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群作用による商空間のハウスドルフ性のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

商位相とハウスドルフ性、特に群作用の話

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

この文書では群作用による商空間とハウスドルフ性の関係を調べる。

1 商集合

X×Xの部分集合Rが以下の三つを充たすときX上の同値関係と呼ぶ。

(1) ∀x∈X⁢(x,x)∈R
(2) ∀x,y∈X⁢(x,y)∈R⟹(y,x)∈R
(3) ∀x,y,z∈X⁢(x,y)∈R∧(y,z)∈R⟹(x,z)∈R

(x,y)∈Rのことをx⁢R⁢yとも書く。この記法を使えば上の条件は

(1) ∀x∈X⁢x⁢R⁢x
(2) ∀x,y∈X⁢x⁢R⁢y⟹y⁢R⁢x
(3) ∀x,y,z∈X⁢x⁢R⁢y∧y⁢R⁢z⟹x⁢R⁢z

と書ける。

集合Xに同値関係Rが与えられているとき、a∈Xに対してaの同値類[a]を

[a]={x∈X∣a⁢R⁢x}

と定義する。

Rの同値類全部の集合をXのRによる商集合と言い、X/Rで表す。即ち

X/R={[x]∣x∈X}

である。またπ⁢(x)=[x]で定義される写像π:X→X/Rのことを商写像という。

位相空間Xに同値関係Rが与えられているときにU⊂X/RがX/Rにおける開集合であることをπ−1⁢(U)がXの開集合であることと定義すると、X/Rに開集合系が定まる。この開集合系から誘導される位相を商位相という。 X/Rを商位相も込めて商空間などと言ったりする。 商位相はπ:X→X/Rを連続にするようなX/Rの最強の位相と一致する。

Xが充たしている分離公理をX/Rも充たすといったような希望は持てない。 以下では特に商空間のハウスドルフ性について基本的な二つの命題を述べよう。111ハウスドルフ性より高次の分離公理については一旦置いておくが、T4より高次の分離公理は閉写像で保たれやすいのでそういった高次の分離性については商写像の閉性を問うた方がよい。

命題 1.

商空間X/RがハウスドルフならばRはX×Xの閉集合である。

証明.

R=(π×π)−1⁢(ΔX/R)なので、命題は商写像π:X→X/Rの連続性から分かる。ここで

ΔX/R={(x,x)∈X/R×X/R∣x∈X/R}

である。 ∎

この命題の一種の逆が成り立つ。

命題 2.

商写像π:X→X/Rが開写像でかつRがX×Xの閉集合ならばX/Rはハウスドルフである。

証明.

[x]≠[y]となるx,y∈Xをとる。仮定から(x,y)∉Rである。RがX×Xの閉集合であるからXの開集合U,Vが存在して

(x,y)∈U×V

と

(U×V)∩R=Ø

を充たす。 さてπは開写像なのでπ⁢(U)とπ⁢(V)はX/Rの開集合で[x]∈π⁢(U)と[y]∈π⁢(V)を充たす。 (U×V)∩R=Øなので

π⁢(U)∩π⁢(V)=Ø

である。よってX/Rがハウスドルフであることがわかった。 ∎

一般にXがハウスドルフでRがX×Xの閉集合であってもX/Rはハウスドルフとは限らない。これは正則ではないハウスドルフ空間が存在することなどから反例は簡単に作れる。

2 群作用による商

このセクションではより限定して群作用による商に注目して商空間のハウスドルフ性を述べる。

定義 3 (位相群).

群Gが位相空間であり、かつ、その二項演算と単項演算が連続、すなわち、

binary:G×G→G,(x,y)↦x⁢yinverse:G→G,x↦x−1

が連続である時、群Gを位相群と呼ぶ。この文章では位相群は常にハウスドルフであるとする。 また、A⁢B={a⁢b∣a∈A,b∈B}やA−1={a−1∣a∈A}などの記号も以降断りなく使う。

定義 4.

位相群Gと位相空間Xについて連続写像f:G×X→Xが連続的な作用であるとは

(1) f⁢(1G,x)=x
(2) f⁢(g,f⁢(h,x))=f⁢(g⁢h,x)

を充たすときに言う。 一般にfを省略しても紛れがあることはないように思うので以下ではf⁢(g,x)をg.xと書くことにする。 ドットがついているのをよく見てほしい。 すると上の条件は

(1) 1G.x=x
(2) g.(h.x)=g⁢h.x

と書ける。 この定義は一般に左作用と呼ばれるものだが、ここでは左作用しか扱わないので気にしないでほしい。 以降ではA.S={a.s∣a∈A,s∈S}やg.S={g.s∣s∈S}、A.x={a.x∣a∈A}などの記号を断りなく使う。

各g∈Gについて、fg:X→X;x↦g.xは同相写像になることに注意しよう。逆写像はfg−1である。 このことからXの開集合Uについてg.UもまたXの開集合であることがわかる。閉集合についても同様である。

位相群Gが位相空間Xに連続的に作用しているとき、同値関係RGを

x⁢RG⁢y⇔∃g∈G⁢x=g.y

で定義する。 この同値関係による商空間X/RGを象徴的にX/Gと書くことにする222左作用なのでG\Xと書くべきなのかもしれないが、右作用とかこの文章では使わないのでこう書く。。 ここではXにGからのことなる二つの群作用がある場合は扱わないので紛れはないと思う333一般にそんな場合を扱う場面があるのかは知らない。。

以下では群の作用による商空間のハウスドルフ性について幾ばくかの命題を紹介してゆく。

補題 5.

群の連続な作用によって誘導される商写像は開写像である。

証明.

商位相の定義からπ:X→X/Gが開写像であることを証明するためにはπ−1⁢(π⁢(U))がXの開集合であることを示せばよい。ところで

π−1⁢(π⁢(U))=⋃g∈Gg.U

であり、g.Uは開集合であるからπ−1⁢(π⁢(U))は開集合である。 ∎

命題 6.

位相空間Xに位相群Gが連続に作用しているとする。もし {(x,g.x)∈X×X∣x∈X,g∈G}がX×Xの閉集合ならばX/Gはハウスドルフである。

証明.

群作用から誘導される同値関係RGについて、

RG={(x,g.x)∈X×X∣x∈X,g∈G}

であるからRGはX×Xの閉集合である。 また群作用による商写像は常に開写像なので命題2からX/Gはハウスドルフである。 ∎

次の話題に移る前に次のTube lemma及びBox Lemmaを紹介しよう444これらの命題は「いつもの」とも呼ばれる。。

補題 7 (Tube lemma).

X、Yを位相空間、BをYのコンパクト集合とする。更にx∈XとX×Yの開集合Oが

{x}×B⊂O

を充たしているとする。このときXにおけるxの開近傍NとYの開集合Mが存在して、B⊂M及び

{x}×B⊂N×M⊂O

を充たす。

証明.

S={x}×Bと置く

𝒪={U×V∣S∩(U×V)≠Ø,U×V⊂O,U,V⁢は⁢そ⁢れ⁢ぞ⁢れ⁢X,Y⁢の⁢開⁢集⁢合}

と置くと、𝒪は開集合族で直積の開集合の定め方から

S⊂⋃𝒪

が成り立つので𝒪はSの開被覆である。SはBと同相であるからコンパクトなので

S⊂⋃i=1n(Pi×Qi)⊂O

となる𝒪の有限部分族{Pi×Qi}i=1nが存在する。そして明らかに

B⊂⋃i=1nQi

であり

N=⋂i=1nPi,M=⋃i=1nQi

と置けばx∈Nで

S={x}×B⊂N×M⊂N×⋃inQi=⋃i=1n(N×Qi)⊂⋃i=1n(Pi×Qi)⊂O

が成り立つので証明が終わる。 ∎

Tube lemmaのちょっとした拡張として次の補題も証明される。

補題 8 (Box lemma).

X、Yを位相空間、A、BをそれぞれX、Yのコンパクト集合とする。更にX×Yの開集合Oが

A×B⊂O

を充たしているとする。このときXの開集合UとYの開集合Vが存在してA⊂U、B⊂V及び

A×B⊂U×V⊂O

を充たす。

証明.

各a∈Aについて{a}×BにTube lemma を適用してaの開近傍NaとBの開近傍Maで

{a}×B⊂Na×Ma⊂O

を充たすものを取る。このとき

A⊂⋃a∈ANa

なのでAのコンパクト性から有限個のa1,…,anが存在して

A⊂⋃i=1nNai

が成立する。さて、

U=⋃i=1nNai⁢V=⋂i=1nMai

と定義すればU、VはそれぞれX、Yの開集合でA⊂N、B⊂Vを充たし、さらに

A×B⊂U×V⊂⋃i=1n(Nai×V)⊂⋃a∈A(Na×Ma)⊂O

なので補題の証明は終わる。 ∎

Box lemma を応用して次の群作用に関する補題を得る。

補題 9.

位相群Gが位相空間Xに連続的に作用しているとする。A、BをそれぞれG、Xのコンパクト集合、OをXの開集合として

A.B⊂O

を充たすとする。このとき このときGの開集合UとXの開集合Vが存在してA⊂U、B⊂V及び

A.B⊂U.V⊂O

を充たす。

証明.

GからXへの連続的な作用をちゃんとf:G×X→Xと書くと、A.B⊂Oから

A×B⊂f−1⁢(O)

が導かれる。f−1⁢(O)はG×Xの開集合なのでBox lemmaからGの開集合UとXの開集合Vが存在してA⊂U、B⊂V及び

A×B⊂U×V⊂f−1⁢(O)

を充たす。これをfで写せば

A.B⊂U.V⊂O

を得る。 ∎

この補題の特殊な場合として次の補題が分かる。

補題 10.

位相群Gが位相空間Xに連続的に作用しているとする。AをGのコンパクト集合、xをXの点、OをXの開集合とし、A.x⊂Oが成り立っているとする。このときxの近傍Uが存在して

A.U⊂O

が成立する。

この補題を用いて次の基本的な命題を証明しよう。

命題 11.

位相群GがXに連続的に作用しているとする。 KをGのコンパクト集合、FをXの閉集合とすると、集合K.FはXの閉集合である。

証明.

x∉K.Fを任意にとる。このとき(K−1.x)∩F=Øである。K−1はコンパクト集合なので補題10からxの近傍Uが存在して

(K−1.U)∩F=Ø

が成立する。つまり

U∩(K.F)=Ø

なのでK.Fは閉集合である。 ∎

命題 12.

コンパクト位相群の連続な作用によるハウスドルフ空間の商空間はハウスドルフである。

証明.

コンパクト群Gがハウスドルフ空間Xに連続的に作用しているとする。この作用から新たにGのX×Xへの作用を以下のように誘導する。

g..(x,y)=(x,g.y)

区別のためにX×X上の作用は二つのドット..で表した。 このとき作用G×(X×X)→X×Xは連続的な作用になる。 Xがハウスドルフ空間なのでΔX={(x,x)∣x∈X}はX×Xの閉集合である。 Gのコンパクト性と先の補題から G..ΔXはX×Xの閉集合である。さて、

G..ΔX={(x,g.x)∈X×X∣x∈X,g∈G}=RG

なのでX/Rはハウスドルフである。 ∎

系 13.

射影空間とかはハウスドルフ。

3 おまけ・固有な群作用について

定義 14 (固有写像).

連続写像f:X→Yが固有であるとはYの任意のコンパクト部分集合Kについて、 その逆像f−1⁢(K)がXのコンパクト集合になることである。

定義 15.

連続写像f:X→Yが適性であるとは、fが閉集合であり、Yの任意の点yについて、f−1⁢(y) がXのコンパクト集合になることである。

定理 16.

Yが局所コンパクトハウスドルフであるとき、fが固有であることと適性であることは同値である。

定義 17.

GがXに固有に作用しているとは

θ:G×X→X×X;(g,x)↦(x,g.x)

が固有写像であるときにいう。

注意.

G×X→X;(g,x)↦g.xが固有という定義ではないことに注意せよ。

定義 18.

A,B⊂Xについて

[A,B]={g∈G∣(g.A)∩B≠Ø}

と定義する。

代数トポロジーの本などでは、コンパクト集合K,Lについて、[K,L]がコンパクトな時に作用が固有などどいったりするが、これはθの固有性と一致する。

定理 19.

Xが局所コンパクトハウスドルフの時、以下は同値である。

  1. (i).

    GはXに固有に作用する。

  2. (ii).

    Xのコンパクト集合の任意の2対(K,L)について、[K,L]はGのコンパクト集合である。

証明.

θの固有性に[K,L]という集合が出てくる理由を説明しよう。 X×XのK×L(K、LはXのコンパクト集合)という簡単な形のコンパクト集合を考えよう。 θによる逆像θ−1⁢(K×L)を考えると、

(1) θ−1⁢(K×L)⊂[K,L]×K

となる。さらに、πG:G×X→GをG方向の射影とすると

(2) πG⁢(θ−1⁢(K×L))=[K,L]

となる。

これを踏まえたうえで、 (i)⟹(i⁢i)はθの固有性と(2)式から明らかである。 (i⁢i)⟹(i)を示そうお。X×Xのコンパクト集合Mについて、Xの局所コンパクト性から M⊂K×LとなるXのコンパクト集合K,Lがあり、

θ−1⁢(M)⊂θ−1⁢(K×L)

となるのでθの固有性の証明のためには結局θ−1⁢(K×L)という集合のコンパクト性さえわかればよい。 しかしこのコンパクト性は(i⁢i)という仮定と(1)式から明らかである。 ∎

Xが局所コンパクトハウスドルフで、GがXに固有に作用しているとき、 θ⁢(G×X)=RGは閉集合になるので命題12と同様に X/Gはハウスドルフであることがわかる。(ついでに局所コンパクトである。) 固有作用しているとXの性質がX/Gに受け継がれやすくなるのである。詳しくはブルバキ参照のこと。

注意.

適性も、固有もフランス語のpropreの訳語であるはずである。本来ならばここで定義されている適性写像こそが固有写像と呼ばれるべきものである。 もともとブルバキにおいてはここで定義した適性写像がpropreと呼ばれ、 ここで定義した固有写像は写像が局所コンパクトな場合の適性性を判定するための便利な条件の一つ程度の扱いであったように思うが、いつの間にか、 ここでいう適性写像の概念は忘れられ、ここでいう固有写像が普及していったようだ(いまでは、ここでいう適性写像は完全写像(perfect map)という言葉でわずかながら伝承されている。) このことは恐らく数学の研究で、局所コンパクトハウスドルフな空間が台頭したことと関係があるのかもしれない。すなわち多様体論の隆盛に押されたのかもしれない。(ただ単にブルバキの言葉遣いが一般の数学者の言葉づかいから離れていただけの可能性もとても多いにある。) しかしながらブルバキの定義した意味での固有写像の概念は(もちろん考えている圏は違うけれど)代数幾何における固有射として伝承されているようだ。

References

  • [1] 二コラ・ブルバキ,位相1, 2
  • [2] Tammo tom Dieck, Topologie, 1991, Walter de Gruyter.