アスコリ・アルツェラの定理
コンパクト性は位相空間の情報が有限開被覆で網羅できるほど小さい(コンパクト)という概念だが、その亜種である点列コンパクト性はどちらかというと位相空間の中の特別な元の存在を保証するために用いられることが多い。 存在を保証したいものに似ている元を可算個作ってやれば、(まあ、運が良ければ)求めるものが得られるというわけである。 そういうわけで位相空間が与えられたときにその部分集合が(点列)コンパクトであるかどうか判定できるととても便利である。 特に写像の空間の部分集合のコンパクト性が判定できれば位相空間の間の特別な写像を構成する鍵になるので、コンパクト性の判定はより重要さを増す。 この方法論は例えばリーマンの写像定理の証明や、微分方程式の解の存在を保証するために使われている。 そういったコンパクト性の判定法のひとつとしてこの文章ではアスコリ・アルツェラの定理を紹介する。 この定理はコンパクト一様収束の位相が入った写像の空間のコンパクト性の判定法と考えることができる。 余談ではあるがチコノフの定理は各点収束の位相におけるコンパクト性判定法と考えることができる。
1 準備
定義 1.
集合に対して
でからへの写像全体の集合を表すことにする。
定義 2.
位相空間、に対して
でからへの連続写像全体の集合を表す。
定義 3 (評価写像).
を で定義する。またとについて
という表記をする。
定義 4.
距離空間とおよびについて この文章ではでを中心とする-開球を表すことにする。またに対して
と定義する。の-開近傍である。
以下では、とは常に距離空間であり、その距離をそれぞれとと書くことにする。 有界閉集合が常にコンパクトになるような距離空間を固有距離空間と呼ぶ。
定義 5 (同程度連続).
が点で同程度連続であるとは
が成り立つことである。各点で同程度連続であるときはで同程度連続であるとかいう。
定義 6 (同程度一様連続).
が同程度一様連続であるとは
が成り立つことである。
定義 7 (各点一様有界性).
が各点一様有界であるとは任意のに対してがの有界集合であるときに言う。
定義 8 (一様有界性).
が一様有界であるとはがの有界集合であるときに言う。
定義 9 (一様全有界性).
が一様全有界であるとはがの全有界集合であるときに言う。
定義 10 (広義一様全有界性).
が一様全有界であるとはの任意のコンパクト部分集合について がの全有界集合であるときに言う。
定義 11 (ヘミコンパクト).
位相空間は、その可算個のコンパクト部分集合族で
を充たすものが存在するときヘミコンパクトと言う。
2 本文
命題 12.
がコンパクトであるときが同程度連続であることと、同程度一様連続であることは同値である。
略証.
はコンパクトなのでルベーグ数が存在する。これを使う。 ∎
命題 13.
がコンパクトでが同程度連続であるとき、が各点一様有界であることとが一様有界であることは同値である。
証明.
先の命題からは同程度一様連続である。 に対しての同程度一様連続性を担保するを一つ取る。つまり
を成り立たせるを一つ取る。はコンパクトなのでその-ネットが存在する。さて任意にをとるとが存在してとなる。よって任意のについてとなる。つまり
であり、は有界集合なのでは有界集合である。 ∎
をコンパクト距離空間とする。このときに距離が次のように定義できる。
この距離に関する全有界を述べるのがアスコリ・アルツェラの定理である。
定理 14 (アスコリ・アルツェラ).
をコンパクトとする。が同程度連続かつ一様全有界であることと、が距離について全有界であることは同値である。
証明.
まずが同程度連続であり、一様全有界と仮定しての全有界性を示す。 を任意に与える。は全有界なのでの-ネットが存在する。がコンパクトなのでが同程度一様連続であるが、に対しての同程度一様連続性を担保するを一つ取る。つまり
が成り立たせるのことである。はコンパクトなので-ネットが存在する。ところで 各に対して
と定義する。そしてさらに
と定義する。はの部分集合なので有限集合である。また、がネットであることからがわかる。そこで各に対してとなるを選んでおく。 いまからこのが-ネットであることを示そう。任意にを取る。そしてこのに対してを各について
となるように定義する。このようなが存在することはがネットであることからわかる。 の定義からがわかる。との距離を評価しよう。任意のについてとなるを取る。このとき同程度一様連続性や及びの定義などから
よって すなわちは-ネットであり、が全有界であることがわかった。
今度は逆を示そう。つまりがについて全有界であるならば、同程度連続かつ一様全有界であることを示す。まず最初に同程度連続であることを示そう。任意に点とを与える。の全有界性から-ネットが存在する。を適当に小さく選んで
を成り立たせるようにする。このことは各の連続性と、が有限集合であることから可能である。さて、任意のがが成り立つと仮定する。 そして任意のについてとなるようなを取る。すると
よっては同程度連続である。
次に一様全有界性を示そう。任意にを与える。そしての-ネットを取る。するとのコンパクト性から各はコンパクトであるから
もコンパクトである。 よってこの集合の-ネットが存在する。いまからがの-ネットであることを示そう。任意にとを与える。 そしてとなるを取り、さらにとなるを取る。このとき
となるのではの-ネットである。 ∎
に固有性を仮定すると次のように言い換えることもできる。
系 15.
をコンパクトとし、を固有距離空間とする。このときが同程度連続かつ各点一様有界であることと、が距離で全有界であることは同値である。
一般的によく見るのは次の形のアスコリ・アルツェラだと思う。
定理 16.
をコンパクトとし、を固有距離空間とする。このときが同程度連続かつ一様有界であることと、が距離で全有界であることは同値である。
がコンパクトじゃない場合にもある程度条件を課せばアスコリ・アルツェラ型の定理が成り立つ。それを述べるために広義一様収束のための距離を用意しよう。をコンパクトとする。の可算で増大なコンパクト部分集合族で、を被覆するものについて、 に対し、
と定義し、さらに
と定義する。は上の距離となり、について収束することと、広義一様収束することは同値になる。
定理 17.
をコンパクトとする。このときが同程度連続で、広義一様全有界であるならばはについて全有界である。さらにがヘミコンパクトならば、逆も成り立つ。
証明.
まずが同程度連続で、広義一様全有界であると仮定して全有界性を調べよう。 を任意に与える。を十分大きくとってならばとなるようにとる。 そして
と定義するとであり、また同程度連続で、一様全有界であることもわかる。よって先のアスコリ・アルツェラの定理からはについて全有界である。 そこでの-ネットを取る。 ならばであるから
がわかる。任意にを与え、となるを取るととなるについて
さらにならばの取り方から
となるのでである。よってはのにおける-ネットである。つまりはについて全有界である。
次はにヘミコンパクト性を課して逆を示そう。についてとなるが存在する。 の定義とがについて全有界であることから
はについて全有界である。よって先のアスコリ・アルツェラの定理からはにおいて上で同程度連続である。ところでなので結局がで上同程度連続であることがわかる。またのコンパクト集合を与え、となるを取るとやはりの定義とがについて全有界であることから
はについて全有界である。よって先のアスコリ・アルツェラの定理からは上一様全有界である。ゆえに上でもは一様全有界である。つまりは広義一様全有界である。 ∎
この定義域がノンコンパクトな場合のアスコリ・アルツェラの定理もが固有で広義各点一様有界な場合に特殊化できるが面倒なので述べない。 またアスコリ・アルツェラ型の定理は一様空間の範疇まで一般化できるが、面倒なのでここでは述べない。
References
- [1] ケリー著児玉之宏訳, 位相空間論, 吉岡書店1968