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Helly空間とHellyの選出定理のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

Helly spaceとHellyの選出定理

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では,Helly spaceの基本性質と,Hellyの選出定理を紹介する.

定義 1.

関数f:ℝ→ℝ が非減少関数であるとは,任意のx<yについて f⁢(x)≤f⁢(y)を満たすときにいう. ℝ上で定義され[0,1]に値を取る非減少関数全体をHで表すことにし, 位相を直積空間[0,1]ℝから誘導される相対位相を定義する. 位相空間Hを Helly spaceと呼ぶ.

注意.

[0,1]ℝの直積位相は[0,1]ℝの元を関数と見たときの各点収束の位相に一致する.つまり,Helly spaceとは 非減少関数に各点収束の位相を定義した空間なのである.

命題 2.

空間Hは[0,1]ℝの閉部分集合である.特に Hはコンパクト空間である.

証明.

x<yとなる任意の実数の組(x,y)について A(x,y)={f∈[0,1]ℝ∣f⁢(x)≤f⁢(y)} は[0,1]ℝの閉部分集合である. そして

H=⋂x<yA(x,y)

なのでHは[0,1]ℝの閉部分集合である. チコノフの定理から[0,1]ℝはコンパクトなので Hもコンパクトである. ∎

補題 3.

任意のf∈Hについて, fの不連続点は高々可算個しかない.

証明.

初等的に証明できる.証明略 ∎

定義 4.

任意のt∈ℝ に対して πt:[0,1]ℝ→[0,1] を第t座標への射影とする. つまり f∈[0,1]ℝに対して πt⁢(f)=f⁢(t) である. [0,1]ℝの直積位相,つまり各点収束の位相は {πt}t∈ℝ が連続となるような最弱の位相であることに注意しよう.

定理 5.

空間Hは第一可算である.

証明.

任意のx∈[0,1]とr∈(0,∞)に対して

U⁢(x,r)=(x−r,x+r)∩[0,1]

と定義する. 定理を証明するためには任意の f∈Hについて fの基本近傍系で濃度が高々可算な物を構成すれば良い. fの不連続点全体の集合をDとし, T=D∪ℚ と定義する. そしてfの近傍からなる集合族 𝒩を πt−1⁢(U⁢(f⁢(t),2−n)), (t∈T,n∈ℕ)の形の集合の有限個の共通部分で表される fの近傍全体からなるものとして定義する. この𝒩が基本近傍系になることをみよう. そのためには, 任意のx∈Xとε∈(0,∞) に対して πx−1⁢(U⁢(f⁢(x),ε))という形の集合に 含まれる𝒩の元が存在することを示せば良い.

[Case1 x∈Tの場合] このときは2−n<εとなるn∈ℕを取れば 定義から πx−1⁢(U⁢(f⁢(x),2−n))∈𝒩で あることがわかる. そしてU⁢(f⁢(x),2−n)⊂U⁢(f⁢(x),ε) であるから

πx−1⁢(U⁢(f⁢(x),2−n))⊂πx−1⁢(U⁢(f⁢(x),ε))

を得るので示したいことは成り立つ.

[Case2 x∉Tの場合] このときxはfの連続点である. よってあるδが存在して,z∈ℝが|x−z|<δを満たすならば |f⁢(x)−f⁢(z)|<ε/2となる. よってa,b∈ℚをa∈(x,x+δ), b∈(x−δ,x)となるようにとり, n∈ℕを2−n<ε/2と取ると, 任意のg∈πa−1⁢(U⁢(f⁢(a),2−n)) についてg∈Hの非減少性から

g⁢(x)≤g⁢(a)<f⁢(a)+2−n<f⁢(x)+2−n+ε/2<f⁢(x)+ε

と

g⁢(x)≥g⁢(b)>f⁢(b)−2−n>f⁢(x)−2−n−ε/2>f⁢(x)−ε

がわかるのでg∈πx−1⁢(U⁢(f⁢(x),ε)) がわかる. つまり

πa−1⁢(U⁢(f⁢(a),2−n))∩πb−1⁢(U⁢(f⁢(b),2−n))⊂πx−1⁢(U⁢(f⁢(x),ε))

を得るので示したいことは成り立つ.

以上からHが第一可算であることがわかった. ∎

第一可算なコンパクト空間は 点列コンパクトなので次がわかる.

系 6.

空間Hは点列コンパクトである.

注意.

空間Hはコンパクトで第一可算であり,さらに可分であることも証明できるが,距離化不可能である.

この系6を詳しく言い換えたものが次である.

定理 7.

{Fn}n∈ℕを[0,1]に値をとる非減少関数の列とする.このとき部分列{Fϕ⁢(n)}とある非減少関数Fが存在して各x∈ℝ毎に

limn→∞Fϕ⁢(n)⁢(x)=F⁢(x)

を満たす.

定理7もHellyの選出定理と呼べると思うが, 確率論では特に右連続な非減少関数に対する次の定理 8がHellyの選出定理と呼ばれている.右連続性を仮定せずとも以下の定理の主張は成り立つが,主に確率変数の分布関数に対してこの選出定理 が用いられるため, このように述べられることが多いように思われる.

定理 8.

{Fn}n∈ℕを[0,1]に値をとる右連続な非減少関数の列とする.このとき部分列{Fϕ⁢(n)}とある右連続な非減少関数Fが存在してFの連続点x∈ℝ毎に

limn→∞Fϕ⁢(n)⁢(x)=F⁢(x)

を満たす.

証明.

任意の非減少関数Fに対して,Fの連続点でFと一致する 右連続な非減少関数が存在するので,主張は定理7から従う. ∎

注意.

Hellyの選出定理を用いて,確率測度のなす空間の相対コンパクトな部分集合を特徴付けすることができる.

References

  • [1] J. Kelly著,児玉之宏訳, 位相空間論, 1968, 吉岡書店
  • [2] L. A. Steen and J. A. Seebach, Jr, Counterexamples in topology, 1978, Springer-Verlag New York.