コラム: 中間値の定理,有限増分の定理,平均値の定理,テイラーの定理
1 とりあえず平均値の定理の証明
この文章ではまず普通の平均値の定理を知っていることを前提とする. この文章では紙面の都合というものを考えなくて良いから, もうここでとりあえず主張を述べ,さらに証明をしておく. 本当はロルの定理を独立に証明しておいてその応用として示すのが 数学的に効率的なのだが,とりあえずの証明なので一つの証明に全部丸め込んでしまう. なぜ事前に平均値の定理の主張が必要なのかというと, この文章での実用的面では少なくとも 中間値の定理の章での Darbouxの定理で用いるからだけ なのだが, 有限増分の定理と「平均値の定理不要論」に触れるためには 平均値の定理を事前に知っておいた方が良いとも思う.
以下の定理はFermatの定理とも言われている.
命題 1 (極小値・極大値と微分係数の消失).
を可微分な連続関数とし, 点は内の極小点,もしくは 極大点とする.このとき が成り立つ.
証明.
が極大値である場合にのみ証明をしても, を考えれば極小値の場合も極大値の場合 に還元できるので, 一般性を失わない.
このときとなる十分に近い任意のについて, が極大値であることから
である.つまりである. またとなるに十分近いについては
なのでである. 以上からである. ∎
定理 2 (平均値の定理).
はを満たすとし, は上で連続で 上で可微分とする. このときが存在して
を満たす.
証明.
まず関数を
と定義する.このとき は上連続であり, である. また上は可微分である. 今からとなる が存在することを示す.
最大値最小値の原理からは 上に最大値と最小値をもつ. もしもそれらが一致する場合にはは定数となるので 上常にである.
次にの最大値と最小値が異なる場合を考えよう. なので,最大値と最小値のいずれかは とは異なる.を考えれば最大値と最小値は入れ替わるので, 最大値がと異なるとしても一般性を失わない. つまりはとなる点で最大値をとる. このとき命題1からである.
以上でとなる存在がわかった. そして
なので移項して整理すると
がわかる. ∎
2 準備
2.1 ノルムとノルム空間
ノルム空間のことは知っているとする. この文章では実ノルム空間しか扱わない. また,ノルム空間上のノルムを と表すことにする. 混乱がないと思われる場合にはただ単に と表すことにする. ノルム空間の間の線型写像の空間をノルム空間にする方法を紹介する.
補題 3.
, をノルム空間とする. そして を線型写像とする.このとき 以下は同値である.
-
(1)
はにおいて連続である.
-
(2)
は連続である.
-
(3)
が存在して 任意のについて が成り立つ.
-
(4)
が存在して 任意のについてが成り立つならば が成り立つ.
-
(5)
が存在して 任意のについてが成り立つならば が成り立つ.
証明.
(3)–(5)が同値なのは簡単にわかる. (1)と(2)が同値なのは が成り立つことからわかる. (3)から(2)が導かれるのは簡単にわかる. (1)から(5)を示そう. (1)からある が存在して を満たす任意のについて を満たす. (5)を今から示していく. 任意にを取り を満たすとする. このとき は なので先に行ったように が成り立つ. よって が成り立つので(5)が示された. ∎
連続線型写像のことを有界作用素などと言ったりする.
定義 4.
, をノルム空間とし, からへの連続な線形写像の全体の集合 をと書くことにする. を線型写像とする. この時の作用素ノルムを
と定義する. このノルムの良いところは が成り立つところである.
補題 5.
をノルム空間とする. このとき は の間の写像をについて と定義する. このときはとの間の ノルム空間としての同型を与える. つまりは全単射な線形写像であって任意のについて が成り立ちも同じく全単射で連続な線形写像である.
この補題をもとにとを同一視する.
2.2 可微分性
定義 6.
, をバナッハ空間とし, とし,を開集合とする. そしてとする. このときがで 全微分可能 であるとは 線型写像 が存在し
が成り立つときにいう. こののことをの導関数であるとか ヤコビ行列だとか呼ぶ. ここで と定義する. そしてこのをこの文章では と表す.
2.3 有限次元の場合
定義 7.
を行列とする. この時の作用素ノルムを
と定義する. このノルムの良いところは が成り立つところである.
定義 8.
とし,を開集合とする. そしてとする. このときがで 全微分可能 であるとは 線型写像111本来は接空間の間の線型写像と書くべきかもしれないが,解析学だとユークリッド空間とその接空間を同一視する.また線型写像ではなく,行列と言ってもよい.なぜなら有限次元空間の間の線型写像は行列と同一視されるからである. が存在し
が成り立つときにいう. このときは点において 任意の方向に偏微分可能であり,さらに は行列として
と表される. こののことをの導関数であるとか ヤコビ行列だとか呼ぶ. ここで と定義する. そしてこのをこの文章では と表す.
初等的な事実として以下が成り立つ.
定理 9.
とし,を開集合とする. そしてとする. このとき を級ならば は内の任意の点で全微分可能である. またこのとき; は連続写像である.
定義 10.
一変数の可微分写像に関しては を とか とか書くことにする.
3 中間値の定理
このセクションでは中間値の定理に関する話をする. そもそも中間値の定理とは連結位相空間の連続像が 連結であるというより一般的な定理(この定理も中間値の定理と呼ばれたりする) と実数の連結部分集合は区間に限るという特徴付けを合わせただけのことであるが,連続でなくても可微分関数の導関数になりうる関数も同様の性質を持つので 一変数関数特有の現象もあるにはある.
3.1 本文
定理 11 (一般の中間値の定理).
を連結位相空間とする. そしてを位相空間とし を全射連続写像とする. このときは連結である.
証明.
の開集合, が とを満たしているとする. このとき とは開集合であり, とを満たす. よっての連結性からかもしくは である. つまりかもしくは である. ゆえには連結である. ∎
命題 12.
の連結部分集合は区間のみである.
証明.
区間ならば連結であることはわかる.
逆に連結部分集合ならば区間であることを示そう. を連結集合とすると, 連結性から以下が成り立つ.
-
(a)
任意の についてならばを満たす.
ここで, と定義しよう. するとであり, である. ここでがに属しているか属していないかに応じて, 性質 (a) より は以下の集合のいずれかと一致する.
-
(1)
-
(2)
-
(3)
-
(4)
よってはの区間となる. ∎
定理 13 (中間値の定理).
とし, とする. そして は連続写像とする. そして, とおく. 任意の についてが存在し, を満たす.
証明その2.
まず最初に が成り立つならばであるから 例えばとすれば となる.
以下ではとする. また,最大値最小値の定理から もしくは の時は定理は成り立つ. よって以下では と仮定する.
と定義する.となるをとれば なので である.そこでと定義する. このとき,は連続なので となる. ここでもしもだとすると, の連続性から十分小さい が存在して任意の についてとなるが これはに矛盾する. よってである. ∎
3.2 単射ならば単調関数
一変数の中間値の定理の有用な応用を紹介しよう. 記事 [1]と内容は重複する.
定理 14.
をの区間とし, そして は単射連続写像とする. このときは狭義の単調増加かもしくは 狭義の単調減少である.
証明.
まず
と定義する.このときの連結性からも連結になる. そしてを
と定義する. の定義からであり, の単射性からである. よって上でである. は連結なのでの符号は上で常に正かもしくは 上で常に負である.前者の場合にはが狭義の単調増加であることが従い, 後者の場合にはが狭義単調減少であることが従う. ∎
3.3 Darbouxの定理
定理 15.
はを満たすとし は上連続でさらに可微分であるとする. このときによる の像は連結である. 特に 任意の について , と定義するとき任意の について が存在し を満たす.
証明その1.
まず古典的な証明をする. 最初にかもしくは の時はそれぞれ , とすればよい.
次にの時を考える. 関数を
と定義する. このとき なので かつかもしくは かつ が成り立つ.このときが存在し となることを示そう.
まずかつの時, は上のの最大値ではない. もし最大値であるとしたならば,任意のとなるについて
なのでとなり矛盾する. よっては上の最大値ではない. 同様にも最大値ではないので,最大値はある を用いてとかける. このとき命題 1からである.
かつ の場合はある が存在して上のの最小値は と書けるので 命題1 よりとなる.
いずれにせよとなる が存在する. よってが成り立つ. ∎
証明その2.
平均値の定理を用いた賢い証明を紹介する. 最初にかもしくは のときは またはとすればよい.
次にの時を考える. このとき 二つの関数 を
で
と定義するととは連続関数である. とすると である. そして はと を端点とする区間かもしくはと を端点とする区間のいずれかに属する. 前者であると仮定しても一般性を失わない. の像はと を端点とする区間なので 中間値の定理からが存在し となる. さらに
なので平均値の定理から となる が存在する. よって なので定理が示された. ∎
証明その3.
最初にかもしくは のときは またはとすればよい.
次にの時を考える. このとき としてを
で
と定義する. ここで任意のについて であることと でに注意しよう. に注意しよう. そしてを
と定義すると は連続であり,はと を端点とする区間に含まれるので中間値の定理から となる が存在する. また,
でなので 平均値の定理から となる が存在する. よって となる. ∎
このDarbouxの定理を見て,可微分関数の導関数になるような 関数では一変数関数の基本的な性質が成り立つのではないかと 思うのは比較的スタンダードな数学的直感である. 以下に示す例は可微分関数の導関数になる関数について最大値最小値の定理が成り立たない例である. [6, p.165] 閉区間上でを
また,可微分関数の導関数はリーマン可積分とは限らない. Volterraの反例
可微分関数の導関数はルベーグ可積分とは限らない.
注意.
以上のことから可微分関数の導関数になる関数についてはせいぜい中間値の定理 ぐらいしか一変数の連続関数と共通する性質はないであろうことがわかる.
一般に中間値の定理を満たす関数のことをDarboux 関数と呼ぶ. 至る所不連続だが,どの区間でも中間値の定理を満たす(それどころかどの区間でも全射になる)関数が構成されている. Conway 13 base functionで調べてみよ.
4 有限増分の定理
4.1 可算個の除外点がある有限増分の定理
定理 16 (有限増分の定理その1).
をを満たす実数とし, をバナッハ空間とする. そして , を連続関数とする. このときの可算部分集合が存在し,任意のについて とは微分可能であり, を満たすならば,
が成り立つ.
証明.
を固定し, を を満たす数列とする. 定理を証明するためにまず
| (1) |
が成り立つことを示す.この式が示されれば,として定理の結論を得る. さて,
とおく. まず,なので, がわかる. 特には空ではない. 今とする. がわかれば 式 (4) が成り立つことがわかる. まず最初にを示す. の定義から でと が成り立つものが存在する. このときの定義より任意のについて
が成り立つ.今より
が成り立つので任意のについて
が成り立つ.とすれば,との連続性と から
が成り立つ.つまりである.
さて矛盾を導き出すために と仮定しよう.
Case 1 (となるが存在するとき): との連続性から十分小さい を取ると,任意のについて と が成り立つ. すると任意のについて
が成り立つ. そして
が成り立つ. (ここでであることを用いてはいないことに注意しよう.可算個の点を除いて微分が正ならば非減少関数であるが,それを用いると循環論法に陥る.) よって, を用いて結局
を得るが,なので, となるので,
となる.つまりであり, であるからに矛盾する. よってこの場合にはがわかる.
Case2 (の場合): この場合,点で微分可能であるから 十分小さいについて 任意のについて
である. よって
であり, から
を得る. 以上の不等式から
よって となる. ここでなので に反する. これで矛盾が導かれたので がわかる.
以上で証明が終わる. ∎
定理 17 (高階の有限増分の定理その1).
をを満たす実数とし, をバナッハ空間とする. そして , を連続関数とする. とする. このときの可算部分集合が存在し,任意のについて とは階微分可能であり, 任意のについて で であり,任意のについて を満たすならば,任意のについて
が成り立つ.
証明.
定理 18 (高階の有限増分の定理その2).
をを満たす実数とし, をバナッハ空間とする. そして , を連続関数とする. とする. このときの可算部分集合が存在し,任意のについて とは階微分可能であり, 任意のについて で であり,任意のについて を満たすならば,任意のについて
が成り立つ.
証明.
4.2 除外点が端点のみの有限増分の定理
補題 19 (有限増分の定理).
とし,とする. とする. そしては 上で全微分可能であるとする. このときもしもが任意のについて を満たすならば
が成り立つ.
証明.
今から任意のとについて
が成り立つことを示す. を固定する. 背理法を用いるために
| (2) |
を満たすような全体の集合を とし,は空でないと仮定する. はの開集合であることに注意せよ. そしてとする. であることと の連続性からである. つまりである. さらにもしもならば となるのでが の開集合であるということに矛盾する. よってである. 以上からである. そしてが開集合であることから ならばに十分近い点は全て 式 (2)を満たすので である. 関数は上で全微分可能なので 特にで全微分可能である. よって を十分小さくとれば, 任意のについて となる. そしてから である.以上を踏まえると 任意のについて
が成り立つ. つまり任意のについて なのでに反する. これで矛盾が導かれたのでである. つまり 任意のとについて
が成り立つので,として とすれば
が成り立つ. ∎
別証明.
今から任意のとについて
| (3) |
が成り立つことを示す. 式 (3) が成り立つような全体を とおく.から がわかるのでは空ではない. そしてとおく. の連続性からである. よって を示すことができれば補題の証明は終わる. 矛盾を導くためにと仮定する.
Case 1. の場合: この場合,の連続性から十分小さい を取ればについて が成り立つ. このときなので
がわかる. つまりであるが,なので に矛盾する.
Case 2. の場合: 関数は上で全微分可能なので 特にで全微分可能である. よって を十分小さくとれば,について
となる. そしてから である.以上を踏まえると
が成り立つ. つまりであるが, ここで なので矛盾する.
以上のいずれの場合分けでも矛盾が導かれたので, である.つまり
が成り立つので, とすれば
が成り立つ. ∎
4.3 一変数関数の右微分可能性に係る有限増分の定理
定理 20.
をを満たす実数とする. そして を連続関数とする. このときの可算部分集合 が存在し,任意のについて には有限な右側微分が存在し, を満たすならば, は定数である.
証明.
を固定し, を を満たす数列とする. 定理を証明するために任意のについて
| (4) |
が成り立つことを示す.この式が示されれば,とするとがわかるので定理の結論を得る.
さて,
とおく. まず,なので, がわかる. 特には空ではない. 今からが閉集合であることを証明する. の定義から 点列が かつ ならばが成り立つことを示せばが閉集合であることがわかる. このときの定義より任意のについて
が成り立つ.今より
が成り立つので任意のについて
が成り立つ.とすれば,の連続性と から
が成り立つ.つまりであるので, は閉集合になる.
さて矛盾を導き出すために と仮定しよう.
Case 1 (となるが存在するとき): の連続性から十分小さい を取ると,任意のについて が成り立つ. すると任意のについて
が成り立つ. よって, を用いて結局
を得るが,なので, となるので,
となる.つまりであり, であるからに矛盾する. よってこの場合にはがわかる.
Case2 (の場合): この場合,点で微分可能であるから 十分小さいについて 任意のについて
である. よってより
を得る. 以上の不等式から
よって となる. ここでなので に反する. これで矛盾が導かれたので がわかる.
以上で証明が終わる. ∎
以上で用いた論法は「連続帰納法」とか 呼ばれているようだ. 以下の定理はある程度の仮定があれば 必ず右端に到達するということを述べているが, その定理の「形」はZornの補題と同じである. そしてZornの補題には順序数(超限帰納法) を使った証明があるが, この命題にもまでの 超限再帰を用いた証明がある.
命題 21 (連続帰納法).
で でとする. とする. をその部分集合で以下の条件 を満たすものとする.
-
(1)
.
-
(2)
もしもかつ ならば が存在してと を満たす.
-
(3)
もしもがと を満たすならば が成り立つ.
このときである.
証明その1.
とおく. なのでであるからである. そこで とおく.条件(3)より である. ここでと仮定して矛盾を導く. よりが存在して から が成り立つ.よって だがこれはに矛盾する. ∎
証明その2.
とおく. まず条件(3)からがの閉集合であることがわかる. が開集合であることを証明するために任意にをとる.もしもならばであり が従い,またはにおけるの近傍だからは の内点である. のときには条件(2)より が存在してと を満たす.から なので結局がわかる. 任意にを取るともちろん なのでがわかる.そして はのにおける近傍なのではの内点であることがわかる. さてよりなので特に である. よっての連結性からがわかる. ∎
証明その3.
とおく. するとも条件(1), (2), (3)を満たす. をの可算稠密部分集合で を満たすものとする. このとき写像 で
-
(a)
ならば が成り立つ.
-
(b)
かつならば が成り立つ.
以下のように超限再帰で定義する.
まず と定義する.
そして に対して となる任意の についてが定義されているとしたする. このときが孤立順序数か極限順序数かで場合分けをしてを定義する.
Case1. が孤立順序数のとき, となるが存在する. のときはと定義する. のときは 条件(2)から となる が存在するので適当に と定義する.このときちゃんとである.
Case2. が極限順序数のとき, の共終数は なので が存在して とと が成り立つ. とおく. もしもならば と定義する. もしもならば条件(2), (3)を用いてであって を満たすものが存在するので 適当に と定義する.このときちゃんとである.
さて,は高々可算で は非可算なので順序を保つ写像 は単射ではない.よってある が存在してならば となる. よってである. つまりということなので の定義からがわかる. ∎
4.4 有限増分の定理の応用
命題 22.
をか の開集合とする. を可微分関数であるとする. そして関数を
と定義する. 任意のについて
となる.
証明.
を任意に与え, の凸な開近傍 を十分小さく取り以下が成り立つようにする.
-
(1)
任意のに対して 任意のについてが成り立つ.
-
(2)
任意のについて が成り立つ.
を任意にとる. 集合 上ではが連続なのは仮定から従う.よって と仮定してもよい. そして を
と定義する. このとき
となる.さて
とおくと 補題 19より
である.よって
である. ここでの取り方のから である.ゆえに
が成り立つ.よってでは連続である. 以上からが上で連続であることがわかる. ∎
命題 23.
をか の開集合とする. を可微分関数であり, その微分係数は連続であるとする. そして関数を
と定義する. このときは 上で連続である.
5 平均値の定理
5.1 ロルの定理
定理 24 (ロルの定理).
はを満たすとし, は上で連続であり, 上で可微分であるとする. このとき もしならば が存在して を満たす.
証明.
最大値最小値の定理からには最大値と最小値が存在する. それをそれぞれととしよう.
まず最初にの場合を考える. このときは定数関数となるので適当に を取ればを満たす.
の場合には との少なくとも一方は を使ってと表すことができる. というのも でだからである. とのどちらかがと 表されようとも, はもちろん極小値か もしくは極大値 なので命題 1より が成り立つ. ∎
5.2 Lagrangeの平均値の定理
定理 25 (Lagrangeの平均値の定理).
はを満たすとし, は上で連続で 上で可微分とする. このときが存在して
を満たす.
証明.
まず関数を
と定義する.このとき は上連続であり 上は可微分である. また,定義からとなるので 定理 24 (ロルの定理) から点で を満たすものが存在する. ここで
である. よって移項して整理すれば
を得る. ∎
5.3 Cauchyの平均値の定理
定理 26 (Cauchyの平均値の定理).
連続関数関数は開区間 で微分可能であり,以下の条件のうちどれか一つを満たすとする.
-
(1)
とは上で同時にはにならないとし, はを充たす.
-
(2)
かつ任意のについて を満たす.
-
(3)
任意のについて を満たす.
このとき, でありさらに, が存在して と
を満たす.
証明その1.
まず関数を
と定義する.このとき は上連続であり 上は可微分である. また,定義からとなるので 定理 24 (ロルの定理) から点で を満たすものが存在する. ここで
である.ここで仮定(1)が成り立つ場合にはと は同時にはにならないし, なので である. (2), (3)の時は仮定の時点でである. よって移項して整理すれば
を得る. ∎
証明その.
ここではLagrangeの平均値の定理からCauchyの平均値の定理を導く. ちなみにCauchyのそれからLagrangeのそれが導かれることは当然である.
∎
注意 (平均値の定理に出てくる補助関数について).
[23]を参照せよ. 平均値の定理の証明では,に対して補助的な関数 を構成し,からに対してロルの定理を適応して となる点を見出して,そこから の平均に関する式に変形するという証明をする. 上で述べられている証明では を用いているが, 他の関数でも同様の証明が可能である.例をいくつか挙げる.
-
(1)
上と同じ,
-
(2)
として
-
(3)
として
である. これらは微分すると同じ値になることに注意しよう.
コーシーの平均値の定理についても同様の準備関数を考えることができる.
LagrangeとCauchyの平均値の定理をさらに一般化するものとして 以下のPeanoの平均値の定理がある.
定理 27 (Peanoの平均値の定理).
はを満たすとし, は上で連続で 上で可微分とする. このときが存在して
が成り立つ.
5.4 その他
命題 1 の系として以下がわかる.
系 28.
を可微分な連続関数とし, 点は内の 点で を満たすならば はの 極小点でも 極大点でもない.
定理 29.
はを満たすとし, は上で連続で 上で可微分とする. さらに と仮定する. このときが存在して
を満たす.
証明.
必要ならばをに変更して と仮定しても一般性を失わない. を
と定義すると上で連続であり, 上微分可能である. さらにに関して
である. 今からとなるの存在を示す. ここでもしもならばロルの定理から となるが存在する. もしもならば,
となる.もしもが最大値だとすると となるについて
なのでとなるので に矛盾するのでは最大値ではない.さらに なのでも最大値ではない. よって最大値はが存在してと表すことができる. さらに命題 1がより となる. のときも同様なのでいずれにせよ となるが存在する. このとき
なので
が成り立つ. ∎
定理 30.
はを満たすとし, は上で連続で 上で可微分とする. さらに と仮定する. このときが存在して
を満たす.
証明.
を と定義しと に対して定理 29 を適応すればわかる. ∎
命題 31.
はを満たすとし, は上で連続で 上で可微分とする. このときが存在して
を満たす.
証明.
関数を と定義する.このとき で となるからロルの定理により となる が存在する. このとき
なので移項すれば
が成り立つ. ∎
命題 32.
はを満たすとし, は上で連続で 上で可微分とする. このときが存在して
を満たす.
証明.
を用いて命題31 と同様にすれば良い. ∎
定理 33.
-
(1)
が 最大値でも最小値でもないとすると が存在して
が成り立つ.
-
(2)
が 極大値でも極小値でもなく, が の集積点ではないとする. このとき が存在して と
が成り立つ.
6 テイラーの定理
6.1 漸近記号
定義 34.
上の部分集合上で定義された関数は、あるが存在して
を充たすとき、点の十分近くで定義されているという。 点の十分近くで定義されている関数全体を で表す。
定義 35.
とする。このとき集合を
と定義する。
注意.
をを変数とする一階の述語だと思えば、を集合で定義する必要はない。 また、一階の述語と集合の間にはそれなりの関係がつけられるし、本質的に間違いでもないと思う。 しかしながらこのようにランダウの記号を集合として定義したのは、しばしば という等号の濫用によって無用の混乱が起こるのが嫌だからである。
以下では 記号を簡潔にするため,
をと略記する.
を階微分可能関数とし, 、とする. また,は点において階微分可能であるとする. このときを変数とする関数を
と定義する. 任意のについては階微分可能で,さらに について
であり,任意のについて
である. また
そしては点で階微分可能で, におけるその階微分係数はであることに注意しよう.
以下のGonçalvesのテイラーの定理はおそらく筆者が今回の調査で知った剰余項の中でも一番洗練されているものであろう.
定理 36 (Gonçalvesのテイラーの定理).
をの十分近くで定義された階微分可能関数とする. このときとの間にあるが存在して
が成り立つ.
Cauchyの平均値の定理を使った証明.
さて に関する関数をと定義する. ところで
であるので Cauchyの平均値の定理をと,そして区間,またはに用いると(との大小関係によってどちらの区間をを使うかが変わる.)
となるがとの間に存在することがわかる. であることを用いて, とに対して再びCauchyの平均値の定理を適用し
となるがとの間に存在することがわかる. 繰り返し回Cauchyの平均値の定理を用いて
となるがとの間に存在することがわかる.
ここでであり
なので結局
を得る. ∎
以下は有限増分型のテイラーの定理と言えそうである.
命題 37 (Peano型のテイラーの定理).
をの十分近くで定義された階微分可能関数としよう.このとき が成り立つ.
有限増分の定理を使った証明.
は点で階微分可能で 点での階微分係数はである. よって任意にを与えると に十分近いについて
が成り立つ. を用いると
がわかる. ならば定理 17を とに用いて, ならば とに用いて,
を得る. は任意だったので である. ∎
Cauchyの平均値の定理を使った証明.
さて に関する関数をと定義する. ところで
であるので Cauchyの平均値の定理をと,そして区間,またはに用いると(との大小関係によってどちらの区間をを使うかが変わる.)
となるがとの間に存在することがわかる. であることを用いて, とに対して再びCauchyの平均値の定理を適用し
となるがとの間に存在することがわかる. 繰り返し回Cauchyの平均値の定理を用いて
となるがとの間に存在することがわかる. ここでとするととなり, のにおける階微分係数がであることから
よってである. ∎
定理 38 (Lagrange型のテイラーの定理).
を階微分可能関数とし、とする。このとき任意のについて との間の点が存在して
を充たす。つまり、
である。
Gonçalvesの剰余項(定理 36)を使った証明.
Cauchyの平均値の定理を使った証明.
繰り返しCauchyの平均値の定理を用いて
となるが存在することがわかる。よって定理は示された。 ∎
Rolleの定理を使った証明.
ならばもちろん定理は成り立つので とする. を固定して,を
を満たす( に依存する)定数である. そしてをの関数として
とする. このとき である. そしてなのでロルの定理から となる.点が存在する. なので再びロルの定理が使える. これを回繰り返すととなるがと の間に存在する. さて
なので として である.の定義から
となることがわかる. ∎
定理 39 (積分形のテイラーの定理).
をの十分近くで定義された級関数とする.
が成り立つ.
証明.
とおく. まず,微分積分の基本定理より
を得る. まずが成り立っているとする.このとき 部分積分の公式より
なのでを踏まえると
を得る. このことと 帰納法から
がわかる. ∎
以下の命題は級関数がWhitneyの意味で級であることを示している。
命題 40.
は級関数とする。このとき任意のと 任意の点と任意のについてあるが存在して、ならば
を充たす。
証明.
であることに注意しよう。このときLagrangeのテイラーの定理から
となるがとの間に存在する。 よって
が成り立つ。命題の主張はの連続性から直ちに従う。
7 多変数の場合
7.1 多重指数記法
とする。に対して
と定義する。 また、に対して
とし、
と定義する。
7.2 定理
定理 41 (多変数のテイラーの定理(Lagrange)).
とし、を上の階微分可能関数で点で階微分可能なものとする。 このときの中でと直線を結べるに対して、その直線上の点が存在して
となる。つまり
証明.
とにLagrangeのテイラーの定理を適用すればよい。 ∎
以下の命題は級関数がWhitneyの意味で級であることを示している。
命題 42.
任意の点と任意のについてあるが存在して、ならば
を充たす。
証明.
Lagrangeのテイラーの定理と近傍の凸性から直ちに従う。 ∎
多変数の場合にもペアノ型のテイラーの定理は適当な仮定の下に成り立つがここでは省略する。
∎
日本語の文献は適当に並べている. 日本語でない参考文献はカテゴリーごとにアルファベット順に並んでいる.
References
- [日本語のwebサイトの文献]
- [1] はてなブログ「電波通信」の記事「実数直線上の単射連続写像について」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/09/13/195426.
- [2] 箱さんのwebサイトの「微分のノート」, https://o-ccah.github.io/docs/differentiation.html, 2022/03/12閲覧.
- [日本語の文献]
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