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正則同型の同定

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では複素平面ℂ、リーマン球面ℂ^及び単位開円盤Δの正則同型写像を同定する。

1 基本的な定義

この文章ではℂは複素平面を表し、ℂ^=ℂ∪{∞}である。 また、Δ={z∈ℂ∣|z|<1}である。 この節で述べることはとてもよく知られているので無視してかまわない。

定義 1 (メビウス変換、もしくは一次分数変換).

a⁢d−b⁢c≠0を充たすa,b,c,d∈ℂを用いてzに

a⁢z+bc⁢z+d

を対応させる写像をメビウス変換、もしくは一次分数変換という。

注意.

二つのメビウス変換の合成は再びメビウス変換になるし、メビウス変換は常に逆変換を持つことに注意せよ。 つまりメビウス変換全体は群をなす。これをメビウス群とかメビウス変換群とかいう。 また、開集合上で定義されたメビウス変換は正則関数になることに注意せよ。よって開集合上で定義されたメビウス変換は正則同型写像である。

注意.

メビウス群の合成や逆変換は行列と同様の方法で計算できる。 即ち以下の写像は準同型である。

ℳ:GL⁡(2,ℂ)→{メビウス変換全体}A↦MA

ここでMAの定義を述べる。

A=(abcd)

としたときMAは

MA⁢(z)=a⁢z+bc⁢z+d

で表されるメビウス変換である。 また、ker⁡(ℳ)={λ⁢E∣λ≠0}であることに注意せよ。 すなわちAとλ⁢A⁢(λ≠0)は同じメビウス変換に移る。

GL⁡(2,ℂ)/ker⁡(ℳ)

をPGL⁡(2,ℂ)とか書くみたいである。

定義 2.

ℂ^の開集合Xに対して

Aut⁡(X)={f:X→X∣f⁢は⁢X⁢の正則同型}

と定義する。

2 準備

話の本題に移る前に複素関数論の基本的な結果をいくつか紹介する。ここでは証明は省く。証明が知りたい場合は複素関数論を学ぶとよいと思われる。

補題 3 (開写像定理).

正則関数は開写像である。

補題 4 (Casorati-Weierstrass).

点aの周りで定義された正則関数fについて、aはfの真性特異点とする。このときaの任意の近傍NについてN∖{a}のfのよる像f⁢(N∖{a})はℂの中で稠密である。

補題 5 (Schwarz).

fはΔ上の正則関数とし、

|f⁢(z)|≤1,f⁢(0)=0

を充たすとする。このとき|f⁢(z)|≤|z|と|f′⁢(0)|≤1が成立する。

更に|f⁢(z)|=|z|となるz∈Δが存在するか、もしくは|f′⁢(0)|=1を充たすならば ある|a|=1となる複素数aが存在して

f⁢(z)=a⁢z

となる。

補題 6.
z−aa¯⁢z−1(a∈Δ)

の形のメビウス変換をブラシュケ因子と呼ぶ。このメビウス変換はΔからそれ自身への正則同型になっている。

補題 7.

メビウス群の部分集合

{ei⁢θ⁢z−aa¯⁢z−1|θ∈ℝ,a∈Δ}

は逆写像と合成で閉じている。つまりメビウス群の部分群である。

補題 8.
{ei⁢θ⁢z−aa¯⁢z−1|θ∈ℝ,a∈Δ}={a⁢z+bb¯⁢z+a¯|a,b∈ℂ,|a|2−|b|2>0}

3 本題

この節では 複素平面ℂ、リーマン球面ℂ^及び単位開円盤Δの正則同型写像を同定する。 まずℂのそれを求めよう。

補題 9.

単射な正則関数f:ℂ→ℂはa⁢z+b⁢(a≠0)に限る。

証明.

まず無限遠点∞に於けるfの挙動を調べてみよう。すなわち関数

g⁢(z)=f⁢(1z)

のz=0における振る舞いを調べよう。

gがz=0で極を持つことを証明する。背理法を用いる。gがz=0で真性特異点を持つと仮定しよう。(gがz=0で零点を持ったり、もしくはz=0まで正則に拡張できたりはしない。このことを考えてみよ。これからz=0がgが真性特異点の場合のみに背理法を行えばよいことがわかる。)

0と1の十分小さい近傍を選び、0∈U、1∈V、U∩V=Øとする。 このとき補題4からg⁢(U∖{0})はℂで稠密である。一方g⁢(V)は開写像定理からℂの開集合であるが、fがℂ上単射であることから

g⁢(U∖{0})∩g⁢(V)=g⁢((U∖{0})∩V)=Ø

となり、g⁢(U∖{0})がℂで稠密であることに反する。(稠密集合は非空な開集合と常に交わりを持つはずである。)

よってgはz=0において極を持つ。その極の位数をmとする。 さてfはℂ全体でマクローリン展開出来て、

f⁢(z)=∑n=0∞an⁢zn

と書けるが、g⁢(z)=f⁢(1/z)がz=0で位数mの極を持つことからk>mについてak=0とならなければならない。つまり

f⁢(z)=∑n=0man⁢zn

となる。即ちfは多項式である。2次以上の複素係数の多項式はℂ上非単射なのでfは1次以下の多項式で、 定数ではありえないから

f⁢(z)=a⁢z+b⁢(a≠0)

となる。

∎

a⁢z+bはℂ上の正則同型なのですぐさま次のことがわかる

定理 10.

Aut⁡(ℂ)={a⁢z+b∣a,b∈ℂ,a≠0}

これを利用してAut⁡(ℂ^)を求めよう。

定理 11.
Aut⁡(ℂ^)=(メビウス変換全体)
証明.

(メビウス変換全体)⊂Aut⁡(ℂ^)は明らかである。逆を示そう。

f:ℂ^→ℂ^を正則同型とする。

場合その1(f⁢(∞)=∞の場合):このとき先の定理からℂ上でf⁢(z)=a⁢z+bとなるので結局ℂ^上で f⁢(z)=a⁢z+bである。a⁢z+bはもちろんメビウス変換なのでこの場合の証明は終わる。

場合その2(f⁢(∞)∈ℂの場合):f⁢(∞)=cとしてメビウス変換gを

g⁢(z)=1z−c

と定義する。このとき写像h=g∘f:ℂ^→ℂ^はh⁢(∞)=∞を充たすℂ^の正則同型である。よって場合その1から

h⁢(z)=a⁢z+b

と書ける。もちろんこれはメビウス変換である。そしてg−1もメビウス変換なので

f=g−1∘h

もメビウス変換である。 ∎

最後にΔの正則同型を求めよう。

定理 12.
Aut⁡(Δ)={ei⁢θ⁢z−aa¯⁢z−1|θ∈ℝ,a∈Δ}={a⁢z+bb¯⁢z+a¯|a,b∈ℂ,|a|2−|b|2>0}
証明.
{ei⁢θ⁢z−aa¯⁢z−1|θ∈ℝ,a∈Δ}⊂Aut⁡(Δ)

と

{ei⁢θ⁢z−aa¯⁢z−1|θ∈ℝ,a∈Δ}={a⁢z+bb¯⁢z+a¯|a,b∈ℂ,|a|2−|b|2>0}

の証明は終わっている。残りを示そう。

f:Δ→Δを正則同型とする。

場合その1(f⁢(0)=0の場合):このとき補題5(Schwarzの補題)をfとf−1の両方に適応すると

|f′⁢(0)|≤1,|1f′⁢(0)|≤1

となるので|f′⁢(0)|=1である。そして再び補題5からあるθ∈ℝが存在して

f⁢(z)=ei⁢θ⁢z

となるが、

f⁢(z)=ei⁢θ⁢z=−ei⁢θ⁢z−00¯⁢z−1=ei⁢(θ+π)⁢z−00¯⁢z−1

なので

f∈{ei⁢θ⁢z−aa¯⁢z−1|θ∈ℝ,a∈Δ}

となる。

場合その2(f⁢(0)≠0の場合)f⁢(0)=cするともちろんc∈Δである。ここでg:Δ→Δを

g⁢(z)=z−cc¯⁢z−1

と定義するとこれはΔの正則同型になっている。さてh=g∘fと置くとh⁢(0)=0を充たすΔの正則同型なので場合その1から

h∈{ei⁢θ⁢z−aa¯⁢z−1|θ∈ℝ,a∈Δ}

となる。このとき

f=g−1∘h∈{ei⁢θ⁢z−aa¯⁢z−1|θ∈ℝ,a∈Δ}

でもあるので定理の証明は終わる。 ∎

References

  • [1] 野口潤次郎, 複素解析概論 第6版9刷, 裳華房 2011