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ω1の位相的性質

電波通信
HTML変換日:2026年7月26日

LOTS、つまり線形順序位相空間は基本的な空間のクラスであり、その位相性質は古くから研究されてきた。 ここではLOTSのなかでも特に基本的で、位相空間にしてはそれなりに特異なふるまいを見せる順序数、特に最小の非可算順序数ω1の位相的性質を紹介してゆく。 なるべくDIYの精神で泥臭くても手に取って形がわかるような証明を心掛けたつもりである。それとあと、図を描いてみることを強く推奨する。

定義 1.

任意の可算順序数αについてαλとなる順序数λのうち最小の順序数をω1と定義する。

ω1は最小の非可算順序数と言っても同じことであるし、ω1={ααは可算順序数}としても同じことである。

命題 2.

任意のαω1についてα+1ω1

以下、ω1には順序位相が定義されているものとする。

有界性と非有界性は一般の順序集合についても定義できるのだが、ここで使う分だけ定義することにする。以下で定義される有界性は実は“上に有界”という概念なのだが、整列性からω1の部分集合は常に下に有界なのでこれだけでよいのである。

定義 3 (有界と非有界).

ω1の部分集合Sについてあるλω1が存在して

xSxα

を充たすときSは有界であるという。Sが有界でないとき、つまり任意のyω1についてあるsSが存在してysを充たすときSは非有界であるという。有界性の否定なので正確にはy<sとするべきだが命題2を鑑みればysで非有界性を特徴づけしてもよい。

命題 4.

(α,β](α,βω1)という形の集合はω1の開集合である。さらにxω1について

{(α,x]αω1α<x}

xの基本近傍系を成す。

証明.

前半は命題2からβ+1ω1であり、そして(α,β]=(α,β+1)となることからわかる。後半は明らかである。 ∎

命題 5.

ω1はclopenな開基を持つ。

証明.

分かる。 ∎

命題 6.

w(ω1)=1である。ここでw(X)は空間Xの位相的重み、つまりXの開基の最小濃度を表す。

証明.

やってみると結構わかる。 ∎

命題 7.

ω1は第一可算公理を充たす。

証明.

ω1の定義から xω1についてα<xとなるαは高々可算なので先の定理と合わせればわかる。 ∎

注意.

一般に順序数のみを元として持つ集合SについてsupSが順序数として定義される。

定理 8.

ω1の可算部分集合集合はω1内にsupを持つ。

証明.

ω1の可算部分集合AについてsupAが順序数として定義されるが、Aが可算であることからsupAは可算順序数なのでω1の定義からsupAω1となる。 ∎

命題 9.

ω1の有界な集合はω1の中に上限を持つ。

証明.

Sω1の中の有界集合とするとsupSは可算順序数になるのでsupSω1

命題 10.

ω1はリンデレフでない。特に有界な開集合からなるω1の開被覆可算部分被覆を持たない。

証明.

有界開集合の可算族𝒰={Ui}iを任意に与える。各Uiは有界なので上限がω1の中に存在する。αi=supUiとすると A={aii}は可算集合なのでμ=supAω1である。よって

iUi[0,μ]

なので𝒰ω1を被覆することはありない。 ∎

命題 11.

ω1はコンパクトでない。特に有界な開集合からなるω1の開被覆有限部分被覆を持たない。

以下の命題も本当は一般の順序数でもっと一般的なことが言えるのだが、ここで使う分だけ証明することにする。

命題 12.

ω1の部分集合Aについて以下は同値である。

  1. (1)

    Aは閉集合である。

  2. (2)

    広義単調増加111任意のiについてaiai+1ということである。A内の任意の点列{ai}iについてsupiaiA

証明.

[(1)(2)]

まず線形順序位相空間の一般論としてsupiaiCL{aii}が成り立つ。{ai}iA内の点列だと仮定しているし、Aは閉集合であるからsupiaiAが成り立つ。

[(1)(2)終わり]

[(2)(1)]

αCL(A)を任意に取る。ω1は第一可算であり、また命題4からαの基本近傍系として{(yn,α]n}というものが選べて、更にynyn+1と仮定してもよい。このときsupiyi=αとなる。さてこの基本近傍系を使うとαCL(A)

n(yn,α]AØ

と同値である。そこで、整列性からa0=min((y0,α]A)とし、anまで定義されたときに

an+1=min([an,α](yn+1,α]A)

と定義すれば{ai}iA内の広義単調増加な点列で、

ynanα

を充たすからsupiai=supiyi=αとなる。今(2)を仮定しているのでαAとなる。よってA=CL(A)が成りたち、つまりAは閉集合である。 ∎

定義 13 (club集合).

ω1の非空で非有界な閉集合をclub集合という。“club”とは CLosed UnBounded という意味である。

ω1のclub集合の可算族は交わりを持つという著しい性質を持っている。そのことを証明するために以下の補題を準備しよう。

補題 14.

A,Bω1のclub集合とするとき、ABもclub集合になる。

証明.

ABが閉集合であることは自明である。非有界性だけを示せばよい。

任意にλω1を与えると非有界性から[λ,)AØである。そこでa0=[λ,)Aと定義する。次にBの非有界性から[a0,)BØである。そこでb0=min[a0,)Bとしよう。一般にanまで構成されたときに

bn=min[an,)B

と定義し、bnまで構成されたときに

an+1=min[bn,)A

と定義する。このようにしてA内の広義単調増加な点列{ai}iB内の広義単調増加な点列{bi}iを得る。そして構成の仕方から

anbnan+1bn+1

なのでsupiai=supibiである。これをμと置こう。すると定義からλμであり、また命題12からμAでかつμBなのでμABである。よってABは非有界である。 ∎

この補題を帰納的に用いると次のことが分かる。

系 15.

有限個のclub集合A0,A1,Amについてi=0mAiもclub集合である。

命題 16.

{Ai}iをclub集合の可算族とするとき、iAiもclub集合になる。

証明.

iAiが閉集合であることは自明である。以下では非有界性を示そう。

λω1を任意に与える。するとA0の非有界性から[λ,)A0Øが分かる。そこで

a0=min[λ,)A0

と定義しよう。そしてanまで構成されたときに

an+1=min[an,)i=0n+1Ai

と定義しよう。系15から[an,)i=0n+1AiØに注意せよ。こうして広義単調増加な点列{ai}iを得る。さて、構成の仕方からinaiAnである。よってμ=supiaiと置くと、命題12と単調性から

nμAn

を得る。つまりμiAi。さらに構成の仕方からλμである。よってiAiが非有界であることが分かった。 ∎

次の事実は電波通信のLOTSの記事で紹介されている。

事実 17.

順序数αについて[0,α]=α+1はコンパクトである。特にω1の有界閉集合はコンパクトである。

この事実と命題16を用いて次の非常に重要なω1の性質を証明しよう。

定理 18.

ω1は可算コンパクトである。

証明.

𝒰={Ui}iω1の可算被覆としよう。Fi=ω1Uiと定義するとFiは閉集合である。このときあるkが存在してFkは有界集合になる。もしそうでなければ、任意のiについてFiがclub集合になるが、命題16から

ω1iUi=i(ω1Ui)=iFiØ

になるが、これは𝒰ω1の被覆であることに反する。よってあるkが存在してFkは有界集合になる。Fkの上界の一つをαω1と置くと、

ω1=[0,α+1]Uk

となり、[0,α+1]はコンパクト集合なので、𝒰には有限部分被覆が存在する。よってω1は可算コンパクトである。 ∎

別証明.

ω1の閉集合からなる有限交叉な可算族を任意に与え、それを={Fi}iとする。もしFiの中に有界集合があったなら、それはコンパクト集合でもあるので、有限交叉性からØが成り立つ。もしFiがすべて非有界、つまりすべてclub集合であるならば、命題16からやはりØとなる。 ∎

次の事実は電波通信の記事で紹介されているはずである。

事実 19.

可算コンパクト空間の点可算な開被覆は有限部分被覆を持つ。特にメタリンデレフで可算コンパクトである空間はコンパクトである。

系 20.

ω1はメタリンデレフでない。より詳しく、ω1の有界開集合からなる

次の定理は普通はフォドアの補題を利用して証明すると思うのだが、ここではそれを使わずに証明しよう。

定理 21.

連続関数f:ω1に対し、αω1が存在し、f(α,)={xω1α<x}上で定数となる。

証明.

可算コンパクト集合の連続像は可算コンパクトであるからf(ω1)は可算コンパクトである。さらに距離空間においては可算コンパクト性とコンパクト性は同値なのでf(X)の有界閉集合になる。f(X)[a,b]としよう。I0=[a,b]を二等分して二つの閉区間を作り、それをL1,R1としよう。つまり

L1=[a,a+b2],R1=[a+b2,b]

である。今f1(I0)=ω1はclub集合なのでf1(L1)f1(R1)のうちいづれかはclub集合になっているので、それをI1と定義しよう。そしてI1を二等分して二つの閉区間L2,R2を作り、そのfによる逆像がclub集合になっているものをI2とする。この構成を帰納的に繰り返し

(1) I0=[a,b]
(2) In+1In
(3) diam(In+1)=12diam(In)
(4) nf1(In)はclub集合

を充たすの有界閉区間の可算族{Ii}iを得る。この条件からiIi={v}となるvが存在する。そして

f1(v)=f1(iIi)=if1(Ii)

となるから、命題16からf1(v)はclub集合であることが分かる。さて、

Jn=[a,v12n][v+12n,b]

と定義するとJnの閉集合でvJnなのでf1(Jn)は有界である。もしそうでないとしたら、f1(Jn)f1(v)はともにclub集合となり、交わりを持つことになり、vJnとなって矛盾する。

nごとにf1(Jn)ω1における上界の一つをαnとし、

α=supiαi

とするともちろんαω1であり、α<xならば任意のnについてxf1(Jn)なので

n|f(x)v|<12n

となる。つまりα<xならばf(x)=vである。これで定理は示された。 ∎

注意.

fの値域をの代わりに距離空間で置き換えても定理21は成り立つ。

系 22.

ω1T6ではない。

証明.

L={xω1xは極限順序数}と定義する。するとLω1の閉集合であるが、定理21からゼロ集合にはならない。Lが非有界で、なおかつxLx+1Lだからである。 ∎

命題 23.

ω1はハウスドルフである。

証明.

当たり前 ∎

命題 24.

ω1T4である。

証明.

A,Bを二つの交わらないω1の閉集合とする。このとき補題14からABがともに非有界となることはない。Aを有界とし、 A[0,α]と仮定しよう。このとき[0,α]=[0,α+1)なので[0,α]はclopenであり、ω1=[0,α](α,)である。[0,α]はコンパクトハウスドルフだから特に正規であり、AB[0,α][0,α]の開集合O,Pで分離できる。そして[0,α]の開集合はω1の開集合でもあるので、U=O,V=P(α,)と置けばこれはω1の開集合であり

AU,BV,UV=Ø

を充たす。これで証明は終わる。 ∎

注意.

実はLOTSの一般論を使えば、任意のLOTSは単調正規なのでω1が正規なのは当たり前である。しかし後のω1の直積空間の正規性の証明と定理24の証明はアナロジカルなのでわざわざ証明を載せた。単調正規空間は遺伝的正規空間なのでω1T5でもある。単調正規性について詳しくは
R.W.Heath, D.J.Lutzer and P.L.zenor, Monotonically Normal spaces, Trans.Amer.Math.Soc.178(1973), p481-493 を参照のこと

以降のセクションではω1の有限もしくは可算個数直積空間がどのような性質を充たすのかを見ていく。

命題 25.

ω1は可算コンパクトである。よって任意のnについてω1nは可算コンパクトである。

証明.

ω1の点列{a(i)}iを任意に与える。これらの成分をa(i)=(an(i))nという風に表示しよう。すると A={an(i)i,n}ω1の中の可算集合だからα=supAω1である。よって

{a(i)}i[0,α]

となる。[0,α]はコンパクト空間なので[0,α]もコンパクトである。よって{a(i)}i[0,α]内に集積点を持つが、この集積点はω1から見ても集積点なので、結局{a(i)}iω1内に集積点をもつ。つまりω1は集積コンパクトである。T1空間において集積コンパクトと可算コンパクトは同値なのでω1が可算コンパクトであることが分かる。

後半は、可算コンパクト性が閉集合に遺伝的であることと、ω1nω1に閉集合として埋め込めるということからすぐにわかる。 ∎

さて積空間の正規性の証明のために次のDowkerによる事実を用いる。

事実 26.

可算パラコンパクトT4空間Xとコンパクト距離空間Yとの直積X×YT4空間である。

定理 27.

ω1×ω1は正規である。

証明.

定理24の証明と同様のことをする。 補助的に、次のような語を用いる。ω1×ω1の閉集合Aは任意のał,βω1について

A((α,)×(β,))Ø

を充たすときAは「対角的に非有界」と呼ぶことにする。 このとき補題14と同様にしてω1の二つの「対角的に非有界」な閉集合A,Bは交わりを持つことがわかる。よってω1×ω1の二つの交わらない閉集合A,Bを任意に与えたとき、二つのうちいづれかは「対角的に非有界」ではない。Aを「対角的に非有界」ではないとし、γω1

A((γ,)×(γ,))=Ø

を充たすものとする。さてω1×ω1は次のように直和分解できる。

ω1×ω1=([0,γ]×[0,γ])([0,γ]×(γ,))((γ,)×[0,γ])((γ,)×(γ,))

(γ,)=[γ+1,),[0,γ]=[0,γ+1)などを鑑みれば、それぞれの直和因子がclopenであることが分かる。更に(γ,)は可算コンパクトT4で、[0,γ]はコンパクトな距離付け可能空間であるから事実26から(γ,)×[0,γ],[0,γ]×(γ,)は正規である。[0,γ]×[0,γ]はそもそも距離付け可能なので正規である。よって、定理24と同様の議論でA,Bを開集合で分離することが出来る。 ∎

同様にしてω1nが正規であることが分かる。ω1も正規なのだが、面倒なので省略する。詳しくは[児玉・永見]を参照せよ。

以下の定常集合とフォドアの補題について詳しくは[1]などを参照せよ。

定義 28 (定常集合).

ω1の部分集合Sω1の任意のclub集合と交わりを持つとき、定常集合という。

以下のフォドアの補題の証明は省く。

事実 29 (フォドアの補題).

Sω1の定常集合とし、f:Sω1は任意のαSについてf(α)<αを充たしているとする。このときあるβf(S)が存在してf1(β)は定常集合になる。

命題 30.

ω1n(n2)及びω1T5ではない。

証明.

ω12の部分空間で正規ではないものを構成すれば十分である。

S={(x,y)ω12x<y}
A={(x,x+1)SxL}
B={(x,y)Sxω1,yL}=(ω1×L)S

ここでL={xω1xは極限順序数}である。このように定義するとA,BはともにSの閉集合であり、AB=Øである。ここでAを含む任意のSの開集合Uを取る。{(α,x]×{x+1}α<x}(x,x+1)の基本近傍系を成すので各xLごとにf(x)を選んで

(f(x),x]×{x+1}U

とできる。ここでLは定常集合(というかclub集合)なのでフォドアの補題からあるβω1があってf1(β)Lが定常集合になる。定常集合は特に非有界集合でもあるので点列{ai}if1(β)を取って

β+1<a0,ai<ai+1

とできる。γ=supiaiとしよう。β+1<γであるから(β+1,γ)Sである。もちろんこのときγLであるからより詳しく(β+1,γ)Bということがわかる。 {{β+1}×(ai,γ]i}(β+1,γ)の近傍系を成す。ところでaif1(β)なので

(β,ai]×{ai+1}U

であるが、

(β+1,ai+1)(β,ai]×{ai+1}

でなおかつ

(β+1,ai+1){β+1}×(ai,γ]

でもあるので任意のiについて

({β+1}×(ai,γ])UØ

であるから{{β+1}×(ai,γ]i}(β+1,γ)の基本近傍系なので(β+1,γ)CL(U)である。つまりBCL(U)ØなのでABは開集合で分離できない。よってSは正規空間ではない。 ∎

References

  • [1] 寺澤順, 現代集合論の探求, 日本評論社(2013)