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大数の法則について:確率論その1のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

確率論の初歩と大数の法則

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文書では,確率変数などの定義や,確率変数の独立性の概念を説明した後に,様々な形の大数の法則を紹介する.

1 確率空間の基本事項

π-λ定理については [1] を参考にしても良い.

定義 1 (π系).

Xを集合とし, 𝔄Xの部分集合族とする. このとき 𝔄π であるとは以下の条件を満たすときにいう.

A,B𝔄AB𝔄.

また,Xの部分集合族𝔖に対して, 𝔖から生成される最小のπ系を π(𝔖)と書くことにする.

定義 2.

Xを集合とし, 𝔅Xの部分集合族とする. このとき 𝔅λ であるとは以下の条件を満たすときにいう.

  1. (λ1)

    X𝔅.

  2. (λ2)

    A,B𝔅ABBA𝔅.

  3. (λ3)

    {Ai}i𝔅 が単調な列ならば, iAi𝔅.

また,Xの部分集合族𝔖に対して, 𝔖から生成される最小のλ系を λ(𝔖)と書くことにする.

定理 3 (π-λ定理).

Xを集合とし, 𝔄Xπ系で, 𝔅Xλ系とする. このとき 𝔄𝔅 ならば

σ(𝔄)𝔅

が成り立つ.ここでσ(𝔄)𝔄から生成される最小の完全加法族を表すとする.

定義 4.

位相空間Xに対して,Xの開集合系から生成される 完全加法族を𝔅(X)と書くことにする. この集合族をボレル集合族という.

定義 5.

測度空間 (X,𝔐) 上の測度 μ確率測度であるとは, μ(X)=1 を満たすときにいう. μ が確率測度であるとき,測度空間 (X,𝔐,μ)確率空間と呼び, Xの元のことを 事象と呼ぶ.

定義 6.

確率空間 (X,𝔐,μ)から 可測空間(Y,𝔑)への可測写像可測写像を (Y,𝔑)-値確率変数と呼ぶ. あるいは紛れがないときには単に 確率変数と呼んだりもする.

定義 7.

確率空間 (X,𝔐,μ) とその上の確率変数fについて Xf𝑑μ𝔼(f)と書いたりする. 特に 𝔼(f)f期待値と呼んだり, f平均値と呼んだりする. そしてn1に対して, 𝔼(fn)fn次モーメントと 呼んだりする. 𝔼(fn)<であるときfLn 関数とか言ったりするが,これは測度論と同じ言葉遣いである. また, 𝕍(f)=𝔼((f𝔼(f))2)f分散と呼ぶ. 簡単な式変形で 𝕍(f)=𝔼(f2)(𝔼(f))2 となることがわかる.

定義 8.

(X,𝔐,μ) を確率空間とし, (Y,𝔑) を可測空間とする. このとき可測写像ϕ:XYに対して 写像ϕμ:𝔑[0,]ϕμ(A)=μ(ϕ1(A)) と定義するとこれは (Y,𝔑)上の測度になる. この測度 ϕμϕによるμの押し出し測度と呼ぶ.

補題 9.

(X,𝔐,μ) を確率空間とし, (Y,𝔑) を可測空間とする. このとき可測写像ϕ:XYと 任意の可測関数f:Yについて

Xf(ϕ(x))𝑑μ=Yf(y)d(ϕμ)

が成り立つ.

証明.

fが階段関数の場合を示せば単調収束定理から定理は従う. その階段関数の場合というのも,特性関数の場合を示せば従う.A𝔑とする. このとき任意のxXについて ϕ(x)Axϕ1(A)と 同値なので, χA(ϕ(x))=χϕ1(A)(x) となる. よって

XχA(ϕ(x))𝑑μ=μ(ϕ1(A))=(ϕμ)(A)=YχA𝑑ϕμ

となるから特性関数の場合が証明された. ∎

定義 10.

X を集合とし, (Y,𝔑) を可測空間とする. このとき写像ϕ:XYに対して

ϕ1(𝔑)={ϕ1(A)A𝔑}

と定義する.これを,𝔑ϕによる引き戻しと呼ぶ.

補題 11 (一般化マルコフの不等式).

ϕ:[0,)[0,) を非負値単調非減少関数とし, (X,𝔐X,μ)を測度空間とする. このとき任意の t>0 について, ϕ(t)>0 ならば, 任意の可測関数 f:X について

μ({xX|f(x)|>ε})1ϕ(ε)Xϕ(|f(x)|)𝑑μ

が成り立つ.

証明.

まず,ϕは可測であることに注意しよう. これは不連続点が高々可算個しかないからである. S={xXf(x)>ε}とおく. 任意のxSについて,ϕ(ε)ϕ(f(x))なので,任意のxX について 1Sϕ(f)/ϕ(ε)が成り立つ. よって

μ(S)=X1S𝑑μXϕ(f)/ϕ(ε)𝑑μ1ϕ(ε)Xϕ(f)𝑑μ

を得る. ∎

命題 12 (チェビシェフの不等式).

(X,X,μ)を確率空間とし, fを可測関数, m=𝔼(f), σ=𝕍(f)とおく. このとき任意のr[0,)について

μ({xX|f(x)m|>rσ})1r2

が成り立つ.

証明.

|fm|ϕ(x)=x2について マルコフの不等式(補題 11)を用いれば良い. ∎

定義 13.

(X,X) を可測空間とする.可測集合列{An} について

lim supAn=k=1n=kAn

と定義し,この集合を{An} の上極限と呼ぶ. また,

lim infAn=k=1n=kAn

と定義し,{An}の下極限と呼ぶ. 定義からlim sup(XAn)=Xlim inf(An) がわかる.

補題 14 (Borel-Cannteliの補題その1).

(X,𝔐X,μ)を確率空間とし, {An}nをその可測集合列とする. もしi=1μ(An)<ならば, μ(lim supAn)=0である.

証明.

上極限の定理から,任意のkについて, lim supAnn=kAnなので

μ(lim supAn)n=kμ(An)

がわかる.k=1μ(Ak)<なので, 右辺はkのとき0に収束する.よって μ(lim supAn)=0. ∎

補題 15 (Borel-Cannteliの補題その2).

(X,𝔐X,μ) を確率空間とし, {An}nをその独立な可測集合列とする. もし i=1μ(An)=ならば, μ(lim supAn)=1である.

証明.

任意にkk<Nを与えたとき,

1μ(n=kAn) 1μ(n=kNAn)μ(n=kN(XAn))
=n=kNμ(XAn)=n=kN(1μ(An))
exp(n=kNμ(An))

が成り立つ. ここで,x(0,)について1xexp(x){An}の独立性を用いた. Nとすれば,exp(n=kNμ(An))0 となるので,任意のkについてμ(n=kAn)=1である. 換言すると

μ(n=k(XAn))=0

である. さて,

μ(Xlim infAn)=μ(k=1n=k(XAn))k=1μ(n=k(XAn))=0

なのでμ(lim supAn)=1である. ∎

2 確率論における独立性概念

定義 16.

(X,𝔐,μ) を確率空間とする. {𝔉i}iIXの完全加法族の族で 𝔉i𝔐 を満たすものとする. このとき,{𝔉i}iI独立であるとは Iの任意の有限部分集合{i1,,in}と 任意の A1𝔉i1,,An𝔉inに対して

μ(k=1nAk)=k=1nμ(Ak)

が成り立つときにいう. また,{𝔉i}iI組ごとに独立であるとは 異なる二つのa,bIに対して, {𝔉a,𝔉b} が独立であるときにいう.

定義 17.

(X,𝔐X,μ)を確率空間とし, と {(Yi,𝔐Yi)}iI を可測空間の列とする. このとき, 可測関数の族 {fi:XYi}iI独立であるとは, 任意の有限集合 SIの任意の部分集合族 {Ai}iSについて.

μ(iSfi1(Ai))=iSμ(fi1(Ai))

が成り立つことと定義する. これは,族 {fi1(𝔐Yi)}が 完全加法族の族として 独立であるということである.

また, 可測関数の族{fi:XYi}iI組ごとに独立であるとは, 任意の二元集合{a,b}Iについて fafbが独立である時にいう.

補題 18.

(X,𝔐X,μ)を確率空間とし, と {(Yi,𝔐Yi)}iI{(Zi,𝔐Zi)}iI を可測空間の列とする. また, {Gi:YiZi}iI は可測関数の列であるとする.このとき 関数の族 {fi:XYi}iI が独立な可測関数からなるのならば, {Gifi:XZi}iI も独立である.

証明.

任意のiIについて

(Gifi)1(A)=fi1(Gi1(A))

が成り立つことから明らかである. ∎

定義 19.

Iを集合とし, {(Xi,𝔐i)}iI を可測空間の族とする. このときiIXi の部分集合が 柱状集合であるとはそれが 集合族{Ai}iIであって Ai𝔐iを満たしさらに 有限個のiをのぞいてAi=Xiとなるようなものを用いて

iIAi

の形にかける時にいう. 柱状集合全体をで書くことにする. そしてから生成される有限加法族を 𝔇と表すことにする. 𝔇から生成される完全加法族を iI𝔐iと書くことにする.(つまり iI𝔐i=σ(𝔇)=σ()) 以下では可測空間の直積にはこの可測構造が備わっているものとする.

命題 20.

(X,𝔐X,μ)を確率空間とし, と {(Yi,𝔐Yi)}iI を可測空間の列とする. {fi:XYi}iIは 独立な確率変数の族とする. JIとし, F:XjJYjF(x)=(fj(x))jJと定義する. このとき,確率変数の列 {F}{fi}iIJ は独立である.

証明.

S(IJ)を有限集合とし, 各iSについてAi𝔐Yi を任意に固定する. さて,𝔄jJ𝔐Yjの部分集合で,

μ(F1(A)iSfi1(Ai))=μ(F1(A))iSμ(fi1(Ai))

が成り立つようなA全体の集合とする. さて,柱状集合とF,そして独立性の定義から 𝔄 がわかる. また,𝔄λ系をなすことも 容易にわかる. π系なので, π-λ定理から 𝔄=jJ𝔐Yj がわかる. よって{F}{fi}iIJ は独立である. ∎

系 21.

(X,𝔐X,μ), を確率空間とし, (Z,𝔐Z)は可測空間で, {(Yi,𝔐Yi)}iI を可測空間の列とする. {fi:XYi}iIは 独立な確率変数の族とする. JIとし, g:jJYjZ は可測関数とする. このとき,確率変数の列 {g((fj)jJ)}{fi}iIJ は独立である.

系 22.

F:XjJYjF(x)=(fj(x))jJと定義すると 考えている族は {gF}{fi}iIJ とかける. よって命題20 と補題18から,系が従う.

系 23.

上と同じ仮定で Miminもしくはmaxを表すとする.このとき {fi}iI が独立ならば {Mi(fi,0)}iI も独立である.

以下の命題は独立な可測関数に関する重要な性質である.

定理 24.

任意の確率空間 (X,𝔐,μ)上の 任意の独立な有限個の可測関数列 {fi:X}i=1n について

𝔼(f1f2fn)=𝔼(f1)𝔼(f2)𝔼(fn)

が成立する.

証明.

確率変数fに対して f+=max(f,0)f=min(f,0) と書くことにすると, 𝔼(f)=𝔼(f+)𝔼(f)である. よって先の系 より,各fiが非負値の時に命題を証明すれば良い. fiが非負値の時には各iIについて以下の条件を満たす単関数の列{sik}kが存在する.

  1. (1)

    任意のkについてsikfi

  2. (2)

    任意のkについてsiksik+1

  3. (3)

    任意のkと任意のasik(X)について (sik)1(a)=σ(fi1(()))

この{sik}iについて命題が成り立つことをみよう. 各sikは互いに素な可測集合{A(i,k,l)}lを用いて

sik(x)=l=1m(i)a(i,l)1A(i,k,l)

と表されているとする. この時

𝔼(sik)=l=1m(i)a(i,l)μ(A(i,k,l))

である. さて

i=1nsik=l1,l2,,lial1i=1a(i.li)1i=1nA(i,k,l)

であり,A(i,k,l)fiによる一点集合の引き戻しとして書けるのだから{fi}iの独立性から

𝔼(i=1nsik)=l1,l2,,lial1i=1a(i.li)μ(A(i,k,l))

である. この右辺はi=1n𝔼(sik)に等しいので結局 任意のkについて

𝔼(i=1nsik)=i=1n𝔼(sik)

が成り立つ.ここで,kとすれば 単調収束定理から

𝔼(f1f2,,fn)=𝔼(f1)𝔼(f2)𝔼(fn)

がわかる. ∎

3 可測関数の収束の概念

定義 25.

(X,𝔐,μ) を測度空間とする. {fn}n0(X,𝔐,μ)上の確率変数の列とする. f(X,𝔐,μ)上の確率変数とする. このとき {fn}n0f概収束するとは,

μ({xXlimnfn(x)=f(x)})=0

となるときにいう.つまりはほとんど至る所各点収束しているということである.このとき fna.s.fと書く.

定義 26.

p[1,)とする. (X,𝔐,μ) を測度空間とする. {fn}n0(X,𝔐,μ)上の確率変数の列とする. f(X,𝔐,μ)上の確率変数とする. このとき {fn}n0fp次平均収束するとは, {fn}n0fLp収束するときにいう. つまり,

X|fn(x)f(x)|p𝑑μ=0

が成り立つことである. この条件は limn𝔼(|fnf|p)=0 と書いても同じことである. このとき fnLpf とかく.

定義 27.

(X,𝔐,μ) を測度空間とする. {fn}n0(X,𝔐,μ)上の確率変数の列とする. f(X,𝔐,μ)上の確率変数とする. このとき {fn}n0f確率収束するとは, 任意のϵ(0,)に対して

limnμ({xX|fn(x)f(x)|>ϵ})=0

が成り立つときにいう. このとき fn𝑃fと書く.

定義 28.

{(Xn,𝔐n,μn)}n0 を測度空間の列とする. 各nについてfn:X(Xn,𝔐n,μn)上の確率変数とする. (X,𝔐,μ)を確率空間とし, f(X,𝔐,μ)上の確率変数とする. このとき {fn}n0f分布収束する,あるいは 法則収束するとは, 任意のϕCb()について

limnXnϕf(x)𝑑μn=Xϕf(x)𝑑μ

が成り立つときにいう. これは

limnXnϕ(t)d((fn)μn)=Xϕ(t)d(fμ)

と同値である. このとき fn𝑑f とかく. 上記で説明した三つの収束とは違い,各fn は同一の確率空間上に定義されている必要はないことに注意しよう.

命題 29.

(X,𝔐,μ) を測度空間とする. {fn}n0(X,𝔐,μ)上の確率変数の列とする. f(X,𝔐,μ)上の確率変数とする. このとき 以下が成り立つ.

  1. (1)

    fna.s.f ならば fn𝑃f

  2. (2)

    p[1,)とする.このとき fnLpf ならば fn𝑃f

  3. (3)

    fn𝑃f ならば fn𝑑f

証明.

[(1)の証明] ϵ(0,)を任意に与える. Sn={xX|fn(x)f(x)|>ϵ} と定義する. fn𝑃を示すには μ(Sn)0を示せば良い. ここで,仮定よりfna.s.fなので, χSn0に各点収束する.よってルベーグの優収束定理から,μ(Sn)0がわかる.

[(1)の証明終わり]

[(2)の証明] マルコフの不等式(補題 11)から

μ(Sn)1ϵpX|fnf|p𝑑μ

となるのでわかる.

[(2)の証明終わり]

[(3)の証明]

任意に単射ϕ:00 を与える. fn𝑃fなので特に fϕ(n)𝑃fでもある. よって単射ψ00 が存在して, fϕψ(n)a.s.f となる. 特に任意のgCb()について gfϕψ(n)a.s.gf である. よってルベーグの優収束定理から 𝔼(gfϕψ(n))𝔼(gf) である. もしも,𝔼(gfn)𝔼(gf) に収束しないならば,ある単射ϕ:00とあるr(0,)が存在して r<|𝔼(gfϕ(n))𝔼(gf)| となるが,これは上記の議論に矛盾する. よって𝔼(gfn)𝔼(gf)である. これはfn𝑑fを意味する.

[(3)の証明終わり] ∎

4 大数の弱法則

この節では,大数の弱法則を二つ紹介する.

大数の弱法則は大まかに言えば, 平均値が有限で,同一であるような 確率変数列からn項目までの平均という確率変数列を新たに作ると,その平均の列は元の確率変数列の平均値に 確率収束することを述べた定理である. 一般には最初に与える確率変数列の平均が同一である必要はなく,より強く次のことが言える.

定理 30 (大数の弱法則その1).

(X,X,μ) を確率空間とする.そして {fi}iを組ごとに独立なL1確率変数とする. ここで,Sn=1ni=1nfimn=1ni=1n𝔼(fi) とおくと, もし Θ=supi𝕍(fi)< ならば, 任意のεに対して,

μ({xX|Snmn|>ε})Θε2n

が成り立つ. 特にmnmならば Sn𝑃m(n)である.

証明.

S={xX|Snmn|>Θε}とおく. このとき,一般化マルコフの不等式から,

μ(S) 1ε2X|Snmn|2𝑑μ=1ε2n2X|i=1n(fi𝔼(fi))|2𝑑μ
=1ε2n2X(i=1n(fi𝔼(fi)))2𝑑μ=1ε2n2Xi,j(fi𝔼(fi))(fj𝔼(fj))dμ
=1ε2n2iX(fi𝔼(fi))2𝑑μ=1ε2n2i𝕍(fi)1ε2n2(nΘ)
Θε2n

がわかる. 途中で,組ごとの独立性から,ijならば

X(fi𝔼(fi))(fj𝔼(fj))𝑑μ=(X(fi𝔼(fi))𝑑μ)(X(fj𝔼(fj))𝑑μ)=0

となることを使った. ∎

定理 30 から, 系として次を得る. 一般にはこちらの形の弱法則を見る機会が多いかもしれない.

定理 31 (大数の弱法則その2).

(X,X,μ) を確率空間とする.そして {fi}iを組ごとに独立な同分布L1確率変数 とする. ここで,Sn=1ni=1nfim=𝔼(f1)とおくと, もし σ=𝕍(fi)< ならば, 任意のεに対して,

μ(|Snm|>ε)σε2n

が成り立つ. 特に nのとき Sn𝑃mである.

5 大数の強法則

この節では大数の強法則を証明する. 弱法則が確率収束について述べた定理であるのに対して, 強法則は概収束に関する定理である.

まず最初に確率変数の4次モーメントが有限であるという仮定の下での強法則を証明する.この仮定を使うと比較的簡単に定理を証明できる.

定理 32 (大数の強法則その1).

{fi}iを確率空間(X,𝔐X,μ) 上の独立な可測関数とする. Sn=1ni=1nfiとおく. m,v,h(0,)とする. もし,iによらず, m=𝔼(fi), v=𝔼(fi2), h=𝔼(fi4)が成り立つならば,Sna.s.mとなる.

証明.

まず,

(Snm)4 =((fim)/n)4
=1n4(i(fim)4+i,j(42)(fim)2(fjm)2+i,j,k,l(41)(fim)(fjm)(fkm)(flm)+i,j(43)(fim)3(fjm))

である. 積分をすると独立性から,後ろ二つの項は0になる.よって

𝔼((Sm)4) =1n4(i=1nh+ij(42)v2)
=1n4(nh+3(n2n)v2)

つまり,

E((Snm)4)=O(n2)

である. 各k0に対して Ak={xX|Skm|k0.1}, Bk=XAkとおく. すると マルコフの不等式(補題 11)から

μ(Bk)E((Skm)4)/(k0.1)4Mk1.6

がわかるので,

k=1μ(Bk)<

がわかる. よってボレルカンテリの補題その1 (補題14)から μ(lim supBk)=0である. つまりμ(lim infAk)=1である. xlim infAkとすると, 下極限の定義から,あるnが存在して,任意のknについて, xAk, つまり|Sk(x)m|<k0.1. よって limnSn(x)=mがわかるので Snmに概収束する. ∎

次に,4次モーメントではなく, 2次モーメント(分散)が上から抑えられているときの強法則を紹介する.

定理 33 (大数の強法則その2).

{fi}iを確率空間(X,𝔐X,μ) 上の独立なL2可測関数とし,v(0,) とする.そして 𝔼(fi)=0vi=𝔼(fi2)vと仮定する. Sn=1ni=1nfiとおく. このときSna.s.0 が成り立つ.

証明.

Tn=i=1nfiとおく. そして,可測関数m=1(Tm2/m2)2の積分を考える.

𝔼(m=1(Tm2/m2)2) =m=11m4𝔼(Tm22)=m=11m4i=1m2𝔼(fi2)m=11m4m2v
=vm=11m2<

故に ほとんど至る所のxXで, m=1(Tm2(x)/m2)2<である. よって,ほとんど至る所のxXlimm(Tm2(x)/m2)2=0, つまり, limmTm2(x)/m2=0 となることががわかる. さて,可測関数Umを以下のように定義する.

Um=maxm2+1k(m+1)2|i=m2+1kfi|

そして,Umの2次モーメントを以下のように評価する.

𝔼(Um2) k=m2+1(m+1)2𝔼((i=m2+1kfi)2)
=k=m2+1(m+1)2i=m2+1k𝔼(fi2)=k=m2+1(m+1)2(km2)vk=m2+1(m+1)2(2m+1)v
(2m+1)2v.

故に,可測関数m=1(Um/m2)2の積分を考えると,

𝔼(m=1(Umm2)2)=m=11m4𝔼(Um2)m=1(2m+1)2m4<

である. よってほとんど至るところのxXについて, limmUm(x)/m2=0 である. 任意のnについて,m=n とするとm2+1n(m+1)2である. このとき

|Sn|=|Tnn||Tn|m2Tm2+Umm2=|Tm2m2|+Umm2

である. ほとんど至る所のxXについて limmTm2(x)/m2=limmUm(x)/m2=0 なので,ほとんど至る所のxXで,

limnSn(x)=0

となり,結論を得る. ∎

次にコルモゴロフが証明した大数の強法則を紹介していこう.

まずクロネッカーの補題を紹介する.

補題 34 (Kroneckerの補題その1).

{bi}i=10<b1<b2<<bn<を満たす数列とし, 数列{ai}i=1anaを満たすとする。このとき,

limni=1n1(bi+1bi)aibn=a

が成り立つ。

証明.

実数aに対して

i=1n1(bi+1bi)abn=(1b1bn)a

が成り立つので、a=0の場合にのみ定理を証明すれば十分である。 これは十分大きいkについて

|i=kn1(bi+1bi)aibn|1bn(bnbk)ε<ε

などからわかる。 ∎

補題 35 (クロネッカーの補題その2).

{bi}i=10<b1<b2<<bn<を満たす数列とし, {ai}i=1は実数列で, i=1aiが収束すると仮定する. このとき

limn1bnk=1nbkak=0

である.

証明.

Sn=i=1nai とする. 部分和の公式から,

1bnk=1nbkak=Sn1bnk=1n1(bk+1bk)Sk

なので,クロネッカーの補題その1 (補題 34)から補題は従う. ∎

命題 36 (コルモゴロフの不等式).

(X,𝔐X,μ)を確率空間とし, {fi}iをその上の独立な可測関数とする. そして各 iについて𝔼(fi)=0とする. そして Sn=i=1nfi とする.

このとき任意のa(0,)について

μ({xXmax1kn|Sk(x)|a})1a2𝔼(Sn2)

が成り立つ.

証明.

A={xXmax1kn|Sk(x)|a} とおく. μ(A)を上から評価していく. そして k{1,,n}について

Bk={xXi<k|Si(x)|<a|Sk(x)|a}

とおく. すると

A=1knBk

が成り立つ.よって,マルコフの不等式から

μ(A)=1knμ(Bk)1kn1a2Bk(Sk)2𝑑μ

を得る. ここで,各kについて,Sn=Sk+(SnSk) なので,

BkSn2𝑑μBkSk2𝑑μ =2BkSk(SnSk)𝑑μ+Bk(SnSk)2𝑑μ
2X(χBkSk)(SnSk)𝑑μ
=2𝔼((χBkSk)(SnSk))

である. ここで,系 21からχBkSkSnSk=i=k+1nfiは独立である. よって

𝔼((χBkSk)(SnSk))=𝔼(χBkSk)𝔼(SnSk)=0

であるから,結局 𝔼(Sn2χBk)𝔼(Sk2χBk) である. したがって

μ(A)1kn1a2𝔼(Sk2χBk)1kn1a2𝔼(Sn2χBk)1a2𝔼(Sn2)

を得る. ∎

定理 37 (コルモゴロフの二級数定理).

(X,𝔐X,μ)を 確率空間とし,{fi}iを独立な可測関数列とする.このとき, i=1𝔼(fi)<i=1𝕍(fi)< が成り立つならば, ほとんど至る所i=1fiは有限値に収束する.

証明.

任意のiについて 𝔼(fi)=0 と仮定しても良い. Tn=i=1nfi とおく. Nについて

AN(ϵ)={xXi,j>N|Ti(x)Tj(x)|2ε}
BN(ϵ)={xXi>N|Ti(x)TN(x)|ε}

と定義する. 定義からAN(ϵ)BN(ϵ)である. ここで

CN,k(ϵ)={xXiNik|Ti(x)TN(x)|ε}

と定義すると, CN,k(ϵ)BN(ϵ) で, BN(ϵ)=k=NCN,k(ϵ)である. ここで,コルモゴロフの不等式(命題 36)から,

μ(CN,k(ϵ))ε2k=Nk𝕍(fi)

である. ここでkとすれば

μ(BN(ϵ))ε2k=N𝕍(fi)

となる. つまり,

μ(nAn(ϵ))μ(AN(ϵ))μ(BN(ϵ))k=N𝕍(fi)

であり,Nとすれば, 最左辺はNに依存しないので, μ(nAn(ϵ))=0 がわかる. D(ε)=nAn(ϵ)とおこう. D=nD(2n)とすると,μ(D)=0 なので,

XD=n(XD(2n))

の測度が1である.この集合に属しているということは,{Tn(x)} がコーシー列をなしているということなので,{Tn}はほとんど至る所有限の値に収束する. ∎

平均値が同じ確率変数で,分散について良い振る舞いをするものについて強法則が成り立つことを示したのが次の定理である.

定理 38 (大数の強法則その3:コルモゴロフの第一定理).

{fi}iを確率空間 (X,𝔐X,μ) 上の独立な可測関数列とする. Sn=1ni=1nfiとおく. もし,iによらず, m=𝔼(fi)が成り立ち さらに

i=1𝕍(fi)n2<

ならば,Sna.s.mとなる.

証明.

iについて

gi=fimi

とおくと, 𝔼(gi)=0であり,

i𝕍(gi)=i=1𝕍(fi)n2<

なので,コルモゴロフの二級数定理(定理 37)から, ほとんど至る所のxXigi(x)=i=1(fi(x)m)/iは有限の値に収束する. ここで,クロネッカーの補題その2 (補題 35)を適応すると,ほとんど至る所のxXで, limn1ni=1n(fi(x)m)=0である. これは,Sna.s.mを意味する. ∎

分散に関する仮定なしで, 平均値が有限な分布を共有する確率変数について強法則が成り立つことを主張するのが次の定理である.

定理 39 (大数の強法則その4:コルモゴロフの第二定理).

{fi}iを確率空間 (X,𝔐X,μ) 上の独立なで同分布な可測関数列とする. Sn=1ni=1nfiとおく. もし, 𝔼(f1)=m<ならば, Sna.s.mとなる.

証明.

iに対して

gi(x)=fi(x)(χ[i,i]fi(x))

と定義する. つまり,gi(x)|fi(x)|iとなるときはgi(x)=fi(x)で,そうでないときはgi(x)=0である.

まず最初に{gi}について大数の強法則が成り立つことを示す. つまり, 1ni=1ngia.s.mを示す. ところで,ルベーグの収束定理から, 1ni=1n𝔼(gi)m なので, 結局 1ni=1n(gi𝔼(gi))a.s.0 が言えれば良い. また,m=0としても一般性を失わない. 𝕍(gi)=𝕍(gi𝔼(gi))と, コルモゴロフの第一定理(定理 38)から

i=1𝕍(gi)i2<

が示せれば良い. まず, 𝕍(gi)=𝔼(gi2)(𝔼(gi))2𝔼(gi2)に注意しよう.

i=1𝕍(gi)i2 i=1𝔼(gi2)i24i=1𝔼(gi2)(i+1)2=4i=11(i+1)2iix2d((f1)μ)
4[0,]1y2yyx2d((f1)μ)𝑑1(y)
4([|x|,]1y2)x2𝑑1(y)d((f1)μ)
4|x|d((f1)μ)=4𝔼(|f1|)<

なので, 1ni=1n(gi𝔼(gi))a.s.0 が結論できる.

次に{fi}について大数の強法則が成り立つことを示そう. {xfi(x)gi(x)}={xX|fi(x)|>i}であり, fiたちは同一分布に従うので, μ({x|fi(x)|>i})=μ({xX|f1(x)|>i})である. よって

i=1μ({xXfi(x)gi(x)}) =i=1μ({xX|fi(x)|>i})
=i=1μ({xX|f1(x)|>i})
0μ({x|f1(x)|>t})𝑑1(t)
=[0,]X1{|f1|>t}(y)𝑑μ(y)𝑑1(t)
=X[0,]1{|f1|>t}(y)𝑑1(t)𝑑μ
=X0|f1(y)|𝑑1(t)𝑑μ=X|f1(y)|𝑑μ
=𝔼(|f1|)<

となるから ボレルカンテリの補題その1 (補題 14)から, lim infi{xXfi(x)=gi(x)}の測度は 1である.つまり,ほとんど至る所のxについて,Nxが存在して, n>Nxならば,gn(x)fn(x)は等しい. よって,このようなxについて 1ni=1nfi(x)mがわかるので,大数の強法則が成り立つ. ∎

References

  • [1] はてなブログ電波通信の記事 「直積測度の構成について:確率論その0」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2022/01/03/011245
  • [2] 小谷眞一, 「測度と確率」, 2005 岩波書店.
  • [3] 船木直久, 「確率論」, 講座・数学の考え方 20,2004, 朝倉書店.
  • [4] 中嶋眞澄, 「大数の強法則の初等的証明」, 鹿児島経済論集 45 (2004) 1–5.
  • [5] K. R. Parthasarathy, Probability measures on metric spaces. Academic Press.

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