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実解析関数に対する逆関数定理のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

実解析関数入門および 実解析関数に対する逆関数定理

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では, 多変数実解析関数の基礎を紹介し, そのあと実解析関数に対する逆関数定理を証明する. 微分可能性が低めの場合や,滑らかな関数の場合と同様に 逆関数定理が証明されれば陰関数定理も導くことができる. 参考文献を大いに参考にして, 足りない部分を適宜補った.

1 準備

1.1 多重指数記法

この文章では

Zn=ℤ≥0n

と定義する。 各k∈Znに対して、その成分をk=(k1,k2,…,kn)としたとき

σk=k1+k2+⋯+kn

と定義し、

∂k=∂k1∂k2…⁢∂kn

と定義する。この文章では偏微分の順序を気にしない関数しか出てこないので、∂kの定義に出てくる偏微分の順序は我々も気にしないことにする。 また、

k!=k1!⁢k2!⁢⋯⁢kn!

と定義し、 x=(x1,…,xn)∈ℝnに対して

xk=x1k1⁢x2k2⁢⋯⁢xnkn

と定義する。

また

(x)μ=∏j=1n(xj)μj=∏j=1nxj⁢(xj−1)⁢⋯⁢(xj−μj+1)

と定義する. ただし(x)0=1とする.

k,l∈Znに対して

k<l⇔∀i∈{1,2,…,n}⁢ki<li

と定め、

k≤l⇔∀i∈{1,2,…,n}⁢ki≤li

とする。k≤lのとき、その二項係数を

(kl)=(k1l1)⁢(k2l2)⁢⋯⁢(knln)

と定義する。 簡単にわかることだが、(kl)≤(σk!)nとなる。 また、l≤kのとき、

k−l=(k1−l1,k2−l2,…,kn−ln)

と定義する。このときちゃんとk−l∈Znとなる。

補助的にm∈ℤ≥0∪{∞}に対して

Zn⁢(m)={k∈Zn∣σk≤m}

と定義する。もちろんZn⁢(∞)=Znである。 多変数の場合のライプニッツ則は多重指数記号を用いると1変数の場合と同じように述べることができる。

補題 1.

Uをℝnの開集合とする。 二つのCm級関数f,g,U→ℝとk∈Zn⁢(m)について

∂k(f⁢g)=∑l≤k(kl)⁢(∂k−lf)⁢(∂lg)

が成り立つ。

1.2 基本的な微分積分の定理

ご存知だとは思うが,平均値の定理の応用として得られるテイラーの定理 は微分可能な関数を多項式と同様に扱えるようにする重要な道具立ての一つであり, もちろん解析的関数と重要な関わりを持つ.

定理 2.

n∈ℤ≥0で Iをℝの開区間とし x,a∈Iとする. f:I→ℝを [a,x]∪[x,a] を含む開集合上でn階微分可能な 関数とする.このとき c∈[a,x]∪[x,a] が存在して

f⁢(x) =f⁢(a)+f(1)⁢(a)1!⁢(x−1)+f(2)⁢(a)2!⁢(x−a)2+⋯+f(n−1)⁢(a)(n−1)!⁢(x−a)n−1
+f(n)⁢(c)n!⁢(x−a)n

を満たす.

多変数の解析的関数を扱うときには 多変数のテイラーの定理が重用される.

定理 3.

n,N∈ℤ>0で Uをℝn上の開集合とし, a,x∈Uとする. f:U→ℝはU上のCN+1級関数とする. aとxを結ぶ直線がUの含まれているとき この直線上の点ξが存在して以下を満たす.

f⁢(x)=∑μ∈Zn,|μ|≤N1μ!⁢(∂μf)⁢(a)⁢(x−a)μ+∑μ∈Zn,|μ|=N+11μ!⁢(∂μf)⁢(ξ)⁢(x−a)μ

1.3 総和について

補題 4.
(∑i=0∞ai)⁢(∑i=0∞bi)=∑n=0∞(∑i+j=nai⁢bj)=∑(i,j)∈Znai⁢bj

2 解析関数への入門

定義 5.

n∈ℤ>0とする. 実数列{aμ}μ∈Znを ℤ≥0n上の関数とみなして数え上げ測度で積分した値を

∑μ∈Znaμ

と定義する. この値が有限の値に収束する場合にはこの級数は収束するといい, 正や負の無限大の値になる場合には発散するという. この値が定義できない場合は定義できないという. 数え上げ測度の定義から この級数が収束する場合には常に絶対収束する.つまり

∑μ∈Zn|aμ|

が有限の値に収束する. また積分の定義から級数が定義できる場合には話をとる順番に依らず同じ値に収束(発散)する.例えば

∑μ∈Znaμ=∑N=0∞∑|μ|=Naμ

が成り立つしフビニトネリの定理から

∑μ∈Znaμ=∑k1=0∞⋯⁢∑kn=0∞ak1,k2,…,kn

が成り立つ.

定義 6.

n∈ℤ>0とし, Uをℝnの開集合とする. U上の実数値関数f:U→ℝ がU上解析的であるとは, Uの任意の点a∈Uに対してaの近傍N と実数列{aμ}μ∈Znが存在して 任意のx∈Nに対して

f⁢(x)=∑μ∈Znaμ⁢(x−a)μ

と表されるときにいう. この定義は 級数∑μ∈Znaμ⁢(x−a)μ が有限の値に収束することを含んでいることに注意せよ.

補題 7.

n∈ℤ>0とする. このとき‖x‖∞<1を満たすx∈ℝn について

(∑μ∈Znxμ)−1=∏i=1nxi1−xi

が成り立つ. 特に ∏i=1nxi1−xi はU⁢(0,1)で解析的である.

積分と総和の可換性から次がわかる.

命題 8.

n∈ℤ>0とする. {aμ}をZnで添字つけられた非負実数列とし, {{bj,μ}μ}j∈Z≥0 をZn上の非負関数の列とし,各jについて {bj,μ}μ∈Zn は総和可能とし, aμ=∑j=0∞bj,μとする. このとき

∑j=0∞∑μ∈Znbn,μ=∑μ∈Zn∑j=0∞bn,μ=∑μ∈Znaν

が成り立つ.

命題 9.

fを解析的関数で定義域内の点aの近傍Nで

f⁢(x)=∑μ∈Zncμ⁢(x−a)μ

と展開されているとすると aの十分小さい近傍上で 級数 ∑μ∈Zncμ⁢(x−a)μ はf⁢(x)に一様収束する.

証明.

aの十分小さい近傍上で ∑μ∈Zn|cμ|⁢|x−a|μ が収束することとMテストからわかる. ∎

命題 10.

fを解析的関数で定義域内の点aの近傍Nで

f⁢(x)=∑μ∈Zncμ⁢(x−a)μ

と展開されているとすると 定数C,R∈(0,∞) が存在して任意のμ∈Zn

|cμ|≤CR|μ|

がなりたつ.

証明.

RをとりU⁢(a,R)⊂M であるとする. x=(a1+R,…,an+R) とし, C=∑μ∈Zn|cμ|⁢R|μ| とする. すると,

|cμ|⁢Rμ≤C

なので命題が成り立つ. ∎

ルベーグの優収束定理から次の連続性と微分可能性がわかる.

命題 11.

fを解析的関数とすると, 定義域内の各点で連続である.

命題 12.

fを解析的関数とすると, 任意のμ∈Znに関して ∂μfは解析的である.

証明.

各i=1,…,nについて∂ifが解析的であることが示されれば帰納的に命題が導かれる. i=1として証明しても構わない.

|μ1⁢aμ⁢(x−a)μ|≤C⁢r|μ|

故に 微分と積分の交換定理から わかる. ∎

系 13.

fを関数としその定義域内の点aの近傍Nで

f⁢(x)=∑μ∈Zncμ⁢(x−a)μ

と展開されているとすると 任意のμ∈Zn について

1μ!⁢(∂μf)⁢(a)=aμ

が成り立つ.

命題 14 (一致の定理).

n∈ℤ≥1 としてUをℝnの連結開集合とする. fU上で定義された解析関数とする. このときf−1⁢({0})が内点を持つならば fは恒等的に0である.

証明.

G={x∈U∣∀μ∈Zn,(∂μf)⁢(x)=0} と定義すると仮定からG≠∅ である.また解析関数の連続性からG は閉集合である. 今からGが開集合であることを示そう. 任意にa∈Uを取ると, 先の系からaの十分小さい近傍N上で

f⁢(x)=∑μ∈Zn1μ!⁢(∂μf)⁢(a)⁢(x−a)μ

と表される.a∈Gなので(∂μf)⁢(a)=0だから N⊂Gを得る.よってGは開集合である. 今Uは連結集合でありGはその空ではない開かつ閉な部分集合であるからG=Uとなる. つまりfはU上で恒等的に0となる. ∎

補題 15.

n∈ℤ>0とし, s,t∈ℝは|s|+|t|<1 を満たすとする.このとき

∑μ∈Zn∑ν∈Zn(μ+νν)⁢s|μ|⁢tν=(11−s−t)n

が成り立つ.

証明.
(μ+νν)=∏i=1n(μi+νiνi)

なのでn=1のとき示せば補題は証明される. まず二項定理より

∑k=0m(mk)⁢sk⁢tm−k=(s+t)m

であり,|s+t|<1と等比数列の総和公式より

∑m=0∞∑k=0m(mk)⁢sk⁢tm−k=11−s−t

であるこれを整理すれば

∑k∑l(k+ll)⁢sk⁢tl=11−s−t

となるので定理が示された. ∎

命題 16.

fを関数としその定義域内の点aの近傍Nで

f⁢(x)=∑μ∈Zncμ⁢(x−a)μ

と展開されているとすると 任意のb∈N について fは解析的である.

証明.

a=0と仮定しても良い. 各μ∈Zn で

dμ=1μ!⁢(∂μf)⁢(0)

とおいて bの十分近くで

∑μdμ⁢(x−b)μ

が収束し,なおかつ f⁢(x)に一致することを示す. まずは収束性から示す. w∈ℝnの各成分を小さく取り, 0<|wi|で|bi|<|wi| でなおかつ w∈N となるようにする. そして ϵ を十分小さく取り,

r=ϵ2⁢mini=1,…,n⁡|wi|

についてU⁢(b,r)⊂Nであり, (1+ϵ)⁢w∈N が成り立つようにする. そして{x∈N∣|xi|<|wi|} が開集合であり,bを含むことからϵ を小さく取り直して任意のx∈U⁢(b,r)について |xi|<|wi|が成り立つようにする.

今ν∈Znについて

dμ=∑μ(ν+μ)νν!⁢cν+μ⁢bμ

である. そして(1+ϵ)⁢w∈N なので

∑μ∈Zn|cμ|⁢|(1+ϵ)⁢w|μ

が収束するから,ある定数Cが存在し,任意のμ∈Zn について

cμ⁢|(1+ϵ)⁢w|μ≤C

である.

s=11+ϵ,t=ϵ2⁢(1+ϵ)

と置くと s+t<1であり, 各μ,ν∈Znとx∈U⁢(b,r)について

|cν+μ|⁢|b|μ⁢|x−b|ν ≤(ϵ2)|ν|⁢|cν+μ|⁢|w||μ|+|ν|≤(ϵ2)|ν|⁢1(1+ϵ)|μ|+|ν|
=1(1+ϵ)|μ|⁢ϵ(2⁢(1+ϵ))|ν|=sμ⁢tμ

が成り立つ. ここで,

∑ν,μ(μ+νν)⁢sμ⁢tμ

は総和可能なので,Mテストから x∈U⁢(b,r) となるxについて

∑μdμ⁢(x−b)μ

が収束することがわかった. さらに多変数のテイラーの定理から x∈U⁢(b,r)に対してxとbを結ぶ直線上の点ξ が存在して

f⁢(x)−∑|ν|≤lbν⁢(x−b)ν=∑ν∈Zn,|ν|=l+11ν!⁢(∂νf)⁢(ξ)⁢(x−b)ν

が成り立つ.ここで

1ν!⁢(∂νf)⁢(ξ)=∑μ(ν+μν)⁢cν+μ⁢ξμ

なので,ξ∈U⁢(b,r)に注意すると

∑ν∈Zn,|ν|=l+11ν!⁢|(∂νf)⁢(ξ)|⁢|x−b|ν=∑ν∈Zn,|ν|=l+1∑μ(ν+μν)⁢cν+μ⁢|ξ|μ⁢|x−b|ν

ここで,ξ∈U⁢(b,r)なので |ξi|<|wi|であるよって

∑ν∈Zn,|ν|=l+1∑μ(ν+μν)⁢cν+μ⁢|ξ|μ⁢|x−b|ν≤
∑ν∈Zn,|ν|=l+1∑μ(ν+μν)⁢(ϵ2)|ν|⁢cν+μ⁢|w|μ⁢|w|ν≤∑ν∈Zn,|ν|=l+1∑μ(ν+μν)⁢sμ⁢tν

となりl→∞ のとき

∑ν∈Zn,|ν|=l+1∑μ(ν+μν)⁢sμ⁢tν

は0に収束するので, 結局f⁢(x)=∑νbν⁢(x−b)ν である. ∎

解析関数の合成は解析関数になることを証明する.

命題 17.

m,n∈ℤ>0 とし, U,Vをそれぞれℝm,ℝn の空でない開集合とする. g:U→ℝをU上の解析関数とし, {fi:V→ℝ}i=1m をV上の解析関数とする. 点a∈Vについて (f1⁢(a),f2⁢(a),…,fm⁢(a))∈U が成り立つとする. このとき 点aの近傍でg⁢(f1,f2,…,fm) が定義されるが,この関数は点a において解析的である.

証明.

uをm変数の任意の形式的冪級数とし, u⁢(0)=0とする. v1,…,vmを任意のm個のn変数 形式的冪級数としvi⁢(0)=0とする. このとき u⁢(v1,…,vm) のxμの係数を調べることをする.

u=∑ν∈Zmsν
vi=∑μ∈Znti,μ

と表示して,l∈ℤ≥0 に対して

us⁢u⁢b,l=∑μ∈Zn,|μ|≤lsμ
vs⁢u⁢b,i,l=∑μ∈Zn,|μ|≤lti,μ

と置く. この時 us⁢u⁢b,l⁢(vs⁢u⁢b,1,l,…,vs⁢u⁢b,l,m) が形式的冪級数であることがわかる. さらに |μ|≤lの時 ul⁢(vs⁢u⁢b,1,l,…,vs⁢u⁢b,l,m) のxμ係数は viのl次までの係数を使って定義され, |μ|≤lかつ|μ|<l′の時 ul⁢(vs⁢u⁢b,1,l,…,vs⁢u⁢b,l,m) と ul′⁢(vs⁢u⁢b,1,l′,…,vs⁢u⁢b,l′,m) のxμの係数は同じ値である. このことから u⁢(v1,…,vm) のxμ の係数はwell-definedであり, これも形式的冪級数であることがわかる. さて μ∈Znに対して 多項式P0,μ をゼロ多項式として定義する. そして 任意のl∈ℤ>0に対して

us⁢u⁢b,N⁢(vs⁢u⁢b,1,N+1⁢(x),…,vs⁢u⁢b,n,N+1⁢(x))−us⁢u⁢b,N⁢(vs⁢u⁢b,1,N⁢(x),…,vs⁢u⁢b,n,N⁢(x))

のxμの係数を PN+1,μ⁢({sν}|ν|≤|μ|,{ti,α}i,|α|≤|μ|) とおく. |μ|<lならばPl,μ≡0であるし, 有限個のμをのぞいて Pl,μ≡0 となる. 二項係数は全て非負実数であるから, 任意のl∈ℤ≥0 と μ∈Zn に対して Pl,μ⁢({sν}|ν|≤|μ|,{ti,α}i,|α|≤|μ|) はsνとti,α の多項式でなおかつその係数は uとviの取り方に依存しない 普遍的な非負整数である. よって Pl,μ が単調であることがわかる. つまり 実数 sμ, ti,α, sμ′, ti,α′ が |sμ|≤sμ′ と|ti,α|≤ti,α′ を満たすならば

|Pl,μ⁢({sν},{ti,α})|≤Pl,μ⁢({sν′},{ti,α′})

を満たす. また, u⁢(v1,…,vm) のxμの係数を Qμ⁢({sν},{ti,α}) とおくとこれも {sν},{ti,α}の多項式で その係数はu,vi の選び方によらない普遍的な非負整数である. よって単調性をもつ. さらに 任意のμ∈Znに対して

Qμ⁢({sν},{ti,α})=∑l=0∞Pl,μ⁢({sν},{ti,α})

が成り立つ.ここで右辺は実は有限和である. 以上の準備のもと命題を証明する.

0∈Vでa=0で各iについてfi⁢(a)=0であり,0∈Uでなおかつ g⁢(0)=0と仮定しても良い. 0∈Uの十分小さい近傍Mでgは

g⁢(y)=∑ν∈Zmbν⁢yν

と展開される. そしてM上の関数Gを

G⁢(y)=∑ν∈Zm|bν|⁢yν

と定義する.

さて 0∈Vの十分小さい近傍N上で 各i=1,…,m について

fi⁢(x)=∑μ∈Znai,μ⁢xμ

と展開される.ここで仮定よりai,0=0であることに注意せよ. またC,R∈(0,∞)が存在して 任意のμ∈Znに対して

|ai,μ|≤CR|μ|

が成り立つ. 適当に変数変換をして,

|ai,μ|≤C

が成り立つとしても良い.

N上の関数として

fs⁢u⁢b,i,l⁢(x)=∑μ∈Zn,|μ|≤lai,μ⁢xμ

と定義する.

U⁢(0,r)⊂ℝn上で関数Kを

K⁢(x)=∏i=1nxi1−xi=(∑μ∈Znxμ)−1

と定義し,

H⁢(t)=K⁢(C⋅t,C⋅t,…,C⋅t)

と置く. そして

qμ=Qμ⁢(|cμ|,C)
wl,μ=Pl,μ⁢(|cμ|,C)

と置く.この時 qμ を係数にもつ冪級数が原点で解析的であることを示す. まずwl,μとPl,μの定義から任意のl∈ℤ≥0 に対して t=‖x‖∞として

|∑μwl+1,μ⁢xμ|≤∑μwl+1,μ⁢t|μ|=Gl⁢(Hl+1⁢(t),…,Hl+1⁢(t))−Gl⁢(Hl⁢(t),…,Hl⁢(t))

となり,

∑l=1∞(Gl⁢(Hl+1⁢(t),…,Hl+1⁢(t))−Gl⁢(Hl⁢(t),…,Hl⁢(t)))
=limk→∞∑l=1k(Gl⁢(Hl+1⁢(t),…,Hl+1⁢(t))−Gl⁢(Hl⁢(t),…,Hl⁢(t)))
=limk→∞Gk⁢(Hk+1⁢(t),…,Hk+1⁢(t))=G⁢(H⁢(t),…,H⁢(t))

であるから ‖x‖∞<1 の時 ∑l=0∞∑μwl,μ⁢xμ は総和可能である. さて cμ=Qμ⁢(cν,aα)で dl,μ=Pl,μ⁢(cν,aα) とおく. すると

|cμ|≤qμ

と

|dl,μ|≤wl,μ

が成り立つ.

|g⁢(f1,…,fm)−∑μ∈Zn,|μ|≤lcμ⁢xμ|
≤|g⁢(f1,…,fm)−gs⁢u⁢b,l⁢(fs⁢u⁢b,1,l,…,fs⁢u⁢b,m,l)|+|gs⁢u⁢b,l⁢(fs⁢u⁢b,1,l,…,fs⁢u⁢b,m,l)−∑μ∈Zn,|μ|≤lcμ⁢xμ|

ℝm原点の十分小さい近傍で gs⁢u⁢b,lが gに一様収束することと, ℝnの原点の十分小さい近傍で fs⁢u⁢b,i,l がfi に一様収束することから rを十分小さく取り r<1であり 任意のϵに対してL∈ℤ≥0 が存在して l>Lがならば任意のx∈U⁢(0,r)に対して

|g⁢(f1⁢(x),…,fm⁢(x))−gs⁢u⁢b,l⁢(fs⁢u⁢b,1,l⁢(x),…,fs⁢u⁢b,m,l⁢(x))|≤ϵ

であるようにできる.

そして

|gs⁢u⁢b,l⁢(fs⁢u⁢b,1,l,…,fs⁢u⁢b,m,l)−∑μ∈Zn,|μ|≤lcμ⁢xμ|≤∑k>l∑μ|dk,μ|⁢r|μ|≤∑k>l∑μwk,μ⁢r|μ|

であり,wk,μ⁢r|μ| は総和可能であるから, rを小さく取り直して 任意のϵに対してL∈ℤ≥0 が存在して l>Lとなるlと任意のx∈U⁢(a,r) に対して

∑k>l∑μwk,μ⁢xμ≤ϵ

が成り立つ. よってx∈U⁢(0,r) に対して

|gs⁢u⁢b,l⁢(fs⁢u⁢b,1,l,…,fs⁢u⁢b,m,l)−∑μ∈Zn,|μ|≤lcμ⁢xμ|≤2⁢ϵ

なので,

g⁢(f1⁢(x),…,fm⁢(x))

は原点で解析的であることがわかる. ∎

2.1 解析関数の局所的振る舞い

定義 18.

n∈ℤ>0とし, Uをℝnの開集合とする. U上の実数値関数f:U→ℝ が条件(A)を満たすとは 任意のa∈Uに対してaの近傍Nが存在して あるC∈(0,∞)とR∈(0,∞)が存在して任意のx∈Nと μ∈Znに対して

|(∂μf)⁢(x)|≤C⋅μ!R|μ|

が成り立つときにいう.

以下では解析性と条件(A)が成り立つことが同値であることの証明を目標にして話を進めていく.

補題 19.

n∈ℤ>0でm∈ℤ≥0とする. このとき

card⁡({μ∈Zn∣|μ|=m})=(n+m−1n−1)

が成り立つ.

証明.

公式

(ab)+(ab+1)=(a+1b+1)

と 帰納法によって証明する. An,m={μ∈Zn∣|μ|=m} と定義すると,

An,m={μ∈An,m∣μ1=0}⊔{μ∈An,m∣μ1>0}

と直和分解できる. Bn,m={μ∈An,m∣μ1=0} とCn,m={μ∈An,m∣μ1>0}と置くことにする. ここで,

Bn,m={0}×An−1,m

であり,さらに

Cn,m=(1,0,…,0)+An,m−1

である.ここで,x∈Znと集合S⊂Znに対して

x+S={x+s∣s∈S}

である. 今ここで,n+mの値に関する帰納法を用いると, card⁡(Bn,m)=card⁡(An−1,m)=(m+n−2n−2)であり card⁡(Cn,m)=card⁡(An,m−1)=(m+n−2n−1) であるから

card⁡(An,m) =card⁡(Bn,m)+card⁡(Cn,m)
=(m+n−2n−2)+(m+n−2n−1)=(m+n−1n−1)

である. ∎

補題 20.

∑μ∈Znxμ はU⁢(0,1)で条件(A)を満たす.つまり, n∈ℤ>0とする. このときl∈(0,1)と M,L∈(0,∞)が存在して 任意のx∈U⁢(0,l)と任意のν∈Znに対して

∑μ∈Zn(μ+νν)⁢xμ≤ML|v|

を満たす.

証明.

L∈(0,1)を任意にとる. そして l=1−Lとする. このとき

∑μ∈Zn(μ+νν)⁢|x|μ=1ν!⁢∏i=1n1(1−|xi|)νi+1

そして

1(1−|xi|)νi+1≤1L⁢1Lνi

なので

∑μ∈Zn(μ+νν)⁢|x|μ≤(1L)n⁢1L|ν|

である. ∎

定理 21.

n∈ℤ>0とし, Uをℝnの開集合とする. U上の実数値関数f:U→ℝ がU上解析的であるための必要十分条件は 任意のa∈Uに対してaの近傍Nが存在して あるC∈(0,∞)とR∈(0,∞)が存在して任意のx∈Nと μ∈Znに対して

|(∂μf)⁢(x)|≤C⋅μ!R|μ|

が成り立つことである.

証明.

まず最初にfが解析的であるとする.a∈U に対してR∈(0,∞)が存在してaを中心とする半径Rの閉球B⁢(a,R)上でaを中心としてfを冪級数展開ができる. つまり任意のx∈B⁢(a,R)について

f⁢(x)=∑μ∈Zn1μ!⁢(∂μf)⁢(a)⁢(x−a)μ

である.B⁢(a,R)はコンパクトなので

∑μ∈Zn1μ!⁢|(∂μf)⁢(a)|⁢|x−a|μ

はB⁢(a,R)上収束しさらに連続である.よってあるC∈(0,∞) が存在して

∑μ∈Zn1μ!⁢|(∂μf)⁢(a)|⁢|x−a|μ≤C

となる.任意のr∈(0,R]に対してx=(r,…,r)+aとすると

|(∂μf)⁢(a)|≤C⋅μ!r|μ|

となることがわかる. 特に

|(∂μf)⁢(a)|≤C⋅μ!R|μ|

である.

ここでG:U⁢(0,1)→ℝを

G⁢(x)=∑μ∈Znxμ

と定義し,l,M,Lを補題20で存在が示されたものとする.

さてt=l/2とし,rを十分小さく取り,t⁢r<Rとなるようにする. 任意のx∈U⁢(a,r)に対して

f⁢(x)=∑μ∈Zn1μ!⁢(∂μf)⁢(a)⁢(x−a)μ

であるから任意のν∈Znに対して

(∂νf)⁢(x)=∑ν≤μ(μ)ν⁢1μ!⁢(∂μf)⁢(a)⁢(x−a)μ−ν=∑μ∈Zn(μ+ν)ν⁢1(μ+ν)!⁢(∂μ+νf)⁢(a)⁢(x−a)μ

が成り立つ. よって

|∑μ∈Zn(μ+ν)ν⁢1(μ+ν)!⁢(∂μ+νf)⁢(a)⁢(x−a)μ|≤∑μ∈Zn(μ+ν)ν⁢1(μ+ν)!⁢|(∂μ+νf)⁢(a)|⁢r|μ|
≤ν!r|ν|⁢∑μ∈Zn(μ+ν)νv!⁢1(μ+ν)!⁢|(∂μ+νf)⁢(a)|⁢r|μ|+|ν|≤C⋅ν!r|ν|⁢∑μ∈Zn(μ+νν)⁢(rR)|μ|+|ν|
≤C⋅ν!R|ν|⁢∑μ∈Zn(μ+νν)⁢t|μ|

となる.ここで (1/ν!)⁢(∂νG)⁢(t,t,…,t)=∑μ∈Zn(μ+νν)⁢t|μ| なので,補題20より

∑μ∈Zn(μ+νν)⁢t|μ|≤ML|ν|

となる. 結局x∈U⁢(a,r)に対して

|(∂μf)⁢(x)|≤C′⋅μ!(R⁢L)|μ|

が成り立つことがわかる.これで前半の証明が終わる.

逆に主張の後半の条件が成り立っているとする. このとき任意にa∈Uをとり,r∈(0,∞)を十分小さく取り C,R∈(0,∞)が存在して2⁢r<Rを見たし,さらに U⁢(a,r)の任意の点x∈U⁢(a,r)について

|(∂μf)⁢(a)|≤C⋅μ!R|μ|

が成り立つと仮定しても良い. 今ここで,級数∑μ∈Zn1μ!⁢(∂μf)⁢(a)⁢(x−a)μ が絶対収束することを証明しよう.任意のμ∈Znについて

1μ!⁢|(∂μf)⁢(a)|⁢|x−a|μ≤C⋅2−|μ|

が成り立ち,

∑μ∈Zn2−|μ|

は収束するのでくだんの冪級数がU⁢(a,r)上で絶対収束することがわかる. このとき任意のx∈U⁢(a,r)についてテイラーの定理より ξ∈U⁢(a,r)が存在して

f⁢(x)=∑μ∈Zn,|μ|≤N1μ!⁢(∂μf)⁢(a)⁢(x−a)μ+∑μ∈Zn,|μ|=N+11μ!⁢(∂μf)⁢(ξ)⁢(x−a)μ

が成り立つ. よって仮定よりこの剰余項について

|∑μ∈Zn,|μ|=N+11μ!⁢(∂μf)⁢(ξ)⁢(x−a)μ|≤C⋅(n+Nn−1)⁢2−(N+1)≤Cn!⁢Nn2N+1

が成り立ち,N→∞のときNn2N+1→0 なので

f⁢(x)=∑μ∈Zn1μ!⁢(∂μf)⁢(a)⁢(x−a)μ

が成り立つ. よってU⁢(a,r)上でfは冪級数展開可能であり, aは任意であったから定理が成り立つ. ∎

3 特殊な準線形一階偏微分方程式の解法

Iをℝの開区間とし, {ai:I→ℝ}i=1nをC∞級関数の族とする. Dをℝnの領域とし, u:D→ℝを未知関数とする準線形一階偏微分方程式

(1) ∑i=1nai⁢(u)⁢∂iu=0

の解放を考察する. 一般に準線形といった場合にはaiはuのみならずxiに依存している場合を含む.

命題 22.

Iをℝの開区間とし, {ai:I→ℝ}i=1nをC∞級関数の族とする. 関数の族 {βi:I→ℝ}は任意のz∈Iについて

(2) ∑i=1nai⁢(z)⁢βi⁢(z)=0

を満たすとする. w:I→ℝを適当な微分可能関数として, zと(x1,x2,…,xn)∈Uに関する等式

(3) w⁢(z)=∑i=1nβi⁢(z)⋅xi

を考える. Uの部分開集合Vがg:V→Iが 等式3の微分可能な陰関数,つまり 任意のx∈Vに関して

w⁢(g⁢(x))=∑i=1nβi⁢(g⁢(x))⋅xi

を満たすとし,さらに 任意のx∈Vに関して

(∂zw)⁢(g⁢(x))−∑i=1n(∂zβ)⁢(g⁢(x))⋅xi≠0

を満たすとすると,gは任意のx∈Vに対して

∑i=1nai⁢(g⁢(x))⁢∂ig⁢(x)=0

を満たす.つまりgはV上で 準線形一階微分方程式(1) の解になっている.

証明.

F:U×I→ℝを

F⁢(x1,…,xn,z)=w⁢(z)−∑i=1nβi⁢(z)⋅xi

と定義するとg:V→Iは 任意のx∈Vに関してF⁢(x,g⁢(x))=0 を満たしている. そして任意のx∈Vについて

∂ig=βi⁢(g⁢(x))(∂zF)⁢(x,g⁢(x))

なので,等式(2)より

∑i=1nai⁢(g⁢(x))⁢∂ig⁢(x)=1(∂zF)⁢(x,g⁢(x))⁢∑i=1nai⁢(g⁢(x))⋅βi⁢(g⁢(x))=0

となる.

∎

4 さらに特殊な方程式

命題 23.

x∈ℝm に対してσ⁢(x)=∑i=1mxi とおく. さらにn∈ℤ>0 でR,C∈ℝ>0⁢と⁢す⁢る⁢. このときm+1変数 の実数値関数v⁢(x,y)に関する 初期値問題

(4) ∂v∂y⁢(x,y)=n⁢C1−n⁢v⁢(x,y)R⁢∑i=1m∂v∂xi
v⁢(x,0)=C⁢σ⁢(x)R1−σ⁢(x)R

は原点の近傍で定義された解析関数の解を持つ. ここで,m+1番目の変数をyと表している.

証明.
βy=m⁢n⁢C1−n⁢v⁢(x,y)R

とし,βxi=1とおくと,先の命題の条件を満たす. さて,wも初期値問題を満たすように選ばなければならない. 今の場合にはxに対して

w⁢(v⁢(x,0))=∑i=1mβxi⁢xi=σ

とならなければならない. つまり

w⁢(C⁢σ⁢(x)R1−σ⁢(x)R)=σ

である. このようなwとして

w⁢(z)=R⁢zC+z

を今回は用いる. このとき

w⁢(z)=m⁢n⁢C1−n⁢zR⁢y+σ

をzについてといて,初期値の条件を満たす関数を見出す. この式を変形すると

n⁢(R−σ)⁢z2+(R⁢m⁢n⁢C⁢y+R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)⁢z+(R⁢m⁢n⁢y⁢C2+R⁢σ+R⁢σ⁢C)=0

である. よってℝm+1の原点の十分小さい近傍V⊂ℝm+1を十分小さく取って任意のx∈V についてR−σ>0と

(R⁢m⁢n⁢C⁢y+R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)2−4⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢m⁢n⁢y⁢C2+R⁢σ+R⁢σ⁢C)>0

となるようにすると z⁢(x,y)の候補は二次方程式の解の公式から

−12⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢m⁢n⁢C⁢y+R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)
±12⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢m⁢n⁢C⁢y+R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)2−4⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢m⁢n⁢y⁢C2+R⁢σ+R⁢σ⁢C)

である.この式でy=0とすると

−12⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)
±12⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)2−4⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢m⁢n⁢y⁢C2+R⁢σ+R⁢σ⁢C)

であり,平方根の中身を整理すると

−12⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)±|R2−(R+C⁢n)⁢σ|

となる.ここでV⊂ℝm+1の取り方から任意のx∈Vについて R2−(R+C⁢n)⁢σ⁢(x)>0が成り立つので,

−12⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)+(R2−(R+C⁢n)⁢σ)=C⁢σ⁢(x)R1−σ⁢(x)R

が成り立つから V上でz⁢(x,y)を

−12⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢m⁢n⁢C⁢y+R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)
+12⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢m⁢n⁢C⁢y+R⁢σ−R2−σ⁢C⁢n)2−4⁢n⁢(R−σ)⁢(R⁢m⁢n⁢y⁢C2+R⁢σ+R⁢σ⁢C)

と定義すればz:V→ℝは原点の近傍で定義された 偏微分方程式(5)の解である 今からこのzが解析的であることを確かめよう. まず分母にある2⁢n⁢(R−σ)は解析的であるから 結局平方根の部分が解析的であることを示せば良い. 平方根の中身は解析的であり,解析関数の合成が解析的であること, 平方関数がℝ>0で解析的であることを踏まえると, 結局上で定義したzが解析的であることがわかる. ∎

5 Cauchy–Kovalevkayaの定理の特殊な場合

命題 24.

n,m∈ℤ>0 とし, {ϕ}i=1n はϕi⁢(0)=0 を満たす0∈ℝm+1でm+1変数の解析的な関数とし {Fi,j,k}i,j,k=1nは 0∈ℝnで解析的なn変数関数とする. このとき準線形一階連立偏微分方程式の初期値問題

∂ui∂y=∑j,kFi⁢(u1,…,un)⁢∂uj∂xk
u⁢(x,0)=ϕi⁢(x)

を考えると,原点0∈ℕm+1の近傍Nが存在し, N上で定義された解析的関数がこの連立方程式の解であり N上での滑らかな解はただ一つしか存在しない.

証明.

ui が冪級数展開できるとして その係数を ϕiとFi,j,k から計算することを考えると, 普遍的な非負整数を係数にもつ多項式が存在して, uiの係数はその多項式に ϕiとFi,j,k を代入することで得られる. 解の唯一性はこのことから従う. よってFi,j,k とϕiを それぞれの優関数に置き換えて 考えている方程式 の解が存在することがわかればその解 は元の方程式の優関数になるので 元の方程式の解が確かに存在することがわかる. C,R∈(0,∞) を適当に選べば, z∈ℝnに対して s⁢(z)=∑i=1nziと定義して

Gi,j,k⁢(z)=G⁢(z)=n⁢C1−s⁢(z)R=C⁢∑l=0∞(s⁢(z)R)l

で定義される関数は原点の近傍で Fi,j,kの優関数になっており, x∈ℝmに対して σ⁢(x)=∑i=1mxi と定義して

ψi⁢(x)=ψ⁢(x)=C⁢σ⁢(x)R1−σ⁢(x)R=∑l=1∞(σ⁢(x)R)

とするとこれはϕiの優関数になっている. よって vi=vとして 初期値問題

(5) ∂v∂y⁢(x,y)=n⁢C1−n⁢v⁢(x,y)R⁢∑i=1m∂v∂xi
v⁢(x,0)=C⁢σ⁢(x)R1−σ⁢(x)R

の解が存在すれば 証明が終わるが, これの解析解が原点に存在することは既に証明しているので 証明が終わる.

∎

次に項が付け加わった場合の解について考えよう.

命題 25.

n,m∈ℤ>0 とし, {ϕ}i=1n はϕi⁢(0)=0 を満たす0∈ℝm+1でm+1変数の解析的な関数とし {Fi,j,k}i,j,k=1nとGは 0∈ℝnで解析的なn変数関数とする. このとき準線形一階連立偏微分方程式の初期値問題

∂ui∂y=∑j,kFi⁢(u1,…,un)⁢∂uj∂xk+G⁢(u1,…,un)
u⁢(x,0)=ϕi⁢(x)

を考えると,原点0∈ℕm+1の近傍Nが存在し, N上で定義された解析的関数がこの連立方程式の解であり N上での滑らかな解はただ一つしか存在しない.

証明.

xの変数を一つ増やして(x,z,y)∈ℝm+2 とする.m+1番目の変数がzで,m+2番目がyとする. このとき {Hi,j,k} をi,j,k∈{1,…,n}の時

Hi,j,k⁢(u1,…,un,un+1)=Fi,j,k⁢(u1,…,un)

で1≤i≤nの時

Hi,n+1,m+1⁢(u1,…,un,un+1)=G⁢(u1,…,un)

とし,以上で述べた場合以外では恒等的に0と定義する.

さらにψ⁢(x,z)を1≤i≤nに対して

ψi⁢(x,z)=ϕ⁢(x)

で

ψn+1⁢(x,z)=z

と定義する. このとき準線形一階連立偏微分方程式の初期値問題

∂vi∂y=∑j,kHi⁢(v1,…,vn,vn+1)⁢∂uj∂xk
u⁢(x,z,0)=ψi⁢(x,z)

を考えると,原点0∈ℕm+2の近傍Nが存在し, N上で定義された解析的関数がこの連立方程式の解であり N上での滑らかな解はただ一つしか存在しない. ここでxm+1=zと考えていることに注意せよ. ここでvn+1は

vn+1⁢(x,z,0)=z

で

∂vn+1∂y=0

なので vn+1⁢(x,z,y)=z である. これを用いて方程式を書き直すと

∂vn+1∂z=1

なので

∂vi∂y⁢(x,z,y)=∑j,kFi⁢(v1,…,vn)⁢∂vj∂xk⁢(x,z,y)+G⁢(v1,…,vn)
u⁢(x,z,0)=ϕi⁢(x,z)=ϕi⁢(x)

である. よって ui⁢(x,y)=vi⁢(x,0,y) と定義すればu1,…,unは

∂ui∂y=∑j,kFi⁢(u1,…,un)⁢∂uj∂xk+G⁢(u1,…,un)
u⁢(x,0)=ϕi⁢(x)

を満たす. (実際はviはzに依存しない.) ∎

6 解析的逆関数定理

まず最初に一変数の場合の逆関数定理を証明する. そのために次の特殊な場合の陰関数定理を証明する.

命題 26.

Iをℝの開区間とし, 0∈Iとする.そして f:I→ℝ をI上の解析関数とし, f⁢(0)=0で f′⁢(0)≠0を満たすとする. そして s∈ℝに対して F:I×ℝ→ℝ を

F⁢(x,y)=f⁢(x)+s⁢y

と定義する. このとき0の近傍 J が存在し,J上で定義された 解析関数g:J→ℝが存在して 任意のy∈Jについて F⁢(g⁢(y),y)=0 を満たす.

証明.

uを一変数の形式的冪級数で

u⁢(x)=−x+∑i=2∞ai⁢xi

とする. このときsを任意に固定した場合に 形式的冪級数v=∑i=0∞ci⁢yiを

u⁢(v)+s⁢y=0

を満たすように係数を定義したい.そのためには

∑i=0∞ci⁢yi=∑i=2∞ai⁢(∑i=0∞ci⁢yi)i+s⁢y

を満たすようにci を定義すれば良い. 両辺を比較すると c0=0 であり,任意のnについて cnは{ai}とsと c0,c1,…,cn−1 の多項式であり, その係数はsやu,vの取り方に依存しない 普遍的な非負整数である. ここで,各c0,c1⁢…,cn−1 は帰納的に{ai}とs の多項式で その係数は普遍的な非負整数であることがわかるので, 結局cnもそうである. つまり,任意のnについて ある普遍的な非負整数係数の多項式Pnが存在して

cn=Pn⁢({ai},s)

となる. 非負整数を係数にもつので |ai|≤ai′ |s|≤s′を満たすならば

|Pn⁢({ai},s)|≤Pn⁢({ai′},s′)

が成り立つ. この多項式を用いて定理を証明しよう.

適当に変数変換をして f′⁢(0)=−1 とする. そしてfは原点の近くで

f⁢(x)=−x+∑i=2ai⁢xi

と展開されているとする. このとき C,R∈(0,∞) が存在して任意のnについて

|an|≤CRn

が成り立つ. よって目的のg を構成するためには ∑i=0Pn⁢({ai},s)⁢yi が原点の近くで収束することを示せば良いが,

|Pn⁢({ai},s)|≤Pn⁢({CRn},|s|)

なので,

G⁢(x,y)=−x+∑i=2∞CRi⁢xi+|s|⁢y

に対して G⁢(h⁢(y),y)=0 となる原点の近くで定義された解析関数hを 構成できればMテストから 定理が証明される.

G⁢(x,y)=−x+C⁢(xR)21−xR+|s|⁢y

なのでhは

1R⁢(1+CR)⁢x2+(−1+|s|⁢yR)⁢x+|s|⁢y

のxに関する解であるが, 二次方程式の解の公式から G⁢(h⁢(y),y)=0を満たす原点の近くで定義された解析関数h が存在することがわかるので, 命題は証明された.

∎

上の命題を使うと一変数に関する解析的逆関数定理がわかる.

系 27.

Iをℝの開区間とし, a∈Iとする. そして f:I→ℝ をI上の解析関数とし, f′⁢(a)≠0を満たすとする. このときf⁢(a)の近傍Nが存在し,Nで定義された 解析的関数g:N→ℝ が存在し, g⁢(N)⊂I でなおかつ任意のy∈Nについて

f⁢(g⁢(y))=y

を満たす.

多変数の逆関数定理を証明するために 次の補題を証明する.

補題 28.

n∈ℤ>0 でn変数の解析的陰関数定理が成り立つと仮定する. そして ℝn+1の原点の近傍Nで定義された解析関数 f:N→ℝn+1 は(0)=0 をみたし,det((J⁢f)⁢(0))≠0 であり, f⁢(ℝn×{0})⊂ℝn×{0} を満たすとする. このときℝn+1 の原点の近傍Mで定義された関数g:M→ℝn+1が存在し, 任意のy∈Mについて

f⁢(g⁢(y))=y

を満たす.

証明.

f=(f1,…,fn+1) と表示されているとする. 適当にn+1次可逆行列Aをかけて A.fを新たにfとすることによって, 1≤i≤nの時∂ifn+1⁢(0)=0 で ∂n+1fn+1≠0 としてもよい. そして ℝnの原点の近傍上で 関数hを

h⁢(x1,…,xn)=(f1⁢(x1,…,xn,0),…,fn⁢(x1,…,xn,0))

と定義する. すると hの0におけるヤコビアンは0 でない. 解析的逆関数定理に関する仮定より 0∈ℝnの近傍で定義された解析的関数qで あってhの逆関数になっているものが存在する. 通常のC∞ 関数に関する逆関数定理から 0∈ℝn+1の近傍で定義された C∞関数gで fの逆関数になるものが存在する. g=(u1,…,un+1) と成分表示する. hとqの定義とgの定義より, 任意のyに対して

ui⁢(y1,…,yn,0)=q⁢(y1,…,yn)

が成り立つ. そして合成関数の微分公式から, gの定義域内の点yについて

(J⁢g⁢(y))⁢(J⁢f⁢(g⁢(y)))=1n+1

多項式の比で書かれる関数Aiが存在して

∂n+1ui⁢(y,…,yn,yn+1)=Ai⁢({∂ifj⁢(u1,…,un+1)})

を満たす. Aiは ヤコビ行列J⁢Fの逆行列の成分である. よってuiたちは準線形連立一階偏微分方程式

∂n+1ui⁢(y,…,yn,yn+1)=Ai⁢({∂ifj⁢(u1,…,un+1)})
ui⁢(y1,…,yn,0)=q⁢(y1,…,yn)

を満たすので Cauchy–Kovalevskayaの定理の特殊な場合である 命題25から, uiたちは原点の近傍で冪級数展開可能であることがわかり 定理が証明される. ∎

この補題を使って 多変数の逆関数定理を証明しよう.

定理 29.

Nをℝnの開区間とし, a∈Nとする. そして f:N→ℝ をN上の解析関数とし, det(J⁢f⁢(a))≠0を満たすとする. このときf⁢(a)の近傍Mが存在し,Mで定義された 解析的関数g:M→ℝ が存在し, g⁢(M)=N でなおかつgはfの逆関数である.

証明.

a=0で f⁢(0)=0 と仮定しても良い. f=(f1,…,fn+1) と表示されているとする. 適当にn+1次可逆行列Aをかけて A.fを新たにfとすることによって, 1≤i≤nの時∂ifn+1⁢(0)=0 で ∂n+1fn+1≠0 としてもよい. そして ℝnの原点の近傍上で 関数hを

h⁢(x1,…,xn)=(f1⁢(x1,…,xn,0),…,fn⁢(x1,…,xn,0))

と定義する. すると hの0におけるヤコビアンは0 でない. 解析的逆関数定理に関する仮定より 0∈ℝnの近傍で定義された解析的関数qで あってhの逆関数になっているものが存在する. ここで0∈ℝn+1の近傍で定義された関数H を

H⁢(x)=(f1⁢(x),…,fn⁢(x),fn+1⁢(x)−fn+1⁢(q⁢(f1⁢(x),…,fn⁢(x),0)))

とする. この時Hの定義域をUとすると qの定義から H⁢(U∩(ℝn×{0}))⊂ℝn×{0} を満たす. そして 1≤i≤nと1≤j≤n+1 を満たすi,jについて

∂jHi⁢(0)=∂jfi⁢(0)

である. さらに1≤j≤nとなるjについて

∂jHn+1⁢(0)=∂jfn+1⁢(0)−∑k,l=1n∂kfn+1⁢(0)⁢∂lqk⁢∂jfl⁢(0)=0

であり,

∂n+1Hn+1=∂jfn+1⁢(0)−∑k,l=1n∂kfn+1⁢(0)⁢∂lqk⁢∂n+1fl⁢(0)=∂jfn+1⁢(0)

なので det(J⁢F)⁢(0)≠0である. n変数の陰関数定理が成り立っているという帰納法の仮定と 先の補題から Hの解析的逆関数Pが存在し0∈ℝn+1の近傍で定義されている. 今ここで,

g⁢(y)=P⁢(y1,…,yn,yn+1−fn+1⁢(q⁢(y1,…,yn),0))

と定義するとこれが求める解析的逆関数になっている. ∎

逆関数定理から 陰関数定理を導くのは 結構簡単であるので証明は省略する.

定理 30.

n,m∈ℤ>0 とし U,Vをそれぞれℝnとℝm の開集合とする. そして G:U×V→ℝm を解析関数とし, (a,b)∈U×Vは G⁢(a,b)=0を満たすとする.

det(Jy⁢G)⁢(a,b)≠0

とする. この時aの近傍で定義された解析関数fが存在し f⁢(a)=bを満たしなおかつ定義域内の任意の点xについて G⁢(x,f⁢(x))=0 を満たす.

注意.

以上で述べた定理は 複素係数でも正しい.

References

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