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コンパクト集合の距離化可能性

一色三良(concious77)
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では対角Gδ的なコンパクトハウスドルフ空間は距離付け可能であることを証明する。 また、この文章ではコンパクト性にはハウスドルフ性を仮定せず、それを仮定するようなときにはコンパクトハウスドルフ空間ということにする。

まずはコンパクト空間の基本的な性質を証明を省略したりしつつ述べて行く。

1 事実

事実 1.

ハウスドルフ空間においてコンパクト部分集合は閉集合である。

事実 2.

コンパクト空間の連続像はコンパクトである。

上の二つの事実から次のことがわかる。

命題 3.

コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続写像は閉写像である。

これの系として次の便利な基準がある。

系 4.

コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続全単射写像は同相写像である。

またこれの特別な場合として次のものがある。

命題 5.

開集合系𝔒は集合X上にコンパクトな位相を定めるとし、開集合系𝔓はXにハウスドルフな位相を定めるとし、さらに𝔓⊂𝔒であるとする。即ち𝔒は𝔓より細かい位相をXに定めているということである。さてこのとき𝔒=𝔓となる。つまり二つの位相は一致する。

事実 6.

コンパクトハウスドルフ空間は正規である。

定理 7 (ウリゾーンの補題).

(X,𝔒)を正規空間とし、R,Lをその互いに素な2つの閉集合とすると連続関数f:X→[0,1]が存在し

f|R=1,f|L=0

つまり互いに素な2つの閉集合は関数で分離できる。

2 証明

定理 8 (Gδ集合).

位相空間の部分集合は、可算個の開集合の共通部分としてかけるときにがGδ集合と呼ばれる。

例 9.

開集合はGδ集合である。

例 10.

距離空間(X,d)の閉集合は常にGδ集合である。実際、閉集合Aに対して

Gi={x∈X∣d⁢(x,A)<2−i}

と定義すれば

A=⋂i∈ℕGi

と書ける。

例 11.

一般の位相空間において閉集合はGδ集合であるとは限らない。 実際Tを非可算な離散集合とし、X=T∪{∞}をその一点コンパクト化とする。 このとき点∞の近傍はこの点を含むXの補有限集合111補集合はが有限集合である集合を補有限集合と時として呼ぶ。であるから{∞}は可算個の開集合の共通部分で表すことはできない。(Tが非可算なので)

命題 12.

正規空間XのGδ閉集合Aについて、実連続関数f:X→[0,1]が存在し

f⁢(x)=0⇔x∈A

が成り立つ。

証明.

開集合の列{Gi}i∈ℕは

A=⋂i∈ℕGi

を充たすものとし、fi:X→[0,1] を

fi|A=0,fi|X∖Gi=1

となる関数とする。このような関数の存在はウリゾーンの補題から保証される。そしてf:X→[0,1]

f⁢(x)=∑i=12−i⁢fi⁢(x)

と置くと、これは連続関数でありx∈Aならばf⁢(x)=0が成り立つ。このことの逆を示そう。 もしx∉Aならx∉Gnとなるn∈ℕが存在する。このときfn⁢(x)=1であるからf⁢(x)>0である。 よってf⁢(x)=0ならばx∈Aである。222対偶 ∎

定義 13.

集合Xに対し、X×Xの部分集合ΔXを

ΔX={(x,x)∈X×X∣x∈X}

と定義する。これをXの対角線や対角線集合と呼ぶ。

定義 14.

位相空間Xの対角線集合がX×XのGδ集合であるときに空間Xは対角Gδ的であるという。

次のtube lemma (a.k.a. いつものやつ) と呼ばれる定理は簡単だが、幅広い応用を持つ。

定理 15 (tube lemma).

Xを位相空間、Yをコンパクト位相空間とする。更にx∈XとX×Yの開集合Oが

{x}×Y⊂O

を充たしているとする。このときXにおけるxの開近傍Nが存在して

{x}×Y⊂N×Y⊂O

を充たす。

証明.

A={x}×Yと置く

𝒪={U×V|A∩(U×V)≠Ø,U×V⊂O,U,V⁢は⁢そ⁢れ⁢ぞ⁢れ⁢X,Y⁢の⁢開⁢集⁢合}

と置くと、𝒪は開集合族で直積の開集合の定め方から

A⊂⋃𝒪

が成り立つので𝒪はAの開被覆である。AはYと同相であるからコンパクトなので

A⊂⋃i=1n(Pi×Qi)⊂O

となる𝒪の有限部分族{Pi×Qi}i=1nが存在する。そして明らかに

Y⊂⋃i=1nQi

である。ここで

N=⋂i=1nPi

と置けばx∈Nとなり、さらに

A={x}×Y⊂N×Y⊂N×⋃inQi=⋃i=1n(N×Qi)⊂⋃i=1n(Pi×Qi)⊂O

が成り立つので証明が終わる。 ∎

tube lemmaのもう一つの応用として、変数の片側がコンパクト空間になっている2変数の実関数に関する次の性質を証明しよう。これはある意味で関数の最大値が連続的に動く事を示している。

系 16 (連続関数のsupの連続依存性).

位相空間Xとコンパクト空間Y及びX×Y上の実連続関数f:X×Y→ℝについて

F⁢(x)=supy∈Yf⁢(x,y)

で定義されるF:X→ℝはX上の実連続関数である。

証明.

Xの任意の点aでの連続性を示す。ε>0を任意に与える。そしてA={a}×Yとし、S=f⁢(A)⊂ℝと置く。YはコンパクトなのでAはコンパクト集合である。そしてdをℝの距離とすると

D:ℝ→ℝ;r↦d⁢(r,S)

は連続関数なのでT=D∘f:X×Y→ℝは連続である。さてTの連続性から

O={(x,y)|T⁢(x,y)=D∘f⁢(x,y)=d⁢(f⁢(x,y),S)<ε}

はX×Yの開集合で明らかにA⊂Oである。よってtube lemmaからaの開近傍Nが存在して

A⊂N×Y⊂O

となる。このとき任意のx∈Xとy,z∈YについてDの定義とOの定義から(a,y),(x,z)∈N×Yならば、 f⁢(a,x)∈Sなので

(1) |f⁢(a,y)−f⁢(x,z)|≤d⁢(f⁢(x,z),S)<ε

が成り立つ。Yのコンパクト性から各w∈Xについて

F⁢(w)=supy∈Yf⁢(w,y)=f⁢(w,pw)

となるpwが存在するので、(1)においてy=pa, z=pxとおけば、x∈Nのとき

|F⁢(a)−F⁢(x)|<ε

が成り立つので点aでの連続性がわかる。aは任意なので結局FはX上連続である。 ∎

定理 17.

対角Gδ的なコンパクトハウスドルフ空間は距離付け可能である

証明.

X×Xはもちろんコンパクトハウスドルフ空間なので特に正規空間である。 よって定理12より連続関数f:X×X→[0,1]で

p∈ΔX⇔f⁢(p)=0

を充たすものが存在する。さてF:X×X×X→[0,∞)を

F⁢(x,y,z)=|f⁢(x,z)−f⁢(y,z)|

と定義する。もちろんこれは連続である。 系16から

d⁢(x,y)=supz∈XF⁢(x,y,z)

で定義される関数d:X×X→[0,∞)は連続である。 更にこれが対称律d⁢(x,t⁢y)=d⁢(y,x)および三角不等式を充たすことは定義から明らかである。 非退化性を示そう。d⁢(a,b)=0とする。 写像Fは常に正なので任意のz∈XについてF⁢(a,b,z)=0である。z=bと置けばfは対角線ΔX上で0なので

F⁢(a,b,b)=|f⁢(a,b)−f⁢(b,b)|=f⁢(a,b)=0

となる。fの取り方から(a,b)∈ΔXとなるからa=bである。 よってdはX上の距離となる。 さてdの開球

B⁢(a,r;d)={x∈X∣d⁢(a,x)<r}

はda:X→[0,∞)⁢x↦d⁢(a,x)を用いて

B⁢(a,r;d)=da−1⁢([0,r))

と書ける。dがX×X上連続なのでdaもそれに従ってX上連続であり、[0,r)は[0,∞)の開集合であるからB⁢(a,r;d)は𝔒に属する。 Xの開集合系を𝔒、dから誘導されるXの位相を𝔒dと書くことにすれば、上のことは

𝔒d⊂𝔒

を意味する。距離空間はもちろんハウスドルフ空間なので命題5から𝔒d=𝔒がわかる。 よってXは距離化可能である。 ∎

3 応用

先の定理を用いて他のコンパクトハウスドルフ空間の距離化可能定理を証明していこう。

定理 18 (ウリゾーンの距離化可能定理333ウリゾーンはまずコンパクトハウスドルフ空間の場合に距離化可能定理を証明して、のちに一般の正規空間へと一般化したようである。).

第二可算なコンパクトハウスドルフ空間は距離化可能である。

証明.

Xをコンパクトハウスドルフ空間とする。このとき直積空間X×Xも第二可算である(考えてみよ)。 さてX×Xの高々可算な開基を𝒰とする。そして

𝒜={O∣ΔX⊂O⁢で、かつ⁢O⁢は⁢𝒰⁢の元の有限個の和集合}

と定義しよう。すると𝒰が高々可算であることから𝒜も高々可算である。

今から⋂𝒜=ΔXを証明しよう。まず定義からΔX⊂⋂𝒜 がわかる。

逆を示そう。今x≠yとなるX×Xの任意の点(x,y)を取る。さてX×Xはコンパクトハウスドルフ、特に正則空間であり、 (x,y)∉X×XなのでO∈𝒰が存在してΔX⊂O及び (x,y)∉Oを充たす。このOは𝒜に属するので(x,y)∉⋂𝒜

以上から⋂𝒜=ΔAとなる。𝒜は高々可算なのでXはGδ対角的である。よってXは距離化可能である。 ∎

定理 19 (Kateˇtovの距離化可能定理).

コンパクトハウスドルフ空間XについてX×X×Xが遺伝的正規ならばXは距離化可能である。

証明.

Kateˇtovの補題からX×XがT6になるので、特にXはGδ対角的である。 ∎