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ユークリッド空間の可算稠密推移性

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章ではユークリッド空間の 可算稠密推移性を紹介する. つまり,n次元ユークリッド空間ℝn の可算稠密集合A, B が与えられたときに同相写像f:ℝn→ℝn が存在してf⁢(A)=B が成り立つことを証明する.

1 準備:n=1の場合

以下の定理の証明は [1]を参照のこと.

定理 1.

最大値及び最小値を持たない可算で自己稠密な線形順序集合は互いに順序同型である。特に有理数と順序同型である。

補題 2.

A, Bを ℝの可算稠密集合とする. このときそして全単射 f:A→Bは順序を保つ写像とする. このときfは連続写像になる.

証明.

AとBの番号付けを A={ai}, B={bi}として さらにf⁢(ai)=bi が成り立つようにする.(Aの番号付けを先に与えて, f⁢(ai)=biによってBの番号付けを定義すれば良い) 任意にϵ>0をとり, 任意にan∈Aを与える. このときf⁢(an)=bnであり, Bの稠密性から bN,bM∈Bが存在して

(1) bn−ϵ<bN<bn<bM<bn+ϵ

が成り立つ. このときfが順序を保つことから 集合A∩(aN,aM)はanの開近傍 になる. そしてx∈A∩(aN,aM) について式 (1)と fが順序を保つことから|f⁢(x)−bn|<ϵ となるので,fはanで連続である. よってfはA上連続である. ∎

補題 3.

Aをℝの稠密可算集合とし, S⊂Aは最大元を持たず, u,v∈Aが v∈Sとu<vを満たす ならばu∈Sを満たすときあるy∈ℝ が存在して S=A∩(−∞,y)を満たす. このときA∖S=A∩[y,∞) である.

証明.

y=supSとすれば良い. ∎

定理 4.

AとBをℝの可算稠密部分集合とする. このとき 順序を保つ写像 f:A→Bは 同相写像f:ℝ→ℝで f⁢(A)=B を満たすものに拡張される.

証明.

A,Bをℝの稠密可算集合とすると、 これらはℚと同型である. よって特にAとBは順序同型なので その順序同型写像をf:A→Bとする. 適当にA, Bを番号付けして f:A→Bを f⁢(ai)=biと定義したときに順序同型になるようにする. 今からこの写像をℝ全体に拡張することを考えよう. x∈ℝについて Rx=(−∞,x), Lx=[x,∞) とする.このときfは順序を保つなので Sx=f⁢(A∩Rx), Tx=(A∩Lx) とおくと Sxはu,vがu<vかつv∈Sxを満たすならば u∈Sxを満たし,Sxには最大元が存在しないのであるy∈ℝが存在し Sx=B∩(−∞,y)となる. 同様にTx=B∩[y,∞) となる.そこでこのyを用いてf⁢(x)=yと定義する. ここでもしx=aiならばy=biになることに注意しよう. このf:ℝ→ℝが連続であることを証明しよう. まず,fが順序を保つことを証明しよう.つまり x<yならばf⁢(x)<f⁢(y)である.これを証明するためにまず x<an<yというan∈A がAの稠密性から存在することに注意しよう. するとbn∉Sf⁢(x) とbn∈Sf⁢(y)が成り立つことからわかる. 特にbn∈Tf⁢(x)なので f⁢(x)≤bn<f⁢(y)なのでfが順序を保つことがわかる. このことから特にfは単射である. 任意にϵ>0とx∈ℝを取る. するとBの稠密性からbNとbM が存在して

(2) f⁢(x)−ϵ<bN<f⁢(x)<bM<f⁢(x)+ϵ

が成り立つ. 写像fが順序を保つことからaN<x<aM がわかる.つまり(aN,aM) はxの開近傍となる.任意のz∈(aN,aM) を取るとfが順序を保つことと式  (2)から |f⁢(z)−f⁢(x)|<ϵ がわかるのでfが連続であることがわかる. さて,f−1:A→Bも同じように拡張を施して 連続写像g:B→Aを得る. このとき任意のn∈ℤ≥0 について g⁢(f⁢(an))=anと f⁢(g⁢(bn))=bn がわかるのでfとgの連続性から 任意のx∈ℝについて f⁢(g⁢(x))=xとg⁢(f⁢(x))=x がわかるのでf, gは互いに逆写像であるから fが同相写像であることがわかる. fの定義からf⁢(A)=Bなので定理が示された. ∎

2 本文:一般の場合

補題 5.

n∈ℤ≥1として s∈ℝnとする. そしてv=(x1,…,xn)∈ℝn×n とi∈{ 1,…,m} およびa∈ℝnに対して S⁢p⁢(v,i,a) を{xk}k≠iとaから生成されるℝn の線形部分空間とする. このとき集合

Ta,i={(x1,…,xn)∈ℝn×n∣rank⁡S⁢p⁢(v,i,a)=n}

はℝn×nのなかで稠密開集合である.

証明.

v=(x1,…,xn)∈ℝn×n に対して f⁢(v)を行列(x1,…,xn) の第i列をaに変えた行列の行列式を表すことにする. するとfはn×n次多項式であり,恒等的に0ではない. よってf⁢(v)≠0となるvは稠密に存在し (多項式に関する一致の定理, [2]を参照のこと), またこのようなv全体は開集合をなす. そしてrank⁡S⁢p⁢(v,i,a)=nとf⁢(v)≠0 は同値なのでこれで証明が終わる. ∎

v=(x1,…,xn)∈G⁢L⁢(n)とa∈ℝn に対してprv,i⁡(a)で 基底x1,…,xnに関するaの第i成分を表すとする. つまりa=∑i=1nprv,i⁡(a)⁢xiである.

定理 6.

n∈ℤ>0 とする. Sをℝnの可算な部分集合で0∉Sとする. このとき 基底v=(x1,…,xn)∈ℝn が存在して, 任意のx∈Sについて pri⁡(x)≠0となるものが存在する.

証明.

G⁢L⁢(n)はℝn×n の稠密開集合であることに注意しよう. そして

T=G⁢L⁢(n)∩⋂a∈A⋂i=1nTa,i

と定義する. すると各Ta,iは稠密開集合なので ベールの範疇定理からTはℝnの稠密集合となる. よって(x1,…,xn)∈Sをとれば求める基底になる.なぜならばもしもそうでないとするとあるiとa∈Sについて prv,i⁡(a)=0となるが,これは{xk}k≠i が張る線型空間にaが属していることを意味し, それはrank⁡S⁢p⁢(v,i,a)<nを導く.これはv∈Ta,i に反するので定理が従う. ∎

以下では prv,i⁡(x)を単にxiや(x)iなどと書いたりする.

定義 7.

(x1,x2)∈ℝn×ℝnが 一般の位置にあるとは、任意のi∈{1,…,n}について

(x1)i−(x2)i≠0

を満たすことである。集合A⊂ℝnが一般の位置にあるとは、任意の組(x,y)∈A×Aが一般の位置にある時に言う。

定義 8.

一般の位置にある二つの組(x1,x2),(y1,y2)∈ℝn×ℝn が 共鳴的に場所取りしているとは、 任意のi∈{1,…,n}について、 (x1)i−(x2)iと(y1)i−(y2)iが同じ符号を持つ時に言う。

定義 9.

番号付された二つの高々可算な、有限の場合には同じ濃度を持つ集合A={ai},B={bi}⊂ℝnが 共鳴的に位置取り しているとは、 任意の組(i,j)∈ℕ2について、(ai,aj)と(bi,bj)が共鳴的に位置取りしている時に言う。

補題 10.

Aをℝnの可算部分集合とする。この時、ℝnの基底(v1,v2,…,vn)で、これによる座標系においてAが一般の位置になるものが存在する。

証明.

S={x−y∣x,y∈A}∖{0} に対して 定理6を適応すれば 定理は従う. ∎

命題 11.

A,Bをℝnの可算な稠密集合で、それぞれ一般の位置にあるとする。 この時A,Bが共鳴的に位置取りするように番号付けできる。

証明.

帰納的に{ci}=A, {di}=Bという列を以下のように作っていく. まず、c1=a1, d1=b1, d2=b2と定義する。 次にiを(c1,ai)と(d1,d2)が共鳴的に位置取りするような最小の自然数とする。そして、c2=aiと定義する。Aが稠密であることから、このようなiは存在する。 一般に偶数番までciとdiが構成されたとしよう。つまり、 c1,c2,…,c2⁢jとd1,d2,…,d2⁢jが構成されたとしよう。 この時c2⁢j+1とd2⁢j+1を以下のように構成する。 自然数sを、c1,c2,…,c2⁢jに属さないaiの番号の一番小さいものとする。この時c2⁢j+1=asと定義する。 次に自然数tをc1,c2,…,c2⁢j,c2⁢j+1とd1,d2,…,d2⁢j,dtが共鳴的に位置取りする番号の一番小さいものとする。そしてd2⁢j+1=btと定義する。

さらにc2⁢j+2とd2j+2を以下のように構成する。 自然数pはd1,d2,…,d2⁢j+1に含まれないbpの一番小さい番号とする。そしてd2⁢j+2=dqと定義する。 次に、自然数qをc1,c2,…,c2⁢j+1,aqとd1,d2,…,d2⁢j+1,d2⁢j+2が共鳴的に位置取りしているようになるaqのうち最小の番号とする。そしてc2⁢j+2=aqと定義する。

以上の帰納的構成は、A,Bが共に稠密であることから可能である。 ∎

定理 12.

A,Bをℝnの可算稠密集合とする。 この時、同相写像f:ℝn→ℝnが存在して、

f⁢(A)=B

を充たす。

証明.

適当に基底と番号を取り替えて、A={ai}, B={bi}は共鳴的に位置取りしており,AとBは共に一般の位置にあるとしても良い. 一般にai=(ai,1,…⁢ai,n), 一般にbi=(bi,1,…⁢bi,n) と表すことにする.AとBが一般の一になるように座標をとっているので i≠jならば任意のk∈{1,…,n} について ai,k≠aj,kかつbi,k≠bj,k となる. 今 k∈{1,…,n} に対して Ak=πk⁢(A), Bk=πk⁢(B) とする.ここでπkはk番目の座標の射影である. するとAkとBk はℝの可算稠密部分集合でさらに共鳴的に番号付けされていることからfk⁢(ai,k)=bi,k で定義するとfkは順序を保つ同型写像になる.(もしAとBが一般の位置になければ潰れる番号もあるので,このようにfを定義しても順序同型にならないし,そもそもfが定義できなかったりする.) ここで定理 4より, fkは同相写像fk:ℝ→ℝで fk⁢(Ak)=Bk になるものに拡張できる. いま f:ℝn→ℝn を f⁢(x)=(f1⁢(x1),…,fn⁢(xn)) と定義しよう. このときai=(ai,1⁢…,ai,n) について f⁢(ai)=(f1⁢(ai,1),…,fn⁢(ai,n))=(bi,1⁢…,bi,n) なのでf⁢(A)=Bである. g⁢(x)=(f−1⁢(x1),…,f−1⁢(xn)) とすればgはfの逆写像になる. よってfは同相写像である. ∎

References

  • [1] はてなブログ「電波通信」の記事「有理数の順序集合としての特徴付け」
    https://concious4410.hatenablog.com/entry/2017/05/07/013312
    
  • [2] はてなブログ「電波通信」の 記事「多項式に関する一致の定理」
    https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/03/12/160928
    
  • [3] W. Hurewicz and H. Wallman, Dimension theory, Princeton University Press. 1948.