正則同型の同定
この文章では複素平面、リーマン球面及び単位開円盤の正則同型写像を同定する。
1 基本的な定義
この文章ではは複素平面を表し、である。 また、である。 この節で述べることはとてもよく知られているので無視してかまわない。
定義 1 (メビウス変換、もしくは一次分数変換).
を充たすを用いてに
を対応させる写像をメビウス変換、もしくは一次分数変換という。
注意.
二つのメビウス変換の合成は再びメビウス変換になるし、メビウス変換は常に逆変換を持つことに注意せよ。 つまりメビウス変換全体は群をなす。これをメビウス群とかメビウス変換群とかいう。 また、開集合上で定義されたメビウス変換は正則関数になることに注意せよ。よって開集合上で定義されたメビウス変換は正則同型写像である。
注意.
メビウス群の合成や逆変換は行列と同様の方法で計算できる。 即ち以下の写像は準同型である。
ここでの定義を述べる。
としたときは
で表されるメビウス変換である。 また、であることに注意せよ。 すなわちとは同じメビウス変換に移る。
をとか書くみたいである。
定義 2.
の開集合に対して
と定義する。
2 準備
話の本題に移る前に複素関数論の基本的な結果をいくつか紹介する。ここでは証明は省く。証明が知りたい場合は複素関数論を学ぶとよいと思われる。
補題 3 (開写像定理).
正則関数は開写像である。
補題 4 (Casorati-Weierstrass).
点の周りで定義された正則関数について、はの真性特異点とする。このときの任意の近傍についてののよる像はの中で稠密である。
補題 5 (Schwarz).
は上の正則関数とし、
を充たすとする。このときとが成立する。
更にとなるが存在するか、もしくはを充たすならば あるとなる複素数が存在して
となる。
補題 6.
の形のメビウス変換をブラシュケ因子と呼ぶ。このメビウス変換はからそれ自身への正則同型になっている。
補題 7.
メビウス群の部分集合
は逆写像と合成で閉じている。つまりメビウス群の部分群である。
補題 8.
3 本題
この節では 複素平面、リーマン球面及び単位開円盤の正則同型写像を同定する。 まずのそれを求めよう。
補題 9.
単射な正則関数はに限る。
証明.
まず無限遠点に於けるの挙動を調べてみよう。すなわち関数
のにおける振る舞いを調べよう。
がで極を持つことを証明する。背理法を用いる。がで真性特異点を持つと仮定しよう。(がで零点を持ったり、もしくはまで正則に拡張できたりはしない。このことを考えてみよ。これからがが真性特異点の場合のみに背理法を行えばよいことがわかる。)
との十分小さい近傍を選び、、、とする。 このとき補題4からはで稠密である。一方は開写像定理からの開集合であるが、が上単射であることから
となり、がで稠密であることに反する。(稠密集合は非空な開集合と常に交わりを持つはずである。)
よってはにおいて極を持つ。その極の位数をとする。 さては全体でマクローリン展開出来て、
と書けるが、がで位数の極を持つことからについてとならなければならない。つまり
となる。即ちは多項式である。2次以上の複素係数の多項式は上非単射なのでは1次以下の多項式で、 定数ではありえないから
となる。
∎
は上の正則同型なのですぐさま次のことがわかる
定理 10.
これを利用してを求めよう。
定理 11.
証明.
は明らかである。逆を示そう。
を正則同型とする。
場合その1(の場合):このとき先の定理から上でとなるので結局上で である。はもちろんメビウス変換なのでこの場合の証明は終わる。
場合その2(の場合):としてメビウス変換を
と定義する。このとき写像はを充たすの正則同型である。よって場合その1から
と書ける。もちろんこれはメビウス変換である。そしてもメビウス変換なので
もメビウス変換である。 ∎
最後にの正則同型を求めよう。
定理 12.
References
- [1] 野口潤次郎, 複素解析概論 第6版9刷, 裳華房 2011