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極限集合の基本的性質の証明のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

極限集合の話

一色三良(concious77)
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では極限集合を定義し、その基本的な性質を紹介する(命題2021、系22)。この極限集合とその基本的な性質はホイットニーの埋め込み定理を証明する際によく利用されるが、証明を見たことがなかったので、証明をつけてみた。 極限集合は多様体の間の写像の場合に利用されるところしか見たことがないのだが、厳密に証明すると写像の定義域がσコンパクトな局所コンパクト距離化可能空間で、写像のコドメインが距離化可能空間である場合に証明できることがわかるのでそのように証明している。また、やろうと思えばもっと広いクラスの空間の間の写像で証明ができると思われる。 しかしながらそのような一般化に意味があるかといえば特に意味はなく、ただ使われている道具がハッキリする程度の効能しかないように私は思うし、普通の多様体は距離化可能であるということを宣伝するためにも距離化可能空間程度の仮定にとどめておく。

σコンパクトな位相多様体は距離化可能であることを強く注意しておく。111一般に位相多様体において、パラコンパクト性と距離化可能性は同値である。このことはウリゾーンの距離化可能定理や、σコンパクトな位相多様体には常にリーマン計量が存在することから分かる。222リーマン計量から多様体の位相と両立する距離がおなじみの方法で構成できる。多様体の位相に関するとても強い性質なのだが、あまり注意されてないように思うので強く注意しておく。恐らくリーマン計量の存在性から従うことなのであまり強く注意しないのかもしれない。

この文章の主要部分はセクション3である。基本事項がわかっている読者はここだけ読めばよい。

この文章では位相空間Xの点aの近傍系を𝔑(a)で表し、Xの部分集合Aの閉包をCLX(A)Aの内核をIntX(A)で表す。

1 準備

定義 1 (点列).

位相空間X内の点列とは写像α:Xのことである。この文書では簡単に{αi}などと書く。

定義 2 (部分列).

X内の点列βが点列αの部分列であるとは狭義単調な写像ϕ:が存在して

β=αϕ

と表されることである。すなわち{βi}{αϕ(i)}という形をしている。

定義 3 (点列の収束).

X内の点列αXの点pに収束するとは

N𝔑(p)MnM(αnV)

が成り立つことである。{αn}pに収束することをlimnαn=pと書いたり、αnpと書いたりする。

距離空間(X,d)においてはαnp in Xd(αn,p)0 in は同値である。

定義 4.

位相空間Xの部分集合Aと点pについてpAの集積点であるとは

N𝔑(p)(N{p})AØ

が成り立つことである。Aの集積点全体をAdで表すことにする。

以下の二つの補題は距離空間の基本的な命題であるが、一応紹介しておく。証明は省略する。

補題 5.

距離空間(X,d)とその部分集合Aについて以下は同値である。

  1. (1)

    A(X,d)の閉集合。

  2. (2)

    X内の点列{an}anAanaをみたすならばaA

補題 6.

距離化可能空間の間の写像g:XYについて以下は同値である。

  1. (1)

    gは連続写像

  2. (2)

    X内の点列{an}ついてanaならば、Y内の点列{g(an)}g(an)g(a)を充たす。

  3. (3)

    Xの部分集合Aについてg(CLX(A))CLY(g(A))

注意.

補題6について(1)(3)は一般の位相空間の間の写像でも同値になる。

定義 7.

連続写像f:XY埋め込みであるとは、f:Xf(X)が同相写像となることをいう。 つまり、fが単射で、f1:f(X)Xが連続ということである。

2 点列の集積の概念について

まずは数列に関する二つの集積点の概念を紹介しよう。

このセクションではXは距離化可能空間上で考えているものとする。

定義 8.

{xi}iが「点列として集積点を持つ」とは

aXN𝔑(a)card({ixiN})=0

が成り立つことである。

定義 9.

ちなみに{xi}iが「集積点を持つ」とは

{xii}dØ

つまり集合として集積点を持つということである。

注意.

以降では「点列として集積点を持つ」という概念しか使わず、集合として集積点を持つ方は使わない。 点列が集積点を持つと言った場合には普通は「点列として集積点を持つ」という意味で解釈すると思うが、集合として集積点を持つ意味と紛らわしいので違いを強調するために一応両方ともに定義として紹介した。上の二つの定義はもちろん同値ではない。(考えてみよ。)

また、点列として集積点を持つことは同相写像で保たれる性質であることに注意しよう。

以下ではまず点列として集積点をもつことの必要十分条件を決定して行く。

命題 10.

以下は同値である。

  1. (1)

    {xi}が点列として集積点を持つ

  2. (2)

    {xii}dØまたはncard({ixi=xn})=0

証明.

まず(1)(2)を証明しよう。 そのためには(1)ncard({ixi=xn})<0を 仮定して{xii}dØを導けばよい。 まず(1)から

aXN𝔑(a)card({ixiN})=0

が成り立つ。 この点aXは集合{xii}には属しない。 なぜなら今は

ncard({ixi=xn})<0

を仮定しているからである。よって

N𝔑(a)(N{a}){xii}Ø

である。即ちa{xii}dなので(2)が導かれた。

次に(2)(1)を証明しよう。 まず、{xii}dØならば、{xii}dから点aXを取ればこれは集合 {xii}の集積点であることから

N𝔑(a)card({ixiN})=0

となることがわかる。

次にncard({ixi=xn})=0ならばxnについて、もちろん

N𝔑(xn)card({ixiN})=0

となるのでいづれにせよ(1)が証明された。 ∎

命題 11.

{xi}が点列として集積点を持つ {xi}は収束する部分列を持つ。

証明.

まず、{xi}が収束する部分列を持つとして点列として集積点を持つことを示そう。 部分列{xϕ(i)}は点aXに収束すると仮定する。ここでϕ:は狭義単調関数である。 aX{xϕ(i)}の収束点なので

N𝔑(a)card({ixϕ(i)N})=0

よって特に

N𝔑(a)card({ixiN})=0

なのでつまり{xi}は点列として集積点を持つ。

逆を示そう。そのために定理10を利用する。Xの位相と両立する距離の一つをdとする。

もし{xii}dØならばここから点aXをとって、d(a,xϕ(i))<1/iとなるように 部分列{xϕ(i)}を取れば、これはaに収束する。

もしncard({ixi=xn})=0ならば xϕ(i)=xnとなる部分列{xϕ(i)}(これは定数列である。)を取ればこれは点xnに収束する。もちろんϕは狭義単調増加関数である。 ∎

命題 12.

{xi}が点列として集積点をもつ

K:cptNnNxnK
証明.

の証明)

仮定から単調増加数列ϕ:xϕ(i)Kとなるようにとることができる。 Kはコンパクトなので{xϕ(i)}の部分列で収束するものが存在する。 ところでそもそも{xϕ(i)}{xi}の部分列なので{xi}は収束する部分列を持つことが言えた。

の証明)

{xi}が点列として集積点をもつと、収束する部分列{xϕ(i)}が存在する。ここでϕ:は単調増加写像である。 この部分列{xϕ(i)}の収束点をaXとし、

K={xϕ(i)i}{a}

とするとKはコンパクトである。さらに任意のnについてϕ(n)nなので

K:cptNnNxnK

が成り立つ。 ∎

以上を合わせて以下を得る

命題 13.

距離空間(X,d)内の点列{xi}について以下は同値である。

  1. (1)

    {xi}は点列として収束する。

  2. (2)

    {xii}dØまたはncard({ixi=xn})=0

  3. (3)

    {xi}は収束する部分列を持つ。

  4. (4)

    K:cptNnNxnK

次のセクションで利用するのは主に点列として収束することの否定である。次のように定義して用いる。

定義 14.

xi{xi}が点列として集積点を持たないことと定義する。

xiは単に点列として集積点を持つことの否定なので、命題13から直ちに以下の同値性が従う。

命題 15.

距離空間(X,d)内の点列{xi}について以下は同値である。

  1. (1)

    xi

  2. (2)

    {xii}d=Øかつncard({ixi=xn})<0

  3. (3)

    {xi}の任意の部分列は収束しない。

  4. (4)

    K:cptNnNxnK

主に(3)(4)を利用することになると思う。

注意.

定義を見ればわかるが、xiXを一点コンパクト化したときに無限遠点に収束するのと同値である。

また、xiは距離には依存せず、位相に依存する性質であることに注意しよう!

3 極限集合

このセクションでは Xσコンパクトかつ局所コンパクトな距離化可能空間とし、Yを距離化可能空間とする。

注意.

このセクションで扱う極限集合は主に多様体の理論で利用されるし、その補完としてこの文章を書いている。 このXYに関する仮定はσコンパクトな位相多様体も満たすことに注意しよう。 即ち、σコンパクトな位相多様体は距離化可能である。σコンパクト性の仮定が気になるかもしれないが、普通多様体論で扱われる多様体はσコンパクトである。パラコンパクトの方が親しみがある人もいるかもしれないが、パラコンパクトな位相多様体はσコンパクト位相多様体の直和になってるし、およそ、連結多様体やもしくは高々可算個の連結多様体の直和にしか興味がない場合が多いのでσコンパクト性が突飛な仮定というわけでもない。 しかしながらσコンパクトではないような連結位相多様体は存在するし、そういった連結位相多様体は距離化不可能であるといったことも注意しておこう。

以下の命題の証明は省略する。

命題 16.

Xのコンパクト部分集合の列{Ki}i

X=iKi
i(KiIntX(Ki+1))

の二つを充たすものが存在する。 またこのときXの任意のコンパクト部分集合Kについてあるmが存在してKKm となることに注意しよう。

注意.

この命題内の性質を充たす{Ki}iが存在する空間のことをHemicompactと呼ぶ。 一般にσコンパクトな局所コンパクトハウスドルフ空間はHemicompactである。

命題16の後半の注意からすぐに次のことがわかる。

命題 17.

{Ki}iを命題16で述べられているXコンパクト部分集合列としよう。このとき xi

mNiNxiKm

が同値になる

以下で定義する極限集合がこの文書の主役である。この集合の振る舞いを見ることで写像の性質がわかったりする。

定義 18.

連続写像f:XYに対し

L(f)={yYxiとなる{xi}が存在してf(xi)yとなる}

と定義する。これをf極限集合と呼ぶ。

まず簡単に次のことがわかる。

命題 19.

L(f)Yの閉集合

証明.

命題16を用いて Xのコンパクト集合の列{Ki}i

X=iKi
i(KiIntX(Ki+1))

の二つを充たすものを取る。 距離空間の部分集合の閉性を確かめる昔ながらの方法(補題5)を用いる。 Yの位相と両立する距離の一つをeとしよう。 Y内の点列{yi}yiL(f)であり、{yi}yYに収束してるとする。ここで、適当に部分列をとって

e(yi,y)<2i

としても一般性を失わない。 各m毎にymL(f)なので、X内の点列{xim}が存在して、ximでかつ

limif(xim)=ym

となる。 さてここで単調増加写像ϕ:iϕ(m)ならば

ximKm,e(ym,f(xim))<2m

となるように定める。このことはちゃんと可能である。 そしてzi=xϕ(i)iとする。ϕの定義から任意のiについて

zi=xϕ(i)iKi

が成り立つ。KiKi+1なので、nNならばznKNが成り立ち、命題17からziがわかる。 そして、

e(y,f(zi))e(y,yi)+e(yi,f(zi))2i+1

なのでf(zi)yがわかる。よってyL(f)となるから、L(f)は閉集合である。 ∎

命題 20.

f:XYを単射と仮定する。このとき

fL(f)f(X)=Ø
証明.

の証明)

対偶を証明しよう。即ち、L(f)f(X)Øを仮定してfが埋め込みでないことを示す。 今、yL(f)f(X)を取ると、 xiかつf(xi)yとなるX内の点列{xi}が存在し、また、y=f(x)となるxXが存在する。 xiであることから{xi}は収束しない。 よってY内の点列{f(xi)}f(xi)yにも関らず、

limif1(f(xi))f1(y)(=x)

となるのでf1:f(X)Xは連続ではない。よって特にfは埋め込みではない。

(の証明)

L(f)f(X)=Øからf1:f(X)Xが連続であることを示せばよい。つまり任意のAf(X)について

f1(CLf(X)(A))CLX(f1(A))

であることを証明する(補題6)。

任意にyCLf(X)(A)を取る。すると A内の点列{yi}が存在してyに収束する。 さてxi=f1(yi)とする。L(f)f(X)=Øという仮定とyf(X)からyL(f)がわかる。よってxi↛がわかる。すなわち{xi}は点列として集積点を持つ。 よって収束する部分列{xϕ(i)}が存在する。{xϕ(i)}の収束点をxXとする。 写像fの連続性からf(xϕ(i))f(x)がわかり、さらにf(xϕ(i))=yϕ(i)であり、収束列の部分列は元の列の収束点に収束するので、f(x)=yである。 つまりx=f1(y)である。 以上から{yi}の部分列を適当にとればf1(yϕ(i))f1(y)となることがわかった。 {f1(yϕ(i))}f1(A)内の点列であるから

f1(CLf(X)(A))CLX(f1(A))

がわかるのでf1は連続である。 ∎

命題 21.

連続関数f:XYについて

f(X)YL(f)f(X)
証明.

(の証明)

L(f)の定義から自明。

(の証明)

f(X)内の点列{yi}yiyを充たすと仮定する。 そして点列{xi}xif1(yi)となるように定義する。

もし{xi}が収束する部分列を持つならばfの連続性からその部分列の収束点xについてf(x)=yになるので yf(X)がわかる。

もし{xi}が収束する部分列を持たない、 すなわちxiならばyL(f)であり、仮定からL(f)f(X)なのでyf(X)である。

いづれにせよyf(X)なのでf(X)Yの中で閉集合である。 ∎

結果として次のことがわかる。

系 22.

f:XYを単射と仮定する。このとき

L(f)=Øならばfは閉写像でかつ埋め込みになっている。

References

  • [1] 志賀浩二, 多様体論I, 岩波書店,岩波講座基礎数学幾何学i, 1976