ルベーグの微分定理と積分の変数変換定理
1 ルベーグの微分定理
以下ではにはノルム が備わっているとするが,特に断りのかぎり,具体的に指定しない.
定義 1.
と定義する.
補題 2 (「5r被覆補題」).
とし,空集合ではないとする. そして
が成り立つと仮定する. このとき,部分集合 が存在して以下を満たす.
-
(1)
もしも が を満たすならば, 以下が成り立つ.
-
(2)
以下が成り立つ.
証明.
Zornの補題を用いる. 集合を の部分集合で以下の条件を満たすものとする.
-
(a)
もしも が を満たすならば, 以下が成り立つ.
-
(b)
もしもが
を満たすならば が存在して と が成り立つ.
このときはZornian set(いわゆる帰納的集合)になることを示そう. まずが空集合ではないことを示そう. とおく. するとある が存在して が成り立つ. このときがに属することを示そう. (b)の条件を確かめれば良いが,なのでこの条件を満たすことは明らかである.
また,が鎖である時に は簡単に確かめられる. 以上からがZornian setになることがわかり, Zornの補題から極大元が存在する. が補題の条件を満たすことを示そう. 補題の(1)の条件を満たすことはの条件からわかる. (2)の条件を示そう. まず背理法のためにある が存在してを満たすとしよう. そして とおき, としてを を満たすものとする. このときは の(a)の条件を満たす. ついで(b)の条件も満たす.というのも もしもを満たすならば, とが同時に成り立つ場合以外は(b)の結論が成り立つことはが(b)を満たすことから従うが, このとが同時に成り立つ場合にはからやはり も(b)の条件を満たすことがわかる.これはが極大であることに反するので, である. つまり,任意のについて
となる. すると(b)の条件から が存在して と を満たす. このときを満たすので (2)の条件が満たされる. ∎
定義 3.
とする. は次元ルベーグ測度を表すとする.
補題 4.
はの球体の族に被覆されており、
とする。 このとき が存在して以下を満たす。 の元は互いに交わらず、
証明.
補題 2からわかる. ∎
定義 5.
とし, を 開集合とする. このとき を次の条件を満たす可測関数 全体の集合とする: 任意のコンパクト集合について
を満たす.
定義 6.
とする. とする。このときについて
と定義する。 可測関数のは可測関数なのでは可測関数である。
命題 7 (weak estimation).
とする. ならば任意のに対して
が成り立つ。ここでは次元にのみ依存する関数である。
証明.
とする。 に対して、 が存在して
を満たす。
に先の被覆定理を用いて
を得るので,とすればよい. ∎
命題 8.
とする. について ほとんど至るところのについて
証明.
命題の主張は局所的なものなので適当にコンパクト集合に制限して最初からとしてもよい. まず、連続関数については定理が成り立つことに注意しよう。(積分の平均値の定理) について
と定義する. コンパクト台を持つ連続関数はのなかで稠密なので, コンパクト台の連続関数で
となるものをとる。 そして
から
が成り立つ. マルコフの不等式から
を得る. そして
が成り立つことに注意しよう. そして被覆補題から
が成り立つ.さて
が成り立つので上での議論から
が成り立つ.は任意なので 任意のについては零集合である. ここで
とすると なので,ほとんど至る所で
が成り立つ. ∎
命題 9.
とする. と ほとんどいたるところのについて
証明.
2 積分の変数変換公式
定理 10.
とする. を開集合とする. を同相写像とし、で全微分可能であるとする。 このとき
でが成り立つ.
証明.
が平行移動の場合か, が基本行列を用いて であるときに定理が成り立つことは が個の の直積測度であることとFubiniの定理からわかる (逐次積分). 可逆行列は基本行列のいくつかの積としてかけるので, 以下では 必要ならばとを可逆行列をかけて変数変換する操作を行って一般の場合を証明するし, そうしても一般性を失わない. また, とすると なので 上の議論から となる.
必要ならば適当にとの座標を平行移動といくつかの基本行列をかけることによって変数変換して が成り立ち, は対角行列でその成分がかであるとしても良い(掃き出し法).
Case 1: まず最初にが単位行列の時を考える。
がで全微分可能なので 任意のに対して 十分小さいと任意のについて
| (1) |
が成り立つ. を とする. ここで であるので
が成り立つから
| (2) |
である.
またについて (1)から
である. ここでとすると
| (3) |
である.ここでが同相写像であることから なので
| (4) |
が成り立つ. また, なのでの連結性と (4)から
が成り立つ.よって
| (5) |
を得る.ゆえに
が成り立つ.
Case 2: 次にが単位行列でない時に証明する.
とおく.行列は 成分がとしても良い。
この時がで全微分可能であることから 十分小さいと任意のについて
| (6) |
が成り立つ. についての第成分が である場合には
が成り立つ. 仮定から少なくともについてはこれが成り立つ.
他の場合について
を得る. ゆえに
となる.
以上の議論と から
である.よって
を得て,は任意であるから
となる.以上で証明が終わる. ∎
定理 11.
開集合とし, , をそれぞれルベーグ測度をに制限したものとする. を級同相写像とし, はいたるところ全微分可能で, のゼロ集合をのゼロ集合に移すとする. このとき上の測度を とすると(つまり である)
がなりたつ
証明.
定理 12 (変数変換公式).
開集合とし, , をそれぞれルベーグ測度をに制限したものとする. を同相写像とし, はいたるところ全微分可能で, のゼロ集合をのゼロ集合に移す. この時,について
証明.
以上の場合を用いると,が単関数の場合も導かれる. そして,単関数近似近似を用いればが一般の場合も証明できる. ∎
References
- [1] ユルゲン・ヨスト著, 小谷元子訳, ポストモダン解析学, シュプリンガー・フェアラーク東京, 2000.
- [2] 水谷義弘, 実解析入門, 培風館, 1999.