次元論のひとつの「補題」
この文章では参考文献に紹介されている多様体の埋め込み定理のための次元論的な補題、この文章で定理7とされている命題を証明することである。しかし、次元論を最初から紹介するのはとても面倒なことなので、詳しくは参考文献[1]、[3]を当たってほしい。以下の文章用いられる次元論的な命題は事実3、4、5に限られることを注意しておく。つまり、これだけの事実が分かっていればこの文章を読むには十分であるということである。
以下の文章ではすべての空間を可分距離空間とする。よって、この文章で単に「空間」と言ったら可分距離空間のことを指す。
第二可算な位相多様体は可分な距離付け可能空間であるという事実を知っておけば定理7が第二可算多様体に適用することができ、参考文献の多様体の埋め込み定理の大きな行間を埋めることができることであろう。
多様体は局所コンパクトハウスドルフ空間であり、特に正則空間なので、第二可算な多様体はウリゾーンの距離付け可能定理から距離付け可能である。ことが分かる。また第二加算な空間は可分なので第二可算な多様体が可分であることもよくわかる。
まず部分空間の開集合をもとの空間の開集合に持ち上げるための次の補題から始まる。
補題 1.
空間の部分空間の開集合について
と置くと、はの開集合であり、を充たす。ここでとはの距離の一つである。
さらにの二つの開集合についてならばである。
証明.
やるとわかる。 ∎
定義 2 (小さい帰納次元).
空間の小さい帰納次元を帰納的に次のように定義する。
とし、まで定義されたとして
の任意の点との任意の近傍に対しての近傍が存在してかつを充たす。
と定義する。ちなみにとはかつである。一般に次元を下から評価することは難しい。また、この次元は位相不変量になっていることはよくわかる。
次の事実3は定義からすぐにわかるが、面倒なので証明せずに事実として扱うことにする。
事実 3.
空間が次元であるとは開かつ閉な集合からなる開基を持つことと同値である。また、は第二加算なのでこの開かつ閉な集合からなる開基は高々可算な族であるとして良い
次の事実も定義から帰納的に証明することができるはずである。
事実 4.
ここでは次元球面である。
注意.
実はが成り立つのであるが、最終的な目標のためには次元がより小さいことが分かっていれば十分である。
次の事実は可分距離空間の次元論における重要な定理である。
事実 5 (分解定理).
空間がとするとの個の部分空間が存在して
及び
を充たす。
命題 6.
第二可算な次元位相多様体について
証明.
局所ユークリッド性から境界が球面と同相になるような開集合が開基を成すことが分かる。この事と事実4からわかる。 ∎
定理 7.
空間はを充たすとする。そしてを空間の開被覆とする。このときの細分であるの局所有限な開被覆と開集合からなる(被覆とは限らない)個の族が存在して
及び
を充たす。
証明.
空間は距離空間なので特にパラコンパクト111一般に距離空間はパラコンパクトであるが、可分距離空間のパラコンパクト性は一般的なそれよりも容易に証明できる。であるのでの細分である局所有限な開被覆であるが存在する。ところでは可分距離空間なので特にリンデレフであるからは可算であるとしても一般性を失わない。としよう。
さて事実5から個の高々次元部分空間が存在してを充たす。
ここで各について上での被覆を考えよう。は次元なので開かつ閉な開基を持つ。また可分でもあるのでの細分で高々可算な開かつ閉な集合からなるの被覆が存在する。これを用いて
と定義するとはの開集合からなる222の閉集合でもあるが、そのことは使わない。の被覆での細分になる。また定義から明らかにならばであるのでの元は互いに素である。そしてを
とし、までが定義されてるとして
と帰納的に定義しよう。そしてこれを用いて
と定義しよう。するとこれはの開集合であり、はの被覆となり、定義から明らかには互いに素な族である。
これを用いてと定義しよう。(補題1参照)このとき補題1からは互いに素な族となり、を被覆する。(ただしは空である場合もある。)また、からの細分になっている。さて、任意の点についての局所有限性を担保するの近傍をとすると、一般に
が成り立つことからは局所有限な族であることが分かる。(ただしの被覆であるとは限らない)
各ごとに存在するをとすればは互いに素な族であり、かつ局所有限であり、かつの細分となっている。そしてと置けば各が局所有限での細分であることからは局所有限であり、の細分となる。またでなのではの被覆となる。がの細分であることからはの細分であることが分かる。
以上で証明は終わった。 ∎
References
- [1] yamyamtopさんの次元論PDF,https://yamyamtopo.files.wordpress.com/2015/01/dimensiontheory1.pdf, 2016年6月閲覧
- [2] 志賀浩二,多様体論,岩波書店,1976
- [3] W.Hurewicz and H.Wallman,Dimension Theory,Princeton Univ. Press,1948