積分の変数変公式の証明の概略
この文章では積分の変数変換の公式の証明の概略を与える。ここでいう積分とはルベーグ積分である。
リーマン積分に関する変数変換の公式の証明はいくつかの文献に見られるが、そのどれもが煩雑でとても信用できないと私は思ったのでルベーグ積分で変換公式の証明をして見ようと思ったきっかけである。そもそも高次元のリーマン積分、特に広義積分は定義自体が煩雑で、これをわざわざ教えるくらいならさっさとルベーグ積分教えたほうが効率的なのでは?と思っている。この文章もその現れなのかもしれない。
定理 1 (Radon-Nikodym).
可測空間上で定義された二つの正値有限測度とについてはについて絶対連続、つまりであるとする。このとき上の可測関数が存在し、すべてのについて
を充たす。このをのに対するラドン・ニコディム微分という。
補題 2.
可測空間上で定義された二つの正値有限測度とについて上の可測関数が存在し、すべてのについて
が成り立っているとする。このとき上の可積分関数について
となる。
以下ではでルベーグ測度を表す。
以下に述べるルベーグの微分定理は今ではHardy-Littlewoodの極大関数の弱評価を用いて証明する方法が有名になっているが極大関数を用いない証明もある。いづれにせよVitaliの被覆定理などの被覆定理を援用しなければならないようである。
定理 3 (Lebesgueの微分定理その1).
について殆ど至る所ので
が成り立つ。ここでは中心がで半径の開球または、閉球を表す。(開球でも閉球でも定理は成り立つ。)
この微分定理から次の二つの微分定理が得られるが、本文とは関係ない。
定理 4 (Lebesgueの微分定理その2).
について殆ど至る所ので
が成り立つ。ここでは中心がで半径の開球または、閉球を表す。(開球でも閉球でも定理は成り立つ。)
定理 5 (Lebesgueの微分定理その3()).
としたとき任意の について殆ど至る所ので
が成り立つ。ここでは中心がで半径の開球または、閉球を表す。(開球でも閉球でも定理は成り立つ。)
この定理5はのときの元は殆ど至る所微分可能というCaldernの定理の証明でMorreyの不等式と合わせて効果的に用いられる。(このCaldernの定理はリプシッツ関数が殆ど至る所微分可能であることを語るRademacherの定理の拡張になっている。)詳細な証明については[3]参照
定理 6.
をの開集合とし、を球の微分同相写像とする。このとき
が成り立つ。ここでとは点におけるのヤコビ行列である。
補題 7.
ユークリッド空間の間の局所リプシッツ写像によるルベーグ測度に関する零集合の像はルベーグ測度に関する零集合である。
定理 8 (変数変換公式).
をの開集合とし、を球の微分同相写像とする。このとき上の測度を
で定めると、は上のルベーグ測度に関して絶対連続となり、そのラドン・ニコディム微分はとなる。従って上の可積分関数に対して
が成り立つ。最左辺のは上のルベーグ測度である。
証明.
References
- [1] 竹之内脩,ルベーグ積分,培風館,現代数学レクチャーズB-7,1980
- [2] ユルゲン・ヨスト著,小谷元子訳,ポストモダン解析学,シュプリンガー・ジャパン,2009
- [3] J.Heinonen,Lectures on Analysis on Metric Spces,springer,UTX,2001
- [4] W.Rudin,Real and Complex Analysis second edition,McGraw-Hill, 1974