集合U, Vが U∩V=∅ とY=U∪Vを満たしているとする. このときA=f−1⁢(U) とB=f−1⁢(V)は開集合であり,A∩B=∅ とX=A∪Bを満たす. よってXの連結性からA=∅かもしくはB=∅ である. つまりU=∅かもしくはV=∅ である. ゆえにYは連結である. ∎

命題 12.

ℝの連結部分集合は区間のみである.

証明.

区間ならば連結であることはわかる.

逆に連結部分集合ならば区間であることを示そう. X⊂ℝを連結集合とすると, 連結性から以下が成り立つ.

  • (a)

    任意のx,y∈X についてx≤yならば[x,y]⊂Xを満たす.

ここでa=infX, b=supXと定義しよう. するとa∈[−∞,∞)であり, b∈(−∞,∞]である. ここでa,bがXに属しているか属していないかに応じて, 性質 (a) よりX は以下の集合のいずれかと一致する.

  1. (1)

    (a,b]

  2. (2)

    (a,b)

  3. (3)

    [a,b]

  4. (4)

    [a,b)

よってXはℝの区間となる. ∎

定理 13 (中間値の定理).

a,b∈ℝとし, a<bとする. そしてf:[a,b]→ℝ は連続写像とする. そしてα=minx∈[a,b]⁡f⁢(x), β=maxx∈[a,b]⁡f⁢(x)とおく. 任意のγ∈[α,β] についてc∈[a,b]が存在し, f⁢(c)=γ を満たす.

証明その1.

定理 11と 命題 12からわかる. ∎

証明その2.

まず最初に α=βが成り立つならばγ=αであるから 例えばc=aとすれば f⁢(c)=γとなる.

以下ではα<βとする. また,最大値最小値の定理から γ=αもしくはγ=β の時は定理は成り立つ. よって以下ではα<γ<β と仮定する.

S={x∈[a,b]∣f⁢(x)≤γ}

と定義する.f⁢(p)=αとなるpをとれば p∈SなのでS≠∅ である.そこでc=supSと定義する. このとき,fは連続なのでf⁢(c)≤γ となる. ここでもしもf⁢(c)<γだとすると, fの連続性から十分小さいδ>0 が存在して任意のx∈(c−δ,c+δ) についてf⁢(x)<γとなるが これはc=supSに矛盾する. よってf⁢(c)=γである. ∎

3.2 単射ならば単調関数

一変数の中間値の定理の有用な応用を紹介しよう. 記事 [1]と内容は重複する.

定理 14.

Iをℝの区間とし, そしてf:I→ℝ は単射連続写像とする. このときfは狭義の単調増加かもしくは 狭義の単調減少である.

証明.

まず

D={(x,y)∈I×I∣x<y}

と定義する.このときIの連結性からDも連結になる. そしてF:D→ℝを

F⁢(x,y)=(f⁢(y)−f⁢(x))⁢(y−x)

と定義する. Dの定義からy−x≠0であり, fの単射性からf⁢(y)−f⁢(x)≠0である. よってD上でF⁢(x,y)≠0である. Dは連結なのでF⁢(x,y)の符号はD上で常に正かもしくは D上で常に負である.前者の場合にはfが狭義の単調増加であることが従い, 後者の場合にはfが狭義単調減少であることが従う. ∎

3.3 Darbouxの定理

定理 15.

a,b∈ℝ はa<bを満たすとし f:(a,b)→ℝは(a,b)上連続でさらに可微分であるとする. このときf′による(a,b) の像は連結である. 特に 任意のc,d∈(a,b) について α=min⁡{f′⁢(c),f′⁢(d)}, β=max⁡{f′⁢(c),f′⁢(d)} と定義するとき任意のγ∈[α,β] についてp∈[c,d] が存在し f′⁢(p)=γ を満たす.

証明その1.

まず古典的な証明をする. 最初にγ=αかもしくは γ=βの時はそれぞれ p=c, p=dとすればよい.

次にγ∈(α,β)の時を考える. 関数F:(a,b)→ℝを

F⁢(x)=f⁢(x)−γ⁢x

と定義する. このときγ∈(α,β) なので F′⁢(c)>0かつF′⁢(d)<0かもしくは F′⁢(c)<0かつF′⁢(d)>0 が成り立つ.このときp∈(c,d)が存在し F′⁢(p)=0となることを示そう.

まずF′⁢(c)>0かつF′⁢(d)<0の時, F⁢(c)は[c,d]上のFの最大値ではない. もし最大値であるとしたならば,任意のc<xとなるxについて

f⁢(x)−f⁢(c)x−c≤0

なのでF′⁢(c)≤0となり矛盾する. よってF⁢(c)は[c,d]上の最大値ではない. 同様にF⁢(d)も最大値ではないので,最大値はあるp∈(c,d) を用いてF⁢(p)とかける. このとき命題 1からF′⁢(p)=0である.

F′⁢(c)<0かつF′⁢(d)>0 の場合はあるp∈(c,d) が存在して[c,d]上のFの最小値はF⁢(c) と書けるので 命題1 よりF′⁢(p)=0となる.

いずれにせよF′⁢(p)=0となる p∈(c,d)が存在する. よってf′⁢(p)=γが成り立つ. ∎

証明その2.

平均値の定理を用いた賢い証明を紹介する. 最初にγ=αかもしくは γ=βのときは p=cまたはp=dとすればよい.

次にγ∈(α,β)の時を考える. このとき 二つの関数F0,F1:[c,d]→ℝ を

F0⁢(x)={f′⁢(c)x=cf⁢(x)−f⁢(c)x−cx≠c⁢.

で

F1⁢(x)={f′⁢(d)x=cf⁢(x)−f⁢(d)x−dx≠d⁢.

と定義するとF0とF1は連続関数である. θ=f⁢(c)−f⁢(d)c−dとすると F0⁢(d)=F1⁢(c)=θである. そして γはf′⁢(c)とθ を端点とする区間かもしくはf′⁢(d)とθ を端点とする区間のいずれかに属する. 前者であると仮定しても一般性を失わない. F0の像はf′⁢(c)とθ を端点とする区間なので 中間値の定理からq∈(c,d)が存在し F0⁢(q)=γとなる. さらに

F0⁢(q)=f⁢(q)−f⁢(c)q−c

なので平均値の定理から F0⁢(q)=f′⁢(p)となる p∈(c,d)が存在する. よってf′⁢(p)=γ なので定理が示された. ∎

証明その3.

最初にγ=αかもしくは γ=βのときは p=cまたはp=dとすればよい.

次にγ∈(α,β)の時を考える. このときm=(c+d)/2 としてs,d:[c,d]→[c,d]を

s⁢(x)={2⁢x−cc≤x≤mdm≤x≤d

で

t⁢(x)={cc≤x≤m2⁢x−dm≤x≤d

と定義する. ここで任意のx∈(c,d)について s⁢(x)≠t⁢(x) であることと s⁢(c)=t⁢(c)=cでs⁢(d)=t⁢(d)=dに注意しよう. に注意しよう. そしてF:[c,d]→ℝを

F⁢(x)={f′⁢(c)x=cf′⁢(d)x=df⁢(s⁢(x))−f⁢(t⁢(x))s⁢(x)−t⁢(x)x∈(c,d)

と定義すると Fは連続であり,γはF⁢(c)とF⁢(d) を端点とする区間に含まれるので中間値の定理から F⁢(q)=γとなるq∈(c,d) が存在する. また,

F⁢(q)=f⁢(s⁢(q))−f⁢(t⁢(q))s⁢(q)−t⁢(q)

でs⁢(q),t⁢(q)∈[c,d]なので 平均値の定理から F⁢(q)=f′⁢(p)となるp∈(c,d) が存在する. よってf′⁢(p)=γ となる. ∎

このDarbouxの定理を見て,可微分関数の導関数になるような 関数では一変数関数の基本的な性質が成り立つのではないかと 思うのは比較的スタンダードな数学的直感である. 以下に示す例は可微分関数の導関数になる関数について最大値最小値の定理が成り立たない例である. [6, p.165] 閉区間[−3−1,3−1]上でfを

f⁢(x)={x3⁢sin⁡(1x+3⁢x)x≠00x=0

また,可微分関数の導関数はリーマン可積分とは限らない. Volterraの反例

可微分関数の導関数はルベーグ可積分とは限らない.

注意.

以上のことから可微分関数の導関数になる関数についてはせいぜい中間値の定理 ぐらいしか一変数の連続関数と共通する性質はないであろうことがわかる.

一般に中間値の定理を満たす関数のことをDarboux 関数と呼ぶ. 至る所不連続だが,どの区間でも中間値の定理を満たす(それどころかどの区間でも全射になる)関数が構成されている. Conway 13 base functionで調べてみよ.

4 有限増分の定理

4.1 可算個の除外点がある有限増分の定理

定理 16 (有限増分の定理その1).

a,b∈ℝをa<bを満たす実数とし, Eをバナッハ空間とする. そして f:[a,b]→E, g:[a,b]→ℝ を連続関数とする. このとき[a,b]の可算部分集合N={pi}i∈ℤ≥0が存在し,任意のx∈[a,b]∖Nについて fとgは微分可能であり, ‖f′⁢(x)‖E≤g′⁢(x) を満たすならば,

‖f⁢(b)−f⁢(a)‖E≤g⁢(b)−g⁢(a)

が成り立つ.

証明.

ϵ∈(0,∞)を固定し, {wi}i∈ℤ≥0⊂(0,∞) を∑i=0∞wi=ϵ を満たす数列とする. 定理を証明するためにまず

(1) ‖f⁢(b)−f⁢(a)‖E≤g⁢(b)−g⁢(a)+ϵ⁢(b−a)+∑pi<bwi

が成り立つことを示す.この式が示されれば,ϵ→0として定理の結論を得る. さて,

S={x∈[a,b]|‖f⁢(x)−f⁢(a)‖E≤g⁢(x)−g⁢(a)+ϵ⁢(x−a)+∑pi<xwi}

とおく. まず,∑pi<awi=0なので, a∈Sがわかる. 特にSは空ではない. 今c=supSとする. c=bがわかれば 式 (4) が成り立つことがわかる. まず最初にc∈Sを示す. cの定義から{xk}k∈ℤ≥0⊂S でxk≤cとlimk→∞xk=c が成り立つものが存在する. このときSの定義より任意のkについて

‖f⁢(xk)−f⁢(a)‖E≤g⁢(xk)−g⁢(a)+ϵ⁢(xk−a)+∑pi<xkwi

が成り立つ.今xk≤cより

∑pi<xkwi≤∑pi<cwi

が成り立つので任意のkについて

‖f⁢(xk)−f⁢(a)‖E≤g⁢(xk)−g⁢(a)+ϵ⁢(xk−a)+∑pi<cwi

が成り立つ.k→∞とすれば,fとgの連続性と limk→∞xk=cから

‖f⁢(c)−f⁢(a)‖E≤g⁢(c)−g⁢(a)+ϵ⁢(c−a)+∑pi<cwi

が成り立つ.つまりc∈Sである.

さて矛盾を導き出すために c<bと仮定しよう.

Case 1 (c=pkとなるkが存在するとき): fとgの連続性から十分小さいη>0 を取ると,任意のt∈(c,c+η)について ‖f⁢(c)−f⁢(t)‖E≤wk/2と |g⁢(c)−g⁢(t)|≤wk/2 が成り立つ. すると任意のt∈(c,c+η)について

‖f⁢(t)−f⁢(a)‖E ≤‖f⁢(t)−f⁢(c)‖E+‖f⁢(c)−f⁢(a)‖E
≤wk2+g⁢(c)−g⁢(a)+ϵ⁢(c−a)+∑pi<cwi

が成り立つ. そして

g⁢(c)−g⁢(a) =g⁢(c)−(a)+g⁢(t)−g⁢(c)−(g⁢(t)−g⁢(c))
≤g⁢(t)−g⁢(a)+|g⁢(t)−g⁢(c)|≤g⁢(t)−g⁢(a)+wk/2

が成り立つ. (ここでg⁢(t)−g⁢(c)≥0であることを用いてはいないことに注意しよう.可算個の点を除いて微分が正ならば非減少関数であるが,それを用いると循環論法に陥る.) よって, c−a≤t−aを用いて結局

‖f⁢(t)−f⁢(a)‖E≤g⁢(t)−g⁢(a)+ϵ⁢(c−a)+∑pi<cwi+wk

を得るが,c<tなので, ∑pi<cwi+wk≤∑pi<twi となるので,

‖f⁢(t)−f⁢(a)‖E≤g⁢(t)−g⁢(a)+ϵ⁢(c−a)+∑pi<twi

となる.つまりt∈Sであり, c<tであるからc=supSに矛盾する. よってこの場合にはc=bがわかる.

Case2 (c∉Nの場合): この場合,点cで微分可能であるから 十分小さいη>0について 任意のt∈(c,c+η)について

‖f⁢(t)−f⁢(c)−f(1)⁢(c)⁢(t−c)‖E≤ϵ2⁢(t−c)
|g⁢(t)−g⁢(c)t−c−g(1)⁢(c)|≤ϵ2

である. よって

‖f⁢(t)−f⁢(c)‖E≤‖f(1)⁢(c)‖E⋅(t−c)+ϵ2⁢(t−c)≤g(1)⁢(c)⁢(t−c)+ϵ2⁢(t−c)

であり, −ϵ2≤g⁢(t)−g⁢(c)t−c−g(1)⁢(c)≤ϵ2 から

g(1)⁢(c)⁢(t−c)≤g⁢(t)−g⁢(c)+ϵ2⁢(t−c)

を得る. 以上の不等式から

‖f⁢(t)−f⁢(a)‖E≤‖f⁢(t)−f⁢(c)‖E+‖f⁢(c)−f⁢(a)‖E
≤g(1)⁢(c)⁢(t−c)+ϵ2⁢(t−c)+g⁢(c)−g⁢(a)+ϵ⁢(c−a)+∑pi<cwi
≤g⁢(t)−g⁢(c)+ϵ2⁢(t−c)+ϵ2⁢(t−c)+g⁢(c)−g⁢(a)+ϵ⁢(c−a)+∑pi<cwi
=g⁢(t)−g⁢(a)+ϵ⁢(t−a)+∑pi<cwi≤g⁢(t)−g⁢(a)+ϵ⁢(t−a)+∑pi<twi

よってt∈S となる. ここでc<tなので c=supSに反する. これで矛盾が導かれたので c=bがわかる.

以上で証明が終わる. ∎

定理 17 (高階の有限増分の定理その1).

a,b∈ℝをa<bを満たす実数とし, Eをバナッハ空間とする. そして f:[a,b]→E, g:[a,b]→ℝ を連続関数とする. k∈ℤ≥1 とする. このとき[a,b]の可算部分集合N={pi}i∈ℤ≥0が存在し,任意のx∈[a,b]∖Nについて fとgはk階微分可能であり, 任意のi∈{1,…,k}について f(i)⁢(a)=0でg(i)⁢(a)=0 であり,任意のx∈(a,b)について ‖f(k)⁢(x)‖E≤g(k)⁢(x) を満たすならば,任意のx∈[a,b]について

‖f⁢(x)−f⁢(a)‖E≤g⁢(x)−g⁢(a)

が成り立つ.

証明.

もしも ‖f(i)⁢(x)‖E≤g(i)⁢(x) ならばf(i−1)⁢(a)=0でg(i−1)⁢(a)=0 なので 定理 16をf(i)とg(i) と[a,x]に適応して ‖f(i−1)⁢(x)‖≤g(i−1)⁢(x) が成り立つ.任意のx∈(a,b)について ‖f(k)⁢(x)‖E≤g(k)⁢(x)が成り立つので, これをk回繰り返し,

‖f⁢(x)−f⁢(a)‖E≤g⁢(x)−g⁢(a)

を得る. ∎

定理 18 (高階の有限増分の定理その2).

a,b∈ℝをa<bを満たす実数とし, Eをバナッハ空間とする. そして f:[a,b]→E, g:[a,b]→ℝ を連続関数とする. k∈ℤ≥1 とする. このとき[a,b]の可算部分集合N={pi}i∈ℤ≥0が存在し,任意のx∈[a,b]∖Nについて fとgはk階微分可能であり, 任意のi∈{1,…,k}について f(i)⁢(b)=0でg(i)⁢(b)=0 であり,任意のx∈(a,b)について ‖f(k)⁢(x)‖E≤(−1)k⁢g(k)⁢(x) を満たすならば,任意のx∈[a,b]について

‖f⁢(b)−f⁢(x)‖E≤g⁢(b)−g⁢(x)

が成り立つ.

証明.

もしも ‖f(i)⁢(x)‖E≤(−1)i⁢g(i)⁢(x) ならばf(i−1)⁢(b)=0でg(i−1)⁢(b)=0 なので 定理 16をf(i)とg(i) と[x,b]に適応して ‖f(i−1)⁢(x)‖≤(−1)i−1⁢g(i−1)⁢(x) が成り立つ.任意のx∈(a,b)について ‖f(k)⁢(x)‖E≤(−1)k⁢g(k)⁢(x)が成り立つので, これをk回繰り返し,

‖f⁢(b)−f⁢(x)‖E≤g⁢(b)−g⁢(x)

を得る. ∎

4.2 除外点が端点のみの有限増分の定理

補題 19 (有限増分の定理).

l∈ℤ≥1 とし,[a,b]⊂ℝとする. η>0とする. そしてf:[a,b]→ℝlは (a,b)上で全微分可能であるとする. このときもしもM>0が任意のx∈(a,b)について |𝐃⁢f⁢(x)|≤Mを満たすならば

|f⁢(b)−f⁢(a)|E≤M⁢(b−a)

が成り立つ.

証明.

今から任意のx∈[a,b]とϵ>0について

|f⁢(x)−f⁢(a)|E≤(M+ϵ)⁢(x−a)+ϵ

が成り立つことを示す. ϵ>0を固定する. 背理法を用いるために

(2) |f⁢(x)−f⁢(a)|>(M+ϵ)⁢(x−a)+ϵ

を満たすようなx全体の集合をU とし,Uは空でないと仮定する. Uは[a,b]の開集合であることに注意せよ. そしてc=infUとする. ϵ>0であることと fの連続性からc≠aである. つまりa<cである. さらにもしもc=bならば U={b}となるのでUが[a,b] の開集合であるということに矛盾する. よってc<bである. 以上からa<c<bである. そしてUが開集合であることから x∈Uならばxに十分近い点は全て 式 (2)を満たすので c∉Uである. 関数fは(a,b)上で全微分可能なので 特にcで全微分可能である. よって δ>0 を十分小さくとれば, 任意のt∈(c,c+δ)について |f⁢(t)−f⁢(c)−(𝐃⁢f)⁢(c)⁢(t−c)|≤ϵ⁢(t−c) となる. そしてc∉Uから |f⁢(c)−f⁢(a)|≤(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ である.以上を踏まえると 任意のt∈(c,c+δ)について

|f⁢(t)−f⁢(a)| ≤|f⁢(t)−f⁢(c)|+|f⁢(c)−f⁢(a)|
≤|(𝐃⁢f)⁢(c)⁢(t−c)|+ϵ⁢(t−c)+(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ
≤M⁢(t−c)+ϵ⁢(t−c)+(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ=(M+ϵ)⁢(t−a)+ϵ

が成り立つ. つまり任意のt∈(c,c+δ)について t∉Uなのでc=infUに反する. これで矛盾が導かれたのでU=∅である. つまり 任意のx∈[a,b]とϵ>0について

|f⁢(x)−f⁢(a)|≤(M+ϵ)⁢(x−a)+ϵ

が成り立つので,x=bとしてϵ→0 とすれば

|f⁢(b)−f⁢(a)|≤M⁢(b−a)

が成り立つ. ∎

別証明.

今から任意のx∈[a,b]とϵ>0について

(3) |f⁢(x)−f⁢(a)|≤(M+ϵ)⁢(x−a)+ϵ

が成り立つことを示す. 式 (3) が成り立つようなx∈[a,b]全体を Sとおく.ϵ>0から a∈SがわかるのでSは空ではない. そしてc=supSとおく. fの連続性からc∈Sである. よって c=bを示すことができれば補題の証明は終わる. 矛盾を導くためにc<bと仮定する.

Case 1. c=aの場合: この場合,fの連続性から十分小さいη>0 を取ればt=a+ηについて |f⁢(t)−f⁢(a)|≤ϵが成り立つ. このとき0<(M+ϵ)⁢(t−a)なので

|f⁢(t)−f⁢(a)|≤ϵ≤(M+ϵ)⁢(t−a)+ϵ

がわかる. つまりt∈Sであるが,a<tなのでa=c=supS に矛盾する.

Case 2. a<cの場合: 関数fは(a,b)上で全微分可能なので 特にcで全微分可能である. よって η>0 を十分小さくとれば,t=c+ηについて

|f⁢(t)−f⁢(c)−(𝐃⁢f)⁢(c)⁢(t−c)|≤ϵ⁢(t−c)

となる. そしてc∈Sから |f⁢(c)−f⁢(a)|≤(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ である.以上を踏まえると

|f⁢(t)−f⁢(a)| ≤|f⁢(t)−f⁢(c)|+|f⁢(c)−f⁢(a)|
≤|(𝐃⁢f)⁢(c)⁢(t−c)|+ϵ⁢(t−c)+(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ
≤M⁢(t−c)+ϵ⁢(t−c)+(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ=(M+ϵ)⁢(t−a)+ϵ

が成り立つ. つまりt∈Sであるが, ここでc<t なのでc=supS矛盾する.

以上のいずれの場合分けでも矛盾が導かれたので,c=b である.つまり

|f⁢(b)−f⁢(a)|≤(M+ϵ)⁢(b−a)+ϵ

が成り立つので,ϵ→0 とすれば

|f⁢(b)−f⁢(a)|≤M⁢(b−a)

が成り立つ. ∎

4.3 一変数関数の右微分可能性に係る有限増分の定理

定理 20.

a,b∈ℝをa<bを満たす実数とする. そして f:[a,b]→E を連続関数とする. このとき[a,b]の可算部分集合 N={pi}i∈ℤ≥0が存在し,任意のx∈[a,b)∖Nについて fには有限な右側微分が存在し, D+⁡f⁢(x)=0 を満たすならば, fは定数である.

証明.

ϵ∈(0,∞)を固定し, {wi}i∈ℤ≥0⊂(0,∞) を∑i=0∞wi=ϵ を満たす数列とする. 定理を証明するために任意のxについて

(4) |f⁢(x)−f⁢(a)|≤ϵ⁢(x−a)+∑pi<xwi

が成り立つことを示す.この式が示されれば,ϵ→0とするとf⁢(x)=f⁢(a)がわかるので定理の結論を得る.

さて,

S={t∈[a,b]|∀x∈[a,t],|f⁢(x)−f⁢(a)|≤ϵ⁢(x−a)+∑pi<xwi}

とおく. まず,∑pi<awi=0なので, a∈Sがわかる. 特にSは空ではない. 今からSが閉集合であることを証明する. Sの定義から 点列{xn}n∈ℤ≥0⊂Sが xn<xn+1かつlimn→∞xn=l ならばl∈Sが成り立つことを示せばSが閉集合であることがわかる. このときSの定義より任意のkについて

|f⁢(xk)−f⁢(a)|≤ϵ⁢(xk−a)+∑pi<xkwi

が成り立つ.今xk≤lより

∑pi<xkwi≤∑pi<lwi

が成り立つので任意のkについて

|f⁢(xk)−f⁢(a)|≤ϵ⁢(xk−a)+∑pi<lwi

が成り立つ.k→∞とすれば,fの連続性と limk→∞xk=lから

|f⁢(l)−f⁢(a)|≤ϵ⁢(c−a)+∑pi<lwi

が成り立つ.つまりl∈Sであるので, Sは閉集合になる.

今c=supSとする. c=bがわかれば 任意のx∈[a,b]について 式 (4) が成り立つことがわかる. Sが閉集合なのでc∈Sを示す. x=cについて式 (4)が成り立つことを示せば良い. cの定義から{xk}k∈ℤ≥0⊂S でxk≤cとlimk→∞xk=c が成り立つものが存在する.

さて矛盾を導き出すために c<bと仮定しよう.

Case 1 (c=pkとなるkが存在するとき): fの連続性から十分小さいη>0 を取ると,任意のt∈(c,c+η)について |f⁢(c)−f⁢(t)|≤wk が成り立つ. すると任意のt∈(c,c+η)について

|f⁢(t)−f⁢(a)| ≤|f⁢(t)−f⁢(c)|+|f⁢(c)−f⁢(a)|
≤wk+ϵ⁢(c−a)+∑pi<cwi

が成り立つ. よって, c−a≤t−aを用いて結局

|f⁢(t)−f⁢(a)|≤ϵ⁢(c−a)+∑pi<cwi+wk

を得るが,c<tなので, ∑pi<cwi+wk≤∑pi<twi となるので,

|f⁢(t)−f⁢(a)|≤g⁢(t)−g⁢(a)+ϵ⁢(c−a)+∑pi<twi

となる.つまりt∈Sであり, c<tであるからc=supSに矛盾する. よってこの場合にはc=bがわかる.

Case2 (c∉Sの場合): この場合,点cで微分可能であるから 十分小さいη>0について 任意のt∈(c,c+η)について

|f⁢(t)−f⁢(c)−D+⁡f⁢(c)⁢(t−c)|≤ϵ⁢(t−c)

である. よってD+⁡f⁢(c)=0より

|f⁢(t)−f⁢(c)|≤ϵ⁢(t−c)

を得る. 以上の不等式から

|f⁢(t)−f⁢(a)|≤|f⁢(t)−f⁢(c)|+|f⁢(c)−f⁢(a)|
≤ϵ⁢(t−c)+ϵ⁢(c−a)+∑pi<cwi
≤ϵ⁢(t−a)+∑pi<twi

よってt∈S となる. ここでc<tなので c=supSに反する. これで矛盾が導かれたので c=bがわかる.

以上で証明が終わる. ∎

以上で用いた論法は「連続帰納法」とか 呼ばれているようだ. 以下の定理はある程度の仮定があれば 必ず右端に到達するということを述べているが, その定理の「形」はZornの補題と同じである. そしてZornの補題には順序数(超限帰納法) を使った証明があるが, この命題にもω1までの 超限再帰を用いた証明がある.

命題 21 (連続帰納法).

a∈ℝでb∈ℝ∪{∞} でa<bとする. I=[a,b]∩ℝとする. Hをその部分集合で以下の条件 を満たすものとする.

  1. (1)

    a∈H.

  2. (2)

    もしもx∈Hかつx<b ならばy∈I が存在してx<yと[x,y)⊂H を満たす.

  3. (3)

    もしもx∈Iがx<bと [a,x)⊂Hを満たすならば x∈Hが成り立つ.

このときH=Iである.

証明その1.

F={x∈I∣[a,x]⊂H}とおく. a∈Hなのでa∈FであるからF≠∅である. そこで s=supFとおく.条件(3)より s∈Fである. ここでs<bと仮定して矛盾を導く. s<bよりy∈Hが存在して s<yから[s,y]⊂H が成り立つ.よって y∈Fだがこれはs=supFに矛盾する. ∎

証明その2.

F={x∈I∣[a,x]⊂H}とおく. まず条件(3)からFがIの閉集合であることがわかる. Fが開集合であることを証明するために任意にx∈Fをとる.もしもx=bならば[a,b]⊂Hであり [a,b]⊂Fが従い,また[a,b]はIにおけるbの近傍だからx=bはF の内点である. x<bのときには条件(2)より y∈Iが存在してx<yと[x,y)⊂H を満たす.x∈Fから[a,x]⊂H なので結局[a,y)⊂Hがわかる. 任意にz∈[a,y)を取るともちろん[a,z)⊂H なので[a,y)⊂Fがわかる.そして[a,y) はxのIにおける近傍なのでxはFの内点であることがわかる. さてa∈Hよりa∈Fなので特にF≠∅ である. よってIの連結性からF=Iがわかる. ∎

証明その3.

F={x∈I∣[a,x]⊂H}とおく. するとFも条件(1), (2), (3)を満たす. DをIの可算稠密部分集合でa,b∈D を満たすものとする. このとき写像 f:ω1→D∩Fで

  1. (a)

    α<γ<ω1ならば f⁢(α)≤f⁢(γ)が成り立つ.

  2. (b)

    f⁢(α)<bかつα<γ<ω1ならば f⁢(α)<f⁢(γ) が成り立つ.

以下のように超限再帰で定義する.

まず f⁢(0)=aと定義する.

そして α<ω1に対して β<αとなる任意のβ についてf⁢(β)が定義されているとしたする. このときαが孤立順序数か極限順序数かで場合分けをしてfを定義する.

Case1. αが孤立順序数のとき,α=β+1 となるβが存在する. f⁢(β)=bのときはf⁢(α)=bと定義する. f⁢(β)<bのときは 条件(2)から [f⁢(β),y)⊂Hとなるy∈I が存在するので適当にf⁢(α)∈(f⁢(β),y)∩D と定義する.このときちゃんとf⁢(α)∈F∩Dである.

Case2. αが極限順序数のとき, αの共終数はω0 なので{βn}n∈ℤ≥0 が存在してβn<α とβn<βn+1とsupnβn=α が成り立つ. s=supnf⁢(βn)とおく. もしもs=bならばf⁢(α)=b と定義する. もしもs<bならば条件(2), (3)を用いてy∈Iであって[s,y)∈H を満たすものが存在するので 適当にf⁢(α)∈(s,y)∩D と定義する.このときちゃんとf⁢(α)∈F∩Dである.

さて,D∩Fは高々可算でω1 は非可算なので順序を保つ写像f:ω1→D∩F は単射ではない.よってあるθ<ω1 が存在してθ<η<ω1ならば f⁢(θ)=f⁢(η) となる. よってf⁢(θ)=bである. つまりb∈Fということなので Fの定義からH=[a,b]がわかる. ∎

4.4 有限増分の定理の応用

命題 22.

Dをℝかℂ の開集合とする. f:D→Eを可微分関数であるとする. そして関数G:D×D→Eを

G⁢(x,y)={f⁢(x)−f⁢(y)x−yx≠y⁢のとき,f′⁢(x)x=y⁢のとき

と定義する. 任意のa∈Dについて

lim(x,y)→(a,a),x≠y|G⁢(x,y)−f′⁢(a)|E=0

となる.

証明.

ϵを任意に与え, aの凸な開近傍N を十分小さく取り以下が成り立つようにする.

  1. (1)

    任意のx,y∈Nに対して 任意のt∈[0,1]についてt⁢x+(1−t)⁢y∈Dが成り立つ.

  2. (2)

    任意のz1,z2∈Nについて |f⁢(z1)−f⁢(z2)|≤ϵ が成り立つ.

x,y∈Dを任意にとる. 集合{(x,x)∣x∈D} 上ではGが連続なのは仮定から従う.よって x≠yと仮定してもよい. そして F:[0,1]→Eを

F⁢(t)=f⁢(y+t⁢(x−y))−f′⁢(a)⋅(y+t⁢(x−y))

と定義する. このとき

F′⁢(t)=(f′⁢(y+t⁢(x−y))−f′⁢(a))⋅(x−y)

となる.さて

Mx,y=supt∈[0,1]|(f′⁢(y+t⁢(x−y))−f′⁢(a))|

とおくと 補題 19より

|F⁢(1)−F⁢(0)|≤|x−y|⁢Mx,y

である.よって

|G⁢(x,y)−f′⁢(a)| =|f⁢(x)−f⁢(y)x−y−f′⁢(a)|=1|x−y|⁢|f⁢(x)−f⁢(y)−f′⁢(a)⁢(x−y)|
=|F⁢(1)−F⁢(0)||x−y|≤Mx,y

である. ここでNの取り方の(2)から Mx,y≤ϵである.ゆえに

|G⁢(x,y)−f′⁢(a)|≤Mx,y≤ϵ

が成り立つ.よって(a,a)でGは連続である. 以上からGがD上で連続であることがわかる. ∎

命題 23.

Dをℝかℂ の開集合とする. f:D→Eを可微分関数であり, その微分係数は連続であるとする. そして関数G:D×D→Eを

G⁢(x,y)={f⁢(x)−f⁢(y)x−yx≠y⁢のとき,f′⁢(x)x=y⁢のとき

と定義する. このときGはD×D 上で連続である.

5 平均値の定理

5.1 ロルの定理

定理 24 (ロルの定理).

a,b∈ℝはa<bを満たすとし, f:[a,b]→ℝは[a,b]上で連続であり, (a,b)上で可微分であるとする. このとき もしf⁢(a)=f⁢(b)ならば c∈(a,b)が存在して f′⁢(c)=0を満たす.

証明.

最大値最小値の定理からfには最大値と最小値が存在する. それをそれぞれαとβとしよう.

まず最初にα=βの場合を考える. このときfは定数関数となるので適当にc∈(a,b) を取ればf′⁢(c)=0を満たす.

α≠βの場合には αとβの少なくとも一方は c∈(a,b)を使ってf⁢(c)と表すことができる. というのも f⁢(a)=f⁢(b)でα≠βだからである. αとβのどちらかがf⁢(c)と 表されようとも, f⁢(c)はもちろん極小値か もしくは極大値 なので命題 1より f′⁢(c)=0が成り立つ. ∎

5.2 Lagrangeの平均値の定理

定理 25 (Lagrangeの平均値の定理).

a,b∈ℝはa<bを満たすとし, f:[a,b]→ℝは[a,b]上で連続で (a,b)上で可微分とする. このときc∈(a,b)が存在して

f⁢(b)−f⁢(a)b−a=f′⁢(c)

を満たす.

証明.

まず関数F:[a,b]→ℝを

F⁢(x) =(f⁢(x)−f⁢(a))⁢(b−a)−(f⁢(b)−f⁢(a))⁢(x−a)
=|f⁢(x)−f⁢(a)x−af⁢(b)−f⁢(a)b−a|.

と定義する.このとき Fは[a,b]上連続であり (a,b)上Fは可微分である. また,定義からF⁢(a)=F⁢(b)=0となるので 定理 24 (ロルの定理) から点c∈(a,b)で F′⁢(c)=0を満たすものが存在する. ここで

F′⁢(c)=f′⁢(c)⁢(b−a)−(f⁢(b)−f⁢(a))

である. よって移項して整理すれば

f⁢(b)−f⁢(a)b−a=f′⁢(c)

を得る. ∎

5.3 Cauchyの平均値の定理

定理 26 (Cauchyの平均値の定理).

連続関数関数f,g:[a,b]→ℝは開区間 (a,b)で微分可能であり,以下の条件のうちどれか一つを満たすとする.

  1. (1)

    f′とg′は(a,b)上で同時には0にならないとし, gはg⁢(a)≠g⁢(b)を充たす.

  2. (2)

    g⁢(a)≠g⁢(b)かつ任意のx∈(a,b)についてg′⁢(x)≠0 を満たす.

  3. (3)

    任意のx∈(a,b)についてg′⁢(x)≠0 を満たす.

このとき, g⁢(a)≠g⁢(b)でありさらに, c∈(a,b)が存在して g′⁢(c)≠0と

f⁢(b)−f⁢(a)g⁢(b)−g⁢(a)=f′⁢(c)g′⁢(c)

を満たす.

証明その1.

まず関数F:[a,b]→ℝを

F⁢(x) =(f⁢(x)−f⁢(a))⁢(g⁢(b)−g⁢(a))−(f⁢(b)−f⁢(a))⁢(g⁢(x)−g⁢(a))
=|f⁢(x)−f⁢(a)g⁢(x)−g⁢(a)f⁢(b)−f⁢(a)g⁢(b)−g⁢(a)|.

と定義する.このとき Fは[a,b]上連続であり (a,b)上Fは可微分である. また,定義からF⁢(a)=F⁢(b)=0となるので 定理 24 (ロルの定理) から点c∈(a,b)で F′⁢(c)=0を満たすものが存在する. ここで

F′⁢(c)=f′⁢(c)⁢(g⁢(b)−g⁢(a))−(f⁢(b)−f⁢(a))⁢g′⁢(c)

である.ここで仮定(1)が成り立つ場合にはf′とg′ は同時には0にならないし, g⁢(b)−g⁢(a)≠0なので g′⁢(c)≠0である. (2), (3)の時は仮定の時点でg′⁢(c)≠0である. よって移項して整理すれば

f⁢(b)−f⁢(a)g⁢(b)−g⁢(a)=f′⁢(c)g′⁢(c)

を得る. ∎

証明その.

ここではLagrangeの平均値の定理からCauchyの平均値の定理を導く. ちなみにCauchyのそれからLagrangeのそれが導かれることは当然である.

∎

注意 (平均値の定理に出てくる補助関数について).

[23]を参照せよ. 平均値の定理の証明では,fに対して補助的な関数F を構成し,F⁢(a)=F⁢(b)からFに対してロルの定理を適応して F′⁢(c)=0となる点を見出して,そこからf の平均に関する式に変形するという証明をする. 上で述べられている証明では F⁢(x)=(f⁢(x)−f⁢(a))⁢(b−a)−(f⁢(b)−f⁢(a))⁢(x−a)を用いているが, 他の関数でも同様の証明が可能である.例をいくつか挙げる.

  1. (1)

    上と同じF,

    F⁢(x) =(f⁢(x)−f⁢(a))⁢(b−a)−(f⁢(b)−f⁢(a))⁢(x−a)
    =|f⁢(x)x1f⁢(b)b1f⁢(a)a1|.
  2. (2)

    Gとして

    G⁢(x) =f⁢(x)⁢(b−a)−(f⁢(b)−f⁢(a))⁢x
    =|f⁢(x)x0f⁢(b)b1f⁢(a)a1|.
  3. (3)

    Hとして

    H⁢(x) =f⁢(x)⁢(b−a)−(f⁢(b)−f⁢(a))⁢(x−a+b2)
    =|f⁢(x)+f⁢(a)+f⁢(b)2x1f⁢(b)b1f⁢(a)a1|.

である. これらは微分すると同じ値になることに注意しよう.

F′⁢(x)=G′⁢(x)=H′⁢(x)=|f′⁢(x)10f⁢(b)b1f⁢(a)a1|.

コーシーの平均値の定理についても同様の準備関数を考えることができる.

LagrangeとCauchyの平均値の定理をさらに一般化するものとして 以下のPeanoの平均値の定理がある.

定理 27 (Peanoの平均値の定理).

a,b∈ℝはa<bを満たすとし, f,g,h:[a,b]→ℝは[a,b]上で連続で (a,b)上で可微分とする. このときc∈(a,b)が存在して

|f′⁢(c)g′⁢(c)h′⁢(c)f⁢(b)g⁢(b)h⁢(b)f⁢(a)g⁢(a)h⁢(a)|=0

が成り立つ.

証明.

まずF:[a,b]→ℝを

F⁢(x)=|f⁢(x)g⁢(x)h⁢(x)f⁢(b)g⁢(b)h⁢(b)f⁢(a)g⁢(a)h⁢(a)|

とおくと

F⁢(a)=|f⁢(a)g⁢(a)h⁢(a)f⁢(b)g⁢(b)h⁢(b)f⁢(a)g⁢(a)h⁢(a)|=0

であり,

F⁢(b)=|f⁢(b)g⁢(b)h⁢(b)f⁢(b)g⁢(b)h⁢(b)f⁢(a)g⁢(a)h⁢(a)|=0

なのでF⁢(a)=F⁢(b)=0となる. よって 定理 24 (ロルの定理) から点c∈(a,b)で F′⁢(c)=0を満たすものが存在する. ここでF′が何なのか考えると行列式の定義を思い出すと

F′⁢(x)=|f′⁢(x)g′⁢(x)h′⁢(x)f⁢(b)g⁢(b)h⁢(b)f⁢(a)g⁢(a)h⁢(a)|

となる.222一般に多重線形な関数についての微分公式がある.[9]を参照のこと よって

F′⁢(c)=|f′⁢(c)g′⁢(c)h′⁢(c)f⁢(b)g⁢(b)h⁢(b)f⁢(a)g⁢(a)h⁢(a)|=0

が成り立つ. ∎

5.4 その他

命題 1 の系として以下がわかる.

系 28.

f:[a,b]→ℝ を可微分な連続関数とし, 点cは(a,b)内の 点で f′⁢(c)≠0 を満たすならば cはfの 極小点でも 極大点でもない.

以下の定理群 29, 30, 31, 32は Flettの平均値の定理とか呼ばれるものである.

定理 29.

a,b∈ℝはa<bを満たすとし, f:[a,b]→ℝは[a,b]上で連続で [a,b]上で可微分とする. さらにf′⁢(a)=f′⁢(b) と仮定する. このときc∈(a,b)が存在して

f′⁢(c)=f⁢(c)−f⁢(a)c−a

を満たす.

証明.

必要ならばfをf⁢(x)−f′⁢(a)⁢xに変更して f′⁢(a)=0と仮定しても一般性を失わない. g:[a,b]→ℝ を

g⁢(x)={f⁢(x)−f⁢(a)x−ax≠af′⁢(a)x=a⁢.

と定義すると[a,b]上で連続であり, (a,b)上微分可能である. さらにx∈(a,b]に関して

g′⁢(x)=−f⁢(x)−f⁢(a)(x−a)2+f′⁢(x)x−a

である. 今からg′⁢(c)=0となるc∈(a,b)の存在を示す. ここでもしもg⁢(b)=0ならばロルの定理から g′⁢(c)=0となるc∈(a,b)が存在する. もしもg⁢(x)>0ならば,

g′⁢(b)=−f⁢(b)−f⁢(a)(b−a)2+f′⁢(b)b−a=−g⁢(b)(b−a)2<0

となる.もしもg⁢(b)が最大値だとすると x<bとなるxについて

g⁢(x)−g⁢(b)x−b>0

なのでg′⁢(b)≥0となるのでg′⁢(b)<0 に矛盾するのでg⁢(b)は最大値ではない.さらにg⁢(b)>0=g⁢(a) なのでg⁢(a)も最大値ではない. よって最大値はc∈(a,b)が存在してg⁢(c)と表すことができる. さらに命題 1がよりg′⁢(c)=0 となる. g⁢(b)<0のときも同様なのでいずれにせよ g′⁢(c)=0 となるc∈(a,b)が存在する. このとき

g′⁢(c)=−f⁢(c)−f⁢(a)(c−a)2+f′⁢(c)c−a=0

なので

f′⁢(c)=f⁢(c)−f⁢(a)c−a

が成り立つ. ∎

定理 30.

a,b∈ℝはa<bを満たすとし, f:[a,b]→ℝは[a,b]上で連続で [a,b]上で可微分とする. さらにf′⁢(a)=f′⁢(b) と仮定する. このときc∈(a,b)が存在して

f′⁢(c)=f⁢(b)−f⁢(c)b−c

を満たす.

証明.

g:[−b,−a]→ℝ を g⁢(x)=f⁢(−x) と定義しgと[−b,−a] に対して定理 29 を適応すればわかる. ∎

命題 31.

a,b∈ℝはa<bを満たすとし, f:[a,b]→ℝは[a,b]上で連続で (a,b)上で可微分とする. このときc∈(a,b)が存在して

f′⁢(c)=f⁢(b)−f⁢(c)c−a

を満たす.

証明.

関数g:[a,b]→ℝを g⁢(x)=x⁢f⁢(b)−(x−a)⁢f⁢(x) と定義する.このとき g⁢(a)=a⁢f⁢(b)で g⁢(b)=b⁢f⁢(b)−(b−a)⁢f⁢(b)=a⁢f⁢(b) となるからロルの定理により g′⁢(c)=0となるc∈(a,b) が存在する. このとき

g′⁢(x)=f⁢(b)−f⁢(x)−(x−a)⁢f′⁢(x)

なので移項すれば

f′⁢(c)=f⁢(b)−f⁢(c)c−a

が成り立つ. ∎

命題 32.

a,b∈ℝはa<bを満たすとし, f:[a,b]→ℝは[a,b]上で連続で (a,b)上で可微分とする. このときc∈(a,b)が存在して

f′⁢(c)=f⁢(c)−f⁢(a)b−c

を満たす.

証明.

g⁢(x)=x⁢f⁢(a)+(b−x)⁢f⁢(x) を用いて命題31 と同様にすれば良い. ∎

論文[24]では 平均値の定理の逆について述べられている. つまりf′⁢(c) が与えれらときに(a1,b1)⊂(a,b) となるa1とb1 が存在して

f′⁢(c)=f⁢(b1)−f⁢(a1)b1−a1

が成り立つための条件を調べている.つまり以下の定理が成り立つ. 証明は省略する.

定理 33.
  1. (1)

    f′⁢(c)が 最大値でも最小値でもないとすると x,y∈(a,b) が存在して

    f′⁢(c)=f⁢(x)−f⁢(y)x−y

    が成り立つ.

  2. (2)

    f′⁢(c)が 極大値でも極小値でもなく, cがA⁢(c)={x∈(a,b)∣f′⁢(x)=f′⁢(c)} の集積点ではないとする. このとき x,y∈(a,b) が存在して c∈(x,y)と

    f′⁢(c)=f⁢(x)−f⁢(y)x−y

    が成り立つ.

6 テイラーの定理

6.1 漸近記号

定義 34.

ℝn上の部分集合E上で定義された関数g:E→ℝは、あるδ>0が存在して

U⁢(a,δ)∩E=U⁢(a,δ)∖{a}

を充たすとき、点aの十分近くで定義されているという。 点aの十分近くで定義されている関数全体をS⁢(a) で表す。

定義 35.

g∈S⁢(a)とする。このとき集合o⁢(g⁢(x))⁢(x→a)を

o⁢(g⁢(x))⁢(x→a):={f∈S⁢(a)|limx→af⁢(x)g⁢(x)=0}

と定義する。

注意.

f=o⁢(g⁢(x))⁢(x→a)をfを変数とする一階の述語だと思えば、o⁢(g⁢(x))⁢(x→a)を集合で定義する必要はない。 また、一階の述語と集合の間にはそれなりの関係がつけられるし、本質的に間違いでもないと思う。 しかしながらこのようにランダウの記号を集合として定義したのは、しばしば f=o⁢(g⁢(x))⁢(x→a)という等号の濫用によって無用の混乱が起こるのが嫌だからである。

以下では 記号を簡潔にするため,

dd⁢x⁢f

をdx⁢fと略記する.

f:(l,r)→ℝをm−1階微分可能関数とし, a∈(l,r)、k≤mとする. また,fは点aにおいてm階微分可能であるとする. このときxを変数とする関数Rk⁢(f,x;a):(l,r)→ℝを

Rk⁢(f,a;x)=f⁢(x)−∑i=0kf(i)⁢(a)i!⁢(x−a)i

と定義する. 任意のk≤mについてRk⁢(f,x;a)はm−1階微分可能で,さらに i≤kについて

did⁢xi⁢Rk⁢(f,a;x)|x=a=0

であり,任意のi>kについて

did⁢xi⁢Rk⁢(f,a;x)=f(i)⁢(x)

である. また

dm−1d⁢xm−1⁢Rk⁢(f,a;x)=f(m−1)⁢(x)−f(m−1)⁢(a)

そしてRm⁢(f,x;a)は点aでm階微分可能で, x=aにおけるそのm階微分係数は0であることに注意しよう.

以下のGonçalvesのテイラーの定理はおそらく筆者が今回の調査で知った剰余項の中でも一番洗練されているものであろう.

定理 36 (Gonçalvesのテイラーの定理).

m∈ℤ≥2 fをaの十分近くで定義されたm−1階微分可能関数とする. このときaとxの間にあるcが存在して

Rm−1⁢(f,a;x)=(x−a)mm!⁢f(m−1)⁢(c)−f(m−1)⁢(a)c−a

が成り立つ.

Cauchyの平均値の定理を使った証明.

さて xに関する関数g:(l,r)→ℝをg⁢(x)=(x−a)mと定義する. ところで

Rm−1⁢(f,a;a)=g⁢(a)=0

であるので Cauchyの平均値の定理をRm−1⁢(f,x;a)とg,そして区間[a,x],または[x,a]に用いると(aとxの大小関係によってどちらの区間をを使うかが変わる.)

Rm−1⁢(f,a;x)g⁢(x)=dx⁢Rm−1⁢(f,a;c1)dx⁢g⁢(c1)

となるc1がaとxの間に存在することがわかる. dx⁢Rm−1⁢(f,a;a)=0であることを用いて, c1とaに対して再びCauchyの平均値の定理を適用し

Rm−1⁢(f,a;x)g⁢(x)=dx⁢Rm−1⁢(f,a;c1)dx⁢g⁢(c1)=dx2⁢Rm−1⁢(f,a;c2)dx2⁢g⁢(c2)

となるc2がc1とaの間に存在することがわかる. 繰り返しm−1回Cauchyの平均値の定理を用いて

Rm−1⁢(f,a;x)(x−a)m=dxm−1⁢(Rm−1⁢(f,a;c))dxm−1⁢g⁢(c)
=dxm−1⁢Rm−1⁢(f,a;c)m!⁢(c−a)=dxm−1⁢Rm−1⁢(f,a;c)−dxm−1⁢Rm−1⁢(f,a;a)m!⁢(c−a)

となるcがxとaの間に存在することがわかる.

ここでdxm−1⁢Rm−1⁢(f,a;a)=0であり

dxm−1⁢Rm−1⁢(f,a;c)=f(m−1)⁢(c)−f(m−1)⁢(a)

なので結局

Rm−1⁢(f,a;x)=(x−a)m(m+1)!⁢f(m−1)⁢(c)−f(m−1)⁢(a)c−a

を得る. ∎

以下は有限増分型のテイラーの定理と言えそうである.

命題 37 (Peano型のテイラーの定理).

fをaの十分近くで定義されたm階微分可能関数としよう.このとき Rm⁢(f,a;x)∈o⁢(|x−a|m)⁢(x→a) が成り立つ.

有限増分の定理を使った証明.

Rm⁢(f,a;x)は点aでm階微分可能で 点aでのm階微分係数は0である. よって任意にϵ>0を与えると aに十分近いxについて

|dxm−1⁢R⁢(f,a;x)−dxm−1⁢R⁢(f,a;a)x−a−0|≤m!⁢ϵ

が成り立つ.dxm−1⁢R⁢(f,a;a)=0 を用いると

|dxm−1⁢R⁢(f,a;x)x−a|≤m!⁢ϵ

がわかる. a<xならば定理 17を R⁢(f,a;x)とg⁢(x)=(x−a)mに用いて, x<aならば R⁢(f,a;x)とg⁢(x)=(a−x)mに用いて,

|R⁢(f,a;x)|≤ϵ⁢|x−a|m

を得る. ϵは任意だったので Rm⁢(f,a;x)∈o⁢(|x−a|m)⁢(x→a) である. ∎

Cauchyの平均値の定理を使った証明.

さて xに関する関数g:(l,r)→ℝをg⁢(x)=(x−a)mと定義する. ところで

Rm⁢(f,a;a)=g⁢(a)=0

であるので Cauchyの平均値の定理をRm⁢(f,x;a)とg,そして区間[a,x],または[x,a]に用いると(aとxの大小関係によってどちらの区間をを使うかが変わる.)

Rm⁢(f,a;x)g⁢(x)=dx⁢Rm⁢(f,a;c1)dx⁢g⁢(c1)

となるc1がaとxの間に存在することがわかる. dx⁢Rm⁢(f,a;a)=0であることを用いて, c1とaに対して再びCauchyの平均値の定理を適用し

Rm⁢(f,a;x)g⁢(x)=dx⁢Rm⁢(f,a;c1)dx⁢g⁢(c1)=dx2⁢Rm⁢(f,a;c2)dx2⁢g⁢(c2)

となるc2がc1とaの間に存在することがわかる. 繰り返しm−1回Cauchyの平均値の定理を用いて

Rm⁢(f,a;x)(x−a)m=dxm−1⁢(Rm⁢(f,a;c))dxm−1⁢g⁢(c)
=dxm−1⁢Rm⁢(f,a;c)m!⁢(c−a)=dxm−1⁢Rm⁢(f,a;c)−dxm−1⁢Rm⁢(f,a;a)m!⁢(c−a)

となるcがxとaの間に存在することがわかる. ここでx→aとするとc→aとなり, Rm⁢(f,x;a)のaにおけるm階微分係数が0であることから

limx→aRm⁢(f,x;a)(x−a)n=dmd⁢xm⁢(Rm⁢(f,x;a))|x=a=0

よってRm⁢(f,x;a)∈o⁢(|x−a|m)⁢(x→a)である. ∎

Gonçalvesの剰余項(定理 36)を使った証明.

まず定理 36よりxとaの間にある点cが存在して

Rm−1⁢(f,a;x)=(x−a)mm!⁢f(m−1)⁢(c)−f(m−1)⁢(a)c−a

が成り立つ. Rm⁢(f,a;x)=Rm−1⁢(f,a;x)−(x−a)mm!⁢f(m)⁢(a) なので

|Rm⁢(f,a;x)|≤|x−a|mm!⁢|f(m−1)⁢(c)−f(m−1)⁢(a)c−a−f(m)⁢(a)|

である.xがaの十分近ければcもそうなので

|Rm⁢(f,a;x)|≤|x−a|mm!⁢ϵ

とできる. よって Rm⁢(f,x;a)∈o⁢(|x−a|m)⁢(x→a)である. ∎

定理 38 (Lagrange型のテイラーの定理).

f:(l,r)→ℝをm階微分可能関数とし、a∈(l,r)とする。このとき任意のx∈(l,r)について aとxの間の点θが存在して

f⁢(x)=∑i=0m−1f(i)⁢(a)i!⁢(x−a)i+f(m)⁢(θ)m!⁢(x−a)m

を充たす。つまり、

Rm−1⁢(f,x;a)=f(m)⁢(θ)m!⁢(x−a)m

である。

Gonçalvesの剰余項(定理 36)を使った証明.

まず定理 36よりxとaの間にある点γが存在して

Rm−1⁢(f,a;x)=(x−a)mm!⁢f(m−1)⁢(γ)−f(m−1)⁢(a)γ−a

が成り立つ. さらに平均値の定理からaとγの間にあるcが存在して

f(m−1)⁢(γ)−f(m−1)⁢(a)γ−a=f(m)⁢(c)

が成り立つ.cはxとaの間の点でもあるので これで証明が終わる. ∎

Cauchyの平均値の定理を使った証明.

繰り返しCauchyの平均値の定理を用いて

Rm−1⁢(f,a;x)g⁢(x)=dxm⁢(Rm−1⁢(f,a;c))dxm⁢g⁢(c)=f(m)⁢(c)m!

となるcが存在することがわかる。よって定理は示された。 ∎

Rolleの定理を使った証明.

x=aならばもちろん定理は成り立つので x≠aとする. xを固定して,Mを

f⁢(x)=∑i=0m−1f(i)⁢(a)i!⁢(x−a)i+M⁢(x−a)mm!

を満たす( xに依存する)定数である. そしてg:(l,r)→ℝをtの関数として

g⁢(t)=∑i=0m−1f(i)⁢(a)i!⁢(t−a)i+M⁢(t−a)mm!−f⁢(t)

とする. このとき g⁢(a)=g(1)⁢(a)=⋯=g(m−1)⁢(a)=0 である. そしてg⁢(x)=0なのでロルの定理から g′⁢1⁢(c1)=0となる.点が存在する. g(1)⁢(a)=0なので再びロルの定理が使える. これをm回繰り返すとg(m)⁢(c)=0となるcがaとx の間に存在する. さて

g(m)⁢(t)=M−f(m)⁢(t)

なので t=cとして M=g(m)⁢(c)+f(m)⁢(c)=f(m)⁢(c) である.Mの定義から

f⁢(x)=∑i=0m−1f(i)⁢(a)i!⁢(x−a)i+f(m)⁢(c)m!⁢(x−a)m

となることがわかる. ∎

定理 39 (積分形のテイラーの定理).

fをaの十分近くで定義されたCm級関数とする.

Rm−1⁢(f,a;x)=1(m−1)!⁢∫axf(m)⁢(t)⁢(x−t)m−1⁢𝑑t

が成り立つ.

証明.
Ik=1(k−1)!⁢∫axf(k)⁢(t)⁢(x−t)k−1⁢𝑑t

とおく. まず,微分積分の基本定理より

R0⁢(f,a;x)=f⁢(x)−f⁢(a)=∫axf(1)⁢(t)⁢𝑑t=I1

を得る. まずRk−1⁢(f,a;x)=Ikが成り立っているとする.このとき 部分積分の公式より

Ik =1(k−1)!⁢∫axf(k)⁢(t)⁢(x−t)k−1⁢𝑑t
=1k!⁢[−f(k)⁢(t)⁢(x−t)k]t=at=x+1k!⁢∫axf(k+1)⁢(t)⁢(x−t)k⁢𝑑t
=f(k)⁢(a)k!⁢(x−a)k+1k!⁢∫axf(k+1)⁢(t)⁢(x−t)k⁢𝑑t
=f(k)⁢(a)k!⁢(x−a)k+Ik+1

なのでRk−1⁢(f,a;x)=Ikを踏まえると

Rk⁢(f,a;x)=Ik+1

を得る. このことと 帰納法から

Rm−1⁢(f,a;x)=1(m−1)!⁢∫axf(m)⁢(t)⁢(x−t)m−1⁢𝑑t

がわかる. ∎

以下の命題はCm級関数がWhitneyの意味でCm級であることを示している。

命題 40.

f:(l,r)→ℝはCm級関数とする。このとき任意のk≤mと 任意の点p∈(l,r)と任意のε>0についてあるδ>0が存在して|x−p|<δ、|y−p|<δならば

|Rm−k⁢(f(k),x;y)|≤|x−y|m−k⁢ε

を充たす。

証明.
Rm−k⁢(f(k),x;y)=f(k)⁢(x)−∑i=0m−kf(k+i)⁢(y)i!⁢(x−y)i

であることに注意しよう。このときLagrangeのテイラーの定理から

f(k)⁢(x)=∑i=0m−k−1f(k+i)⁢(y)i!⁢(x−y)i+f(m)⁢(θ)(m−k)!⁢(x−y)m−k

となるθがxとyの間に存在する。 よって

|Rm−k⁢(f(k),x;y)|≤|x−y|m−k(m−k)!⁢|f(m)⁢(y)−f(m)⁢(θ)|

が成り立つ。命題の主張はf(m)の連続性から直ちに従う。

7 多変数の場合

7.1 多重指数記法

Zn=ℤ≥0n

とする。k∈Znに対して

σk=k1+k2+⋯+kn

と定義する。 また、k,l∈Znに対して

k!=k1!⁢k2!⁢⋯⁢kn!
(kl)=(k1l1)⁢(k2l2)⁢⋯⁢(knln)

とし、

xk=xk1⁢xk2⁢⋯⁢xkn

と定義する。

7.2 定理

定理 41 (多変数のテイラーの定理(Lagrange)).

U⊂ℝnとし、f:U→ℝをU上のm−1階微分可能関数で点a∈Uでm階微分可能なものとする。 このときUの中でaと直線を結べるxに対して、その直線上の点θが存在して

f⁢(x)=∑σl≤m−1fl⁢(a)l!⁢(x−a)l+∑σl=mf⁢(θ)l!⁢(x−a)l

となる。つまり

Rm−1⁢(f,x;a)=∑σl=mf⁢(θ)l!⁢(x−a)l
証明.

F⁢(t)=f⁢(a+t⁢(x−a))とt=0,1にLagrangeのテイラーの定理を適用すればよい。 ∎

以下の命題はCm級関数がWhitneyの意味でCm級であることを示している。

命題 42.

任意の点p∈Uと任意のε>0についてあるδ>0が存在して‖x−p‖<δ、‖y−p‖<δならば

‖Rm−k⁢(f(k),x;y)‖≤‖x−y‖m−k⁢ε

を充たす。

証明.

Lagrangeのテイラーの定理とδ近傍の凸性から直ちに従う。 ∎

多変数の場合にもペアノ型のテイラーの定理は適当な仮定の下に成り立つがここでは省略する。

∎

日本語の文献は適当に並べている. 日本語でない参考文献はカテゴリーごとにアルファベット順に並んでいる.

References

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