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陰関数定理と逆関数定理

ナンブキトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では陰関数定理と逆関数定理を証明する. この文章では断りのない限り,ノルムの記号は絶対値と同じ記号で表してしまう. またユークリッド空間にはノルムが常に備わっているとするが,特に具体的になんのノルムであるかは断りがない限り明示しない.

1 準備

定義 1.

A:ℝk→ℝl を行列とする. この時Aの作用素ノルムを

|A|=supx∈ℝk,x≠0|A⁢x||x|

と定義する. このノルムの良いところは |A⁢x|≤|A|⋅|x|が成り立つところである.

まず有限次元のノルムは全て同値であることを紹介する. 証明は[4]などを参照のこと.

補題 2.

Vを有限次元実線型空間とする. この時V上のノルムは全て同値になる.つまり, そして|⋅|1と|⋅|2をVの上のノルムとするとあるN>0が存在して任意のx∈Vについて

N−1⁢|x|1≤|x|2≤N⁢|x|1

が成り立つ.

このことから以下で定義する全微分可能性は有限次元空間においてはどのノルムで定義しても同値であることがわかる.

定義 3.

k,l∈ℤ≥1 とし,U⊂ℝkを開集合とする. そしてf:U→ℝlとする. このときfがa∈Uで 全微分可能 であるとは 線型写像111本来は接空間の間の線型写像A:Ta⁢U→Tf⁢(a)⁢ℝlと書くべきかもしれないが,解析学だとユークリッド空間とその接空間を同一視する.また線型写像ではなく,行列と言ってもよい.なぜなら有限次元空間の間の線型写像は行列と同一視されるからである. A:ℝk→ℝl が存在し

limx→a,x≠a|f⁢(x)−f⁢(a)−A⁢(x−a)||x−a|

が成り立つときにいう. このときfは点aにおいて 任意の方向に偏微分可能であり,さらに Aは行列として

A=(∂fj∂xi⁢(a))i=1,…,k,j=1,…,l

と表される. このAのことをfの導関数であるとか ヤコビ行列だとか呼ぶ. ここで f=(f1,…,fl)と定義する. そしてこのAをこの文章では A=(𝐃⁢f)⁢(a)と表す.

初等的な事実として以下が成り立つ.

定理 4.

k,l∈ℤg⁢e⁢1 とし,U⊂ℝkを開集合とする. そしてf:U→ℝlとする. このとき fをC1級ならば fはU内の任意の点で全微分可能である. またこのとき𝐃⁢f:U→ℝk×l; x→(𝐃⁢f)⁢(x) は連続写像である.

定義 5.

k,l∈ℤg⁢e⁢1 とし,U⊂ℝkを開集合とする. そしてf:U→ℝlはC1級とする. このとき関数e:U×U→ℝl を

e⁢(x,y)=f⁢(x)−f⁢(y)−(𝐃⁢f)⁢(y)⁢(x−y)

と定義する. この関数は連続関数であることに注意しよう. そして U×U上の 関数E:U×U→ℝlを

E⁢(x,y)={e⁢(x,y)|x−y|x≠y⁢;0x=y

と定義する.

この定義のもと次が成り立つ.

補題 6.

k,l∈ℤ≥1 とし,U⊂ℝkを開集合とする. そしてf:U→ℝlをC1級とする. このとき任意のa∈Uについて

limx→a,x≠ae⁢(x,a)|x−a|=limx→aE⁢(x,a)=0.

が成り立つ.

証明.

全微分可能性の定義から明らか. ∎

補題 7 (有限増分の定理).

l∈ℤ≥1 とし,[a,b]⊂ℝとする. η>0とする. そしてf:[a,b]→ℝlは (a,b)上で全微分可能であるとする. このときもしもM>0が任意のx∈(a,b)について |𝐃⁢f⁢(x)|≤Mを満たすならば

|f⁢(b)−f⁢(a)|≤M⁢(b−a)

が成り立つ.

証明.

今から任意のx∈[a,b]とϵ>0について

(1) |f⁢(x)−f⁢(a)|≤(M+ϵ)⁢(x−a)+ϵ

が成り立つことを示す. 式 (1) が成り立つようなx∈[a,b]全体を Sとおく.ϵ>0から a∈SがわかるのでSは空ではない. そしてc=supSとおく. fの連続性からc∈Sである. よって c=bを示すことができれば補題の証明は終わる. 矛盾を導くためにc<bと仮定する.

Case 1. c=aの場合: この場合,fの連続性から十分小さいη>0 を取ればt=a+ηについて |f⁢(t)−f⁢(a)|≤ϵが成り立つ. このとき0<(M+ϵ)⁢(t−a)なので

|f⁢(t)−f⁢(a)|≤ϵ≤(M+ϵ)⁢(t−a)+ϵ

がわかる. つまりt∈Sであるが,a<tなのでa=c=supS に矛盾する.

Case 2. a<cの場合: 関数fは(a,b)上で全微分可能なので 特にcで全微分可能である. よって η>0 を十分小さくとれば,t=c+ηについて

|f⁢(t)−f⁢(c)−(𝐃⁢f)⁢(c)⁢(t−c)|≤ϵ⁢(t−c)

となる. そしてc∈Sから |f⁢(c)−f⁢(a)|≤(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ である.以上を踏まえると

|f⁢(t)−f⁢(a)| ≤|f⁢(t)−f⁢(c)|+|f⁢(c)−f⁢(a)|
≤|(𝐃⁢f)⁢(c)⁢(t−c)|+ϵ⁢(t−c)+(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ
≤M⁢(t−c)+ϵ⁢(t−c)+(M+ϵ)⁢(c−a)+ϵ=(M+ϵ)⁢(t−a)+ϵ

が成り立つ. つまりt∈Sであるが, ここでc<t なのでc=supS矛盾する.

以上のいずれの場合分けでも矛盾が導かれたので,c=b である.つまり

|f⁢(b)−f⁢(a)|≤(M+ϵ)⁢(b−a)+ϵ

が成り立つので,ϵ→0 とすれば

|f⁢(b)−f⁢(a)|≤M⁢(b−a)

が成り立つ. ∎

補題 8.

k,l∈ℤ≥1 とし,U⊂ℝkを開集合とする. そしてf:U→ℝlをC1級とする. するとE:U×U→ℝlはU×U上で連続である.

証明.

この証明では行列には作用素ノルムを導入して考える. a∈Uをとる.e⁢(x,y)は定義からU×U上連続であるから このときlim(x,y)→(a,a)|E⁢(x,y)|=0 となることを示せば良い. そして ϵを任意に与え, aの凸な開近傍N を十分小さく取り以下が成り立つようにする.

  1. (1)

    任意のx,y∈Nに対して 任意のt∈[0,1]についてt⁢x+(1−t)⁢y∈Uが成り立つ.

  2. (2)

    任意のz1,z2∈Nについて |f⁢(z1)−f⁢(z2)|≤ϵ が成り立つ.

x,y∈Uを任意にとる.ここでx≠yと仮定してもよい. そして F:[0,1]→ℝlを

F⁢(t)=f⁢(y+t⁢(x−y))−(𝐃⁢f)⁢(a)⋅(y+t⁢(x−y))

と定義する. このとき

dd⁢t⁢F⁢(t)=((𝐃⁢f)⁢(y+t⁢(x−y))−(𝐃⁢f)⁢(y))⋅(x−y)

となる.さて

Mx,y=supt∈[0,1]|((𝐃⁢f)⁢(y+t⁢(x−y))−(𝐃⁢f)⁢(y))|

とおくと 補題 7より

|e⁢(x,y)| =|f⁢(x)−f⁢(y)−(𝐃⁢f)⁢(y)⁢(x−y)|
=|F⁢(1)−F⁢(0)|≤|x−y|⁢Mx,y

である. ここでNの取り方の(2)から Mx,y≤ϵである.ゆえに

|E⁢(x,y)|≤Mx,y≤ϵ

が成り立つのでEが連続であることがわかる. ∎

以下の事実を思い出そう. 証明[5]などを参照のこと.

定理 9 (パラメータ付きの不動点定理).

(X,d)を完備距離空間、Tを位相空間とし写像 f:X×T→Xが連続であるとし、f⁢(x,t)=ft⁢(x)と書くことにする。さらに

∃q∈[0,1),∀x,y∈X,∀t∈T,d⁢(ft⁢(x),ft⁢(y))≤q⁢d⁢(x,y)

を充たし(qがtに依存してないことに注意せよ。)

∀x∈X⁢ft⁢(x)⁢が⁢t⁢に⁢つ⁢い⁢て⁢有⁢界

であるとする。(このときxを固定してft⁢(x)がtについて有界で連続になる。)このとき通常のBanachの不動点定理から存在と唯一性が示されるt毎のftの不動点をh⁢(t)と書くことにし、写像h⁢(t):T→Xとみなしたとき、h⁢(t)は連続写像である。

2 陰関数定理

不動点定理(定理9)を用いて陰関数定理を証明する. その前にU⊂ℝn×ℝm としてF:U→ℝmについて Uのℝnの成分(ℝnへの射影)をx方向, ℝmの成分(ℝmへの射影)をy方向と呼ぶことに しよう.そしてz=(x,y)∈Uに対して

(𝐃x⁢F)⁢(z)=(∂Fj∂xi⁢(z))j=1,…,m,i=1,…,n
(𝐃y⁢F)⁢(z)=(∂Fj∂yi⁢(z))i,j=1,…,m

と定義する.(𝐃y⁢F)⁢(z)が正方行列であることに注意せよ. また,行列として

(𝐃⁢F)⁢(z)=((𝐃x⁢F)⁢(z)|(𝐃y⁢F)⁢(z))

が成り立つ. これをもとにして (a,b)∈Uに対して(𝐃⁢F)⁢(a,b)を (x,y)∈ℝm+nに作用すると

(𝐃⁢F)⁢(a,b)⁢(x,y)=(𝐃x⁢F)⁢(a,b)⁢x+(𝐃y⁢F)⁢(a,b)⁢y

が成り立つ. するとFが(a,b)で全微分可能ならば

F⁢(x,y)=F⁢(a,b)−(𝐃x⁢F)⁢(a,b)⁢x−(𝐃y⁢F)⁢(a,b)⁢y+e

となる.

定理 10.

U⊂ℝn×ℝm は開集合でF:U→ℝmは点(x0,y0)∈U で

F⁢(x0,y0)=0

と

g⁢(x0)=y0

と

det((𝐃y⁢F)⁢(x0,y0))≠0

を満たすとする. この時x0の開近傍O1 とy0の開近傍O2と 連続関数g:O1→O2が存在して

O1×O2⊂U

と

∀x∈O1,F⁢(x,g⁢(x))=0.

を満たす. さらにO1を十分小さくとれば (𝐃y⁢F)⁢(x,g⁢(x))が常に可逆行列になり,gは C1級で

(𝐃⁢g)⁢(x)=−(𝐃y⁢F)⁢(x,g⁢(x))−1⋅(𝐃x⁢F)⁢(x,g⁢(x))

が成り立つ.

証明.

まず行列Lを L=(𝐃y⁢F)⁢(x0,y0)とおく.そして H:U→ℝm を

H⁢(x,y)=y−L−1⁢F⁢(x,y)

とおく. 明らかにHは連続関数になる. 以下ではHx⁢(y)=H⁢(x,y) と書くときもある. さて, α>0に対して

Vα={(x,y)∈U∣|(x,y)−(x0,y0)|<α}

とおく. α>0を十分小さく取り, Vα⊂Uとなるようにする. このとき(x,y1),(x,y2)∈Vαを満たすx,y1,y2 について

|Hx⁢(y)−Hx⁢(y2)|=|y1−L−1⁢F⁢(x,y1)−y2+L−1⁢F⁢(x,y2)|
=|L−1⁢(F⁢(x,y2)−F⁢(x,y1)−L⁢(y2−y1))|
≤|L−1|⋅|(F⁢(x,y2)−F⁢(x,y1)−L⁢(y2−y1))|
=|L−1|⋅|e⁢((x,y2),(x,y1))|.

が成り立つ.ここで|L−1| はL−1の作用素ノルムとする.作用素ノルムでなくても,定数倍がかかるだけなので以下の議論には本質的に関係ない. まとめると,つまり(x,y1),(x,y2)∈Vαを満たすx,y1,y2 について

(2) |Hx⁢(y)−Hx⁢(y2)|≤|L−1|⋅|e⁢((x,y2),(x,y1))|.

が成り立つ. ϵ>0を任意に与えた時に αを十分小さくとれば (x,y1),(x,y2)∈Vαならば

|e⁢((x,y2),(x,y1))|≤ϵ⁢|(x,y1)−(x,y2)|=ϵ⁢|y1−y2|

となる. ところで,δ1>0とη>0を十分小さくとれば |x−x0|<δ1と |y−y0|≤ηを満たすならば (x,y)∈Vαが成り立つようにできる(積位相の定義). よってϵ<12⁢|L−1|ぐらいに十分小さくとれば, |x−x0|<δ1と |y1−y0|≤ηと |y2−y0|≤η が成り立つならば

|e⁢((x,y2),(x,y1))|≤12⁢|y1−y2|.

となる. さらにHは連続なのでδ2>0を十分小さくとれば xが|x−x0|<δ2を満たすとき

|H⁢(x,y0)−H⁢(x0,y0)|<η2

が成り立つ. よってδ=min⁡{δ1,δ2}とおけば x∈ℝnと y1,y2∈ℝmが |x−x0|<δと|y1−y0|≤ηと |y2−y0|≤ηが成り立つならば

|Hx⁢(y1)−Hx⁢(y2)|≤12⁢|y1−y2|

と

|H⁢(x,y0)−H⁢(x0,y0)|<η2.

が成り立つ. O1={x∈ℝn∣|x−x0|<δ}, O2={y∈ℝm∣|y−y0|<η}, A={y∈ℝm∣|y−y0|≤η} とおく. 必要ならδとηを十分小さく取り

O1×A⊂U

が成り立つとしてもよい. Hの定義域を制限して

H:O1×A⊂U→ℝm

とする. F⁢(x0,y0)=0からH⁢(x0,y0)=y0 が成り立つことと δ,ηの取り方から

|Hx⁢(y)−y0|=|H⁢(x,y)−H⁢(x0,y0)|
≤|H⁢(x,y)−H⁢(x,y0)|+|H⁢(x,y0)−H⁢(x0,y0)|
<12|⁢y−y0|+η2≤η.

なのでH⁢(O1×A)⊂Aであり,Hは

H:O1×A→A

とみなせる. さて,Aはコンパクトであるから, 有界で完備な距離空間なのでパラメーター付きのバナッハの不動点定理(定理 9)の仮定を満たすので, 連続関数g:O1→Aで

Hx⁢(g⁢(x))=g⁢(x)

を満たすものが存在することがわかる.

H⁢(x,y)=y−L−1⁢F⁢(x,y) なので

Hx⁢(g⁢(x))=g⁢(x)⇔F⁢(x,g⁢(x))=0

である. さらに

|Hx⁢(y)−y0|=|H⁢(x,y)−H⁢(x0,y0)|
≤|H⁢(x,y)−H⁢(x,y0)|+|H⁢(x,y0)−H⁢(x0,y0)|
<12|⁢y−y0|+η2≤η.

の計算から |g⁢(x)−y0|<ηであるから gはg:→⁢O1→O2とみなせて,このような関数はO1上唯一存在する. 不動点の唯一性からg⁢(x0)=y0もわかる. これで定理の前半が示された.

後半の微分可能性について調べよう. 集合 {(x,y)∈U∣det((𝐃y⁢F)⁢(x,y))≠0} は開集合 なのでO1とO2を小さくとれば (𝐃y⁢F)⁢(x,y)が可逆になることがわかる. さて, x1∈O1を任意に与え, y1=g⁢(x1) とおき,

A=(𝐃x⁢F)⁢(x1,y1)
B=(𝐃y⁢F)⁢(x1,y1)

とおく. F⁢(x1,y1)=F⁢(x1,g⁢(x1))=0であり,また Fはもちろん(x1,y1)で全微分可能であるから 任意の(x,y)∈Uについて

(3) F⁢(x,y)=A⁢(x−x1)+B⁢(y−y1)+e⁢((x,y),(x1,y1))

となり,また

(4) lim(x,y)→(x1,y1)e⁢((x,y),(x1,y1))|(x,y)−(x1,y1)|=0.

が成り立つ. さてここで,後出しだが,ℝn×ℝm 上のノルムは, ℝnとℝmのノルムから誘導されるmaxノルムであるとする. すなわち|(a,b)|=max⁡{|a|,|b|}ということである. 他のノルムでもどうせ同値なのであるが,簡単なのでこのように定めておくことにする.またℝnとℝmのノルムは別になんでも構わない. 式 (3)と|(x,y)|≤|x|+|y|からρ>0を十分小さくとれば, x,yが|x−x1|≤ρと|y−y1|≤ρを満たすならば

(5) |e⁢((x,y),(x1,y1))|≤12⁢|B−1|⁢(|x−x1|+|y−y1|)

である. 式 (3)においてy=g⁢(x)とおき変形すると

(6) g⁢(x)−g⁢(x1)=−B−1⁢A⁢(x−x1)+B−1⁢e⁢((x,g⁢(x)),(x1,g⁢(x1)))

であり 式 (5)から,ρ>0を十分小さくとれば |x−x1|≤ρを満たすxについて

(7) |e⁢((x,g⁢(x)),(x1,g⁢(x1)))|≤12⁢|B−1|⁢(|x−x1|+|g⁢(x)−g⁢(x1)|)

が成り立つ. そして 式 (6)からρ>0を十分小さくとれば |x−x1|≤ρを満たすxについて

|g⁢(x)−g⁢(x1)|≤|B−1⁢A|⁢|x−x1|+|B−1|⁢|e⁢((x,g⁢(x)),(x1,g⁢(x1)))|
≤|B−1⁢A|⁢|x−x1|+12⁢|x−x1|+12⁢|g⁢(x)−g⁢(x1)|

なので,整理すると, |x−x1|≤ρを満たすxについて

(8) |g⁢(x)−g⁢(x1)|≤M⁢|x−x1|

となる.ここでM=|B−1⁢A|+1 である. maxノルムの定義と式 (8) から|x−x1|≤ρを満たすxについて

|(x,g⁢(x))−(x1,g⁢(x1))|≤M⁢|x−x1|

が成り立つ.これを用いると

limx→x1|e⁢((x,g⁢(x)),(x1,g⁢(x1)))||x−x1| ≤1M⁢limx→x1|e⁢((x,g⁢(x)),(x1,g⁢(x1)))||(x,g⁢(x))−(x1,g⁢(x1))|
=1M⁢lim(x,y)→(x1,y1)|e⁢((x,y),(x1,y1))||(x,y)−(x1,y1)|
=0.

となる. ゆえに 式 (6)から

limx→x1|g⁢(x)−g⁢(x1)+B−1⁢A⁢(x−x1)||x−x1|=0

が成り立つ.これはgがx1において全微分可能であり,

(𝐃⁢g)⁢(x1)=−(𝐃x⁢F)⁢(x1,y1)⋅(𝐃y⁢F)⁢(x1,y1)

であることを意味している. これで証明が終わる. ∎

注意.

以上の証明において重要なのはHの定義であるが,このようにおくのが少し不明である.ただ,Hのy0のおけるy方向の微分は0になるので,どんな小さいリプシッツ係数でもy0の近くでリプシッツ条件を満たすようなるし, H⁢(x0,y0)=y0にもなるので,このように定義したい気持ちを慮ることができる.

3 逆関数定理

陰関数定理を用いると逆関数定理が比較的簡単に証明できる. 実は逆関数定理を認めて用いれば陰関数定理も比較的簡単に証明できる.

補題 11.

n∈ℤ≥1とし, U⊂ℝnは開集合とする. そしてf:U→ℝnはC1級関数とし, f⁢(a)=bで,(𝐃⁢f)⁢(a)は可逆であるとする. このときaの開近傍Vが存在し, V上でfは単射になる.

証明.

aの開近傍Vを十分小さく取り,以下が成り立つようにする.

  1. (1)

    任意のx∈Vについてdet((𝐃⁢f)⁢(x))≠0である.

  2. (2)

    M>0が存在して任意のx∈Vについて |((𝐃⁢f)⁢(x))−1|<Mが成り立つ.

  3. (3)

    ϵ=1/Mとして 任意の(x,y)∈V×Vについて|E⁢(x,y)|≤ϵ が成り立つ.(これは補題 8からEが連続であることとE⁢(a,a)=0から可能である)

背理法で証明する.fがV上で単射ではないと仮定する. すると,x,y∈Vが存在して x≠yと f⁢(x)=f⁢(y)を満たす. L=(𝐃⁢f)⁢(y)とおく. このとき

0=f⁢(x)−f⁢(y)=L⁢(x−y)+e⁢(x,y)

となるのでE⁢(x,y)≤ϵから |e⁢(x,y)|≤ϵ⁢|x−y|なので

|x−y|≤|L−1|⋅|e⁢(x,y)|≤ϵ⁢|L−1|⋅|x−y|

が成り立つ.つまり

1≤ϵ⁢|L−1|<1M⁢M=1

なので矛盾する. よってfはV上で単射である. ∎

定理 12.

n∈ℤ≥1とし, U⊂ℝnは開集合とする. そしてf:U→ℝnはC1級関数とし, f⁢(a)=bで,(𝐃⁢f)⁢(a)は可逆であるとする. このとき,aの開近傍V1⊂U とbの開近傍V2⊂ℝn が存在してf:V1→V2は C1級微分同相である.つまりC1級関数g:V2→V1でfの逆関数になるものが存在する. そしてgの微分に関して

(𝐃⁢g)⁢(y)=((𝐃⁢f)⁢(g⁢(y)))−1

が成り立つ.

証明.

補題 11を用いて aの開近傍Nを十分小さく取り, N上でfは単射であるようにする. そして F:N×N→ℝnを F⁢(y,x)=y−f⁢(x) と定義すると, F⁢(b,a)=0で (𝐃x⁢F)⁢(a,b)=L なので(𝐃x⁢F)⁢(a,b)は可逆である. ゆえに 陰関数定理より aの開近傍V1⊂U とbの開近傍V2⊂ℝn と C1級関数g:V2→V1が存在して F⁢(y,g⁢(y))=0とg⁢(b)=aが成り立つ. つまり任意のy∈V2について y=f⁢(g⁢(y))である. これはf:V1→V2が全射であることを意味する. 証明の始まりでfの定義域を単射になるように小さくしたことを踏まえるとf:V1→V2は全単射である.よって (連続かどうかはわからないけれど)逆写像が存在する. このとき任意のy∈O2について y=f⁢(g⁢(y))なのでf−1⁢(y)=g⁢(y) なので,gがfの逆写像であることがわかる. gの微分について合成の微分公式からわかる. ∎

注意.

陰関数定理と逆関数定理は適切に全微分を定義すればバナッハ空間に値をとる関数についても成り立つ.無限次元だとノルムの同値性など成り立たなくなるが,この文章の証明でノルムを恣意的に選んでいるのは直積にmaxノルムを採用している部分と Eの連続性を証明するときに作用素ノルムを使っている部分 なので,ほぼそのままの証明が適用できると思われる.

4 応用

定理 13 (開写像定理).

m,n∈ℤ≥1とする. U⊂ℝm×ℝnを開集合とし f:U→ℝm はC1級写像で点a∈U において rank⁡(𝐃⁢f)⁢(a)=mとする. このときf⁢(a)はf⁢(U)の内点となる.

証明.

m×m次行列Aと m×n次行列B を用いて (𝐃⁢F)⁢(a)=(A⁢B)と 表すことにする. 適当にUの座標の順番を並べ替えて Aが可逆行列であるとしてもよい. F:U×ℝn→ℝm を F⁢(x,y)=(f⁢(x,y),y)と定義する. このとき

(𝐃⁢F)⁢(x,y)=((𝐃⁢f)⁢(x)0En)=(AB0En)

となる. いま,Aが可逆行列なので (𝐃⁢F)⁢(a)は可逆になる. よってFに逆関数定理を適応できて, aの開近傍M1×M2と F⁢(a)の近傍Wが存在して F:M1×M2→Wは同相写像になる. 開集合V1⊂ℝmと V2⊂ℝnを V1×V2がF⁢(a)の開近傍となり, V1×V2⊂W となるようにとれば,Fの定義から V1×V2⊂F⁢(M1×M2)=f⁢(M1)×M2 となる.この式からV1⊂f⁢(M1)⊂f⁢(U) なのでf⁢(a)はf⁢(U)の内点であることがわかる. ∎

命題 14 (沈め込み型の局所表示).

m,n∈ℤ≥1とする. U⊂ℝm×ℝnを開集合とし f:U→ℝm はC1級写像で点a∈U において rank⁡(𝐃⁢f)⁢(a)=mとする. 写像πm:ℝm×ℝn→ℝm はℝmへの射影とする. このとき点aの開近傍Vと 開集合O⊂ℝm×ℝn そして同相写像ϕ:O→Vが存在して f∘ϕ=πmとなる.

証明.

ϕ1:ℝm×ℝn→ℝm×ℝn を座標の番号の入れ替えとして,次の条件を満たすものとする.

  1. (1)

    g=f∘ϕ1とおいたときに m×m次行列Aと m×n次行列B を用いて (𝐃⁢g)⁢(a)=(A⁢B)と 表すときに Aが可逆行列である.

線形代数の行列の階数の理論からこのようなϕ1 は存在する. そして F:ϕ1−1⁢(U)×ℝn→ℝm を F⁢(x,y)=(g⁢(x,y),y)と定義する. このとき

(𝐃⁢F)⁢(x,y)=((𝐃⁢g)⁢(x)0En)=(AB0En)

となる. いま,Aが可逆行列なので (𝐃⁢F)⁢(a)は可逆になる. よってFに逆関数定理を適応できて, aの開近傍M1と F⁢(a)の開近傍M2 が存在してF:M1→M2 が同相写像になる. そしてϕ2=F−1と定義すると πm∘ϕ2−1⁢(x,y)=g⁢(x,y) なので πm∘ϕ2=g となるから ϕ=ϕ1∘ϕ2 とおけば定理は証明される. ∎

命題 15 (埋め込み型の局所表示).

m,n∈ℤ≥1とする. U⊂ℝmを開集合とし f:U→ℝm×ℝn はC1級写像で点a∈U において rank⁡(𝐃⁢f)⁢(a)=mとする. 写像ιm:ℝm→ℝm×ℝn はιn⁢(x)=(x,0)で定義される埋め込みであるとする. このときf⁢(a)の開近傍Vと開集合O⊂ℝm×ℝnと 同相写像ϕ:V→Oが存在して, f−1⁢(V)上で ϕ∘f=ιn が成り立つ.

証明.

ϕ1:ℝm×ℝn→ℝm×ℝn を座標の番号の入れ替えとして,次の条件を満たすものとする.

  1. (1)

    g=ϕ1∘fとおいたときに m×m次行列Aと n×m次行列B を用いて

    (𝐃⁢g)⁢(a)=(AB)

    と 表すときに Aが可逆行列である.

線形代数の行列の階数の理論からこのようなϕ1 は存在する. そして F:U×ℝn→ℝm×ℝnを F⁢(x,y)=(g⁢(x),y)と定義する.

(𝐃⁢F)⁢(a,y)=(A0BEn)

である. このときAの可逆性から (𝐃⁢F)⁢(a,0)も可逆になるので逆写像定理より (a,0)の十分小さい開近傍 Nと (f⁢(a),0)の十分小さい開近傍 MをとればF:N→Mは同相写像になる. そしてϕ2=F−1と定義すると, ϕ2∘g⁢(x,y)=F−1∘F⁢(x,0)=(x,0)=ιn なので定理は成り立つ. ∎

References

  • [1] ユルゲン・ヨスト著, 小谷元子訳, ポストモダン解析学, シュプリンガー・フェアラーク東京, 2000.
  • [2] 松本幸夫, 多様体の基礎, 東京大学出版会, 1988.
  • [3] 杉浦光夫, 解析入門II, 東京大学出版会, 1985.
  • [4] はてなブログ「電波通信」の記事「有限次元ベクトル空間のノルムは全部同値」 https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/10/22/170022
  • [5] はてなブログ「電波通信」の記事「バナッハの不動点定理」 https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/10/27/162651
  • [6] H. Cartan, Cours de Calcul Différentiel, Hermann, 1967.
  • [7] J. Dieudonné, Foundation of modern analysis, Academic Press, 1960.