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アスコリ・アルツェラの定理

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

コンパクト性は位相空間の情報が有限開被覆で網羅できるほど小さい(コンパクト)という概念だが、その亜種である点列コンパクト性はどちらかというと位相空間の中の特別な元の存在を保証するために用いられることが多い。 存在を保証したいものに似ている元を可算個作ってやれば、(まあ、運が良ければ)求めるものが得られるというわけである。 そういうわけで位相空間が与えられたときにその部分集合が(点列)コンパクトであるかどうか判定できるととても便利である。 特に写像の空間の部分集合のコンパクト性が判定できれば位相空間の間の特別な写像を構成する鍵になるので、コンパクト性の判定はより重要さを増す。 この方法論は例えばリーマンの写像定理の証明や、微分方程式の解の存在を保証するために使われている。 そういったコンパクト性の判定法のひとつとしてこの文章ではアスコリ・アルツェラの定理を紹介する。 この定理はコンパクト一様収束の位相が入った写像の空間のコンパクト性の判定法と考えることができる。 余談ではあるがチコノフの定理は各点収束の位相におけるコンパクト性判定法と考えることができる。

1 準備

定義 1.

集合A,Bに対して

Map(A,B)

AからBへの写像全体の集合を表すことにする。

定義 2.

位相空間XYに対して

C(X,Y)

XからYへの連続写像全体の集合を表す。

定義 3 (評価写像).

e:C(X,Y)×XYe(f,a)=f(a)で定義する。またC(X,Y)AXについて

e(,A)={f(a)f,aA}

という表記をする。

定義 4.

距離空間(M,d)aMおよびr>0について この文章ではU(a,r)aを中心とするr-開球を表すことにする。またAMに対して

U(A,r)=aAU(a,r)

と定義する。Ar-開近傍である。

以下では、XYは常に距離空間であり、その距離をそれぞれdXdYと書くことにする。 有界閉集合が常にコンパクトになるような距離空間を固有距離空間と呼ぶ。

定義 5 (同程度連続).

C(X,Y)が点aで同程度連続であるとは

aXε>0δ>0fxX,dX(x,a)<δdY(f(x),f(a))<ε

が成り立つことである。各点aXで同程度連続であるときXで同程度連続であるとかいう。

定義 6 (同程度一様連続).

C(X,Y)が同程度一様連続であるとは

ε>0δ>0fx,yX,dX(x,y)<δdY(f(x),f(y))<ε

が成り立つことである。

定義 7 (各点一様有界性).

C(X,Y)が各点一様有界であるとは任意のaXに対してe(,a)={f(a)f}Yの有界集合であるときに言う。

定義 8 (一様有界性).

C(X,Y)が一様有界であるとはe(,X)={f(x)f,xX}Yの有界集合であるときに言う。

定義 9 (一様全有界性).

C(X,Y)が一様全有界であるとはe(,X)={f(a)f,xX}Yの全有界集合であるときに言う。

定義 10 (広義一様全有界性).

C(X,Y)が一様全有界であるとはXの任意のコンパクト部分集合Kについて e(,K)={f(a)f,xK}Yの全有界集合であるときに言う。

定義 11 (ヘミコンパクト).

位相空間Xは、その可算個のコンパクト部分集合族{Ki}i

X=iKi
iKiInt(Ki+1)

を充たすものが存在するときヘミコンパクトと言う。

2 本文

命題 12.

XがコンパクトであるときC(X,Y)が同程度連続であることと、同程度一様連続であることは同値である。

略証.

Xはコンパクトなのでルベーグ数が存在する。これを使う。 ∎

命題 13.

XがコンパクトでC(X,Y)が同程度連続であるとき、が各点一様有界であることとが一様有界であることは同値である。

証明.

先の命題からは同程度一様連続である。 ε=1に対しての同程度一様連続性を担保するδを一つ取る。つまり

fx,yX,dX(x,y)<δdY(f(x),f(y))<1

を成り立たせるδを一つ取る。Xはコンパクトなのでそのδ-ネット{p1,p2,,pk}が存在する。さて任意にxXをとるとiが存在してdX(x,pi)<δとなる。よって任意のfについてdY(f(x),f(pi))<1となる。つまり

e(,X)U(e(,{p1,,pk}),1)

であり、e(,{p1,,pk})は有界集合なのでe(,X)は有界集合である。 ∎

Xをコンパクト距離空間とする。このときC(X,Y)sup距離Dが次のように定義できる。

D(f,g)=supxXdY(f(x),g(x))

この距離に関する全有界を述べるのがアスコリ・アルツェラの定理である。

定理 14 (アスコリ・アルツェラ).

Xをコンパクトとする。C(X,Y)が同程度連続かつ一様全有界であることと、sup距離Dについて全有界であることは同値である。

証明.

まずが同程度連続であり、一様全有界と仮定しての全有界性を示す。 ε>0を任意に与える。A=e(,X)は全有界なのでAε/8-ネット{y1,y2,,yn}が存在する。Xがコンパクトなのでが同程度一様連続であるが、ε/8に対しての同程度一様連続性を担保するδ>0を一つ取る。つまり

fx,yX,dX(x,y)<δdY(f(x),f(y))<ε/8

が成り立たせるδのことである。Xはコンパクトなのでδ-ネット{p1,,pm}が存在する。ところで 各ϕMap({1,2,,m},{1,2,,n})に対して

S(ϕ)={fi{1,2,,m}f(pi)U(yϕ(i),ε/8)}

と定義する。そしてさらに

I={ϕMap({1,2,,m},{1,2,,n})S(ϕ)Ø}

と定義する。IMap({1,2,,m},{1,2,,n})の部分集合なので有限集合である。また、{y1,,yn}がネットであることからIØがわかる。そこで各ϕIに対してhϕS(ϕ)となるhϕを選んでおく。 いまからこの{hϕ}ϕIε-ネットであることを示そう。任意にfを取る。そしてこのfに対してψMap({1,2,,m},{1,2,,n})を各i{1,2,,m}について

f(pi)U(yψ(i),ε/8)

となるように定義する。このようなψが存在することは{y1,,yn}がネットであることからわかる。 Iの定義からψIがわかる。hψfの距離を評価しよう。任意のxXについてdX(x,pi)<δとなるpiを取る。このとき同程度一様連続性やψ及びS(ψ)の定義などから

dY(f(x),hψ(x)) dY(f(x),f(pi))+dY(f(pi),yψ(i))+dY(yψ(i),hψ(pi))+dY(hψ(pi),hψ(x))
ε/8+ε/8+ε/8+ε/8=ε/2

よってD(f,hψ)ε/2<ε すなわち{hϕ}ϕIε-ネットであり、が全有界であることがわかった。

今度は逆を示そう。つまりDについて全有界であるならば、同程度連続かつ一様全有界であることを示す。まず最初に同程度連続であることを示そう。任意に点aXε>0を与える。の全有界性からε/3-ネット{h1,h2,,hm}が存在する。δ>0を適当に小さく選んで

i{1,2,,m}xSdX(x,a)<δdY(hi(x),hi(a))<ε/3

を成り立たせるようにする。このことは各hiの連続性と、{h1,h2,,hm}が有限集合であることから可能である。さて、任意のxXdX(x,a)<δが成り立つと仮定する。 そして任意のfについてD(f,hi)<ε/3となるようなhiを取る。すると

dY(f(x),f(a)) dY(f(x),hi(x))+dY(hi(x),hi(a))+dY(hi(a),f(a))
dY(hi(x),hi(a))+2D(f,hi)<ε

よっては同程度連続である。

次に一様全有界性を示そう。任意にε>0を与える。そしてε/2-ネット{h1,,hm}を取る。するとXのコンパクト性から各e(hi,X)=hi(X)はコンパクトであるから

e({h1,,hm},X)=i=1mhi(X)

もコンパクトである。 よってこの集合のε/2-ネット{y1,y2,,yn}が存在する。いまから{y1,y2,,yn}e(,X)ε-ネットであることを示そう。任意にfaXを与える。 そしてD(f,hi)<ε/2となるhiを取り、さらにdY(hi(a),yj)<ε/2となるyjを取る。このとき

dY(f(a),yi)dY(f(a),hi(a))+dY(hi(a),yj)D(f,hi)+dY(hi(a),yj)<ε

となるので{y1,y2,,yn}e(,X)ε-ネットである。 ∎

Yに固有性を仮定すると次のように言い換えることもできる。

系 15.

Xをコンパクトとし、Yを固有距離空間とする。このときC(X,Y)が同程度連続かつ各点一様有界であることと、sup距離Dで全有界であることは同値である。

一般的によく見るのは次の形のアスコリ・アルツェラだと思う。

定理 16.

Xをコンパクトとし、Yを固有距離空間とする。このときC(X,Y)が同程度連続かつ一様有界であることと、sup距離Dで全有界であることは同値である。

Xがコンパクトじゃない場合にもある程度条件を課せばアスコリ・アルツェラ型の定理が成り立つ。それを述べるために広義一様収束のための距離を用意しよう。Xσコンパクトとする。Xの可算で増大なコンパクト部分集合族{Ki}で、Xを被覆するものについて、 f,gC(X,Y)に対し、

Di(f,g)=supxKidY(f(x),g(x))

と定義し、さらに

E(f,g)=supi{12iDi(f,g)1+Di(f,g)}

と定義する。EC(X,Y)上の距離となり、Eについて収束することと、広義一様収束することは同値になる。

定理 17.

Xσコンパクトとする。このときC(X,Y)が同程度連続で、広義一様全有界であるならばEについて全有界である。さらにXがヘミコンパクトならば、逆も成り立つ。

証明.

まずが同程度連続で、広義一様全有界であると仮定して全有界性を調べよう。 ε>0を任意に与える。Nを十分大きくとってN<iならば2i<ε/2となるようにとる。 そして

𝒢={f|KNf}

と定義すると𝒢C(KN,Y)であり、また同程度連続で、一様全有界であることもわかる。よって先のアスコリ・アルツェラの定理から𝒢DNについて全有界である。 そこで𝒢ε/2-ネット{h1,h2,,hm}を取る。 jNならばDj(f,g)DN(f,g)であるから

Dj(f,g)1+Dj(f,g)DN(f,g)1+DN(f,g)

がわかる。任意にfを与え、DN(f,hi)<ε/2となるhiを取るとjNとなるjについて

12jDj(f,hi)1+Dj(f,hi)12jDN(f,hi)1+DN(f,hi)12jDN(f,hi)<ε/2

さらにN<jならばNの取り方から

12jDj(f,hi)1+Dj(f,hi)<ε/2

となるのでE(f,hi)<εである。よって{h1,h2,,hm}Eにおけるε-ネットである。つまりEについて全有界である。

次はXにヘミコンパクト性を課して逆を示そう。aXについてaInt(Ki)となるiが存在する。 Eの定義とEについて全有界であることから

𝒢={f|Kif}

Diについて全有界である。よって先のアスコリ・アルツェラの定理から𝒢aXにおいてKi上で同程度連続である。ところでxInt(Ki)なので結局aXX上同程度連続であることがわかる。またXのコンパクト集合Kを与え、KKjとなるKjを取るとやはりEの定義とEについて全有界であることから

𝒢={f|Kjf}

Djについて全有界である。よって先のアスコリ・アルツェラの定理から𝒢Kj上一様全有界である。ゆえにK上でも𝒢は一様全有界である。つまりは広義一様全有界である。 ∎

この定義域がノンコンパクトな場合のアスコリ・アルツェラの定理もYが固有で広義各点一様有界な場合に特殊化できるが面倒なので述べない。 またアスコリ・アルツェラ型の定理は一様空間の範疇まで一般化できるが、面倒なのでここでは述べない。

References

  • [1] ケリー著児玉之宏訳, 位相空間論, 吉岡書店1968