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ルベーグ測度正の集合のLaTeXML自動変換版です。自動検査には合格していますが、元PDFとの目視比較は未実施です。正本はPDF・TeXです。

ルベーグ測度正の集合の話

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

この文書ではルベーグ測度が正のルベーグ可測集合の性質を紹介する。

1 準備

この文章では測度やルベーグ測度の厳密な定義は行わない。 ただ測度が与えられたときに可測な集合と非可測な集合の二つがあることと基本的に可測集合しか扱わないこと、そしてただ実直線ℝの上にはこのセクションで紹介する性質をもつルベーグ測度と呼ばれる測度があると思っても不都合はないように思える。

位相空間のボレル集合体とはその空間の開集合全体から生成される完全加法族のことであり、ボレル加法族に属する集合をボレル集合と呼ぶ。

実直線ℝの開集合はすべてルベーグ可測であるからℝのボレル集合はすべて可測である。

また、ルベーグ可測集合全体はℝのボレル集合体をルベーグ測度で完備化した集合体と一致することに注意しよう。

この文章ではルベーグ測度をmで表す。

事実 1.

ℝの非空な開集合Uについて0<m⁢(U)であり、 ℝのコンパクト集合Kについてm⁢(K)<∞である。 これらを合わせると内点をもつコンパクト集合Kについて0<m⁢(K)<∞である。

事実 2 (平行移動不変性).

任意のルベーグ可測集合Sと任意のx∈ℝについて

m⁢(x+S)=m⁢(S)

となる。ここでx+S={x+s∣s∈S}である。

注意.

実はこの平行移動不変性で「凡そ」ルベーグ測度は特徴づけできる。即ちハール測度の一意性である。

事実 3 (内部正則性).

m⁢(S)<∞を充たす任意のルベーグ可測集合Sと任意のε>0についてコンパクト集合Kが存在して

K⊂S,m⁢(S)<m⁢(K)+ε

が成り立つ。

注意.

m⁢(S)=∞でも同様のことは成り立つが、今回は使わない。

事実 4 (外部正則性).

m⁢(S)<∞となる任意のルベーグ可測集合Sと任意のε>0について開集合Uが存在して

S⊂U,m⁢(U)<ε+m⁢(S)

が成立する。

注意.

一般には 任意のルベーグ可測集合Sと任意のε>0について開集合Uが存在して

S⊂U,m⁢(U∖S)<ε

が成立するが、ここでは上の外部正則性しか使わない。

2 本題

定理 5.

正のルベーグ測度を持つルベーグ可測集合SについてS−Sは0を内点に持つ。 ここでS−S={s−t∣s,t∈S}である。

証明.

ℝのσ-コンパクト性から0<m⁢(S)<∞と仮定してもよく、内部正則性からSはコンパクトと最初から仮定しても一般性を失わない。外部正則性から開集合Uが存在してS⊂U及び

m⁢(U)<2⁢m⁢(S)

を充たす。 ここで

R=d⁢(S,X∖U)=inf{|a−b|∣a∈S,b∈X∖U}

とするとR>0であり、任意のs∈Sについて

(s−R,s+R)⊂U

即ち

(1) S+(−R,R)⊂U

である。 ここでもちろんS+(−R,R)={s+r∣s∈S,r∈(−R,R)}

いまから(−R,R)⊂S−Sを示そう。|r|<Rとなるrを任意に取ると(1)から

r+S⊂U

である。ここでr+S={r+s∣s∈S}である。さて、ここでもしも(r+S)∩S=Øならば、平行移動不変性と単調性及びUの定義から

2⁢m⁢(S)=m⁢(S∪(r+S))≤m⁢(U)<2⁢m⁢(S)

となり矛盾する。 よって(r+S)∩S≠Øである。即ちs∈Sとt∈Sが存在してr+s=tということであり、つまり r=s−t∈S−Sである。よって

(−R,R)⊂S−S

となる。これは0がS−Sの内点であることを言っている。 ∎

系 6.

正のルベーグ測度を持つルベーグ可測集合は連続体濃度をもつ。

証明.

Sを正のルベーグ測度を持つルベーグ可測集合とする。 高々可算な集合は零集合であるからSは非可算集合である。特に無限集合である。ここで

f:S×S→ℝ

をf⁢(x,y)=x−yで定めると先の定理によりf⁢(S×S)は内点を持つ。ℝの部分集合で内点を持つ集合は連続体濃度をもつ(開区間を含むから)。ゆえに集合f⁢(S×S)は連続体濃度を持つ。さてSは無限集合であるから card⁢(S)=card⁢(S)×card⁢(S)=card⁢(S×S)であるよって

card⁢(S)=card⁢(S×S)≥card⁢(f⁢(S×S))=2ℵ0

であり、もちろんcard⁢(S)≤2ℵ0なので

card⁢(S)=2ℵ0

∎

注意.

非可算なポーランド空間はカントール集合と同相な部分集合を含むことを主張するCantor-Bendixsonの定理を使えば定理5を経由せずに、系6を証明することができる。

注意.

系6の逆は成り立たない。例えば通常のカントール集合Cは零集合だが連続体濃度をもつ。

注意.

定理5の逆は成り立たない。例えば通常のカントール集合Cは零集合だが

C−C=[−1,1]

である。このことは例えば解析学の反例を集めた本Counterexamples in Analysis で紹介されている。

注意.

定理5は一般にハール測度を備えたσ-コンパクト局所コンパクトハウスドルフ位相群に対して成り立つ。

注意.

通常のカントール集合Cと位相同型だがルベーグ測度が正のℝの部分集合が存在する。 太ったカントール集合(A fat Cantor set)というやつである。

同相写像f:ℝ→ℝでf⁢(C)が太ったカントール集合になるものが存在する。 このことが指し示すのは同相写像は零集合を常には零集合に移してはくれないということである。