Riesz-Markov-Kakutaniの表現定理II
この文章では Riesz-Markov-Kakutaniの定理 を関数空間 の双対空間の言葉で書き直す. ここでは局所コンパクトハウスドルフ空間であり, はもしくはである.
1 帰納極限空間として
記号でかを表すとする. を局所コンパクトハウスドルフ空間とするとき, 連続写像が の台とは
のことである.ここでは閉包を表す. がコンパクトである関数はコンパクト台を持つという. 上のに値を持ち, コンパクト台を持つ関数全体を で表す. また,上のコンパクト集合について,
と定義する.このとき について と定義するとは 上のノルムとなり,このノルムについてはバナッハ空間になる. の時, であり,包含写像は等長写像になっている. そして であるから,は集合として帰納極限 とみなせるが,にこの帰納極限空間 としての位相構造を与える. つまり,が開集合である ためには, の任意のコンパクト集合について がの開集合であることが必要十分である.
またがコンパクトハウスドルフ空間のときにははバナッハ空間 と同型になる.
2 線形形式
帰納極限位相の定義から,写像 が連続であるためには の任意のコンパクト集合について が連続であることが必要十分である. はノルムについてバナッハ空間であったから特にが線形写像である場合について次を得る.
命題 1.
線形写像 が連続であるためには 任意のコンパクト集合に対して ある が存在し, 任意のについて
となることが必要十分である.
上の線形形式の中でも重要なクラスを定義する.
定義 2.
写像が正値線形写像であるとは,でかつとなるについて
となることである.
補題 3.
上の 正値線形写像は連続である.
証明.
任意にコンパクト集合を与える. そして,連続関数で で, がコンパクトなものを取る. 任意の について とおく, このとき なので,
となるので,と すれば命題1からは連続であることがわかる. ∎
上の 連続線型形式について実数値測度のHahn分解のようなことができる. 補助的に と定義する.
命題 4.
連続線形形式について 正値線形形式とが存在して
を満たす.
証明.
まずについて
と定義する. ならば なので,が連続であることから は有限値でちゃんと定義できる. 定義からであり, についてならば であることがわかる.
まず最初に任意のについて を示そう. について,かつ ならば なので
がわかる. そしてとなるについて である.特にであり, がわかるので,
がわかる. また,なので
であるから,結局
が成り立つ.
そして一般のについては となる を用いて
と定義する. このようなの取り方は無数にあるが, について となるので,well-defined である. まず が正値線形形式であることを示そう. ならばなので である. 次に線形性について調べよう. 定義との場合から鑑みて について
となることはわかる. スカラー倍についても定義を見れば成り立つことがわかる. 以上で,正値線形形式が得られた. とするとの定義から も正値線形形式であることがわかるのでこれで定理が証明された. ∎
次にに値を取る場合について都合のいい線形形式の分解があることを示そう.
命題 5.
任意の連続線形形式について 連続線形形式で 任意の について
であり,任意のについて と と を満たすものが存在する.
証明.
まずに対して,
と定義し,について と と線形に拡張する. するともも複素線形形式である. また,任意のについて,
なので, 任意の について
である. との時で及びの定義が違うことに気をつけよう.
連続性を示そう. とすると,
がなり立つ. そして任意のについてを使って と表そう. この時上の評価から
が成り立つので,は連続である. についても同様. ∎
上の命題群を合わせて次を得る.
系 6.
任意の連続線形形式について の連続線形形式,, ,が存在して に制限するとに値をとりさらに正値線形形式になり,
を満たす.
3 の双対空間を明らかにするものとしての表現定理
定義 7.
-可換モノイドとは 二つの演算とと単位元をもち次の公理を満たすものをいう.
-
1.
は可換であり,結合法則を満たす.
-
2.
任意のについて.
-
3.
任意のについて.
-
4.
任意のについて. ここで左辺はとのスカラー積を表し,右辺のはの単位元である.
-
5.
任意のとについて
定義 8.
-可換モノイドについて, その線形空間化 を次のように定義する. まず上の関係を次のように定義する. とはである. するとは上の同値関係となる. そして とし,演算をと定義する. この演算については可換群になっている. 単位元はであり, の逆元 はである. また,について
と定義し,の場合には
と定義すると,は先ほど定義したとこのスカラー倍について 上の線形空間になる.
注意.
は加法について見ればのグロタンディーク群とみなせるが, この文章では-可換モノイドを上の線形空間にするために スカラー倍という付加的な構造が乗っかっている.
定義 9.
を局所コンパクトハウスドルフ空間とする. このとき上の測度がRMK測度であるとは以下の条件を満たすときにいう
-
1.
はに値をとるボレル測度である.
-
2.
の任意のコンパクト集合について
-
3.
の任意のボレル集合は外部正則である.つまり が成り立つ.ここではの開集合系である.
-
4.
が開集合もしくはならばは内部正則である.つまり, が成り立つ.ここではのコンパクト集合全体である.
上のRMK測度全体をと書くことにする.また, 上の有限RMK測度全体の集合をと書くことにする. もちろんがコンパクトハウスドルフ空間のときにはである.
上の符号付き測度で二つのRMK測度の差で表されるもの全体をと書くことにする. また,上の複素測度で,を用いて の形で表されるもの全体をと書くことにする.
線形空間についてで次のようなスカラー倍が定義された線形空間を表すことにする. について,
と複素係数のスカラー倍を定義する. もちろん和の演算は各成分ごとにするものとする. このとき線形空間としての同型 が成り立つ.
補題 10.
を局所コンパクトハウスドルフ空間とするとき,以下が成り立つ.
-
1.
とは-可換モノイドである.
-
2.
は-線形空間であり,-線形空間としての同型が成り立つ.
-
3.
は-線形空間であり,-線形空間としての同型 が成り立つ.
証明.
証明略 ∎
注意.
一般に二つの測度との差の測度は定義できない. これはが定義できないためである. これらの理由からから単純に実数倍や引き算をするだけでは-線型空間は生成できない.なので代わりにグロタンディーク群(グロタンディーク線形空間?)を考えるのである. また,とが有限測度ならばその差は符号付き測度になるし ,Hahnの分解定理から符号付き測度は常に(正値)有限測度の差でかける. よっては差で閉じているのでこの集合だけで-線型空間とみなせるのである.
定理 11 (正値線形形式に対するRiesz-Markov-Kakutaniの表現定理).
を局所コンパクトハウスドルフ空間とする. このとき上の正値線形形式に対して が一意的に存在して任意のに対して
を満たす.
定義 12.
の双対空間,すなわちの連続線形形式全体を と書くことにする.
正値線形形式に対するRiesz-Markov-Kakutaniの表現定理 と命題4 から次がわかる.
定理 13 (実Riesz-Markov-Kakutani).
を局所コンパクトハウスドルフ空間とする.このとき線形空間としての同型
が成り立つ.
複素数値のコンパクト台関数に対しても表現定理が成り立つ. 系4と正値線形形式に対するRiesz-Markov-Kakutaniの表現定理から次がわかる.
定理 14 (複素Riesz-Markov-Kakutani).
を局所コンパクトハウスドルフ空間とする.このとき複素線形空間としての同型
が成り立つ.
特にがコンパクトハウスドルフ空間の場合には次の二つがわかる.
定理 15 (実Riesz-Markov-Kakutani).
をコンパクトハウスドルフ空間とする.このとき 線形空間としての同型
が成り立つ.
定理 16 (複素Riesz-Markov-Kakutani).
を局所コンパクトハウスドルフ空間とする.このとき 線形空間としての同型
が成り立つ.
References
- [1] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974
- [2] F. Trèves, Topological Vector Spaces, Distributions and Kernels, Dover, 2006.