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バナッハ空間を関数空間に埋め込むことと,関数空間の可分距離空間に対する普遍性のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

バナッハ空間の関数空間への埋め込みと,関数空間の可分距離空間に対する普遍性

ナンブ キトラ
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では,まず最初に任意の実バナッハ空間がコンパクト空間上の実連続関数の空間に等長に埋め込めることを示す.次に任意の可分距離空間を等長的に埋め込めるような関数空間を調べる.この文章では実係数の線形空間しか扱わないので,バナッハ空間と言ったら全て実係数である.

1 バナッハ空間の関数空間への埋め込み

一般にバナッハ空間Bに対してB∗でその双対空間を表す. また, f∈B∗とx∈Bに対して ⟨f,x⟩=f⁢(x)と定義する. そしてB∗上のノルム∥⋅∥B∗は

‖f‖B∗=supx∈B,x≠0|f⁢(x)|‖x‖B=sup‖x‖B≤1,x≠0|f⁢(x)|‖x‖B=sup‖x‖B≤1|f⁢(x)|=sup‖x‖B=1|f⁢(x)|.

と定義する.

一般にバナッハ空間Bのノルムは単に∥⋅∥と書くが,区別の必要があるときには∥⋅∥Bと書く.

以下の定理はHahn–Banachの定理の系の一つである.Hahn–Banachの定理については例えば[1]を 参照のこと.

定理 1 (Hahn–Banach).

Bを0次元線形空間でないバナッハ空間とし,x∈Bとする. このとき,f∈B∗で, ‖f‖B∗=1でf⁢(x)=‖x‖B となるものが存在する.

系 2.

任意のバナッハ空間Bと任意のx∈Bについて

‖x‖B=supf∈B∗,f≠0|f⁢(x)|‖f‖B∗=sup‖f‖B∗≤1,f≠0|f⁢(x)|‖f‖B∗=sup‖f‖B∗≤1|f⁢(x)|=sup‖f‖B∗=1|f⁢(x)|.

が成り立つ.

Bをバナッハ空間とする.S⊂B∗とする. x∈Bに対してτx⁢(f)=⟨f,x⟩として写像τx:B∗→ℝを定義し,写像の族 x∈Bで添字付けられた写像族τx|S:S→ℝの元の全てを連続にするS上の位相のことを S上の汎弱位相と呼ぶ. S上の汎弱位相はB∗上の汎弱位相をSに制限した位相に等しい. また,S上の汎弱位相はハウスドルフ位相である. 以下では,{f∈B∗∣‖f‖≤1}に汎弱位相を入れた空間を,U⁢[B]と書くことにする.

次の有名な定理の証明は,例えば[1]を参照されたい.

定理 3 (Banach–Alaoglu).

Bをバナッハ空間とする.このとき汎弱位相を持つ空間 U⁢[B]={f∈B∗∣‖f‖≤1} はコンパクト空間である.

以上のBanach–Alaogluの定理を使って,バナッハ空間を関数空間に埋め込む.その前に関数空間を定義する.

定義 4.

空でない位相空間Xに対してCb⁢(X)でXからℝへの有界実連続関数全体を表すことにする. そしてf,g∈Cb⁢(X)に対して,

‖f−g‖Cb⁢(X)=supx∈X|f⁢(x)−g⁢(x)|

でCb⁢(X)上のノルム∥⋅∥C⁢(X) を定義する. このノルムを単に∥⋅∥と省略したりする. このときCb⁢(X)はバナッハ空間になる.

同様にC⁢(X)でX上の実連続関数 全体の集合とし,上と同様にsupノルムを導入する.このときノルムは∞の値を一般にとりうる.

Xがコンパクト空間の場合には C⁢(X)=Cb⁢(X)となることに注意せよ.

以下の定理がこのセクションの主定理である.

定理 5.

任意のバナッハ空間Bに対して, τ:B→C⁢(U⁢[B])を任意のx∈Bに対して, τ⁢(x)⁢(f)=⟨f,x⟩で定義する. このとき,τは線形等長写像である. よって,特に任意のバナッハ空間はコンパクトハウスドルフ空間上の 関数空間に等長埋め込むことができる.

証明.

任意のx∈Bについてτ⁢(x)がU⁢[B]上の連続関数であることは, 汎弱位相の定義そのものから従う. τの線形性は明らかである. 等長性を示そう. 任意のx∈Bについて,

‖τ⁢(x)‖C⁢(U⁢[B])=‖x‖B

を示せば良い.

系2より,

‖τ⁢(x)‖C⁢(U⁢[B])=supf∈U⁢[B]|τ⁢(x)⁢(f)|=sup‖f‖B∗≤1|f⁢(x)|=‖x‖B

なので,証明は終わる. ∎

2 関数空間の可分距離空間に対する普遍性

2.1 普遍性の定理

このセクションでは,任意の可分距離空間を等長に埋め込むことができるような関数空間を調べる.

二つの空でない位相空間X, Yと連続写像p:X→Yに対して, C⁢(p):C⁢(Y)→C⁢(X)をC⁢(p)⁢(f)=f∘pで定義する. このとき以下が成り立つ.

命題 6.

二つの空でない位相空間X, Yと連続写像p:X→Yに対して, pが全射ならば,C⁢(p):C⁢(Y)→C⁢(X)はノルムを保つ.つまり 任意のf∈C⁢(Y)について,

‖f‖=‖C⁢(p)⁢(f)‖

となる.ここで,ノルムには∞の値も許されていることに注意しよう.

証明.

任意のf∈C⁢(Y)について,pの全射性から

‖f‖=supy∈Y|f⁢(x)|=supx∈X|f∘p⁢(x)|=‖f∘p‖

なので,証明が終わる. ∎

空でない距離空間Xに対して,dをその距離とし,o∈Xを固定点とする.このときx∈Xに対して K⁢(x):X→ℝを

K⁢(x)⁢(y)=d⁢(x,y)−d⁢(y,o)

と定義することによって 写像K:X→Cb⁢(X) を定義する.このとき Kは等長埋め込みになっている. この埋め込み写像をクラトフスキー埋め込みと呼ぶ.

補題 7.

可分距離空間Xに対して, 可分バナッハ空間Bが存在して, XからBへの等長埋め込みが存在する.

証明.

K:X→Cb⁢(X)をクラトフスキー埋め込みとする. このときK⁢(X)によって生成されるCb⁢(X)の部分空間の完備化が求める可分バナッハ空間になる. ∎

定義 8.

距離空間Xが 可分距離空間に対して普遍的 であるとは,任意の可分距離空間A に対して,AからXへの等長埋め込みが存在するときにいう.

定義 9.

位相空間Xがパラメトライジングであるとは, 任意の可分バナッハ空間Bと汎弱位相を持つ双対空間の単位球U⁢[B]={f∈B∗∣‖f‖≤1} に対して,XからU⁢[B]に対して全射連続写像が存在するときにいう. この用語はこの文章でしか使わないので注意されたい.

以下の定理がこの文書の中心的な定理である.証明は[7, Theorem 3.6]の証明を大いに参考にした.

定理 10.

Xをパラメトライジングな位相空間とする. このとき,Cb⁢(X)は可分距離空間に対して普遍的である.

証明.

Tを可分距離空間とする. このときCb⁢(X)にT が埋め込めることを証明する. 系7 により,可分バナッハ空間Bと等長埋め込み h:T→Bが存在する. さて, p:X→U⁢[B]を全射連続写像とする. Xがパラメトライジングであることからこのような写像は存在する. このときp:X→U⁢[B] は全射なので,命題6から C⁢(p):C⁢(U⁢[B])→Cb⁢(X) は等長埋め込みである. また,定理5から等長埋め込み τ:T→C⁢(U⁢[B])が存在する.よって 写像C⁢(p)∘τ∘h:T→Cb⁢(X)が求める等長埋め込みである. ∎

2.2 普遍性を持つ関数空間を持つ空間

このサブセクションでは可分距離空間に対して普遍性を持つ距離空間の例を挙げていく.最初にパラメトライジングなもの,後にそうでないものを挙げる.

以下の定理は基本的なものである.

補題 11.

Bを可分バナッハ空間として汎弱位相を持つ空間U⁢[B]={f∈B∗∣‖f‖≤1}はコンパクトで,距離化可能空間であり, 弧状連結で,かつU⁢[B]の任意の空でない開集合も弧状連結である.

以下の定理は結構有名である.証明は例えば [8, Theorem 4.18]を参照のこと.

定理 12.

Γをカントール集合とする. このとき, 任意の空でないコンパクト距離化可能空間 K に対して全射連続写像p:Γ→Kが存在する. 特にΓ はパラメトライジングである.

以下の定理の証明は,例えば[2]を参照のこと.

定理 13 (Hahn–Mazurkiewicz).

空でない位相空間X は以下を満たすとする.

  1. (1)

    Xはコンパクトな距離化可能空間

  2. (2)

    Xは連結

  3. (3)

    Xは局所連結,つまり,連結開集合からなる開基が存在する.

このとき,全射連続写像p:[0,1]→X が存在する. 特に[0,1]はパラメトライジングである.

距離化可能空間Xが絶対レトラクトであるとは, Xが他の距離空間Yに閉集合として位相的に埋め込まれているならば, 連続写像R:Y→Xが存在して,R|X=i⁢dXを満たす.ここで,X⊂Yとみなしている.

次の定理は単位閉区間[0,1]の可算直積空間[0,1]ℕの特徴付け定理の一つである.空間[0,1]ℕはヒルベルトキューブと呼ばれる. 以下の定理は[9]によってフレシェ空間の場合に原型が示され, によって以下に述べる形になった.

定理 14 (Keller-Dobrowolski–Toruńczyk).

Kを位相線形空間の凸集合とする. もし,Kは無限大の位相次元を持ち,コンパクトで距離化可能空間であって,絶対レトラクトならば, Kは[0,1]ℕに同相 である.

距離空間が絶対レトラクトかどうかを証明するには拡張定理がとても役に立つ. 次の定理はDugundjiの拡張定理と呼ばれている.証明はこのブログでも紹介している [3].また原論文[6] を参照のこと. 局所凸空間の定義は[1]などを参照のこと.大雑把に局所凸位相線形空間のことを説明すると,セミノルムの族によって位相が生成されている位相線形空間が局所凸空間である.

定理 15 (Dugundji).

距離空間(X,d)の閉集合Aと局所凸型線形位相空間Lの凸集合C及び連続写像f:A→Cについて、連続写像F:X→Cが存在し、

F|A=f

を充たす。

これを用いると次のことがわかる.

命題 16.

任意の無限次元可分バナッハ空間Bについて,U⁢[B]は絶対レトラクトである. 特にU⁢[B]はヒルベルトキューブ[0,1]ℕに同相である.

証明.

U⁢[B]が他の距離化可能空間Yに閉集合として位相的に埋め込まれているとする. ここではU⁢[B]⊂Yとみなすことにする. B∗に汎弱位相を導入すると,この位相空間は局所凸線形位相空間になるので, 恒等写像i⁢d:U⁢[B]→U⁢[B]は, Dugundjiの拡張定理(定理15)の仮定を満たす. したがってi⁢dをY全体に拡張し,連続写像R:Y→U⁢[B]であって, R|U⁢[B]=i⁢dなるものを得る.よってU⁢[B]は絶対レトラクトである. 補題11より, Bが可分なので,U⁢[B]はコンパクトで距離化可能である.ゆえに定理14から,U⁢[B]がヒルベルトキューブに同相であることがわかる. ∎

有限次元バナッハ空間BについてU⁢[B]は有限次元閉球に同相で,この空間は [0,1]ℕからの全射連続写像が存在するので,以下を得る.

系 17.

ヒルベルトキューブ[0,1]ℕはパラメトライジングである.

以上であげた三つの空間がパラメトライジングであることは以下のようにまとめることができる.

系 18.

バナッハ空間 C⁢(Γ),C⁢([0,1])そしてC⁢([0,1]ℕ)は可分距離空間に対して普遍的である.

注意.

C⁢(Γ)とC⁢([0,1])が可分距離空間に対して普遍性を持つことは, [4]で最初に示された.

一般に距離空間Xがパラメトライジングでなくとも,その上の関数空間は可分距離空間に対して普遍的であり得る. 無限次元可分バナッハ空間BについてU⁢[B]は非可算集合なので, 可算空間はパラメトライジングではないことに注意しよう.

命題 19.

有理数の空間ℚについて, Cb⁢(ℚ)は可分距離空間に対して 普遍性を持つ.

証明.

順序を保つ位相的埋め込み H:ℚ→[0,1]でH⁢(ℚ)が[0,1]のなかで稠密になるものを考える. 任意の可分距離空間Xと 等長埋め込みI:X→C⁢([0,1]) をとる. このとき, 写像J:X→Cb⁢(ℚ) を J⁢(x)=I⁢(x)∘Hと定義する. すると,H⁢(ℚ)が[0,1] の中で稠密であることから, Jが等長埋め込みであることがわかる. ∎

命題 20.

Nは可算離散空間とする. このとき, Cb⁢(N) は可分距離空間に対して普遍的である.

証明.

空間Nについて

N={(k,n)∈ℕ2∣n∈ℕ,0≤k≤2n}

と仮定しても良い.

任意の可分距離空間Xと 等長埋め込みI:X→C⁢([0,1]) をとる. このとき, 写像J:X→Cb⁢(N) を

J⁢(x)⁢(k,n)=f⁢(k2n)

と定義する. このとき, {k/2n∣(k,n)∈N} は[0,1]の中で稠密であることから, Jは等長埋め込みになっている. ∎

カントール集合上の関数空間C⁢(Γ) が可分距離空間に対して普遍的であるということからより広いクラスの空間に対して同様の性質が言える.

以下の定理はDugundjiの拡張定理の証明法を詳細に見るとわかることである.[6, Theorem 5.1]を参照のこと.

命題 21.

Xを空でない距離化可能空間とし,Aをその空でない閉集合とする. このとき, 等長な線形写像

ϕ:C⁢(A)→C⁢(X)

が存在し,任意のf∈C⁢(A)に対して ϕ⁢(f)|A=fを満たす.

命題 22.

Xを非可算可分完備距離化可能空間とする. このとき, Cb⁢(X)は可分距離空間に対して普遍的である.

証明.

Xが非可算可分完備距離化可能空間ならば,Xはカントール集合 Γ と同相な部分集合を持つ(例えば[8, Corollary 6.5]を参照のこと). よって,命題21 から,Cb⁢(X)はC⁢(Γ) と等長的な部分空間を含むので, 特に可分距離空間に対して普遍的である. ∎

注意.

C⁢(ω0+1) は可分距離空間に対して普遍的でない. 特に,C⁢(ω0⋅2+1) はC⁢(ω0+1) に等長的に埋め込めない. これは[10, Lemma 5]を参照のこと.

References

  • [1] 宮島静雄, 関数解析, 横浜図書, 2005年.
  • [2] yamyamtop, 全射な曲線と単射な曲線,
    https://yamyamtopo.files.wordpress.com/2019/08/hahn-mazurkiewicz.pdf, 2020年9月閲覧.
  • [3] 電波通信(ナンブキトラ), ダガンディーとハウスドルフの拡張定理, http://concious4410.hatenablog.com/entry/2017/01/18/185814
  • [4] S. Banach, Théorie des Óperations Linéaires, Chelsea Publishing Co., New York, 1955.
  • [5] T. Dobrowolski and H. Truńczyk, On metric linear space homeomorphic to ℓ2 and compact convex sets homeomorphic to Q, Bull. Acad. Polon. Sci. Sér. Sci. Math. 27 (1979), 883–887.
  • [6] J. Dugundji, An extension of Tietze’s theorem, Paciffic J. Math. vol. 1 (1951), 105–125.
  • [7] J. Heinonen, Geometrical embedding of metric spaces, Report, University of Jyväskylä Department of Mathematics and Statics, vol. 90. 2003. http://www.math.jyu.fi/tukimas/ber.html.
  • [8] A. S. Kechris, Classical Descriptive Set Theory, Springer-Verlag, GTM 156 (1995).
  • [9] O. H. Keller, Die homoiomorphie der kompakten konvexen mengen in Hirbertscen Raum, Math. Ann. 105 (1931), 748–758.
  • [10] R. Villa, Isometric embedding into space of continuous functions, Studia Math. 129 (3) (1998), 197–205.