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直積測度の構成について

ナンブ  キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では測度の直積を構成する. まず,有限個の場合を述べて,それの応用として 確率測度の無限直積の構成を述べる. 最後に,有限測度の存在を前提としない 確率測度の無限直積測度の構成を紹介する.

1 基本的な定義のおさらい

簡単に基本的な定義と定理のおさらいをする. ブログ記事 [1], [2], [3] を参考にしても良い.

定義 1 (σ加法族と可測空間).

集合Xの部分集合族 𝔐が σ加法族であるとは

  1. (1)

    A∈𝔐⟹X∖A∈𝔐

  2. (2)

    A,B∈𝔐⟹A∩B∈𝔐

  3. (3)

    {An}n∈ℕ⊂𝔐⟹⋃n∈ℕAn∈𝔐

を充たすときにいう. σ加法族のことを 完全加法族ともいう. このとき組 (X,𝔐)を可測空間などと言う. また𝔐に属する集合を 可測空間,もしくは (X,𝔐)の可測集合などと呼ぶ.

また,Xの部分集合族𝔖に対して, 𝔖から生成される最小のσ加法族を σ⁢(𝔖)と書くことにする.

定義 2 (有限加法族).

集合Xの部分集合族 𝔐が 有限加法族であるとは

  1. (1)

    A∈𝔐⟹X∖A∈𝔐

  2. (2)

    A,B∈𝔐⟹A∪B∈𝔐

を充たすときにいう. 𝔐が有限加法族であるとき, A,B∈𝔐⟹A∩B∈𝔐 も成り立つことに注意しよう.

定義 3 (可測写像).

可測空間 (X,𝔐)から可測空間 (Y,𝔑)への写像

f:(X,𝔐)→(Y,𝔑)

が可測写像であるとは

∀N∈𝔑⁢f−1⁢(N)∈𝔐

を充たすことときにいう. どこの可測空間で可測であるかを強調して (𝔐,𝔑)可測写像 と呼んだりもする.

定義 4 (測度).

写像μ:𝔐→[0,∞]が X上の σ加法族 𝔐上の測度であるとは μ⁢(∅)=0 を満たしかつ, 互いに交わらぬ 𝔐 の部分集合 {An}n∈ℕ⊂𝔐 に対して

μ⁢(∐n∈ℕAn)=∑n=0∞μ⁢(An)

を充たすときに言う. このとき三つ組 (X,𝔐,μ)を測度空間ともいう. さらにμ⁢(X)=1を満たすときにμを 確率や 確率測度などと呼ぶ.

命題 5.

(X,𝔐,μ) を測度空間とするとき以下の事が成り立つ.

(1) {An}n∈ℕ⊂𝔐⁢An⊂An+1⟹μ⁢(⋃n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(An),
(2) {An}n∈ℕ⊂𝔐,An+1⊂An,μ⁢(A1)<∞⟹μ⁢(⋂n∈ℕAn)=limn→∞μ⁢(An).
命題 6 (単関数近似).

測度空間(X,𝔐,μ)上の非負可測関数列 fに対して,非負単関数の列{sn}n∈ℕ が存在してsn≤sn+1と 各x∈Xに対してlimn→∞sn⁢(x)=f⁢(x) が成り立つ.

定理 7 (単調収束定理).

測度空間(X,𝔐,μ)上の非負可測関数列 {fn}n∈ℕが

fn≤fn+1

を充たすとし、f⁢(x):=limn→∞fn⁢(x)と置く、このときfは可測であり、

limn→∞∫Xf⁢𝑑μ=∫Xf⁢𝑑μ

が成立する。

2 π-λ定理

測度の一致や集合族の一致を調べるのに便利な π−λ定理を紹介する.

定義 8 (π系).

Xを集合とし, 𝔄をXの部分集合族とする. このとき 𝔄が π系 であるとは以下の条件を満たすときにいう.

∀A,B∈𝔄⁢A∩B∈𝔄.

また,Xの部分集合族𝔖に対して, 𝔖から生成される最小のπ系を π⁢(𝔖)と書くことにする.

定義 9.

Xを集合とし, 𝔅をXの部分集合族とする. このとき 𝔅が λ系 であるとは以下の条件を満たすときにいう.

  1. (λ1)

    X∈𝔅.

  2. (λ2)

    ∀A,B∈𝔅⁢A⊂B⟹B∖A∈𝔅.

  3. (λ3)

    {Ai}i∈ℕ⊂𝔅 が単調な列ならば, ⋃i∈ℕAi∈𝔅.

また,Xの部分集合族𝔖に対して, 𝔖から生成される最小のλ系を λ⁢(𝔖)と書くことにする.

注意.

条件 (λ⁢3)は以下の条件に置き換えても良い.

  1. (λ′3)

    {Ai}i∈ℕ⊂𝔅 が互いに素な列ならば, ⋃i∈ℕAi∈𝔅.

実際, (λ⁢3)から (λ′⁢3)が従うのは, (λ⁢2)を使って, 単調列 {Ai}i∈ℕ⊂𝔅 から互いに素な列 {A1}∪{Ai+1∖Ai}i∈ℕ が 𝔅に属することからわかる. 逆を示そう. A,B∈𝔄 が互いに素な族とすると, A⊂X∖B で X∖B∈𝔄 なので (X∖B)∖A=X∖(A∪B)∈𝔄 よって, A∪B=X∖(X∖(A∪B))∈𝔄 であるから,互いに素な列 {Ai}i∈ℕ⊂𝔅 に対して ⋃i=1nAi が 𝔅に属することから わかる.

命題 10.

Xを集合とし, 𝔄をXの π系とする. このとき

π⁢(λ⁢(𝔄))=λ⁢(𝔄)

が成り立つ.

証明.

λ⁢(𝔄) が π系であることを示せば良い.

任意の A∈𝔄について ℭA={B∈λ⁢(𝔄)∣A∩B∈λ⁢(𝔄)} とする. ℭA=λ⁢(𝔄) を示そう. まず, 𝔄が π系であるから, 𝔄⊂ℭA である. 次にℭA がλ系であることを示す.

まず(λ⁢1)を示そう. 定義から明らかに X∈ℭAである.

次に (λ⁢2)を示そう. G,H∈ℭA はG⊂Hを満たしているとする. このとき A∩G,A∩H∈λ⁢(𝔄) なので, A∩H∖A∩G=A∩(H∖G)∈λ⁢(𝔄)である.つまり, H∖G∈ℭAである.

そして, (λ⁢3)を示そう. {Ai}i∈ℕ⊂ℭA は単調な族であるとする. このとき任意のiについて A∩Ai∈λ⁢(𝔄)である. よって ⋃i(A∩Ai)=A∩⋃iAi∈λ⁢(𝔄) を満たす.

以上から, ℭA が λ族であることがわかった. 𝔄⊂ℭA なので λ⁢(𝔄)⊂ℭA である. ここでAは任意であったので,

(3) ∀A∈𝔄⁢∀B∈λ⁢(𝔄)⁢A∩B∈λ⁢(𝔄)

が成り立つ. これだけではまだλ⁢(𝔄)がπ系であることは示せていない.

次に A∈λ⁢(𝔄) について 𝔇A={B∈λ⁢(𝔄)∣A∩B∈λ⁢(𝔄)} と定義する. この𝔇Aがλ系であることを示そう. まず定義から X∈𝔇Aであるから (λ⁢1)が満たされる.

次に (λ⁢2)を示す. G,H∈𝔇A はG⊂Hを満たすとする. このとき定義から A∩G,A∩H∈λ⁢(𝔄) なので, A∩H∖A∩G=A∩(H∖G)∈λ⁢(𝔄) である. つまり, H∖G∈𝔇A である.

次に (λ⁢3) を示そう. {Ai}⊂𝔇A の単調な列とすると, 任意の iについて A∩Ai∈λ⁢(𝔄) である. よって ⋃i(A∩Ai)=A∩⋃iAi∈λ⁢(𝔄) を満たす. 以上から, 𝔇Aが λ族であることがわかる. また, 先に示したこと(1)から, 𝔄⊂𝔇A であるから, λ⁢(𝔄)⊂𝔇A がわかる. A∈λ⁢(𝔄) は任意であったから, λ⁢(𝔄)は π系であることがわかった. ∎

命題 11.

Xを集合とし, 𝔄 を Xの π系で,かつ λ系とする. このとき 𝔄は σ加法族である.

証明.

まず A,B∈𝔄とする. このとき, A∩B∈𝔄 なので, A∖A∩B∈𝔄 で, A∖A∩B と B は互いに素であるから, A∪B∈𝔄 である. よって {Ai}i∈ℕ を 𝔄 の列とする. このとき Bn=⋃i=1nAi とすると, Bn∈𝔄 である. さて, {Bn} は単調族であるから, ⋃iAi=⋃nBn∈𝔄である. つまり, 𝔄は σ加法族である. ∎

定理 12 (π-λ定理).

Xを集合とし, 𝔄を Xの π系で, 𝔅を Xの λ系とする. このとき 𝔄⊂𝔅 ならば

σ⁢(𝔄)⊂𝔅

が成り立つ.

証明.

λ⁢(𝔄)=σ⁢(𝔄) を示せば良い. λ⁢(𝔄)⊂σ⁢(𝔄) は成り立つ.逆を示そう. 命題 10から λ⁢(𝔄) はπ系かつ λ系であるから, 命題 11から λ⁢(𝔄)はσ加法族である. ∎

命題 13.

Xを集合とし, 𝔄を X上の π系で X∈𝔄 とする. μと νがσ⁢(𝔄) 上の有限測度であり,尚且つ 𝔄上で一致しているとすると, μ=νである.

証明.

𝔅={S∈σ⁢(𝔄)∣μ⁢(S)=ν⁢(S)} とする. 仮定から 𝔄⊂𝔅 なので 𝔅が λ系であることが示すことができれば, 定理 12から 命題は示される. X∈𝔅 は明らかなので (λ⁢1) が満たされる. (λ⁢2)は μ,νが有限測度であることから従う. (λ⁢3)は, 測度の単調収束定理からわかる. ∎

命題 14.

Xを集合とし, 𝔄を X上のπ系で X∈𝔄とする. μと νを σ⁢(𝔄) 上の有限測度で 𝔄上で一致しており, 𝔄の列 {Ai}i∈ℕ が存在して μ⁢(Ai),ν⁢(Ai)<∞と ⋃i∈ℕAi=X を満たすと仮定すると, μ=νである.

証明.

命題 13から 任意の i∈ℕ と B∈σ⁢(𝔄) について μ⁢(Ai∩B)=ν⁢(Ai∩B) であるから, ⋃i∈ℕAi=Xよりμ=ν である. ∎

3 Hopf–Caratheodoryの拡張定理

無限直積測度を構成する上で大切な Hopf–Caratheodoryの拡張定理を紹介する.

定義 15 (外測度).

Xを集合とする. このときXの冪集合 𝔓⁢(X) 上の関数 Γ:𝔓⁢(X)→[0,∞] が 外測度 であるとは以下の三つの条件を満たす時にいう.

  1. (1)

    Γ⁢(∅)=0;

  2. (2)

    A,B∈𝔓⁢(X)が A⊂Bを満たすならば

    Γ⁢(A)⊂Γ⁢(B);
  3. (3)

    Xの部分集合族からなる可算族 {Ai}i∈ℤ≥0 について

    Γ⁢(⋃i=0∞Ai)≤∑i=0∞Γ⁢(Ai).
定義 16.

集合 Xと外測度 Γ:𝔓⁢(X)→[0,∞] について集合Aが Γ-可測 であるとは 任意の E⊂Xについて

Γ⁢(E)=Γ⁢(E∩A)+Γ⁢(E∩(X∖A))

が成り立つことである. Γ-可測集合全体を 𝔐Γ と書くことにする. 簡単な注意として AがΓ-可測であることと, 以下の三つの条件は同値である.

  1. (1)

    任意の E⊂Xについて

    Γ⁢(E)≥Γ⁢(E∩A)+Γ⁢(E∩(X∖A))
  2. (2)

    任意の E1⊂AとE2⊂X∖A について

    Γ⁢(E1∪E2)=Γ⁢(E1)+Γ⁢(E2)
  3. (3)

    任意の E1⊂AとE2⊂X∖A について

    Γ⁢(E1∪E2)≥Γ⁢(E1)+Γ⁢(E2)
命題 17.

集合X 上の外測度 Γ について 𝔐Γ は X上の σ-集合族になる.

証明.

まず ∅,X∈𝔐Γ は明らかである.

次に 𝔐Γ がπ系であることを示す. A,B∈𝔐Γ を任意に取る. そして E⊂A∩B と F⊂X∖(A∩B) を任意に取る. さて, G=F∩(X∖A) で H=F∩A とおく. この時 H⊂X∖B に注意しよう. すると, B∈𝔐Γ と E⊂A∩B⊂B と H⊂X∖B から

Γ⁢(E)+Γ⁢(H)≤Γ⁢(E∪H)

がわかる. さらに E∪H⊂(A∩B)∪A=A で G⊂X∖A なので A∈𝔐Γ から

Γ⁢(E∪H)+Γ⁢(G)≤Γ⁢(E∩H∪G)=Γ⁢(E∪F)

となる. これらと 外測度の劣加法性を用いると

Γ⁢(E)+Γ⁢(F) ≤Γ⁢(E)+Γ⁢(G)+Γ⁢(H)≤Γ⁢(E∪H)+Γ⁢(G)
≤Γ⁢(E∪H∪G)=Γ⁢(E∪F)

となるので, A∩B∈𝔐Γ であり, 𝔐Γ が π系であることがわかる.

さて, 𝔐Γ の定義から, A∈𝔐Γ ならば X∖A∈𝔐Γ が直ちにわかる.

𝔐Γ が条件(λ′⁢3) を満たすことをみよう. 互いに素な族 {Ai}i∈ℤ≥0 で Ai∈𝔐Γ であるもの と E⊂X をとる. S=⋃i=0∞Ai とおく. このとき次の不等式を P⁢(n,E) と表すことにする.

Γ⁢(E∩(X∖S))+∑i=0nΓ⁢(E∩Ai)≤Γ⁢(E).

まず P⁢(n,E)が任意の Eとnで成り立つことを帰納法で示そう.

n=0の時は, X∖S⊂X∖A0 と Γの単調性, そして A0∈𝔐Γ から成り立つことがわかる. さて,任意の Eについて P⁢(n,E) が成り立つことを仮定して, P⁢(n+1,E) を示そう. 今, P⁢(n,E∩(X∖An+1))が成り立っている. つまり

Γ⁢(E∩(X∖An+1)∩(X∖S))+∑i=0nΓ⁢(E∩(X∖An+1)∩Ai)≤Γ⁢(E∩(X∖An+1)).

である. ここで X∖S⊂X∖An+1であり, 互いに素であるという条件からAi⊂X∖An+1である. これらを 用いると

Γ⁢(E∩(X∖S))+∑i=0nΓ⁢(E∩Ai)≤Γ⁢(E∩(X∖An+1)).

を得る. さて,An+1∈𝔐Γなので

Γ⁢(E∩(X∖S))+∑i=0n+1Γ⁢(E∩Ai)=Γ⁢(E∩(X∖S))+∑i=0nΓ⁢(E∩Ai)+Γ⁢(E∩An+1)
≤Γ⁢(E∩(X∖An+1))+Γ⁢(E∩An+1)≤Γ⁢(E)

ゆえに P⁢(n+1,E) が成り立つ.

以上で任意のnと Eについて P⁢(n,E)が成り立つことがわかった. ここで P⁢(n,E)の式で n→∞をすると,

Γ⁢(E∩(X∖S))+∑i=0∞Γ⁢(E∩Ai)≤Γ⁢(E).

を得る. さて, Γ の劣加法性から

Γ⁢(E∩(X∖S))+Γ⁢(E∩S)≤Γ⁢(E∩(X∖S))+∑i=0∞Γ⁢(E∩Ai)≤Γ⁢(E).

となるので, S∈𝔐Γ である. よって 𝔐Γ は条件(λ′⁢3)を満たし, 𝔐Γ が λ系であることがわかった.

以上で 𝔐Γ がπ系かつ λ系であることがわかったので, 𝔐Γ は σ加法族である. ∎

定義 18 (有限加法族).

集合Xの部分集合からなる族 𝔉 が有限加法族であるとは 以下の条件を満たすときにいう.

  1. (1)

    ∅,X∈𝔉;

  2. (2)

    A,B∈𝔉ならば A∖B∈𝔉;

  3. (3)

    A,B∈𝔉ならば A∪B∈𝔉.

定義 19 (有限加法的測度).

Xを集合とし, 𝔉 を X 上の有限加法族とする. このとき写像 m:𝔉→[0,∞] が𝔉 上の 有限加法的測度であるとは A,B∈𝔉 が A∩B=∅ を満たすならば m⁢(A∪B)=m⁢(A)+m⁢(B) を満たす ときにいう.

定義 20 (有限加法的測度から誘導される外測度).

Xを集合とし, 𝔉 をX上の有限加法族とする. そしてmを 𝔉 上の有限加法的測度とする. このとき写像 ⟦m⟧:𝔓⁢(X)→[0,∞] を

⟦m⟧⁢(A)=inf{∑i=1∞m⁢(Si)|A⊂⋃i=1∞Si,Si∈𝔉}

と定義する.以下の補題によってこの ⟦m⟧ は外測度に なる. この ⟦m⟧ をmから誘導された外測度と呼ぶことにする.

補題 21.

Xを集合とし, 𝔉 をX上の有限加法族とする. そしてmを 𝔉 上の有限加法的測度とする. このとき ⟦m⟧は X上の外測度になる.

証明.

定義から ⟦m⟧⁢(∅)=0 がわかる. 同様に定義から A⊂B ならば ⟦m⟧⁢(A)≤⟦m⟧⁢(B) となることがわかる. 劣加法性を示そう. {Ai}i=1∞ と ϵ∈(0,∞) を任意に取る. このとき任意の i∈ℤ≥⁢0 に対して {Bi,j}j∈ℤ≥0⊂𝔉 が存在して

Ai⊂⋃j∈ℤ≥0Bi,j

と

∑j=0∞m⁢(Bi,j)<⟦m⟧⁢(A)+ϵ⁢2−i−1

を満たす. このとき {Bi,j}i,j∈ℤ≥0 は ⋃i∈ℤ≥0Ai を被覆するので,

⟦m⟧⁢(⋃i∈ℤ≥0Ai)≤∑i=0∞∑j=0∞m⁢(Bi,j)≤∑i=0∞⟦m⟧⁢(Ai)+ϵ.

を得る. ここで ϵ→0 とすれば

⟦m⟧⁢(⋃i∈ℤ≥0Ai)≤∑i=0∞⟦m⟧⁢(Ai)

を得る.これは劣加法性である. ∎

補題 22.

Xを集合とし, 𝔉 をX上の有限加法族,m を 𝔉 上の有限加法的測度とする. このとき 𝔉⊂𝔐⟦m⟧ が成り立つ.

証明.

任意にE⊂Xをとる. このときE∩Aの被覆とE∩(X∖A) の被覆を合わせたものはEの被覆になるので, これで証明が終わる. ∎

定理 23 (Hopf–Caratheodoryの拡張定理).

Xを集合とし, 𝔉をX上の有限加法族,m を𝔉上の有限加法的測度とする. このとき ⟦m⟧が𝔉上でmと一致するための 必要十分条件は mが𝔉上で完全加法的であることである.

証明.

⟦m⟧が𝔉 上で mと一致していたら, mが 𝔉 上で完全加法的なのは当然である. 逆を示そう.

今, mが 𝔉上で 完全加法的であったとする. このとき,任意の E∈𝔉に対して Eはそれ自身の被覆になっているので, ⟦m⟧⁢(E)≤m⁢(E) がわかる. 逆向きの不等式を示そう. Eの任意の 𝔉 の元の列による可算被覆 {Ai}i∈ℤ≥0 をとる.このとき 𝔉の有限加法性から Ai⊂Ai+1であるとしても良い. そして B0=E∩A0, Bi+1=E∩(Ai+1∖Ai) と定義すると, {Bi}i∈ℤ≥0 は互いに素な 𝔉の可算列で E=∐i∈ℤ≥0Biを満たす. ここで mが 𝔉上で完全加法的であるという 仮定を用いると

m⁢(E)=m⁢(∐i∈ℤ≥0Bi)=∑i=0∞m⁢(Bi).

を得て,さらにmの単調性から

∑i=0∞m⁢(Bi)≤∑i=0∞m⁢(Ai)

となる.よって

m⁢(E)≤∑i=0∞m⁢(Ai)

であり,{Ai}i∈ℤ≥0 の任意性から

m⁢(E)≤⟦m⟧⁢(E)

を得る.これで定理が証明された. ∎

一般にmの完全加法性を証明するのは大変だが, 次の便利な言い換えがある.

補題 24.

Xを集合とし, 𝔉をその上の 有限加法族とする. このときmが 𝔉 上で完全加法的であることは次の二つの条件が成り立つことと同値である.

  1. (1)

    𝔉の部分集合族 {Ei}i∈ℤ≥0 が Ei+1⊂Eiと m⁢(E0)<∞, そして ⋂i∈ℤ≥0Ei=∅ を満たすならば limn→∞m⁢(En)=0である.

  2. (2)

    𝔉の部分集合族 {Ei}i∈ℤ≥0 がEi⊂Ei+1と E=⋃i∈ℤ≥0Ei∈𝔉, そして m⁢(E)=∞ を満たすならば limn→∞m⁢(En)=∞である.

証明.

まず最初に m が完全加法的であるときに二つの条件が成り立つことを示そう. 𝔉 の部分集合族{Ei}i∈ℤ≥0 がEi+1⊂Eiとm⁢(E0)<∞, そして ⋂i∈ℤ≥0Ei=∅ を満たすとする. さて任意のn∈ℤ≥0 に対して Fn=En∖En+1 とおく.このとき, i≠jならば Fi∩Fj=∅である. さらに ⋂i∈ℤ≥0Ei=∅ であるから 任意の k∈ℤ≥0に対して Ek=⋃m=k∞Fm が成り立つ. 特に E0=⋃m=0∞Fm なのでmの完全加法性から

m⁢(E0)=∑m=0∞m⁢(Fm)=∑m=0k−1m⁢(Fm)+∑m=k∞m⁢(Fm)

である.ここで m⁢(Ek)=∑m=k∞m⁢(Fm)であることとm⁢(E1)<∞ であるからlimk→∞m⁢(Ek)=0が成り立つ.つまり(1)が成り立つ.

次に 𝔉の部分集合族 {Ei}i∈ℤ≥0 がEi⊂Ei+1と E=⋃i∈ℤ≥0Ei∈𝔉, そして m⁢(E)=∞ を満たすとする. このとき F0=E0,Fn+1=En+1∖En とすると{Fn}n∈ℤ≥0 は互いに素な 𝔉の部分族であり, E=⋃n∈ℤ≥0Fn が成り立つ. mの完全加法性から

∑n∈ℤ≥0m⁢(Fn)=m⁢(E)=∞

である.ここで

limn→∞m⁢(En)=limn→∞∑k=1nm⁢(Fk)=∑n∈ℤ≥0m⁢(Fn)=m⁢(E)=∞

なので(2)が成り立つ.

今から逆に二つの条件が成り立つときにmが完全加法的であることを示そう. {En}n∈ℤ≥0 を𝔉の互いに素な部分集合族であって, E=⋃n∈ℤ≥0En∈𝔉 であるとする. まず最初にm⁢(E)<∞の場合, 任意のn∈ℤ≥0に対して Fn=E∖⋃i=0n−1Ei と定義するとFn+1⊂Fnであり, ⋂nFn=∅と m⁢(F0)=m⁢(E)<∞を満たす.よって条件(1)から limn→∞m⁢(Fn)=0が成り立つ. さてmの有限加法性から

⋃i=0nEi=E∖Fn+1

である. さらに mの有限加法性から

∑i=0nm⁢(Ei)=m⁢(E)−m⁢(Fn+1)

であるからn→∞とすると

∑i=0∞m⁢(Ei)=m⁢(E)

がなりたつ.

次にm⁢(E)=∞の場合を考えよう. このときFn=⋃i=0nEi とすると{Fn}n∈ℤ≥0 は(2)の仮定を満たすので limn→∞m⁢(Fn)=∞を満たす. ここでmの有限加法性を使うと

limn→∞∑i=0nm⁢(Ei)=∞

であるがこれは

∑i=0∞m⁢(Ei)=m⁢(E)

を意味するのでmの完全加法性が従う. ∎

4 直積測度

この節では有限個の測度の直積測度を構成する.

定義 25.

(X,𝔐)と (Y,𝔑) を可測空間とする.このとき A∈𝔐と B∈𝔑 の直積集合 A×B を 可測矩形集合 と呼ぶことにする. 可測矩形集合の互いに素な有限族の和集合として 表される集合を基本集合と呼ぶことにする. 基本集合全体の集合族を 𝔈で 書くことにする. 記号 𝔐×𝔑 で可測矩形集合全体から生成される X×Y上の σ集合系とする.

定義 26.

(X,𝔐)と (Y,𝔑) を可測空間とする.このとき 集合 E⊂X×Y と x∈Xと y∈Yに対して

Ex={y∈Y∣(x,y)∈E},Ey={x∈X∣(x,y)∈E}

と定義する.

補題 27.

(X,𝔐)と (Y,𝔑) を可測空間とする.このとき 任意の E∈𝔐×𝔑 と任意の x∈Xおよび y∈Yに対して Ex∈𝔐かつ Ey∈𝔑 である.

証明.

Exに関する部分だけを証明する.Eyについては全く同様にできる.

𝔎を S∈𝔐×𝔑 のうち, Sx∈𝔐 が成り立つもの全体とする. まず,任意の A∈𝔐と B∈𝔑 に対して A×B∈𝔎がわかる. 特に ∅,X×Y∈𝔎 がわかる. 次に 𝔎が π系であることを示そう. S,T∈𝔎 とする. このとき Sx,Tx∈𝔐 であるから Sx∩Tx∈𝔐 である. 定義から明らかに Sx∩Tx=(S∩T)x であるから (S∩T)x∈𝔐である. つまり S∩T∈𝔎がわかり, 𝔎が π系であることが従う.

次に 𝔎が λ系であることを示そう. まず X×Y∈𝔎なので (λ⁢1) は満たされる. 次に S,T∈𝔎でS⊂Tとする. このとき Sx,Tx∈𝔐であり, 定義から Tx∖Sx=(T∖S)x なので T∖S∈𝔎であり, (λ⁢2)が満たされることがわかる. 次に(λ⁢3)を示そう. {Si}i∈ℤ≥0 を 𝔎 の部分族で単調増大なものとする. このとき任意の i∈ℤ≥0 について (Si)x∈𝔐 が成り立つ. 𝔐 はσ集合系なので ⋃i∈ℤ≥0(Si)x∈𝔐 である.定義から ⋃i∈ℤ≥0(Si)x=(⋃i∈ℤ≥0Si)x なので ⋃i∈ℤ≥0Si∈𝔎 である. よって(λ⁢3)が満たされることがわかり, 𝔎が λ系であることがわかった. 𝔎 は可測矩形集合全体を含み, π系かつ λ系で, またσ集合系 𝔐×𝔑 の部分族なので結局 𝔎=𝔐×𝔑 がわかる. これは補題が成り立つことを示している. ∎

補題 28.

(X,𝔐)と (Y,𝔑) を可測空間とする. このとき以下が成り立つ.

  1. (1)

    𝔈は π系であり, なおかつ E,F∈𝔈ならば E∖F∈𝔈である.

  2. (2)

    𝔐×𝔑 は𝔈を含む最小の λ系である.

証明.

(2)は(1)から従うので,(1)だけを示す. 任意の A1,A2∈𝔐と B1,B2∈𝔑 に対して

(A1×B1)∩(A2×B2)=(A1∩A2)×(B1∩B2)

であり,また

(A1×B1)∖(A2×B2)=((A1∖A2)×B1)⊔((A1∩A2)×(B1∖B2))

なので,(1)もわかる. ∎

定義 29.

X, Yを集合とし, f:X×Y→ℝ∗ を写像とする. このとき 任意のx∈Xとy∈Yに関して fx:Y→ℝ∗を fx⁢(s)=f⁢(x,s) で定義される関数とし, fy:X→ℝ∗を fy⁢(t)=f⁢(t,y) で定義される関数とする.

補題 30.

(X,𝔐)と (Y,𝔑) を可測空間とし, f:X×Y→ℝ∗ を 𝔐×𝔑 に関する可測関数とする. このとき任意の x∈Xと y∈Yに関して fxは 𝔑可測であり, fyは 𝔐可測である.

証明.

x∈Xに関する主張のみ証明すればよい. y∈Yに関する主張は全く同じ方法で証明することができる. Vをℝ∗の開集合とする.このとき 集合

E={(x,y)∈X×Y∣f⁢(x,y)∈V}

は 𝔐×𝔑可測である. よって先の補題から Exは𝔑可測となる.ここで

Ex={y∈Y∣fx⁢(y)∈V}

なので,fxが𝔑 に関して可測関数となることがわかる. ∎

命題 31.

(X,𝔐,μ)と (Y,𝔑,ν) をσ有限な測度空間とする. 集合 Q∈𝔐×𝔑 に対して

ϕ⁢(x)=ν⁢(Qx),ψ⁢(y)=μ⁢(Qy)

とおく. すると ϕ⁢(x)は 𝔐可測であり, ψ⁢(y)は 𝔑可測である. そして以下が成り立つ.

∫Xϕ⁢(x)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Yψ⁢(y)⁢𝑑ν⁢(y).
証明.

𝔎を命題が成り立つ 𝔐×𝔑 の元全体とする. 今から 𝔎が 𝔐×𝔑 に一致することを示そう. まず最初に可測矩形集合, つまり A∈𝔐と B∈𝔑 を使って A×Bと表示できる集合について考える. このとき ϕ⁢(x)=ν⁢((A×B)x)=ν⁢(B)⁢χA⁢(x) で ψ⁢(x)=μ⁢((A×B)y)=μ⁢(A)⁢χB⁢(y) なのでA×B∈𝔎 がわかる. また,このことから 𝔎が(λ⁢1) を満たすことがわかる. 今から 𝔎がλ系であることを示そう. (λ⁢1) を満たすことを上で述べた. 次に (λ⁢3)を満たすことを示そう. {Ai}i∈ℤ≥0 を 𝔎 の部分族で単調なものとする. このとき

ϕi⁢(x)=ν⁢((Ai)x),ψi⁢(y)=μ⁢((Ai)y)

とおく. すると 𝔎 の定義から各 i∈ℤ≥0 について ϕi⁢(x)と ψi⁢(x) は可測であり,また

∫Xϕi⁢(x)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Yψi⁢(y)⁢𝑑ν⁢(y).

が成り立つ. 今 A=⋃i∈ℤ≥0Aiと置き,

ϕ⁢(x)=ν⁢((Ai)x),ψi⁢(y)=μ⁢((Ai)y)

とすると,単調収束定理から ϕ=limi→∞ϕi で ψ=limi→∞ψiである.

∫Xϕ⁢(x)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Yψ⁢(y)⁢𝑑ν⁢(y).

がわかる.よって A∈𝔎 であり(λ⁢3)が満たされることがわかる.

(λ⁢2)を示そう. A,B∈𝔎で A⊂Bとする. 今,E∈𝔐と F∈𝔑 が存在して μ⁢(E)<∞とν⁢(F)<∞ で A⊂B×E×F を満たしている場合を最初に考える. このとき ϕAと ϕB, ψAと ψB は全て有限の値しか取らないので, ϕB∖A=ϕB∖ϕA とψB∖A=ψB∖ψA は可測であり,

∫XϕB∖A⁢(x)⁢𝑑μ⁢(x)=∫YψB∖A⁢(y)⁢𝑑ν⁢(y).

がなりたつ.

次に任意の E∈𝔐と F∈𝔑 で E∈𝔐と F∈𝔑 を満たすものについて, 任意の A∈𝔐×𝔑 は A∩(E×F)∈𝔎 を満たすことを示そう. この主張が成り立つ 𝔎 の集合全体を 𝔏 とすると, 𝔏 には可測矩形集合が全て含まれており, また先の (λ⁢2)の証明と同様に (λ⁢2) を満たすことがわかる.そして先の証明から, A⊂Bならば B∖A∈𝔏 もわかる. よって主張が成り立つ. σ有限性の仮定から 𝔐の部分族 {Si}i∈ℤ≥0 と 𝔑 の部分族 {Ti}i∈ℤ≥0 が存在して {Si×Tj}i,j∈ℤ≥0 が互いに素な X×Yの被覆になる. 今任意の A,B∈𝔎で A⊂B となるものを取ろう. そして Bi,j=B∩(Si×Tj)で Ai,j=A∩(Si×Tj) と書くことにする. このとき Ai,j⊂Bi,jである. そして先の主張から Bi,j∖Ai,j∈𝔎 である. また, B∖A=⋃i,jBi,j∖Ai,j であるから主張から B∖A∈𝔎 である.

以上で 𝔎が λ系であることがわかった. 𝔈はπ系なので, 𝔎=𝔐×𝔑 であることがわかる. ∎

定義 32.

(X,𝔐,μ)と (Y,𝔑,ν) をσ有限な測度空間とする. 上の命題を元にして, 𝔐×𝔑上の測度 μ×νを

(μ×ν)⁢(Q)=∫Xμ⁢(Qx)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Yν⁢(Qy)⁢𝑑ν⁢(y).

と定義する. 定義式から μ×ν は確かに測度の定義を満たしていることがわかる. また A×B に対してμ⁢(A)⁢ν⁢(B) を返す測度は μ×νしか存在しない. μ×νをμ⊗νと書いたりもする. 一般に有限個の測度μ1,…,μnに対して直積測度が考えられるが, それを⨂i=1nμiなどと書くことにする.

Fubini-Tonelliの定理を証明する.

定理 33.

(X,𝔐,μ)と (Y,𝔑,ν) をσ有限な測度空間とする. f:X×Y→ℝ∗を 𝔐×𝔑 可測な関数とする. このとき以下が成り立つ.

  1. (1)

    f⁢(X×Y)⊂[0,∞] とする.そして

    ϕ⁢(x)=∫Yfx⁢(y)⁢𝑑ν⁢(y),ψ⁢(y)=∫Xfy⁢(x)⁢𝑑μ⁢(x)

    とするとϕは 𝔐可測で ψは 𝔑可測であり, さらに

    ∫Xϕ⁢(x)⁢𝑑μ⁢(x)=∫Yψ⁢(y)⁢𝑑ν⁢(y)=∫X×Yf⁢(x,y)⁢d⁢(μ×ν)⁢(x,y)

    が成り立つ.

  2. (2)

    f∈L1⁢(μ×ν)ならば ほとんど至る所の x∈Xで fx∈L1⁢(ν) であり,ほとんど至る所の y∈Yでfy∈L1⁢(μ) が成り立ち,さらに

    ∫X∫Yf⁢(x,y)⁢𝑑ν⁢(y)⁢𝑑μ⁢(x) =∫Y∫Xf⁢(x,y)⁢𝑑μ⁢(x)⁢𝑑ν⁢(y)
    =∫X×Yf⁢(x,y)⁢d⁢(μ×ν)⁢(x,y).

    が成り立つ.

証明.

(1)は命題 31と 単調収束定理と単関数近似からわかる. (2)は(1)から従う. ∎

5 無限直積確率測度の構成その1:標準的な方法

この節では標準的な方法で無限直積確率測度を 構成する.

定義 34.

Iを集合とし, {(Xi,𝔐i)}i∈I を可測空間の族とする. このとき∏i∈IXi の部分集合が 柱状集合であるとはそれが 集合族{Ai}i∈Iであって Ai∈𝔐iを満たしさらに 有限個のiをのぞいてAi=Xiとなるようなものを用いて

∏i∈IAi

の形にかける時にいう. 柱状集合全体をℭで書くことにする. そしてℭから生成される有限加法族を 𝔇から生成される完全加法族を ⨂i∈I𝔐iと書くことにする.(つまり ⨂i∈I𝔐i=σ⁢(𝔇)=σ⁢(ℭ)) 以下では可測空間の直積にはこの可測構造が備わっているものとする.

補題 35.

Iを集合とし, {(Xi,𝔐i)}i∈I を確率空間の族とする.このとき 𝔇の任意の元は ℭの交わらない有限個の元の和集合 として表される.

定義 36.

Iを集合とし, {(Xi,𝔐i,μi)}i∈I を確率空間の族 とする. ℭ上に以下のようにして関数 ⨂i∈Iμiを定義する.

⨂i∈Iμi⁢(∏i∈IAi)=∏i∈Iμi⁢(Ai)

各μiが確率測度であるから,ℭ 上ではμは有限個の実数の積として定義されていることに注意しよう.

一般にA∈𝔇に対しては 補題 35 を用いて A=∐i=1kEi (Ei∈ℭ)と表して,

⨂i∈Iμi⁢(A)=∑i=1k⨂i∈Iμi⁢(Ei)

と定義する. この定義のwell-definedness は次の補題で示す.

補題 37.

Iを集合とし, {(Xi,𝔐i,μi)}i∈I を確率空間の族とする. このとき𝔇上の関数 ⨂i∈Iμiは well-definedであり,さらに 有限加法的である.

証明.

{Ei}i=1k と {Fi}i=1l はそれぞれ互いに交わらない ℭ内 の列とし

∐ikEi=∐ilFi

を満たしているとする. さて,ℭの定義から Ei=∏j∈IQi,j で Fi=∏j∈IWi,jと書き表すことができ, JE={j∈I∣∃i⁢Ei,j≠Xj} で JF={j∈I∣∃i⁢Fi,j≠Xi} と定義するとこれらはそれぞれ有限集合となる. ここでJ=JE∪JFとすると ⨂i∈Iμiの定義から

∑i=1k⨂i∈Iμi⁢(Ei)=∑i=1k⨂i∈Jμi⁢(Ei)

であり,

∑i=1k⨂i∈Iμi⁢(Fi)=∑i=1k⨂i∈Jμi⁢(Fi)

である. ⨂i∈Jμi は有限個の測度の直積なので有限加法性を持つ. よって

∑i=1k⨂i∈Iμi⁢(Ei)=∑i=1k⨂i∈Iμi⁢(Fi)

が成り立つので,⨂i∈Iμi は𝔇上でwell-definedである.

有限加法性は上と同様にやはり 有限個の測度の直積測度の加法性から従う. ∎

次の定理は角谷 [11] が証明した.

定理 38.

Iを集合とし, {(Xi,𝔐i,μi)}i∈I を確率空間の族とする. すると ⨂i∈Iμiは 𝔇上で 完全加法的である.

証明.

完全加法性を証明するために,次のことを証明する: {Ek}k∈ℤ≥0 を𝔇の部分族とし, Ek+1⊂Ek とδ>0が存在して⨂i∈Iμi⁢(Ek)>δ>0 が成り立つならば ⋂k=0∞Ek≠∅. である.

柱状集合の定義と 𝔇の定義から, {Ek}k∈ℤ≥0のそれぞれの元の直積因子のうち,⨂i∈Iμi の定義に寄与する因子の個数は高々可算個しかない. よって Iが可算集合の時にこれを示しても一般性を失わない. I=ℤ≥1と仮定してもよい. 各n∈Iに対して μn∗=⨂i>nμiと定義する. μn∗⊗⨂i=1nμi=⨂i∈Iμiとなることに注意せよ. A⊂∏i∈IXiと x1∈X2,…,xn∈Xnに対して A⁢(x1,…,xn)={z∈∏i>nXi∣z∈A,z1=x1,…,zn=xn} と書くことにする.

まず各j∈Iに対して Fj={x∈X1∣μ1∗⁢(Ej⁢(x))>δ/2} とおく. すると

δ<μ⁢(Ej) =∫X1μ1∗⁢((Ej)⁢(x))⁢𝑑μ1⁢(x)=(∫Fj+∫X1∖Fj)⁢μ1∗⁢(Ej⁢(x))⁢d⁢μ1
≤μ1⁢(Fj)+δ/2

よってδ/2<μ1⁢(Fj) である. またEj+1⊂Ejより, Fj+1⊂Fjである. よってμ1の完全加法性 と補題 24 により ⋂j∈IFj≠∅ となる. そこで a1∈⋂jFjをとると, 任意のj∈Iについて μ1∗⁢(Ej⁢(a1))>δ/2がなりたつ.

上の論法を繰り返して 帰納的に {ai}i∈I∈∏i∈IXiを 任意のi,j∈Iについて μi∗⁢(Ej⁢(a1,a2,…,ai))>δ/2i となるように構成できる. a=(ai)i∈ℤ≥0とおこう. すると任意のi,j∈Iについて μi∗⁢(Ej⁢(a1,…,ai))>0である. 各Ejは互いに交わらない有限個の ℭの元の和集合として表すことができる. それらを {Gj,l}l=1hとしよう. そして {Gj,l}l=1hの直積因子のうち, Xiと一致しない i全体をJとおくと,これは有限集合になる. k∈Iを十分大きく取り,J⊂{1,…,k} となるようにする.このとき μk∗⁢(Ej⁢(a1,…,ak))=∑l=1hμk∗⁢(Gj,l⁢(a1,…,ak))>0 となる. 特に μk∗⁢(Gj,l⁢(a1,…,ak))>0 となるlが存在する. Gj,l=∏i∈ITiと表示しよう. i>kならばTi=Xiである. もしも(a1,…,ak)∉∏i=1kTi ならばGj,l⁢(a1,…,ak)=∅となり, μk∗⁢(Gj,l⁢(a1,…,ak))=0になるので矛盾する.よって (a1,…,ak)∈∏i=1kTiである. i>kならばTi=Xiであるから a∈∏i∈ITi=Gj,lである. つまりa∈Ejとなる. j∈Iは任意なのでa∈⋂j∈IEjである. よって補題 24 よりμの完全加法性が証明された. ∎

以上から, μは⨂i∈I𝔐i上の測度になっていることがわかる.

6 無限もしくは有限直積確率測度の構成その2:別の方法

ここでは標準的な方法とは別の簡明な証明を紹介する. 論文 [10]で紹介されている方法である. 次の命題が大元である.

命題 39.

(X,𝔐) を可測空間とし, 𝔊は 𝔐 の部分族であり, A,B∈𝔊ならば, A∖Bは𝔊 の互いに交わらない有限個の元の和集合で表すことができると仮定する. そして𝔊は 𝔐を生成するとする. μ:𝔊→[0,∞] を関数とする. このときもしも𝔊の元からなる 互いに素な族{Ai}i∈ℤ≥0で ⋃i=0∞Ai=Xを満たすものについて 常に

(A) ∑i=0∞μ⁢(Ai)=1

が満たされるならば μの拡張であるような 𝔐上の完全加法的測度 が一意的に存在する.

証明.

𝔊 から生成される有限加法族を 𝔄と書くことにする. 𝔊に関する仮定から, 𝔄のすべての元は𝔊 の互いに交わらない有限個の和集合で表すことができる. (そのように表すことのできる集合全体は仮定から有限加法族になり, 𝔊を含んでいるので 𝔄と一致する.)

まず最初にμを𝔄に拡張することを考えよう. A∈𝔄に対してμ⁢(A)の値を A=∐i=1kAi (Ai∈𝔊) と表したときにμ⁢(A)=∑i=1kμ⁢(Ai) と定義しよう. この定義がAの表示の仕方によらないことを示そう. X∖A∈𝔄なので X∖A=∐i=1aWiとなる Wi∈𝔊が存在する. このとき μに関する仮定から

∑i=0kμ⁢(Ai)+∑i=0aμ⁢(Wi)=1

である. そしてA=∐i=0k′Ai′ (Ai′∈𝔄)と表示されているなら上と同様の議論で

∑i=0k′μ⁢(Ai′)+∑i=0aμ⁢(Wi)=1

を満たす.よって

∑i=0kμ⁢(Ai)=∑i=0k′μ⁢(Ai′)

なのでμ⁢(A)の定義はwell-definedである. よってμを𝔄上まで拡張できた. Hopf–Caratheodoryの拡張定理 (定理 23)を適応するために 次にμが𝔄上で完全加法的であることを示そう. {Ai}i=0∞を𝔄内の互いに交わらない集合の列とし, A=∐i=0∞Aiとおき, A∈𝔄 と仮定する. X∖A∈𝔄なので X∖A=∐i=1aWiとなる Wi∈𝔊が存在する. このとき, μ⁢(A)の定義とμに関する仮定から μ⁢(A)=1−∑i=0aμ⁢(Wi)となる. さて,各iについてAi=∐j=0kiEi,j (Ei,j∈𝔊)と表す. すると, {Ei,j}i,jと{Wi}i=0aは互いに交わらない 𝔊の元の列でその和集合はXになるから, μに関する仮定から

∑i,jμ⁢(Ei,j)+∑i=0aμ⁢(Wi)=1

である.この和は非負の数の和なので左辺は絶対収束しているので,和の順番を変えても値は変わらない.よって

∑i=0∞∑j=0kiμ⁢(Ei,j)=1−∑i=0aμ⁢(Wi)

である. そしてμの定義から

∑i=0∞∑j=0kiμ⁢(Ei,j)=∑i=0∞μ⁢(Ai)

である.よって以上の議論から

μ⁢(A)=∑i=0∞μ⁢(Ai)

がわかり,μは𝔄上で完全加法的である. 𝔄から生成されるσ加法族は 𝔐なので,μに対して Hopf–Caratheordoryの拡張定理 (定理 23) を適応すれば 命題の証明が終わる. 一位性は命題 13からわかる. ∎

定理 40.

Iを集合とし, {(Xi,𝔐i,μi)}i∈I を確率空間の族とする. このとき𝔇上の 無限直積測度 ⨂i∈Iμiは完全加法性を満たす.

証明.

ℭは𝔇 を生成し,さらに 任意のA,B∈ℭ についてA∖Bはℭの互いに交わらない有限個の元の和集合で表されるから, 命題 39の仮定を満たしている. 今から⨂i∈Iμiが 条件(A)を満たしていることを示そう.

{Ai}i∈ℤ≥0を ℭ内の列で互いに交わらないもので, ⋃iAi=∏i∈IXi を満たすとする. このとき条件(A)を示すには I=ℤ≥0 と仮定しても一般性を失わない.

記述を簡単にするために μ=⨂i∈Iμi と書くことにする.

各n∈ℤ≥0について An=∏iAn,i (An,i∈𝔐i) と表し,in∈ℤ≥0を i>inならば An,i=Xi を満たすものとする.

まず最初に次の主張を証明する: もしもm∈ℤ≥0 でx∈Amならば任意のn∈ℤ≥0 について

(E1) (∏i=0imχAn,i⁢(xi))⁢∏i>imμi⁢(An,i)=δm,n

が成り立つ.

もしm=nならば, x∈Amとμi⁢(Am,i)=1 (i>im)から 等式 (E1) は成り立つ.

次にm≠nの場合を考えよう.

もしin<imならば i>imについてAn,i=Xi であるから ∏i>imμi⁢(An,i)=1 となる.また同じ理由で

∏i=0imAm,i≠∏i=0imAn,i

となるので,Am∩An=∅から

∏i=0imAm,i∩∏i=0imAn,i=∅

がわかる. よって x∈Amならば

∏i=0imχAn,i⁢(xi)=0

となるから等式 (E1) がなりたつ.

もしim<inならば直積の定義から 任意のei∈Xiについて

(∏i=0imχAn,i⁢(xi))⁢(∏i=im+1inχAn,i⁢(ei))=0

となる.eiを変数としてみなして,他のejを固定したときに この等式の左辺のeiを変数とする関数は可測集合の特性関数の定数倍なので 𝔐i可測である. そこでこの式をμi (i=im+1,…,in) でeiについて繰り返し積分すると

(∏i=0imχAn,i⁢(xi))⁢(∏i=im+1inμi⁢(An,i))=0

を得る. i>inならばμi⁢(An,i)=μi⁢(Xi)=1なので

(∏i=0imχAn,i⁢(xi))⁢(∏i>imμi⁢(An,i))=0

を得る. よって等式 (E1) が証明された. ちなみにここでeiについて繰り返し積分しているが, これは直積測度を使って積分しているわけではなく,多変数の関数を一変数ずつ積分しているだけなので,直積測度の存在を前提にせずとも議論は成り立つ. (多変数の関数を一変数づつ積分した値と直積測度による積分が同じ値になるというのがFubini-Toneliの定理 33 であった.)

等式 (E1) を用いて μが命題の条件 (A) を満たすことを示そう. ∏i∈IXi の互いに素な被覆{Ai}で

∑i=0∞μ⁢(Ai)<1

となるものが存在すると仮定しよう. つまり次が成り立つということである.

(B) ∑i=0∞∏j=0μj⁢(Ai,j)<1

である. さらに, もし任意のx∈X0について

∑i=0∞χAi,0⁢(x)⁢∏j=1μj⁢(Ai,j)=1

と仮定すると,この式をx1について μ0で積分をすると式 (B)に矛盾する. よって a0∈X0であって

∑i=0∞χAi,0⁢(a0)⁢∏j=1μj⁢(Ai,j)<1

となるものが存在する. 以上の議論を繰り返し行うと, 帰納的に列{ai}∈∏i∈IXiであって, 任意のk∈ℤ≥0について

(C) ∑i=0∞(∏j=0kχAi,j⁢(aj))⁢(∏j=k+1∞μj⁢(Ai,j))<1

を満たすものが存在する.

ところで等式 (E1)において a=(ai)i∈ℤ≥0 とおくと∏i∈IXi=∐iAiなので a∈Amとなるm∈Iが存在する. よって先の主張から

∑i=0∞(∏j=0mχAi,j⁢(aj))⁢(∏j=m+1∞μj⁢(Ai,j))=∑i=0∞δi,m=1

であるがこれは式(C)に矛盾する. これでμが先の命題 39の仮定を満たすことがわかった.よって命題 39より, μは𝔇上で完全加法的である. ∎

注意.

この節での直積測度の構成方法では, 有限個の測度の直積測度の存在を前提にしていない. 特にIを有限集合とするこの節の構成から有限個の場合の直積測度の存在もわかる.ただし,上で述べた構成は確率測度に関するものとして述べているので,適宜正規化をして適応する必要がある.有限個の直積測度はσ有限性を仮定するので,それも踏まえると良いだろう. 一般にσ有限性を仮定しないと直積測度の一意性がなくなる.

References

  • [1] はてなブログの記事 「入射角16.225°の測度論入門:-1」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/10/24/140238
  • [2] はてなブログの記事 「入射角16.225°の測度論入門:0」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/10/25/165608
  • [3] はてなブログの記事 「入射角16.225°の測度論入門:1」, https://concious4410.hatenablog.com/entry/2015/10/26/112239
  • [4] 小谷眞一, 「測度と確率」, 2005 岩波書店.
  • [5] 船木直久, 「確率論」, 講座・数学の考え方 20,2004, 朝倉書店.
  • [6] 伊藤清三,「ルベーグ積分入門」, 1963年, 裳華房.
  • [7] J. Bell, Infinite product measure, 2022/1/1閲覧 http://individual.utoronto.ca/jordanbell/notes/productmeasure.pdf
  • [8] K. R. Parthasarathy, Probability measures on metric spaces. Academic Press.
  • [9] W. Rudin, Real and Complex analysis, 3rd. ed. McGraw-Hill. 1987.
  • [10] S. Saeki, A proof of the existence of infinite product probability measures, Amer. Math. Monthly, 103(8) (1996), 682-683.
  • [11] S. Kakutani, Notes on infinite product measure space, I. , Proc. Imp. Acad. 19(3) (1943), 148–151.

「知識は公共財」

以下に参考文献を追加しておく.

References