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Riesz-Markov-Kakutaniの表現定理II

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では Riesz-Markov-Kakutaniの定理 を関数空間Cc⁢(X;𝕂) の双対空間の言葉で書き直す. ここでXは局所コンパクトハウスドルフ空間であり, 𝕂はℝもしくはℂである.

1 帰納極限空間としてCc⁢(X;𝕂)

記号𝕂でℝかℂを表すとする. Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とするとき, 連続写像f:X→𝕂が の台supp⁡(f)とは

supp⁡(f)=CL⁡{x∈X∣f⁢(x)≠0}

のことである.ここでCLは閉包を表す. supp⁡(f)がコンパクトである関数fはコンパクト台を持つという. X上の𝕂に値を持ち, コンパクト台を持つ関数全体をCc⁢(X;𝕂) で表す. また,X上のコンパクト集合Kについて,

D⁢(K;𝕂)={f∈Cc⁢(X;𝕂)∣supp⁡(f)⊂K}

と定義する.このとき f∈D⁢(X;𝕂)について pK⁢(f)=supx∈X|f⁢(x)|と定義するとpKはD⁢(K;𝕂) 上のノルムとなり,このノルムについてD⁢(X;𝕂)はバナッハ空間になる. K⊂Lの時, D⁢(K;𝕂)⊂D⁢(L;𝕂) であり,包含写像は等長写像になっている. そして Cc⁢(X;𝕂)=⋃K:c⁢o⁢m⁢p⁢a⁢c⁢tD⁢(K;𝕂) であるから,Cc⁢(X;𝕂)は集合として帰納極限 C0⁢(X;𝕂)=ColimitK:c⁢p⁢t⁡C⁢(K;𝕂) とみなせるが,Cc⁢(X;𝕂)にこの帰納極限空間 としての位相構造を与える. つまり,U⊂Cc⁢(X;𝕂)が開集合である ためには, Xの任意のコンパクト集合Kについて U∩D⁢(K;𝕂)がD⁢(X;𝕂)の開集合であることが必要十分である.

またXがコンパクトハウスドルフ空間のときにはCc⁢(X;𝕂)はバナッハ空間 C⁢(X;𝕂)と同型になる.

2 線形形式

帰納極限位相の定義から,写像f:Cc⁢(X;𝕂)→𝕂 が連続であるためには Xの任意のコンパクト集合Kについて f|D⁢(K;𝕂):D⁢(K;𝕂)→𝕂が連続であることが必要十分である. D⁢(K;𝕂)はノルムpKについてバナッハ空間であったから特にfが線形写像である場合について次を得る.

命題 1.

線形写像 Λ:Cc⁢(X;𝕂)→𝕂が連続であるためには 任意のコンパクト集合K⊂Xに対して あるM∈(0,∞) が存在し, 任意のf∈D⁢(K;𝕂)について

Λ⁢(f)≤M⁢pK⁢(f)

となることが必要十分である.

Cc⁢(X;ℝ)上の線形形式の中でも重要なクラスを定義する.

定義 2.

写像Λ:Cc⁢(X;𝕂)が正値線形写像であるとは,f∈C0⁢(X;ℝ)でかつf≥0となるfについて

Λ⁢(f)≥0

となることである.

補題 3.

C⁢(X;ℝ)上の 正値線形写像は連続である.

証明.

任意にコンパクト集合K⊂Xを与える. そして,連続関数u:X→[0,1]で u|K=1で, supp⁡(u)がコンパクトなものを取る. 任意の f∈D⁢(K;𝕂) について F=pK⁢(f)⁢uとおく, このときF−f≥0 なので,

Λ⁢(f)≤Λ⁢(F)=pK⁢(f)⁢Λ⁢(u)

となるので,M=Λ⁢(u)と すれば命題1からΛは連続であることがわかる. ∎

C⁢(X;ℝ)上の 連続線型形式について実数値測度のHahn分解のようなことができる. 補助的にCc+⁢(X)={f∈Cc⁢(X;ℝ)∣f≥0} と定義する.

命題 4.

連続線形形式Λ⁢C0⁢(X;ℝ)→ℝについて 正値線形形式αとβが存在して

Λ=α−β

を満たす.

証明.

まずf∈Cc+⁢(X)について

α⁢(f)=supu∈Cc+⁢(X),0≤u≤fΛ⁢(u)

と定義する. 0≤u≤fならばpK⁢(u)≤pK⁢(f) なので,Λが連続であることから αは有限値でちゃんと定義できる. 定義からα⁢(0)=0であり, f,g∈Cc+⁢(X) についてf≤gならば α⁢(f)≤α⁢(g)であることがわかる.

まず最初に任意のf,g∈Cc+⁢(X)について α⁢(f+g)=α⁢(f)+α⁢(g)を示そう. u,v∈Cc+⁢(X)について,u≤fかつv≤g ならばu+v≤f+g なので

α⁢(f)+α⁢(g)≤α⁢(f+g)

がわかる. そしてu≤f+gとなるu∈Cc+⁢(X)について u≤min⁡{u,f}+gである.特にu−min⁡{u,f}∈Cc+⁢(X)であり, u−min⁡{u,f}≤gがわかるので,

Λ⁢(u)−Λ⁢(min⁡{u,f})=Λ⁢(u−min⁡{u,f})≤α⁢(g)

がわかる. また,min⁡{u,f}≤fなので

Λ⁢(u)≤Λ⁢(min⁡{u,f})+α⁢(g)≤α⁢(f)+α⁢(g)

であるから,結局

α⁢(f+g)≤α⁢(f)+α⁢(g)

が成り立つ.

そして一般のf∈Cc⁢(X;𝕂)については f=g−hとなるg,h∈Cc+⁢(X) を用いて

α⁢(f)=α⁢(h)−α⁢(g)

と定義する. このようなg,hの取り方は無数にあるが, f,g∈Cc+⁢(X)について α⁢(f+g)=α⁢(f)+α⁢(g) となるので,well-defined である. まず αが正値線形形式であることを示そう. f≥0ならば0∈C0⁢(X;ℝ)なので α⁢(f)≥0である. 次に線形性について調べよう. 定義とCc+⁢(X)の場合から鑑みて f,g∈Cc⁢(X;ℝ)について

α⁢(f+g)=α⁢(f)+α⁢(g)

となることはわかる. スカラー倍についても定義を見れば成り立つことがわかる. 以上で,正値線形形式αが得られた. β=α−Λとするとαの定義から βも正値線形形式であることがわかるのでこれで定理が証明された. ∎

次にℂに値を取る場合について都合のいい線形形式の分解があることを示そう.

命題 5.

任意の連続線形形式Λ∈Cc⁢(X;ℂ)→ℂについて 連続線形形式μ,ν:Cc⁢(X;ℂ)→ℂで 任意の f∈Cc⁢(X;ℂ)について

Λ⁢(f)=μ⁢(f)+−1⁢ν⁢(f)

であり,任意のf∈C⁢(X;ℝ)について μ⁢(g),ν⁢(g)∈ℝと μ⁢(−1⁢g)=−1⁢μ⁢(g)と ν⁢(−1⁢g)=−1⁢ν⁢(g) を満たすものが存在する.

証明.

まずf∈Cc⁢(X;ℝ)に対して,

μ⁢(f)=Λ⁢(f)+Λ⁢(f)¯2
ν⁢(f)=Λ⁢(f)−Λ⁢(f)¯2⁢−1

と定義し,f∈Cc⁢(X;ℝ)について μ⁢(−1⁢f)=−1⁢μ⁢(f)と ν⁢(−1⁢f)=−1⁢ν⁢(f) と線形に拡張する. するとμもνも複素線形形式である. また,任意のh∈Cc⁢(X;ℝ)について,

Λ⁢(−1⁢h)=−Λ⁢(h)−Λ⁢(h)¯2⁢−1+−1⁢Λ⁢(h)+Λ⁢(h)¯2

なので, 任意の f∈Cc⁢(X;ℂ)について

Λ⁢(f)=μ⁢(f)+−1⁢ν⁢(f)

である. f∈C⁢(X;ℝ)と−1⁢fの時でμ及びνの定義が違うことに気をつけよう.

連続性を示そう. h∈D⁢(K;ℝ)とすると,

|μ⁢(h)|=|Λ⁢(f)+Λ⁢(f)¯|2≤|Λ⁢(f)|+|Λ⁢(f)¯|2=|Λ⁢(f)|≤M⁢pK⁢(h)

がなり立つ. そして任意のh∈D⁢(X;ℂ)についてf,g∈D⁢(X;ℝ)を使って h=f+−1⁢gと表そう. この時上の評価から

|μ⁢(h)|=|μ⁢(f)|2+|μ⁢(g)|2≤2⁢M⁢(pK⁢(f)+pK⁢(g))≤2⁢2⁢M⁢pK⁢(h)

が成り立つので,μは連続である. νについても同様. ∎

上の命題群を合わせて次を得る.

系 6.

任意の連続線形形式Λ:Cc⁢(X;ℂ)→ℂについて Cc⁢(X;ℂ)の連続線形形式α,β, γ,δが存在して Cc⁢(X;ℝ)に制限するとℝに値をとりさらに正値線形形式になり,

Λ=(α−β)+−1⁢(γ−δ)

を満たす.

3 Cc⁢(X;𝕂)の双対空間を明らかにするものとしての表現定理

定義 7.

ℝ+-可換モノイドSとは 二つの演算+:S×S→Sと⋅:[0,∞)×S→Sと単位元0をもち次の公理を満たすものをいう.

  1. 1.

    +は可換であり,結合法則を満たす.

  2. 2.

    任意のx∈Sについてx+0=x.

  3. 3.

    任意のx∈Sについて1⋅x=x.

  4. 4.

    任意のxについて0⋅x=0. ここで左辺は0∈[0,∞)とxのスカラー積を表し,右辺の0はSの単位元である.

  5. 5.

    任意のr,s∈(0,∞)とx∈Sについて (r+s)⁢x=r⁢x+s⁢x

定義 8.

ℝ+-可換モノイド(S,+,0)について, その線形空間化 (K⁢(S),+,0)を次のように定義する. まずS×S上の関係Rを次のように定義する. (a,b)⁢R⁢(c,d)とはa+d=b+cである. するとRはS×S上の同値関係となる. そしてK⁢(S)=S×S/R とし,演算を[a,b]+[c,d]=[a+c,b+d]と定義する. この演算についてK⁢(S)は可換群になっている. 単位元は[0,0]であり,[a,b] の逆元 は[b,a]である. また,r∈[0,∞)について

r⁢[a,b]=[r⁢a,r⁢b]

と定義し,r<0の場合には

r⁢[a,b]=[|r|⁢b,|r|⁢a]

と定義すると,K⁢(S)は先ほど定義した+とこのスカラー倍について ℝ上の線形空間になる.

注意.

K⁢(S)は加法について見ればSのグロタンディーク群とみなせるが, この文章ではℝ+-可換モノイドをℝ上の線形空間にするために スカラー倍という付加的な構造が乗っかっている.

定義 9.

Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とする. このときX上の測度μがRMK測度であるとは以下の条件を満たすときにいう

  1. 1.

    μは[0,∞]に値をとるボレル測度である.

  2. 2.

    Xの任意のコンパクト集合Kについてμ⁢(K)<∞

  3. 3.

    Xの任意のボレル集合は外部正則である.つまり μ⁢(E)=inf{μ⁢(V)|V∈𝔒X⁢E⊂V}が成り立つ.ここで𝔒XはXの開集合系である.

  4. 4.

    Eが開集合もしくはμ⁢(E)<∞ならばEは内部正則である.つまり, μ⁢(E)=sup{μ⁢(K)|K∈C⁢p⁢t⁢(X)⁢K⊂E} が成り立つ.ここでC⁢p⁢t⁢(X)はXのコンパクト集合全体である.

X上のRMK測度全体をM⁢(X)と書くことにする.また, X上の有限RMK測度全体の集合をF⁢(X)と書くことにする. もちろんXがコンパクトハウスドルフ空間のときにはM⁢(X)=F⁢(X)である.

X上の符号付き測度で二つのRMK測度の差で表されるもの全体をS⁢(X)と書くことにする. また,X上の複素測度で,μ,ν∈S⁢(X)を用いて μ+−1⁢νの形で表されるもの全体をH⁢(X)と書くことにする.

ℝ線形空間VについてV×ℂVで次のようなスカラー倍が定義されたℂ線形空間を表すことにする. a,b∈ℝについて,

(a+−1⁢b)⁢(x,y)=(a⁢x−b⁢y,a⁢y+b⁢x)

と複素係数のスカラー倍を定義する. もちろん和の演算は各成分ごとにするものとする. このときℂ線形空間としての同型V×ℂV≅ℂ⊗ℝV が成り立つ.

補題 10.

Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とするとき,以下が成り立つ.

  1. 1.

    M⁢(X)とF⁢(X)はℝ+-可換モノイドである.

  2. 2.

    S⁢(X)はℝ-線形空間であり,ℝ-線形空間としての同型S⁢(X)≅K⁢(F⁢(X))が成り立つ.

  3. 3.

    H⁢(X)はℂ-線形空間であり,ℂ-線形空間としての同型 H⁢(X)≅S⁢(X)×ℂS⁢(X)≅ℂ⊗ℝS⁢(X)が成り立つ.

証明.

証明略 ∎

注意.

一般に二つの測度μとνの差の測度μ−νは定義できない. これは∞−∞が定義できないためである. これらの理由からM⁢(X)から単純に実数倍や引き算をするだけではℝ-線型空間は生成できない.なので代わりにグロタンディーク群(グロタンディーク線形空間?)K⁢(M⁢(X))を考えるのである. また,μとνが有限測度ならばその差μ−νは符号付き測度になるし ,Hahnの分解定理から符号付き測度は常に(正値)有限測度の差でかける. よってS⁢(X)は差で閉じているのでこの集合だけでℝ-線型空間とみなせるのである.

定理 11 (正値線形形式に対するRiesz-Markov-Kakutaniの表現定理).

Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とする. このときCc⁢(X;ℝ)上の正値線形形式Λに対して μ∈M⁢(X)が一意的に存在して任意のf∈Cc⁢(X;ℝ)に対して

∫Xf⁢𝑑μ=Λ⁢(f)

を満たす.

定義 12.

Cc⁢(X;𝕂)の双対空間,すなわちCc⁢(X;𝕂)の連続線形形式全体を Cc⁢(X;𝕂)∗と書くことにする.

正値線形形式に対するRiesz-Markov-Kakutaniの表現定理 と命題4 から次がわかる.

定理 13 (実Riesz-Markov-Kakutani).

Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とする.このときℝ線形空間としての同型

Cc⁢(X;ℝ)∗≅K⁢(M⁢(X))

が成り立つ.

複素数値のコンパクト台関数に対しても表現定理が成り立つ. 系4と正値線形形式に対するRiesz-Markov-Kakutaniの表現定理から次がわかる.

定理 14 (複素Riesz-Markov-Kakutani).

Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とする.このとき複素線形空間としての同型

Cc⁢(X;ℂ)∗≅H⁢(X)≅S⁢(X)×ℂS⁢(X)≅ℂ⊗ℝS⁢(X)

が成り立つ.

特にXがコンパクトハウスドルフ空間の場合には次の二つがわかる.

定理 15 (実Riesz-Markov-Kakutani).

Xをコンパクトハウスドルフ空間とする.このとき ℝ線形空間としての同型

C⁢(X;ℝ)∗≅K⁢(F⁢(X))

が成り立つ.

定理 16 (複素Riesz-Markov-Kakutani).

Xを局所コンパクトハウスドルフ空間とする.このとき ℂ線形空間としての同型

C⁢(X;ℂ)∗≅H⁢(X)≅S⁢(X)×ℂS⁢(X)≅ℂ⊗ℝS⁢(X)

が成り立つ.

References

  • [1] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974
  • [2] F. Trèves, Topological Vector Spaces, Distributions and Kernels, Dover, 2006.