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積分の変数変公式の証明の概略

一色三良(concious77)
HTML変換日:2026年7月26日

この文章では積分の変数変換の公式の証明の概略を与える。ここでいう積分とはルベーグ積分である。

リーマン積分に関する変数変換の公式の証明はいくつかの文献に見られるが、そのどれもが煩雑でとても信用できないと私は思ったのでルベーグ積分で変換公式の証明をして見ようと思ったきっかけである。そもそも高次元のリーマン積分、特に広義積分は定義自体が煩雑で、これをわざわざ教えるくらいならさっさとルベーグ積分教えたほうが効率的なのでは?と思っている。この文章もその現れなのかもしれない。

定理 1 (Radon-Nikodym).

可測空間(X,𝔐)上で定義された二つの正値σ−有限測度μとλについてλはμについて絶対連続、つまりλ≪μであるとする。このとき(X,𝔐)上の可測関数fが存在し、すべてのA∈𝔄について

λ⁢(A)=∫Af⁢𝑑μ

を充たす。このfをλのμに対するラドン・ニコディム微分という。

補題 2.

可測空間(X,𝔐)上で定義された二つの正値σ−有限測度μとλについて(X,𝔐)上の可測関数fが存在し、すべてのA∈𝔄について

λ⁢(A)=∫Af⁢𝑑μ

が成り立っているとする。このとき(X,𝔐,λ)上の可積分関数ϕについて

∫Xϕ⁢𝑑λ=∫Xϕ⁢f⁢𝑑μ

となる。

以下ではmでルベーグ測度を表す。

以下に述べるルベーグの微分定理は今ではHardy-Littlewoodの極大関数の弱評価を用いて証明する方法が有名になっているが極大関数を用いない証明もある。いづれにせよVitaliの被覆定理などの被覆定理を援用しなければならないようである。

定理 3 (Lebesgueの微分定理その1).

f∈Ll⁢o⁢c1⁢(ℝN)について殆ど至る所のx∈ℝNで

limr→01m⁢(B⁢(x,r))⁢∫B⁢(x,r)f⁢(y)⁢𝑑m⁢(y)=f⁢(x)

が成り立つ。ここでB⁢(x,r)は中心がxで半径rの開球または、閉球を表す。(開球でも閉球でも定理は成り立つ。)

この微分定理から次の二つの微分定理が得られるが、本文とは関係ない。

定理 4 (Lebesgueの微分定理その2).

f∈Ll⁢o⁢c1⁢(ℝN)について殆ど至る所のx∈ℝNで

limr→01m⁢(B⁢(x,r))⁢∫B⁢(x,r)|f⁢(y)−f⁢(x)|⁢𝑑m⁢(y)=0

が成り立つ。ここでB⁢(x,r)は中心がxで半径rの開球または、閉球を表す。(開球でも閉球でも定理は成り立つ。)

定理 5 (Lebesgueの微分定理その3(Lp⁢版)).

1≤p<∞としたとき任意の f∈Ll⁢o⁢cp⁢(ℝN)について殆ど至る所のx∈ℝNで

limr→01m⁢(B⁢(x,r))⁢∫B⁢(x,r)|f⁢(y)−f⁢(x)|p⁢𝑑m⁢(y)=0

が成り立つ。ここでB⁢(x,r)は中心がxで半径rの開球または、閉球を表す。(開球でも閉球でも定理は成り立つ。)

この定理5は∞≥p>NのときW1,p⁢(ℝN)の元は殆ど至る所微分可能というCaldero´nの定理の証明でMorreyの不等式と合わせて効果的に用いられる。(このCaldero´nの定理はリプシッツ関数が殆ど至る所微分可能であることを語るRademacherの定理の拡張になっている。)詳細な証明については[3]参照

定理 6.

U,V⊂ℝNをℝNの開集合とし、Φ:U→VをC1球の微分同相写像とする。このとき

limr→0m⁢(Φ⁢(B⁢(x,r)))m⁢(B⁢(x,r))=|detJ⁢Φ⁢(x)|

が成り立つ。ここでJ⁢Φ⁢(x)とは点xにおけるΦのヤコビ行列である。

補題 7.

ユークリッド空間の間の局所リプシッツ写像によるルベーグ測度に関する零集合の像はルベーグ測度に関する零集合である。

定理 8 (変数変換公式).

U,V⊂ℝNをℝNの開集合とし、Φ:U→VをC1球の微分同相写像とする。このときU上の測度μを

μ⁢(A)=m⁢(Φ⁢(A))

で定めると、μはU上のルベーグ測度mに関して絶対連続となり、そのラドン・ニコディム微分は|detJ⁢Φ⁢(x)|となる。従ってV上の可積分関数fに対して

∫Vf⁢(y)⁢𝑑m⁢(y)=∫Uf⁢(Φ⁢(x))⁢𝑑μ⁢(x)=∫Uf⁢(Φ⁢(x))⁢|detJ⁢Φ⁢(x)|⁢𝑑m⁢(x)

が成り立つ。最左辺のmはV上のルベーグ測度である。

証明.

先の補題からμがmに関して絶対連続であることはすぐにわかる。(ところでμ及びmはσ有限なのでラドン・ニコディムの定理を適応できる。)ラドン・ニコディム微分を求めるには定理6と定理3を用いれば良い。最後の公式は単関数近似と単調収束定理を用いればfが特性関数の場合に証明すればよいことが分かる。さて、集合A⊂Vについて

χA⁢(Φ⁢(x))=χΦ−1⁢(A)⁢(x)

が簡単にわかる。そして

∫VχA⁢𝑑m⁢(y)=m⁢(A)=m⁢(Φ⁢(Φ−1⁢(A)))=μ⁢(Φ−1⁢(A))=∫UχΦ−1⁢(A)⁢(x)⁢𝑑μ⁢(x)
=∫UχA⁢(Φ⁢(x))⁢𝑑μ⁢(x)

がわかり、あとは補題2から変換公式が従う。 ∎

References

  • [1] 竹之内脩,ルベーグ積分,培風館,現代数学レクチャーズB-7,1980
  • [2] ユルゲン・ヨスト著,小谷元子訳,ポストモダン解析学,シュプリンガー・ジャパン,2009
  • [3] J.Heinonen,Lectures on Analysis on Metric Spces,springer,UTX,2001
  • [4] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974