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ホイットニーの拡張定理

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

この文章ではWhitneyの拡張定理を紹介する。 この定理はユークリッド空間の閉集合の上で定義された(Whitneyの意味での)微分可能関数が実は ユークリッド空間の通常の意味での微分可能関数の制限であるということを述べている定理である。 Whitneyの微分可能性はテイラーの定理をアナローグして得られる自然な閉集合上の微分概念である。 その意味で微分可能性を閉集合の上へ一般化しても、既存の範疇を超えていないことを教えてくれる定理である。 この定理はしばしば有用な応用を与える。 例えばSardの定理の微分可能性の仮定を落とした場合の反例の構成に使える。 応用はさておくとしてもこの定理は知っているだけでも大変ありがたいものであると私は考える。 しかしながらこの定理の強力さに対してその証明が述べられているのは原論文だけであり、その論文は1935年に書かれたこともあって、現代的にはとても読みづらいものになってしまっている。 そこでこの文章では原論文の証明をなぞりつつも、 可能な限り読みやすい証明を提供する。 その目的の一環がおまけの章にある微分のモデル代数である。 この概念はこの文章だけのものなので他の場所で断りなく用いると 恥ずかしい思いをするかもしれないが、それはさておき、 微分のモデル代数は微分公式を可微分関数を用いて証明するのではなく抽象的な代数操作によって証明するために導入した。

1 Preliminaries

1.1 多重指数記法

この文章では

Zn=0n

と定義する。 各kZnに対して、その成分をk=(k1,k2,,kn)としたとき

σk=k1+k2++kn

と定義し、

k=k1k2kn

と定義する。この文章では偏微分の順序を気にしない関数しか出てこないので、kの定義に出てくる偏微分の順序は我々も気にしないことにする。 また、

k!=k1!k2!kn!

と定義し、 xnに対して

xk=xk1xk2xkn

と定義する。

k,lZnに対して

k<li{1,2,,n}ki<li

と定め、

kli{1,2,,n}kili

とする。klのとき、その二項係数を

(kl)=(k1l1)(k2l2)(knln)

と定義する。 簡単にわかることだが、(kl)(σk!)nとなる。 また、lkのとき、

kl=(k1l1,k2l2,,knln)

と定義する。このときちゃんとklZnとなる。

補助的にm0{}に対して

Zn(m)={kZnσkm}

と定義する。もちろんZn()=Znである。 多変数の場合のライプニッツ則は多重指数記号を用いると1変数の場合と同じように述べることができる。

補題 1.

Unの開集合とする。 二つのCm級関数f,g,UkZn(m)について

k(fg)=lk(kl)(klf)(lg)

が成り立つ。

1.2 その他基本的な定義

以下の補題は初等的に見えるが、拡張定理を証明する上で本質的である。

命題 2.

Jの開区間とする。 連続写像w:JJの閉集合AJvaJは以下を充たすとする。 任意のεに対してδ>0が存在して

  1. (1)

    xAかつ|xa|<δならば

    |w(x)w(a)xav|<ε

    である。

  2. (2)

    xJAかつ|xa|<δならば導関数w(x)が存在し、

    |w(x)v|<ε

    である。

    このときwA上の任意の点aAにおいて微分可能でw(a)=vである。

証明.

任意のaAと 任意のεに対してδ>0が存在して任意の|xa|<δならば

|w(x)w(a)xav|<ε

を示せばよい。 話を簡単にするためにaxとする。 xJAのときに目的の式を示せばよい。 ここでpxpxAで、A(px,x)=Øとなるものとする。 Aが閉集合なのでこのようなpxは存在する。 また、apxである。 (2)からwは開区間(px,x)で微分可能なので中間値の定理から

w(x)=w(px)+w(c)(xpx)

となるc(px,x)が存在する。 さてこのとき、

w(x)w(a)xa =w(x)w(px)xpxxpxxa+w(px)w(a)pxapxaxa
=w(c)xpxxa+w(px)w(a)pxapxaxa

となり、また、

v=vxpxxa+vpxaxa

なので

|w(x)w(a)xav||w(c)v||xpxxa|+|w(px)w(a)pxav||pxaxa|

である。さてpx及びcの定義から|ca|<δ|pxa|<δなので|w(c)v|<εかつ|w(px)w(a)pxav|<εである。また、pxの定義から|xpx||xa|かつ|pxa||xa|なので 結局|xa|<δならば

|w(x)w(a)xav|<2ε

を得る。 ∎

Anの部分空間とする。

定義 3.

m0{}とする。 f:AA上Whitneyの意味でCm級であるとはA上の関数列 {fk}kZn(m)が存在して、f0=fであり、任意のkZn(m)x,yAについて

Rk(x;y)=fk(x)σlmσkfk+l(y)l!(xa)l

で定義されるRk(x;y)が次を充たすときにいう: 任意にAの点pと任意にεを与えたときにδ>0が存在して、xp<δかつyp<δならば

|Rk(x;y)|xymσkε

を充たす。

このとき{fk}kZn(m)を、この文章では、Whitney導関数と呼ぶことにする。

注意.

fkは連続であることに注意しよう。fkの取り方は一意的でないことに注意しよう。

定義 4.

関数f:AはWhitneyの意味でCm級であり、{fk}kZn(m)はそのWhitney導関数とする。 このときkZn(m)yAxnに対して

ψk(x;y)=σlmσkfk+l(y)l!(xy)l

と定義する。

命題 5.

x,yAznとする。このとき

ψk(z,y)=ψk(z,x)+σlmσkRk+l(y;x)l!(zy)l

が成り立つ。

証明.

多項式に関するテイラー展開から

ψk(z,x) =σlmσkψk+l(y,x)l!(zy)l
=σlmσk(zy)ll!σjmσk+lfk+l+j(x)j!(yx)j

を得る。よって

ψk(z,y)=ψk(z,x)+σlmσkRk+l(y;x)l!(zy)l

が成り立つ。 ∎

補題 6.

R=(1+δ)Qとする。このとき任意のyRに対してxQが存在して

d(y,x)δdiam(Q)

となる。

証明.

Qの中心は0としてもよい。 R=(1+δ)QなのでyRに対してy=(1+δ)xとなるxQが存在する。 このとき

d(y,x)=δ|x|δdiam(Q)

である。 ∎

2 Whitney Decomposition

定義 7 (二進立方体).

nの部分集合QQ=in[ai,bi)で、

ai=mi2l,bi=(mi+1)2l

mi, l と書けるものを二進立方体と呼び、lQの世代と呼ぶことにする。 世代がlの二進立方体全体を𝐃lで表すことにする。

命題 8.

Onの開集合とすると、次のような二進立方体の高々可算な列{Qi}が存在する。

  1. (1)

    ijQiQj=Ø

  2. (2)
    iQi=O
  3. (3)
    n(Qi)d(Qi,Oc)4n(Qi)
  4. (4)

    QiQjが隣あっていれば、

    41(Qi)(Qj)4
  5. (5)

    Qiは高々12n個の{Qi}の元としかとなりあわない。

  6. (6)

    0<u<41とする。各iについてRiQiと同じ中心を持ち、辺の長さが(1+ε)(Qi)となる閉立法体とする。 すなわち、Ri=CL((1+u)Qi)である。このときRiは高々12n個のほかの{Ri}の元としか交わらない。

  7. (7)

    1u1+un(Ri)d(Ri,Oc)41+un(Ri)

証明.

任意のkに対して

Ok={xO2n2k<d(x,Oc)4n2k}

と置く。すると

O=kOk

である。

𝐄k={Q𝐃kQOkØ}

とし、次に

𝐄=k𝐄k

と定める。 Q𝐄に対して(3)と同じことが成り立つ。 つまり、

n(Q)d(Q,Oc)4n(Q)

が成り立つ。まずはこのことを示そう。 Q𝐄kとする。 まず、diam(Q)=n(Q)=n2kに注意しよう。 そしてxOkQをとると

n2kd(x,Oc)diam(Q)d(Q,Oc)d(x,Oc)4n2k

なので上で今言ったことは成り立つ。

𝒮={𝐒𝐒𝐄,𝐒(1)を満たす。}を考える。 列{Ai}𝐄について、AiAi+1となるものは存在しないことに注意しよう。 何故ならQPならばd(Q,Oc)d(P,Oc)なので(3)から

(P)4(Q)

がわかる。よってQを含む𝐄の元はたかだか有限個である。 このことから、𝒮に包含関係を順序としてZornの補題が適用できる。 𝒮の極大元を𝐓={Qi}としよう。これが条件を満たすことを示そう。

まず(1)については𝒮の定義から明らかである。

(2)については𝐄の定義と𝐓の極大性から直ちに従う。

(3)は先ほど示した。

(4)を示そう。QiQjが隣り合っていればCL(Qi)CL(Qj)Øに注意しよう。 このとき、(3)から

n((Qi)) =n(CL(Qi))d(CL(Qi),Oc)diam(CL(Qj))+d(CL(Qj),Oc)
n(CL(Qi))+4n(CL(Qj))=5n(Qj)

となる。比(Qi)/(Qj)2の整数べきのはずなので (Qi)/(Qj)4である。 これから(4)が従う。

(5)を示そう。Qiを一つ固定する。A={Qk𝐓QkQi} を考える。QAについて、

41(Qi)(Q)4(Qi)

である。B={Q𝐃(Q)=41(Qi)}とすれば、

card(A)card(B)

である。また、C={Q𝐃(Q)=(Qi)}とすると

card(B)=4ncard(C)

であり、また、card(C)=3n1であるから(5)が従う。

(6)を示そう。Riの半径はr(1+u)/2で、u(0,41)なので、RiRjが交わるならば、QiQjは隣り合っている。

最後に(7)を示そう。QiRiなので

d(Ri,Oc)d(Qi,Oc)n(Qi)

である。 補題6より yRiをとるとd(x,y)udiam(Qi)となるxQiが存在するので

n(Qi)d(Qi,Oc)d(x,Oc)d(x,y)+d(y,Oc)udiam(Qi)+d(Ri,Oc)

からわかる。 ∎

補題 9.

先の命題と同じ記号を用いる。このとき

21diam(Ri)d(Ri,Oc)4diam(Ri)

が成り立つ。

証明.

ε(0,41)からわかる。 ∎

3 Whitney Partition of unity

この節ではWhitney decompositionを用いて、微分の大きさも制御できるような単位の分割を構成することが目的である。

{Qi}OのWhitney分解であるとする。 そして Q=[21,21]n上で恒等的に1の値をとり、R=CL((1+u)Q)(u(0,41))の外では0の値をとるようなC関数

τ:n[0,1]

を考える。 Qiの中心をciとして、

τi=ψ(xci(Qi))

と定義する。 supp(τi)(1+u)Qiなので{ψi}は局所有限である。よって

T(x)=iτi(x)

と定義できる。 そして

ϕi(x)=τi(x)T(x)

と定義する。 任意のkZnに対して Nk=maxxn|kτ(x)|とし、 Hm=maxkZn(m)Nk とする。

{Qi}は全て立方体であり、Qiと隣り合う{Qi}の元もQiの大きさで制御できることと、二進立方体Qに隣接する、Qと世代が高々二個しか違わない二進立方体の配置は有限個しかないので以下のことが成り立つ。

補題 10.

あるM>1が存在して、任意のxOに対して

1MT(x)

が成り立つ。

以下ではこの文章の一番最後の節に書いたおまけの節の結果を用いる。読むのが面倒な時は命題13を認めて次の説に進むのが良い。

おまけの節の結果にdi=iv0=Tを代入した結果を用いる。 命題23から次のことがわかる。

補題 11.

Mを先の補題にでてきたものとする。 任意のxRiと 任意のkZnに対して

|k(1T)(x)|(Mσk+1(12n4Hσk)σksJ(σk)Γs)(Qi)σk
証明.

まず、 |kτi|Nk(Qi)σkがわかる。そして 命題23より

|k(1T)|sI(σk+1,σk)Γs|Δ(s)|

がわかるが、I(σk+1,σk)の定義より、

sI(σk+1,σk)Γs|Δ(s)|Mσk+1sI(σk+1,σk)Γs|Δ(s)|

となる。 ここで、ss(0)=0で、kZn{0}についてはs(k)=s(k)で定義されるCnの元である。 sI(σk+1,σk)に対して supp(s)={k(1),k(2),,k(v)}とすると

Δ(s)=(k(1)T)s(k(1))(k(2)T)s(k(2))(k(v)T)s(k(v))

となる。 さらにT(x)=i=1wτλ(i)(w12n)とすると

|l(T)(x)|i=1w|lτλ(i)|12n4Nl(Qi)σl12n4Hl(Qi)σl

なのでsI(σk+1,σk)について

|Δ(s)|(12n4Hσk)(i=1vs(k(i)))(Qi)i=1vσk(i)s(i)(12n4Hσk)σk(Qi)σk

がわかる。 これらのことから、補題が成り立つことがわかる。 ∎

補題 12.

任意のkに対してあるCkが存在して、任意のiについて

|kϕi|Ck(Qi)σk
証明.

ϕi=τi/Tなので

k(ϕi)=k(τiT)=lk(kl)(klτi)(l(T1))

となる。先の補題から

|k(ϕi)|lk(kl)|(klτi)||(l(T1))|
lk(kl)Nkl(Qi)σk+σl(Mσl+1(12n4Hσl)σlsI(σl+1,σl)Γs)(Qi)σl
(Mσk+1(12n4Hσk)σksI(σk+1,σk)Γs)(Nklk(kl))(Qi)σk

よって、

Ck=(Mσk+1(12n4Hσk)σksI(σk+1,σk)Γs)(Nklk(kl))

とおけば命題の主張は成り立つ。 ∎

以上の議論をまとめると次のことがわかる。

命題 13.

{ϕi}は先に定義された関数とする。このとき次のことが成り立つ。

  1. (1)

    任意のiについてsupp(ϕi)Ri

  2. (2)
    iϕi=χO
  3. (3)

    任意のkZnに対してあるCkが存在して、任意のiについて

    |kϕi|Ck(Qi)σk

    が成り立つ。

4 Whitney Extension

この節ではWhitneyの拡張定理を証明する。まず最初に微分可能性の仮定が有限な場合を証明する。

定理 14.

m0で、Anの閉集合とし、f:AをWhitneyの意味でCm級とし、{fk}kZn(m)を、そのWhitney導関数とする。 このときCm級関数g:nが存在して 任意のaAkZn(m)に対して

kg(a)=fk(a)

が成り立ち、nA上でgC級となる。

証明.

gを構成して、 任意のε>0と任意のaAおよび任意のkZn(m)について、あるδ>0が存在して、 xnAxa<δを充たすならば

|kg(x)fk(a)|<ε

を示せばよい。 何故ならば、 gnの軸に平行な直線に制限して、 命題2を用いれば、 任意のkZn(m)aAについてkg(a)=f(a) がわかるからである。

まずgを構成する。 {Qi}nAのWhitney分解とし、{ϕi}をそのWhitneyの単位の分割とする。また、Ri=CL((1+u)Qi)(u(0,41))とする。 そして ai

d(A,Ri)=d(ai,Ri)

となるaiAとする。 これらを用いて

g(x)={iϕi(x)ψ(x;ai)xAf(x)xA

と定義する。 以下では、初めに述べた主張を示そう。 lZnに対してClは命題13に現れる定数とする。 さらに以下のように定数を定義する。

C=maxσlmCl
E=supyB(a,2)Aσlmσk,l0|fk+l(y)|l!<

任意にε>0を与える。そしてη

η=ε4112n((m+2)!)n(20n)m(C+1)

とおき、 θ1ya<θ1ならば、t(σtm)について

|Rt(y,a)|<yamσtε2m6

を満たすように取り、 θ2を、θ2<1ya,za<θ2ならば任意のt(σtm)について

|Rt(y;z)|yzmσtη

を充たすように取る。 そしてδ

δ=12min{θ12,θ24,ε18(E+1),110}

と定義する。 いまからxnAxa<δを充たすならば

|kg(x)fk(a)|<ε

を示す。

D=d(x,A) とし、bAD=d(x,b)でかつbB(x,1)となるものとする。このようなbは存在する。なぜならd(x,A)d(x,a)<δ<1だからである。d(a,x)<δ<1より、aB(x,1)でもあるので上のようなbbB(a,2)も充たす。

そしてxb=d(x,A)d(x,a)なので

d(b,a)d(b,x)+d(x,a)2δ

であるから、特にd(b,a)<θ1となり、

Rk(y,a)<bamσkε2m6(2δ)mσkε2m6ε6

がわかる。 さて

ψk(b;a)=σlmσkfk+l(a)l!(ba)l=fk(a)+σlmσk,l0fk+l(a)l!(ba)l

から

(1) |ψk(b;a)fk(a)|σlmσk,l0|fk+l(a)|l!baσl

がわかる。 同様にして

(2) |ψk(x;b)fk(b)|σlmσk,l0|fk+l(b)|l!xbσl

がわかる。 さて、2δ<1からba<1から baσlbaとなる。よって、(1)Eの定義を思い出すと、

|ψk(b;a)fk(a)|Eba2Eδ<ε/6

となる。 また、 d(x,b)d(x,a)+d(a,b)3δ<1より、 xbσlxbであり、Eの定義とbB(a,2)を思い出すと、(2)から

(3) |ψk(x;b)fk(b)|Exb3Eδ<ε/6

を得る。

そして

(4) |fk(b)fk(a)||ψk(b,a)fk(a)|+|Rk(b;a)|

と以上の評価から結局

|ψk(x;b)fk(a)| |ψk(x;b)fk(b)|+|fk(b)fk(a)|
|ψk(x;b)fk(b)|+|ψk(b,a)fk(a)|+|Rk(b;a)|<ε/2

となるので、

(5) |ψk(x;b)fk(a)|<ε/2

がわかる。

さて、 xRiとなるiを、番号付けてλ(1),λ(2),λ(s)(s12n)とする。 ここで、d(ai,yi)=d(ai,Ri)=d(A,Ri)となるyiをとる。すると

d(a,ai)d(x,a)+d(x,ai)d(a,x)+d(x,yi)+d(yi,ai)d(a,x)+diam(Ri)+d(A,Ri)

がわかる。ここで、diam(Ri)2d(A,Ri)2d(a,Ri)2d(a,x)かつ、d(A,Ri)d(a,x)なので

d(a,ai)4d(x,a)4δ<θ2

で、またd(a,b)<2δ<θ2なので 結局、d(ai,a)<θ2かつd(b,a)<θ2であるから 任意のt(σtm)について

(6) |Rt(ai;b)|aibmσtη

が成り立つ。

αi,k(x)=ψk(x;ai)ψk(x;b)と置く。 このとき命題5から

(7) |αi;k(x)|σlmσk|Rk+l(ai;b)|l!xaiσl

となる。

d(ai,b)d(x,ai)+d(x,b)=d(x,ai)+d(x,A)2d(x,ai)に注意しよう。

g(x)=ψ(x;b)+i=1sϕλ(i)(x)αλ(i);0(x)

k階微分すると

kg(x)=ψk(x;b)+i=1slk(kl)lϕλ(i)(x)αλ(i);kl(x)

を得る。 σlmσk1l!(m+1)nを踏まえて、

|αi;k(x)|σlmσk|Rk+l(ai;b)|l!xaiσlσlmσk2mσk+l1l!xaimσkη2m(m+1)nxaimσkη

を得る。また、

d(x,ai)d(x,yi)+d(yi,ai)diam(Ri)+d(A,Ri)diam(Ri)+4diam(Ri)
=5diam(Ri)=5(1+u)diam(Qi)10n(Qi)

d(x,ai)d(x,a)+d(a,ai)5d(x,a)<5δ<21

が成り立つことに注意しよう。 s12nであり、また (kl)(m!)nおよび |lϕλ(i)(x)|Cl(Qi)σl が成り立つことや、 C=maxlmCl, lk1(m+1)n や、(m+1)2n(m!)n((m+2)!)nとかWhitneyの単位の分割の性質 を踏まえると

|kg(x)ψk(x;b)| i=1slk(kl)|ϕλ(i)(x)||αλ(i);kl(x)|
i=1slk(kl)Cl(Qi)σl2m(m+1)nxaimσk+σlη
i=1slk2m(m!)n(m+1)n(10n)σlCxaiσlxaimσk+σlη
2m(m+1)n(m+1)n(m!)nC(10n)mi=1sxaimσkη
2m12n((m+2)!)n(10n)m(12)mσkCη
<2m12n((m+2)!)n(10n)mCηε2

がわかる。この式と (5)から

|kg(x)fk(a)|<ε

がわかる。

定理 15.

Anの閉集合とし、f:AをWhitneyの意味でC級とし、{fk}kZnfのWhitney微分とする。このときn上のC級関数g:nが存在して 任意のaAと任意のkZnについて

kg(a)=fk(a)

が成り立つ。

証明.

pについて

ψp,k(x;y)=σlpσkfk+l(y)l!(xa)l

と定義する。 {Qi}nAのWhitney分解とし、{ϕi}をそのWhitneyの単位の分割とする。Ri=(1+u)Qi(u(0,41))とする。 適当にoAを取り、Sp=B(o,2p)とする。 そして各pについて

Lp=sup{|fk(x)|xASp}
C(p)=max{Ckσkp}

と定義する。ここでCkは命題13で述べられている定数である。 そしてさらに {δp}p

(1) δp<δp14
(2) δp<12p12n3((p+2)!)n+1(10n)p+1C(p)Lp+1

の両方を充すような実数の列とする。

iについて

δγ(i)+1d(A,Ri)<δγ(i)

となる風にγ(i)を定める。 そして ai

d(A,Ri)=d(ai,Ri)

となるaiAとし、関数h:n

h(x)={iϕi(x)ψγ(i),0(x;ai)xAf(x)xA

と定義する。

また補助的に各mについてgm:n

gm(x)={iϕi(x)ψσk,0(x;ai)xAf(x)xA

と定義する。 定理14の証明を見ればわかるように、 このように構成されたgCm級関数で、任意のaAと任意のkZn(m)に対して、

kgm(a)=fk(a)

を充す。

定理を示すには、任意のkZnと任意のεと任意のaAを与えたときにδ>0が存在して xa<δならば

|kh(x)kgσk(x)|<ε

となることを示せばよい。 以下ではこれを示してゆく。 自然数p

(3) pσk
(4) aSp
(5) 2p<ε

を充たすものとする。 δδ=21min{δp,51}と取る。 xa<δとしよう。

q

δq+1d(x,A)<δq

となるようにとる。するとδq+1δpなのでqpである。 また、xRiとなるiについてδγ(i)δpなのでγ(i)pでもある。 そしてd(y,A)=d(Ri,A)となるyをとれば

d(x,A)d(x,y)+d(y,A)diam(Ri)+d(Ri,A)3d(A,Ri)

なのでδq+2<δγ(i)となりγ(i)q+1がわかる。

βi(x)=ψγ(i);0(x;ai)ψσk;0(x;ai)

とすれば

h(x)=gσk(x)+i=1sϕλ(i)βλ(i)(x)

である。 さてγ(i)pσkに注意して

(6) jβi(x)=σl=σkσj+1γ(i)σjfj+l(ai)l!(xai)l

を得る。 d(x,ai)5d(x,a)5δ<21<1 および

d(x,ai)d(x,yi)+d(yi,ai)diam(Ri)+d(A,Ri)3d(A,Ri)3d(x,A)3δq

から

(7) |jβi(x)|3(q+1)nLq+1xaiσkσjδq

を得る。ここで、

σl=σkσj+1γ(i)σj1liγ(i)1(γ(i))n(q+1)n

を用いた。 命題13を思い出すと、任意のtZnについて

|tϕi(x)|Ct(Qi)σtCt(10n)txaiσt

となることがわかる。

以上のことから

|kh(x)kgσk(x)| i=1sj(kj)|kjϕλ(i)(x)||jβλ(i)(x)|
12n(10n)σkj(kj)xai(σkσj)C(σk)3(q+1)nLq+1xaiσkσjδq
=12n(10n)q+1(q+1)nj(kj)C(σk)3Lq+1δq

がわかる。 ところで、 σk<pqなので

jk(kj)jk(σk!)njiσk(σk!)nσk((σk)!)n((q+1)!)n+1

が成り立ち、また、

(q+1)n((q+1)!)n((q+2)!)n+1

なので

|kh(x)kgσk(x)|312n((q+2)!)n+1(5n)q+1C(q)Lq+1δq

を得る。 また、δqの定義から

312n((q+2)!)n+1(5n)q+1C(q)Lq+1δq<2q2p<ε

なので結局

(8) |kh(x)kgσk(x)|<ε

がわかる。 ∎

以上の二つをまとめると以下のようになる。

定理 16.

m0{}とし、また、 Anの閉集合とする。 関数f:AはWhitneyの意味でCm級で、{fk}kZn(m)はそのWhitney導関数とする。このときCm級関数g:nが存在して 任意のaAと任意のkZn(m)について

kg(a)=fk(a)

が成り立ち、nA上でgC級となる。

この定理がいわゆるWhitneyの拡張定理である。 Whitneyはより強く、nA上でCω級になるような拡張を構成しているが、使わないので細かいことは省略する。

5 応用: 1より大きい指数でヘルダー連続になる関数

定義 17.

写像f:XYα-HölderであるとはあるMが存在して任意のx,yXに対して

dY(f(x),f(y))(dX(x,y))α

を充すときにいう。

命題 18.

Anの閉集合とし、 α1として、さらに、 写像f:Aα-Hölderとする。 そして、 各kZn(α)について、 A上の関数族を、k0ならばfk(x)0と定義し、f0=fと定義する。 このとき、{fk}kZn(α)は、fのWhitney導関数になり、 f:AはWhitneyの意味でCα 級関数になっている。

証明.

簡単に確かめられる。 ∎

このことと、Whitneyの拡張定理から次のことがわかる。

命題 19.

閉集合An上で定義されたα-Hölder写像に対して、 n上の Cα級関数Fで、 任意のkZn(α)について、

kF=0

となるものが存在して、

F|A=f

を充す。

命題 20 (Sardの定理にまつわる例).

写像f:2で、f(Cf)が一次元ルベーグ測度で正になるものが存在する。

証明.

写像f0,f1,f2,f3:2

f0(x)=31x
f1(x)=31x+(21,1/6)
f2(x)=31x+(21,21)
f3(x)=31x+(1/6,21)

と定義する。fi(Q)Qを充すことに注意しよう。 Q(n1)=fn1(Q)(n1{0,1,2,3})と定め、 一般に、Q(n1,n2,,nk)が定義されたとき、 Q(n1,n2,,nk,nk+1)=fnk+1(Q(n1,n2,,nk)) と定義する。 そして

Ak=i{1,2,,k},ni{0,1,2,3}Q(n1,n2,,nk)

と定義し、

P=kAk

とする。Pはカントール集合と同相である。 各xPに対して、xQ(a1,a2,,ak)かつ xQ(b1,b2,,bl)klならば、 任意のi{1,2,,k}に対してai=biであるから、xに対して 無限列{ni(x)}i

{x}=kQ(n1(x),n2(x),,nk(x))

となるものがただ一つ定まる。これを用いて、 写像f:P

f(x)=k=1nk(x)4k

と定義する。 さて、x,yPについて、k番目で初めてnk(x)nk(y)となったとすると、

3kxy

となる。 そして

|f(x)f(y)|i=k34i14k1

となるので、s=log4/log3として

|f(x)f(y)|41xys

が成り立つ。 また、任意の無限列{ni}i(ni{0,1,2,3})に対して ni(x)=niとなるxPが存在するので、 f(P)=[0,1]である。s>1なので、 このfに先の命題を適用し、 任意のkZ2(1)xPに対して

kF(x)=0

F|P=fとなる Fを得ると、PCFなので、

[0,1]F(CF)

となり、FC1級でF(CF)は正測度を持つ。 ∎

6 おまけ・微分公式と微分のモデル代数

この章では微分のモデル代数を導入し、ある特定の微分公式を証明する。 これを導入する目的は文章の冒頭で述べたとおり、 わかりやすさの担保であるが、もう一つの理由として 微分公式に現れる係数が普遍的であることが簡単にわかるためである。 例えば簡単な微分公式である

(f+g)=f+g

についても、f,gの選び方によっては (f+g)=2fであったり、(f+g)=gであったりするわけである。 こういう曖昧さを避けるために微分操作を抽象化して微分公式を証明したいと思った。 しかしながら以下で述べる微分の代数化、抽象化はむしろ万人がある種の微分公式を証明する時に無意識にやっているのだと私は思う。微分可能関数fを任意にとってもそれは「不定元」でしかないし、微分もライプニッツ則を充たす準同型でしかないわけである。 だからと言って今から導入する概念が無駄かというと、(全否定もできないけれど)そうではないと思う。人が無意識に行う推論、操作を発見し具象を与えることもまた数学の営みの一つだと思うからだ。

自然数i{1,2,,n}に対して [i]Znをその第j成分がδjiとなるものと定義する。 すなわち、[i]は第i成分が1でそれ以外の成分が0であるようなZnの元である。

定義 21.

Rn=({vk}kZn)とする。即ちkZnを添え字とする不定元vk全体から生成される係数の有理式環のことである。また写像di:RnRn(i=1,2,,n)

di(1)=0,di(vk)=vk+[i],di(fg)=di(f)g+fdi(g)

充たすものとして定義する。このようなdiは一意的に定まり、didj=djdiを充たす。 このとき、組(Rn,{di}i=1,2,,n)n変数微分のモデル代数と呼ぶことにする。

Cn={s:Zn}
Fn={sCncard(supp(s))<}

sFnに対して単項式Δ(s)Rn

Δ(s)=kZn(vk)s(k)

と定義する。

supp(s)={kZns(k)0}={k(1),k(2),,k(l)}

と置けば、

Δ(s)=(vk(1))s(k(1))(vk(2))s(k(2))(vk(l))s(k(l))

と書くこともできる。 a,bに対してFnの部分集合を

I(a,b)={sFn1s(0)a,k0s(k)0,k0σks(k)=b}

と定義する。 また、{Δ(s)}sI(a,b)から生成される線形空間をS(a,b)と書くことにする。各不定元vkや不定元の冪らはもちろん線形独立なので、{Δ(s)}sI(a,b)から自由生成される線形空間とRnの中で{Δ(s)}sI(a,b)が張る線形空間は標準的に同型になる。 sI(a,b)についてΔ(s)はおよそ次のような形をしている。

(vk1)s(k1)(vk2)s(k2)(vkl)s(kl)v0s(0)

補助的に

J(b)={sFns(0)=0,k0s(k)0,k0σks(k)=b}

と定義しておく。 I(a,b)J(b)は共に有限集合であることに注意しよう。

補題 22.

tI(a,b)とする。このとき任意のi1,2,,nについて

di(Δ(t))S(a+1,b+1)

である即ち、I(a+1,b+1)で添え字つけられた、あるの列{Ps}sI(a+1,b+1)が存在して

di(Δ(t))=sI(a+1,b+1)PsΔ(s)

となる。さらに各Psは整数であり、一意的である。

証明.

Δ(t)は次のように書ける

Δ(t)=vk(1)vk(2)vk(l)v0p

ここで、k(1),k(2),,k(l)Znは重複を許しており、i=1lσkl=bであり、1paである。さて、

di(Δ(t)) =di(vk1vk2vklv0p)
=di(vk1vk2vkl)v0pvk1vk2vkldi(v0p)v02p
=di(vk1vk2vkl)v0pv02pvk1vk2vkldi(v0p)v02p
=di(vk1vk2vkl)v0ppvk1vk2vkldi(v0)v0p+1

であり、また、

di(vk1vk2vkl)v0pS(a+1,b+1)

であることとその係数が整数であることは簡単に分かるので、定理は成り立つ。Psの一意性は線形独立性から分かる。 ∎

この補題を帰納的に用いることで次のことがわかる。

命題 23.

kZnσk=mを充たすとする。このとき有理式

(d1)k1(d2)k2(dn)kn(1v0)

S(m+1,m)に属する。即ち、I(m+1,m)で添え字つけられた、の列{Γs}sI(m+1,m)が存在して

(d1)k1(d2)k2(dn)kn(1v0)=sI(m+1,m)ΓsΔ(s)

となる。さらに各Γsは整数であり、一意的である。

References

  • [1] 薮田公三,特異積分,岩波数学業書,2010.
  • [2] L. Grafakos, Classical fourier analysis, Springer, GTM249, 2014.
  • [3] H. Whitney, A function not constant on a connected set of critical points, Duke. Math. J., vol.4(1935), pp514–517.
  • [4] H. Whitney, Analytic extension of differentiable functions defined in closed sets, Trans. Amer. Math. Soc., vol.36, No.1(1934), pp63–89.